ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017 |
インドネシアのケチャップは、黒いのです。
インドネシアでケチャップ/Kecapと言ったら、それは主にソイソースのことです。
トマトケチャップのことではありません。
ちなみに、トマトケチャップのことは、サオス・トマト/Saos Tomat、つまりトマトソースと言います。
じゃあ、トマトソースは?まあだいたい、パスタソースのトマト味、みたいな感じで(笑)。
で、ケチャップ。
ケチャップ各種 Bandung_West Java, 2017 |
インドネシアの主なケチャップは、
ケチャップ・マニス/Kecap Manis:甘いソイソース
ケチャップ・マニス(もしくはアシン)・スダン/Kecap Manis (Asin) Sedang:甘さマイルドなソイソース
ケチャップ・アシン/Kecap Asin:塩味のソイソース
ケチャップ・プダス/Kecap Pedas:ケチャップ・マニスに唐辛子が入った甘い×辛いのソイソース
ケチャップ・イカン/Kecap Ikan:魚醤
という感じになります。
そもそも、ケチャップの発祥は中国なんですね。ルーツをたどれば日本の醤油と同じなのです。
どちらもソイソース、にも関わらず、元になったのはいわゆる魚醤のようなものだったのだと言われています。
その魚醤をKechiap、Kechop、Koechiapなどと呼んでいたのが、現在のケチャップの語源になったのだとか。
とは言え、各地に伝播しているのは大豆原料のソースなので、
中国でまず、呼称はそのままで素材の変化が起きて、そこから各地に伝わったのでしょう。
東南アジアに伝わったものが、マレー地域でKecapもしくはKicapと呼ばれるようになったのだそうです。
その後、この東南アジアのケチャップがヨーロッパに伝わり、
魚介類やキノコを使ったソースを「ケチャップ」と呼ぶようになり、
そしてさらにその後、北米にて「トマトケチャップ」が生まれたのだそうです。
そのトマトケチャップが中国でも消費されるようになった時、ケチャップの世界一周は完了したのですね(笑)。
ちなみに、Kecapはインドネシアですが、Kicapはというとマレーでの言い方。
Kicapも大豆原料で、キチャップ・ルマッ/Kicap Lemakとキチャップ・チャイル/Kicap Cairがあり、
ルマッは恐らくインドネシアのセダンに、チャイルはインドネシアのアシンにあたるのだと思われます。
(実際に味わったことがないのですが)
話しを戻して、インドネシアのケチャップ。
ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017 |
まずケチャップ・マニス。使用頻度が一番高い、そして一番愛されているのがこのタイプだと思います。
原料は、黒大豆、パームシュガー、塩。
(後日追記:黒大豆とは限らないようです。主流は黒大豆で、いくつかのメーカーは黄大豆を使用しています)
茹でた大豆を数日発酵させ、塩と水を加えてさらに発酵させ、加熱。その際にパームシュガーを加える。
ここで、レモングラスだったりコブミカンの葉だったりで風味付けをする場合が多いそう。
トロッと粘度の高い、まず甘さが先にきてその後に塩気が来るようなケチャップ・マニス。
旨味とコクが素晴らしく、多種多様の料理で使われます。
煮込み料理であったり、ピーナッツソースに垂らしたり、輪切り唐辛子と合わせて焼き魚のタレにしたり。
面白いのは、インドネシアを旅行している西洋人でこのケチャップ・マニスが好きな人が結構多いこと。
離島の宿などでみんなで食卓を囲むと、彼らが順番にケチャップ・マニスのボトルを回していって、
銘々のごはんに「たらーり」とかけたりするのです。
そんなケチャップ・マニス、様々なブランドがあるのですが、
その中でも(わたしの周辺では)一番人気があるのがこの「Bango」。鳥が目を引くボトルです。
家のガレージで作っていたという家内制手工業から始まったこのメーカー(現在はユニリーバ傘下)、
国立大学と協力し、特選品種の黒大豆を使っていることから独特の風味を持つのだといいます。
有名になっても、今でもケチャップ・マニス一本で勝負している会社です。
続いて、スダン。
どちらも、チレボン(西ジャワ州)の同じメーカーから出ているのですが、
赤い方が、ケチャップ・マニス・スダン。緑の方が、ケチャップ・アシン・スダン。
スダン/Sedangというのが「中程」や「中くらいの」という意味を持つのですが、
これはつまり中くらいのマニス(甘い)と、中くらいのアシン(塩辛い)ということ?
