ということで、ルンダン/Rendangです。
西スマトラ料理といえば、ルンダン。
美味しくて愛おしくて白ごはんください!となる焦茶の塊り、ルンダン。
ルンダンは、そもそもは「ある食材をブンブを入れたココナッツミルクで絶えずかき混ぜながら調理する」という意味の、
ムルンダン/Merendang、西スマトラの言葉ならマランダン/Marandangという動詞なのだそう。
いつの間にかそれが料理名となり、今は西スマトラのみならず、ジャワでも定番のおかずとなりました。
インドネシアの中でもトップクラスなスパイス多種使いで、時間をかけてじっくり仕上げます。
組み合わせは家庭や食材によって異なるという前提の上で、ルンダンに使われるスパイスを上げていくと、
シャロット、ニンニク、生姜、ガランガル、キャンドルナッツ、ターメリック、ターメリックの葉、コブミカンの葉、レモングラス、サラムリーフ、カルダモン、胡椒、丁子、ナツメグ、シナモン、コリアンダー、そしてもちろん唐辛子。
ルンダンにする食材は、最もポピュラーなのは牛肉、もしくは水牛肉。
ですが、鶏肉、家鴨肉、卵、牛や水牛の肺、タウナギや二枚貝、若いジャックフルーツやじゃがいも、
西スマトラのひとたちは、なんでもルンダンにしてしまします。
そんなルンダン作りを、友人のお母さんに習ってきました。
西スマトラの中でも、とりわけ「なんでもルンダンにする地」として知られるパヤクンブ/Payakumbuh出身のママ。
まずは買い出し。
市場の肉屋 Padang_West Sumatra, 2023 |
お肉は1キロ。
これがあとでちょっと問題になるのですが。
ココナッツ屋 Padang_West Sumatra, 2023 |
ココナッツミルク Padang_West Sumatra, 2023 |
ココナッツ屋では、おろしてもらったのと、一番搾りと二番搾り両方のココナッツミルクを。
他にも、市場でちゃっちゃと買い物を済ませていくママ。
ブンブ Padang_West Sumatra, 2023 |
台所の床に「ブンブはだいたいこの辺ね」と出していくママ。
でも、調理しながらこれ以外にもあれこれ足してました。家庭料理ってそういうもの(笑)。
ママの口頭の分量だと、牛肉1キロに対して、
・ココナッツミルク(一番搾りと二番搾りを混ぜて) 1.5キロ
・シャロット 1オンス(30g弱)→擦り潰す
・ニンニク 5粒→擦り潰す
・生姜 親指1本くらい(擦ったのだったら大さじ山盛りめで1大)
・ガランガル 親指2本くらい(擦ったのだったら大さじ山盛りめで2)
・唐辛子(擦ったの) 2オンス(55gくらい)
・ターメリックの葉 1枚
・レモングラス 1本
・サラムの葉 2枚
・コブミカンの葉 8の字型の葉っぱを上下にちぎって5枚
・ナツメグ 2粒(つぶす)
・キャンドルナッツ 4粒(つぶす)
でもこれ、ターメリック(根の方)の分量入ってないですね。
まあ、あくまで目安ということで。
自分で作るときにはいろんなところのいろんなレシピを見比べて塩梅しましょう。
では、さっそく。
ココナッツミルク(一番搾りと二番搾りを混ぜたもの)に、擦ったり潰したりしたブンブを全部、
サラムの葉とターメリックの葉とコブミカンの葉はそのまま、レモングラスは軸をたたいてから、
入れて火にかけます。
伝統的には薪で調理されることが多いルンダン。
量をたくさん作ることも多いでしょうし、スモーキーな香りがつきますしね。
また調理時間が長いので、ガス代が…という意味でも、薪が選ばれるというのもあるかも。
ですが、この時は、お家のキッチンのガスコンロで。
温まってくるとだんだんいい香りが立ってきます。ふつふつとして、少し油分が浮いてきて。
加減を見ながら塩もして。この状態が、グライ/Gulaiです(前回散々書いた)。
ルンダン調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
そのタイミングでお肉をIN。
お肉は、厚み1センチほど、大きさは、まあ7センチくらいですかね、で切っておきます。
仕上がりでぎゅっと縮むことを考えると、あんまり小さいと悲しい感じになりますしね。
ルンダン、の名のごとく、時々かき混ぜながら、じっくり加熱していきます。
