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2026/06/14

モロの食卓

お昼ごはん Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

バリに行く前に、ティモール島に行っていました。
以前に訪れたボティ村と同じ中南部ティモールで、北モロ郡のある村のコミュニティにお邪魔したのでした。
ラコアッ・クジャワス/Lakoat.Kujawasという地域に根差したコミュニティ。
図書室や文章を書くワークショップ、地域問題をディスカッションをするワークショップなどを開催していて、
今回はそのコミュニティで、食のワークショップに参加しました。
地産のものを日々の食卓に供することを主旨とし、
「トラディショナル」というよりは「ローカル」に注目した料理体験がとても楽しくて充実したものでした。

背景としてあるのが、以前こちらの記事の、特に後半で書いていたようなことなのですが、
貧困地域とみなされたことで、国からの支援を受け、
その支援が「米」という、その土地では育たない、もしくは十分な量を収穫できない穀物の形であること、
その米が基準となることで、そもそもその土地で食されていた食材が蔑ろにされ、
外部から、時に支援という名目で持ち込まれた、自給できない米を主食としてしまい、
結果、食の主権を失う。
という、現代の食糧事情の問題です。

唐辛子 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

到着した時に、このコミュニティ内を案内してくれた14歳の少女が、
土着の食材を食べていると、その子供は田舎臭いとか貧しいとかという偏見を持たれ、時にいじめられ、
子供に米を食べさせないと、その親も子供を大事にしていないという目で見られたりする。
そのイメージは、米を基準にしたから生まれたもの。
そして米を基準にするから、この土地は貧しく見える。
地元の食材を通して、自分たちの土地がどれほど豊かかを伝え、
決して貧しくなどないのだと、地域の人々の中にある偏見を払拭して行きたい。
と、話してくれました。
(びっくりするほどしっかりと、自分の意見を語れる子だったのです。素晴らしいでしょ)

というわけで、ワークショップは、朝の市場での買い物から。
週に一度の賑やかな市が立つ日です。

市場の風景 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

きゅうり Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

これきゅうりなんです。手前の大きいの。
右奥にあるパパイヤとあまり変わらない大きさで、でも「このあたりのきゅうりはこういうもん」だそう。
ちなみに、ペットボトルに詰められているのはココナッツオイル。気温が低いので白く固まっています。

レモン Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

この表面がぼこぼこしているのは、ジュルック・アサム/Jeruk Asam、つまり「酸っぱいみかん」。
このあたりでよく採れる柑橘類らしく、ちょうどたくさん出回っていました。
ちなみに、実際の果汁はそこまでの酸っぱさではありませんでした。爽やかな感じ。

シパの葉 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

この葉っぱは、ティモールのパセリと言われていたシパ/Sipa。
インドネシアの他の地域では見たことがありません。
青々としたいい香りの葉っぱで、できれば庭に植えておきたいくらい。

シカクマメ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

シカクマメ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

そしてこれは、シカクマメ。
ずんぐりと短い、緑一色のシカクマメはバンドンのうちの庭でも採れますが、この長い品種は初見です。

食材 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

ということで、市場で買ってきたもの、それから庭で採れたものなどを揃えて調理開始。

バナナの花 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

バナナの花のフライ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

バナナの花のフライ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

まずはバナナの花のフライ。
以前マナドでも作りましたが、若干レシピが違います。
バナナの花をザクザク刻んで、塩でのあくぬきはなく、そのまま調味料を混ぜていきます。
使ったのは、ニンニク、塩、胡椒、卵、タピオカの粉。
澱粉であるタピオカ粉を使うので、サリっとした、竜田揚げの衣のような仕上がりです。

そうそう、ニンニクも、やはり地元産のものを使っています。

ニンニク Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

インドネシアで出回っているニンニクは、ほとんど中国からの輸入品です。
この写真だと、右側が中国産。そして、左の小粒のニンニクがティモールのローカルニンニク。
小さいけど、味がいいのよ、とママは言います。

