2025年はマナドにも行っていたのでした。
インドネシアに住んでいる日本人にも、マナド料理のファンは多いですね。
スパイス控えめ、魚の旨味+野菜も多め、唐辛子がっつりでごはんがすすむ(なんならビールもすすむ)。
日本人の口にもあいやすく、親しみやすいのがマナドのごはんだと思います。わたしも大好きです。
先に書いたスマトラのアチェと違い、スパイスはほぼなし、フレッシュハーブあってこそなのがマナド料理。
改めて「インドネシア料理」なんて、大きく括れるものはないなと思うくらい、違います。
ということで、まず、その背景からちょっとみてみましょう。
マナドは、スラウェシの北端。
インド洋を通ってやってくる西側世界の風を真っ先に受ける位置のアチェに対し、
マナドはインドネシアの東西の幅の真ん中あたり、そしてフィリピンのすぐ近くという位置です。
交易という観点で見ても、大航海時代以前からアラブや南アジアの貿易商との接点があったアチェと異なり、
マナドは、スペインがクローブをテルナテからマニラに運ぶ際に、中継地として活用されたという経緯があります。
スパイスの活用術をもたらしたアラブ・南アジアに対し、スペインがもたらしたのは唐辛子とトマト。
南米原産の植物を持ちこんだスペイン。
マナドにはかなり早い時期にこのふたつの植物が入ってきていたのではないかという気がします。
(あとインゲン豆も結構早かったんじゃない?とちょっと思ってます)
もちろん今では、唐辛子とトマト(インゲン豆も)はインドネシア津々浦々まで浸透しているので、
よその地域と比べてマナドがことのほかどう、という文献や根拠があるわけではないのですが。
なんとなく、印象です。
なんにせよ、唐辛子もトマトも、マナド料理には欠かせません。
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| 市場の表示 Manado_North Sulawesi 2025 |
マナドの市場に行くと、大きく「BARITO」という表示がされています。
BAはBAwang /バワン=シャロットやニンニク、ネギ類
RIはRIca /リチャ=唐辛子(インドネシア語ではチャバイ/Cabaiですが、マナドではリチャと呼ばれます)
TOはTOmat /トマト。
マナドの料理の必需品であるこれらの売り場を示しているのです。
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| マナドの市場 Manado_North Sulawesi 2025 |
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| マナドの市場 Manado_North Sulawesi 2025 |
山と積まれた唐辛子、トマト。見えますか。
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| ダブダブ Manado_North Sulawesi 2025 |
マナドごはんといえば、のダブダブ/Dabu-dabuは、まさにBARITOを使ったシンプルなサンバル。
トマトと唐辛子とシャロットを刻んで塩とライムを絞ったものです。さっぱり辛くて、海の幸などにぴったり。
市場に戻りますが、マナドの市場は楽しいです。野菜の種類も豊富で、そしてとにかくよく育っています。
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| マナドの市場 Manado_North Sulawesi 2025 |
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| マナドの市場 Manado_North Sulawesi 2025 |
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| マナドの市場 Manado_North Sulawesi 2025 |
どっしり大きなパパイヤ、つやつやのアボカド、山と積まれたかぼちゃに、どんだけ大きいの?という筍。
スラウェシ島の他の地域と異なり、マナドを含む北部とさらに北の島々には火山が連なっており、
その火山性の肥沃な土壌が、農業を通じて豊かな恵みをもたらしています。
そのため、オランダ植民地時代のマナドは、コーヒーを中心とした農作物の栽培と集積地とされていました。
そしてその時に、農園運営・管理要員として、オランダが積極的に登用したのが海南人でした。
オランダは、労働力として、監督者として、中国大陸からの移民を活用したと言われますが、
特に海南人は、農業技術と農園運営能力に秀でるとされていたのだそうです。
後年、コーヒーの生産量が減少したのちには、北スラウェシのこの地域はココヤシ栽培が中心となり、
海南人の子孫たちはこのココヤシ栽培において特権を付与され、コプラ事業で財をなしたのだと言われます。
ちなみに、マナドのココヤシは、すごいです。
飛行機の窓から見下ろすと、眼下一面にココヤシだったりします。
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| ココヤシ Manado_North Sulawesi 2025 |