だいぶ煮詰まった頃に、ママが刻んだシャロットをぱらっといれました。分量外。
ふつふつふつふつ。この写真だけで白ごはん食べられます、わたし。
時々かき混ぜながら、まだまだ煮詰めていきます。
と、味見をしたママが「しょっぱいかも」と言い出しました。
曰く、手軽だしと、市場でもう擦られたブンブを買ってきたけど、そのせいだわ、と。
すり潰す作業の中で、素材が柔らかくなるように塩を加えているんですよね。
それで全体の塩加減が狂ってしまったらしく。
で、ママは「きゅうり入れよっか」と。
半分に切ったきゅうりを2本、ぽいぽい。
きゅうりは塩分を吸いますのでね。
「やっぱり、唐辛子もブンブも、家で自分でやるべきだわ」とママ。はい。
きゅうりごと、さらに加熱。じっくりじっくり。
汁気が飛び、油分とお肉ともろもろだけになったら出来上がり。
たくさんのスパイスが保存料となり、水分をしっかり飛ばしてあるので、
ルンダンは常温でも数日は日持ちがするのだと言われます。
最近はわからないですが、以前はインドネシアの人がちょっと長めに国外に行くというときに、
スーツケースの中に、タッパーに詰めたルンダンが入ってたりしました。
このルンダンの、煮詰めて油と分離した後のもろもろ、これって、わたし今回やっと繋がったのですが、
ココナッツオイルを絞った後に残る滓、あれなんですね。
ココナッツミルクをじっくり加熱して油脂を取るのが、伝統的なココナッツオイル作りなのですが、
そのときに出る搾り滓を、以前時々市場で買って食べていたのです。滋味甘くて美味しいんですよ。
たくさん唐辛子を使っているのにも関わらず、味が尖らずひとつにまとまっているのも、
このココナッツからじっくり出てきた甘みのおかげかもしれません。
このもろもろ、西スマトラではデダック/Dedakと言われます。
お肉を食べてしまった後に残ったこのデダックで、
金時豆、小さなじゃがいも、揚げたキャッサバ芋、薄切りにしたココナッツの硬い果肉などを加え再利用もします。
市場の小さいじゃがいも Padang_West Sumatra, 2023 |
さて、続いて。
ルンダンを作るときに、ママに一緒に魚のグライも作ってもらったので、そちらも。
市場の魚売り Padang_West Sumatra, 2023 |
ママは値段と鮮度とかなりかなり吟味して、マグロを1匹選びました。
使う材料は、
・シャロット 1/5オンス(5gくらい)
・ニンニク 5粒
・生姜 親指半分
・ターメリック 好み
・唐辛子(緑のラウィット) 好み
・ターメリックの葉 好み
・ホーリーバジルの葉 好み
・カンディス/Kandis 5粒
という感じで、全体的に「好きなように」という感じですね。
シャロット、ニンニク、生姜、ターメリック、唐辛子までをどんどんすりつぶして鍋に入れていきます。
塩適量して、つぶれやすくして、ごりごりと。
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
そうしたらそこに、ココナッツミルク。これも、一番搾りと二番搾りを合わせたもので。
この使い分け、結局わからなかった。
最初は二番搾りで加熱を始めて、後から一番搾りを入れる、みたいな話も聞いたことがあるのですが、
ママは普通に混ぜちゃってました。
くたっとするまで煮たらできあがり。
このサラ、普段自分がジャカルタやバンドン、もしくは他の地域で行くパダン料理屋では見かけない気がします。
そしてそこに、カンディス登場。
スマトラではよく使われている酸味料。西カリマンタンの内陸でも見かけました。
一方、ジャワなどではタマリンドの方がメジャーなので、カンディスはあまり見かけません。
カンディス Padang_West Sumatra, 2023 |
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
そのカンディスも、ぽいっとそのまま投入。
まずはブンブだけで、沸騰させます。
グライもルンダンも、ココナッツミルクにしっかり風味を馴染ませてから素材を加える、という順番なんですね。
洗ってぶつ切りにしたマグロ。
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