ニンニクを剥く Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

ただし、皮を剥く作業は大変。ちまちまちまちま。

バナナの花のフライだけでなく、タロ芋も賽の目に切ってカリッと上げておきます。

タロ芋 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

これは、サンバル和えにするのです。

サンバル・マタ(材料) Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

用意するのは、サンバル・マタ/Sambal Matah。
バリのサンバルと言われていますが、今では全国で愛される爽やかで香りの良いサンバルです。
たっぷりのレモングラス、刻んだトウガラシ、シャロットに、レモンの葉っぱを千切りに。
西インドネシアでは、コブミカンの葉が定番ですが、それ以外の柑橘系の葉もいい香りがするんですよね。
香りのいいレモン果汁を絞って(皮も薄切りにして入れてしまいます)塩を振って味をしたら、
通常のサンバル・マタは熱した油をジュっと注ぐのですが、村のママは炒めてしまいます。
ただし、ごくごくさっと。
しっかり火を通すことが目的ではなくて、全体が混ざりやすくなればOK。
そして、揚げておいたタロ芋を混ぜ合わせたら、できあがり。

タロ芋のサンバル・マタあえ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

タロ芋の一部を紫芋にしても、彩りがきれいよ、とのこと。それは素敵。

シパの葉は、トマトとトウガラシとレモン果汁とであえて、香り爽やかなフレッシュサンバルに。

シパのサンバル Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

シパのサンバル Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

シカクマメは小口に切ってさっと湯掻いて、同じく湯掻いたかぼちゃの芽と花、フレッシュなクレソンと合わせ、
そこに胡麻と、名前を失念してしまったのだけど、ささげの仲間のような豆を炒ったものを乗せてサラダに。
ドレッシングは、ドライチリパウダー、オイル、塩、砂糖、レモンのシンプルなもの。

サラダ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

サラダ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

クレソン、それからかぼちゃの芽と花はママの家の庭から。

そして、発酵タケノコの炒め物も。

タケノコは、わたしが暮らすバンドンの山側でも時折市場に並ぶことはありますが、
いつでも気軽に食べられる食材ではないだけに、ここで出会えたことがとても嬉しかったです。
モロのあたりは、1〜2月がタケノコの季節なのだとか。その時に、発酵させてあったものを炒めます。

発酵タケノコ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

発酵タケノコ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

発酵タケノコの炒め Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

発酵させていたものをしばらく水に晒し、酸味を抜いてから、ニンニクとトウガラシでシンプルに炒めました。
(個人的には、酸味も残してくれていいのに、と思ったけど、笑)

他、かぼちゃの炒め物、鶏肉とタロ芋の炒め物、なども。

炭水化物枠には、ティモールのトウモロコシ粥、ジャグン・ボセ。大好き。

ジャグン・ボセ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

大きなきゅうりは、若いパパイヤ、ヒカマ、グアバ、人参と一緒に薄切りにして、
砂糖、塩、パッションフルーツの果汁を使った漬け液でしばらく漬けて、ピクルスになりました。
爽やかでシャキシャキの歯ごたえが楽しい、おかずの合間の口直しに。

ピクルス Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

そして、デザートにはトウモロコシで作ったプディングも。

プディング Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

使うトウモロコシは、ジャグン・プルッ/Jagung Pulutと呼ばれる、むっちりとした食感の品種。
スティッキーコーンとも言われます。
スターチが多いので、加熱することでとろみが出る。その特性を利用したものです。

生のうちにトウモロコシをブレンダーにかけて裏漉しし、パンダンリーフで香り付け、砂糖を加えて加熱。
火にかけてるうちにもったりとしてくるので、それを器に移して冷やし固めるのだそうです。
まず、トウモロコシを育てて、それから作ってみたいです。

プディングの上に乗っているのは、ビワのアイス。
このワークショップを行っている団体の名称であるラコアッ・クジャワスのラコアッは枇杷のことなんです。
クジャワスはグアバのことで、モロではこの二つの木はどこにでも生えていて、
(枇杷に関しては、インドネシアの他の地域では一般的な樹木ではないので、不思議なことなのですが)
なので、たとえば通りすがりの子供たちなどがその果物を勝手に採って食べても、文句は言われない。
その、オープンで親しみやすい二つの果物ををコミュニティの名称にしたのだそうです。
という、象徴である果物のアイスです。

そうそう、この時のメニューではなくて、朝食に茹でたタロ芋と一緒に出してもらったものだったのですが、
タケノコ入りの発酵サンバルもありました。

サンバル・ルアッ Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

ティモールでサンバル・ルアッ/Sambal Lu'atと呼ばれるもの。

ニンニク、トウガラシ、トマト、ライム、塩のサンバルに千切りにしたタケノコをあわせ、発酵させたもの。
ライムは果汁だけでなく皮も刻んで入れておくのがポイント。いい苦味がでます。
トウガラシの辛味にライムやトマトの酸味はもちろん、そこに発酵系の酸味と旨味が加わり、素晴らしいおいしさ。
この時のは、今年の2月に作ったものでしたが、時間をおくほどに味は変化していくのだそうです。
タケノコが必須なわけではなく、香りのものを合わせても美味しくできるのだとか。
トーチジーンジャーやルンクアスの花でもいいし、ミントやレモンライム、シパの葉でも。