そこまで細かな区分けが必要なのか、というのも含めて面白くて買ってみました。
ところで、このアシン・スダンのケチャップ、実はすごいぶくぶくしてたのです。
2枚目の写真(俯瞰の)を見るとお分かりいただけるかもしれないのですが、
密封されていたボトルの口を切って閉じておいたら、中でどんどん泡が湧いてきて。
このあと、口を開けたら吹き出しました、ぶしゅーって。びっくり。
ボトルの中で発酵がすすんでいたのでしょうか?マニス・スダンの方はそんなことなかったのに。
そして、次に、ケチャップ・アシン。
地場のバンドンブランドのものを買ってみました。
ケチャップ・アシンはマニスと違い、使用しているのは黄大豆です。
基本的に日本の醤油とほとんど同じだと思っていいんじゃないかと思います。
インドネシアに塩っぱいケチャップを伝えたのは客家のひとたちだという話しを聞いたことがあります。
客家のケチャップ・アシンは黒大豆を使い、塩分濃度がかなり濃いものなのだとか。
バンドンの↑のケチャップ・アシンは黄大豆ですが、
このラベルからも分かる通り、広く一般的に好まれているケチャップ・マニスに対し、
ケチャップ・アシンは基本的に華人の食卓で使われるもの、というイメージです。
というか、いったいどこのタイミングで甘いソイソースというのが誕生したのでしょうね?
同じ東南アジアで、例えばベトナムの醤油は、加糖されていない塩気と旨味の調味料ですよね。
それが、マレーに来たら加糖され、インドネシアに来たら更に砂糖が増やされた、ということでしょうか。
なんでそこで砂糖を加えるに至ったのか、どこかで調べられたら調べてみます。
さてさて、ではでは、味見をしてみましょう。
きれいに真ん中に均一に出せないのが残念な感じですが(笑)。
左上:ケチャップ・アシン
醤油に近い味ながら、塩気がかなり鋭く尖っていて、日本の醤油のような丸みはない。
左下:ケチャップ・マニス
後味にカラメルを感じるような、コクのある甘さと旨味。
右上:ケチャップ・マニス・スダン
確かにケチャップ・マニスよりは塩気が勝る。なんとなく焦げのようなスモーキーな後味。
右下:ケチャップ・アシン・スダン
確かにケチャップ・マニス・スダンよりもケチャップ・アシンに近い甘みと塩気のバランス。
ぶくぶくした名残がある。
見事にグラデーションでした。スダン2つの立ち位置が面白いですね。
コクではマニスが勝りますが、旨味ではスダンの方が感じやすいような印象です。
植物性のものですので、当然かなりマイルドにはなりますが、オイスターソースにもつながるような味わい。
甘みが減った分、発酵由来の風味が感じやすくなったのかも、という気がします。
甘さの点でも、加えられているのは精製糖ではなく、未精製のパームシュガーなので、
そこに含まれる色んな雑味もまたケチャップの複雑な味わいに含まれているのかもしれません。
さて、そして、ケチャップ・プダス/Kecap Pedas。
「プダス」は「辛い」という意味。つまり、辛いケチャップです。
その名の通り、ケチャップ(マニス)に唐辛子が入っているのです。
先にも書きましたが、インドネシアで焼き魚のタレによく登場するのが、
ケチャップ・マニスに唐辛子(チャベ・ラウィット)を刻んで混ぜ合わせたもの。
その甘いと辛いのバランスが食欲をそそるわけなのですが、
このケチャップ・プダスはそれを製品化したものですね。
こうしてケチャップ各種を広げていたところに、うちのメイドさんと彼女のお姉さんが表れました。
主婦たちの意見を聞いてみようと、
まず「ケチャップ・プダスは何に使う?」と質問。
しばらく悩んでから、揚げ豆腐につけて食べるかな、という返答を得ました。
つまり、あまり日常的には使ってないということかな。
続いて「ケチャップ・アシンはどう?」と聞いてみると、
まず使わない。と言い切ってから、またしばらく考えて「ミー・コチョック?」とのこと。
ミー・コチョック/Mie Kocokはバンドン名物の牛スジを使った麺。
インドネシアの汁物は、テーブルの上の調味料で自分好みに味を整えてから頂く場合がよくあります。
たぶん、そいういう意味での「使う」だったのでしょうね。
ちなみに、同じ用途にケチャップ・マニスを使う人も、たくさんいます。
で、最後に「じゃあ、ケチャップ・マニスはどう使う?」とたずねたところ、
「なんにでも使えるわよ!!」と声を揃えて即答でした。
炒め物にも、煮物にも、タレにも、なんにでも使えるし、合うんだから!と。
愛されていますね、ケチャップ・マニス。
余談ですが、わたしは日本のカレーを作る時の隠し味にケチャップ・マニスを使います。
味に深みがでるんです。
さてそれで、最後ケチャップ・イカン/Kecap Ikanですが。
これも魚醤だしナンプラー代わりに使おう、と思いわが家では常にストックされているのですが、
表示をみると、スーパーマーケットなどで売られているのはだいたいどこも「タイ製」なんですよね。
つまり、ナンプラー代わりどころか、ナンプラーだった。という。
あと、魚醤であるのに、ボトルデザインが烏賊だったり牡蠣だったりするのも特徴です。紛らわしい。
ということでざっと駆け足のケチャップのご紹介でした。
このケチャップは、バンゴのような有名どころもありますが、ご当地ブランドが数多くあるのも特徴です。
インドネシア各地、特にジャワからスマトラにかけては、ご当地ケチャップ各種あると思います。
そして、各地各ブランドごとに味が違っているのもまた楽しいところ。
地道に買い集めて味比べとか、できたらいいなあ。
最後に、今回のお気に入り。
このラベル。水牛に乗っている人。かわいいです!