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| ココヤシ Manado_North Sulawesi 2025 |
私的飛行機の離着陸の時に見える景色にココヤシが多い地域3トップというのがあり、
中部ジャワ南部のジョグジャカルタ、西スマトラのパダン、そして北スラウェシのマナドなのです。
ジョグジャカルタのココヤシは、椰子糖の生産などに当てられるのでしょう。
西スマトラのココヤシは料理にも活用されるココナッツミルクになります。
マナドのココヤシは、ココナッツオイルを生産する原料としてのコプラです。
換金作物としてのココヤシ、ココナッツなので、砂糖やミルクなどへの転用は基本しない印象。
マナドの料理にはココナッツミルクを使ったものはあまりありませんし、
市場に並んでいた立派なパームシュガーは、アレン椰子から作られたものなのだそうです。
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| アレン椰子糖 Manado_North Sulawesi 2025 |
ココヤシからは作らないの?と尋ねたところ「砂糖はアレンでしょ」と言い切られました。
徹底してるな、と感心しました。
山も近いマナドなので、植生としてアレンもたくさん生えているというもあるのだとは思いますが。
さて、海南人です。
インドネシア華人のルーツで、広州、福建、客家、潮州はある程度は認識しているのですが、
海南系華人について詳しく見聞きすることは稀です。
わたしの中で、海南華人のイメージは「料理上手」です。
イギリス東インド会社は、航海における調理担当に海南人を登用していたという話を聞いたことがあるんです。
まあ、これは俗説かもしれませんが、信じたくもなります。だって、マナドのごはんがとても美味しいから。
残念ながら、わたしは海南の食文化がどういうものかを知らないのですが、
それでも、マナドで出会う華人由来の料理たちはどれも魅力的です。
一番好きなのは、粥。
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| ブブル・マナド Manado_North Sulawesi 2025 |
ブブル・マナド/Bubur Manadoは、かぼちゃの溶けた黄色いスープが優しくて美味しい粥。
さらっとしていて、メインは米ではなく、野菜なのではないかという気がします。
かぼちゃの他、トウモロコシ、そして、青菜もたっぷり入っていて、朝ごはんにぴったりです。
それから、ビアポン/Biapong。
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| ビアポン Manado_North Sulawesi 2025 |
ジャワだとバピア/Bakpiaと呼ばれる、いわゆる「肉まん」「あんまん」。マナドだとビアポンと呼ばれます。
肉は豚肉、餡は豆沙。ふわふわふかふかの蒸し立てのを、これまた朝ごはんに。
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| ビアポン Manado_North Sulawesi 2025 |
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| ビアポン Manado_North Sulawesi 2025 |
夜でも賑わう茶店で売られていたのも魅力的でした。
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| ビアポン Manado_North Sulawesi 2025 |
朝ビアポンしたお店では、素敵なピア/Piaも売っていました。買って戻って、お茶と一緒に。
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| ピア Manado_North Sulawesi 2025 |
こういう「甘いんだけどラード」という餡、わたしの生活圏ではなかなか出会えないので嬉しいです。
そして、もちろん、麺もあります。
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| ミー・チャカラン Manado_North Sulawesi 2025 |
ブブル・マナドに並ぶマナド名物、ミー・チャカラン/Mie Cakalang。
チャカラン=カツオ。鰹出汁の麺です。
汁麺は(インドネシアどこでもその傾向がありますが)、麺がやわっとしすぎている場合もよくあるのですが、
それでも、このスープは染み入ります。鰹節の国の人だもの。
もちろん、動物性の出汁も。
ミー・バ/Mie Ba。豚麺です。
ニンニクがしっかり効いたスープが素晴らしかったです。野菜もしゃきしゃき。
もちろん、こういうチャイニーズな料理の他にも、美味しいものはもりだくさんなマナド。
でも、このまま続けるのにはちょっともう長くなりすぎましたね。
次は、ひたすら「美味しかった」を羅列していく回にしましょう(と、突然終わる、笑)。
なるべく早く、次回も更新します。

















