発酵ビン Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

塩加減はどのくらい?と聞いたところ、
少ないと発酵に失敗するしねえ、多すぎたらしょっぱいしねえ、だいたいの加減だねえ、との返事。
さすが、家庭料理。ママの匙加減は数値化できません。
バンドンの我が家に帰宅して、とりあえず庭のトーチジンジャーの花を入れて作ってみました。
美味しいのができたらいいな。

モロのキッチン Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

モロのワークショップで習った料理は、最初に書いたように、
伝統的な地方料理というより、地場の食材を使い各家庭でママたちが普段作っている料理なのですが、
ローカルな食材を食べるということは、旬を食べるということなんですよね。
都会のスーパーや市場で目にする、ブロッコリーやじゃがいもなどは、モロの市場では見かけませんでした。
それは、この土地では育たないからかもしれないし、旬じゃないからかもしれない。
季節に関係なく通年ハウス栽培されている野菜ではなく、その土地で「今、出回っている食材」をいただく。
旬じゃないなら、出会えない。
もしくは、旬なうちにたくさん保存食を作っておく。
この感覚、忘れていたなあと思いました。

モロの食卓 Mollo_East Nusa Tenggara, 2026

タケノコの旬に、また訪れて、発酵タケノコの仕込みワークショップに参加したいです。



2019/12/20

モリンガ/Kelor

モリンガの葉をとるママ Alor_East Nusa Tenggara, 2019

モリンガです。インドネシア語では、ケロール/Kelor。
ミラクルツリーと言われる、地球上の可食植物の中で最も栄養価が高いと言われる、300の病を癒すと言われる、
とか、わたしがここで説明するまでもなく、広く誉め称えられているのであとはググってみてください。
な、モリンガです。

モリンガ Lembata_East Nusa Tenggara, 2019

モリンガの種 Lembata_East Nusa Tenggara, 2019

モリンガの花 Bandung_West Java, 2019

原産地は南アジアですが、広く熱帯地域に分布しており、
栄養補助食品として、化粧品の原料として、様々に使われている豆科の植物。
その種の莢の形状からドラムスティック・ツリーとも呼ばれます。
葉も、花も、根も、種も、いずれも食することができ、それぞれに高い栄養価をもつ木。
インドネシアでも、例えばジャカルタの健康食品売り場などでは乾燥粉末のカプセルやお茶などが売られ、
最近の健康意識の高まりと相まって、改めて、その価値を見直されています。

改めて。

そう、もともとモリンガ自体インドネシアでは普通に植えられていた植物。
わが家の近所にもあります(わが家の庭にもあったけど、ある時剪定を失敗して枯らせてしまった)。
栄養があるからとかそういうのではなく、当地ならではの用途があったモリンガ。

それは「憑き物落とし」。
まあ、こういう迷信は、広くインドネシア全土というより、ジャワだけとではないかという気もしますが。
特に亡くなった人に対し、埋葬前のお清めでモリンガの葉を用いて、
故人が生前まとっていた(かもしれない)呪術やら、マジックやらの効果を消して送り出すのだとか。
わが家のメイドさんも、お母さんが亡くなった時にモリンガの葉で沐浴させたらしく、
そのイメージのせいで「モリンガは食べたくない」と言います。

長患いで回復もせず亡くなるでもなく、という場合も「(死ねない)マジック」がかけられていると見なされ、
モリンガの葉で身体を撫で、マジックを消して安らかに逝かせてあげるという話しもあります。
また、憑き物を落とす効果は警察でも期待されているらしく、
追跡する悪者がまとっている銃弾除けの術(!)を無効化するとか、
催眠術による詐欺を行った容疑者の、その術を消す効果があるとか、
匿名のマディウム市(東ジャワ)警察の職員が語ったという記事があったりします(苦笑)。