グライは、油脂が分離するまでというのはなく、具材にきちんと火が通って味が染みたらそれで出来上がり。
途中でママが「キャッサバの葉入れようか」と裏庭のキャッサバの木から葉っぱをとってきました。
野菜にはあまり興味のない西スマトラのひとたちですので、この葉っぱでもありがたいです(笑)。
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
グライ調理 Padang_West Sumatra, 2023 |
くたっとするまで煮たらできあがり。
あ、仕上げにホーリーバジルの葉っぱを入れて。これは、特に魚の臭み消し的なものかな。
ということで、ごはんです。
ルンダンとグライ Padang_West Sumatra, 2023 |
もう「美味しい」以外言葉が見つからない感じで美味しかったです。
グライは、魚の風味に、キャッサバの葉からくる青っぽさがちょうどいい感じで、
ああ葉っぱ入れてもらってよかったー、と思いました。
さて、このルンダンとグライを作ってもらった翌日、もう一品、作ってもらったんです。
それが、サラ・ラウアッ/Sala Lauak、縮めて「サラ」と呼ばれたりする、丸い揚げ物。
サラ・ラウアッ Padang_West Sumatra, 2023 |
これは、食堂などでもよく見かけていたのです。カリッと丸くて美味しいんです。
ママの家でも出してくれて「おいしー!」と言ったら「じゃあ、作る?」と。
材料は、
・米粉(餅米じゃない、普通の米粉) 500g
・シャロット 5粒++
・ニンニク 4粒
・干した塩漬けの魚(イカン・アシン/Ikan Asin)またはジャコ 適量
・ターメリック 好み
・ターメリックの葉 1枚(刻む)
・唐辛子(擦り潰したもの) 大さじ1
・長ネギ 1本(刻む)
たくさん使った方が美味しいものねー。
シャロットとニンニクとターメリック(根の方)は潰して分量の水を入れた鍋に。
そこに、干し魚も小さく刻みながら入れていきます。
ターメリックの葉をハーブ的に使うっていうのが面白いですね。
西スマトラ料理では必須のよう。
インドネシアの別の地方ではターメリックの花も調理に使うと聞いたことがあります。万能。
(電気炊飯器の内釜だけど、気にしない)
混ぜていきます。
触れるくらいの温度になったら、小さめのボールに丸めていきます。
手に油を塗ってやるとくっつきにくくなります。ママみたいにビニール袋かぶせちゃったり。
ここで、混ぜすぎてはいけません。
わたし、すぐ触りたくなっちゃうんですよ(揚げ物下手)。
そしたら、ママに「そんなふうにしてると爆発するから」と言われました。
これが、本当に爆発したの!
帰ってきてから自分で作ってみてた時だったのですが、盛大に何個も爆発して、大変でした。
顔の火傷、痕が残らずよかったよかった、って感じですが、本当にびっくりした。
干し魚の旨味と、唐辛子の辛味と、ターメリックのアーシーな風味とがもう絶妙で、
ましてや揚げたて、止まらない止まらない。
作り終わって、みんなでお昼ご飯を食べに行こうって、言ってるのにも関わらず、
1個、もう1個、と無意識に手が伸びて危険でした。
爆発事故のせいで勇気が出ずにいましたが、やっぱりまた作ろうかな。蓋持って(盾)。
食堂のサラ・ラウアッ Padang_West Sumatra, 2023 |
このサラ、普段自分がジャカルタやバンドン、もしくは他の地域で行くパダン料理屋では見かけない気がします。
あるところにはあるのかな。気づいてなかっただけなのかな。
代わりに、プルクデル/Perkedelというジャガイモのコロッケみたいなのはあるけど。
サラは、もっとどこででも食べられるようになってほしいです。
まあ、一発でそんな上手にはできませんよね。
何度も練習して、ようやく美味しいルンダンが作れるようになるのでしょう。
ルンダンは誰でもが作れるものではない、という言葉を聞いたことがあります。
それは手順が難しいとかそういう意味ではなく、じっくり鍋に向き合って加減を見ながら調理し、
しっかり自分のものとなるブンブの配分を取得した人こそが、という意味なのでしょうね。
精進します(とりあえずは、パダン料理屋に行くけど)。
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