そういう摩訶不思議な話しは嫌いではないし、インドネシアのある側面を表わしているとも思いますが、
ごはんについてのブログなので、ごはんの話しに戻しましょう。

モリンガの葉をとる Rote_East Nusa Tenggara, 2016

これまで見てきた中で、モリンガを一番日常的に食べていたのは、東ヌサトゥンガラ地域の人々な気がします。
それも、石灰質の土地で農作物の育ち難い島の人々。

モリンガは、とても強い、育てやすい植物なのです(わたしは枯らせたんですけど、それはそれ)。
幹を土にぐさっと刺しておくと、そこで根付いて育っていく。
垣根としてぐさぐさと刺されたモリンガの枝のいくつかが根付き葉を茂らせている姿は、
東ヌサトゥンガラ地域を旅しているとよく目にします。

モリンガの垣根 Lembata_East Nusa Tenggara, 2019

この地域の中でも、火山のある島や保水力のある土壌を有する島では、そうやって生えている植物という感じ。
でも、火山もなく土壌も薄い島では、それ以上の存在。モリンガは貴重な「野菜」です。

市場 Lembata_East Nusa Tenggara, 2019

市場 Adonara_East Nusa Tenggara, 2019

火山のある島の市場には、乾季であっても、つやつやで新鮮な葉野菜が並びます。
一方で、火山のない小島に立つ週に一度の市場では、葉野菜はモリンガだけ。

市場 Alor_East Nusa Tenggara, 2019

この市場は、アロール島の入り江のすぐ外にある小さな島の村。
村のひとたちは、小舟で渡った対岸であるアロール島に畑を持っています。
自分たちの暮らす島には畑はなく、せいぜいが庭先の唐辛子や、パパイヤ、バナナ、
そしてモリンガくらいが、海を渡らずとも採れる食用植物ではないでしょうか。

モリンガ Alor_East Nusa Tenggara, 2019

わたしが「モリンガのスープが食べたい」とお願いしたので、木に登って採ってくれているところ。
まだ若い、柔らかい葉を採るのよ、とお母さんが子どもたちに指示を出してくれました。

モリンガ Alor_East Nusa Tenggara, 2019

ごはんの材料です。

今年の旅行で訪れたこの村、偶然、数年前にも仕事で滞在したことがありました。
その時に作ってもらったモリンガのスープが、わたしの人生初モリンガ。
当時はそれがモリンガだとも知らず、でもインスタントの焼きそばと白ご飯、みたいな食事の中にあって、
とても貴重な緑の野菜で、そして食べたらなんだか元気になった気がしたのでした。

キッチン Alor_East Nusa Tenggara, 2019

お世話になったおうちのキッチン。
トップの写真のママのおうちです。

モリンガのスープは葉の部分だけを使います。

モリンガ Alor_East Nusa Tenggara, 2019

なので、まずは、葉をぷちぷちと取る作業から。小さい茎まで出来るだけ丁寧に取り除きます。
堅そうな葉っぱや、茎の部分は、待機しているヤギたちに。

モリンガを食べるヤギ Alor_East Nusa Tenggara, 2019

モリンガの食べ方は、基本的にスープ。他は、わたしはまだ見たことがありません。
そのスープも、塩と顆粒スープストック(オプショナル)のみで味付け、というくらいのシンプルさ。
ニンニクやシャロットを少し入れていることもあるかな。

モリンガスープ Alor_East Nusa Tenggara, 2019

葉が柔らかくなるまで煮込んだスープ。
やや辛味のある青さが美味しく、今でもやはり、食べるとなんだか元気になる気がします。

モリンガ Bandung_West Java, 2019

わが家のお隣さんから、モリンガの葉っぱを沢山もらったことがありました。
その辺に生えてはいても、バンドンの市場で売られているのを目にしたことはありません。
なので、貴重と言えば貴重な、モリンガの生葉。

柔らかい部分は、ママにならってスープに。

モリンガのスープ Bandung_West Java, 2019

ニンニク少しと塩で、トウモロコシと金時豆入り。

わたしの中でモリンガは、身体にいいのはもちろんですが、
それにもまして、親しみをもって東の島々を思い出す植物です。
通りすがりに見かけると「あ」と振り返って見てしまうくらいに。
カリカリに乾燥した島の青い空のイメージと共に思いだされる、素朴で沁みるスープの味なのです。

乾燥モリンガ Bandung_West Java, 2019

残りの堅そうな部分と花は、お茶用に乾燥させました。
緑みどりしい味がします。

モリンガ Rote_East Nusa Tenggara, 2016

この記事を書き始めて、写真を撮ったあとの種を持ち帰っていたことを思い出しました。
ちょうど雨季ですし、撒いてみます。

育ったらいいな。
今度は枯らさないようにしたいな。
枯れるなんて思わなかったんだよな。