茹でた大豆を数日発酵させ、塩と水を加えてさらに発酵させ、加熱。その際にパームシュガーを加える。
ここで、レモングラスだったりコブミカンの葉だったりで風味付けをする場合が多いそう。
トロッと粘度の高い、まず甘さが先にきてその後に塩気が来るようなケチャップ・マニス。
旨味とコクが素晴らしく、多種多様の料理で使われます。
煮込み料理であったり、ピーナッツソースに垂らしたり、輪切り唐辛子と合わせて焼き魚のタレにしたり。
面白いのは、インドネシアを旅行している西洋人でこのケチャップ・マニスが好きな人が結構多いこと。
離島の宿などでみんなで食卓を囲むと、彼らが順番にケチャップ・マニスのボトルを回していって、
銘々のごはんに「たらーり」とかけたりするのです。
そんなケチャップ・マニス、様々なブランドがあるのですが、
その中でも(わたしの周辺では)一番人気があるのがこの「Bango」。鳥が目を引くボトルです。
家のガレージで作っていたという家内制手工業から始まったこのメーカー(現在はユニリーバ傘下)、
国立大学と協力し、特選品種の黒大豆を使っていることから独特の風味を持つのだといいます。
有名になっても、今でもケチャップ・マニス一本で勝負している会社です。
ケチャップ・マニス&アシン・スダン Bandung_West Java, 2017 |
続いて、スダン。
どちらも、チレボン(西ジャワ州)の同じメーカーから出ているのですが、
赤い方が、ケチャップ・マニス・スダン。緑の方が、ケチャップ・アシン・スダン。
スダン/Sedangというのが「中程」や「中くらいの」という意味を持つのですが、
これはつまり中くらいのマニス(甘い)と、中くらいのアシン(塩辛い)ということ?
そこまで細かな区分けが必要なのか、というのも含めて面白くて買ってみました。
ところで、このアシン・スダンのケチャップ、実はすごいぶくぶくしてたのです。
2枚目の写真(俯瞰の)を見るとお分かりいただけるかもしれないのですが、
密封されていたボトルの口を切って閉じておいたら、中でどんどん泡が湧いてきて。
このあと、口を開けたら吹き出しました、ぶしゅーって。びっくり。
ボトルの中で発酵がすすんでいたのでしょうか?マニス・スダンの方はそんなことなかったのに。
そして、次に、ケチャップ・アシン。
ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2017 |
地場のバンドンブランドのものを買ってみました。
ケチャップ・アシンはマニスと違い、使用しているのは黄大豆です。
基本的に日本の醤油とほとんど同じだと思っていいんじゃないかと思います。
インドネシアに塩っぱいケチャップを伝えたのは客家のひとたちだという話しを聞いたことがあります。
客家のケチャップ・アシンは黒大豆を使い、塩分濃度がかなり濃いものなのだとか。
バンドンの↑のケチャップ・アシンは黄大豆ですが、
このラベルからも分かる通り、広く一般的に好まれているケチャップ・マニスに対し、
ケチャップ・アシンは基本的に華人の食卓で使われるもの、というイメージです。
というか、いったいどこのタイミングで甘いソイソースというのが誕生したのでしょうね?
同じ東南アジアで、例えばベトナムの醤油は、加糖されていない塩気と旨味の調味料ですよね。
それが、マレーに来たら加糖され、インドネシアに来たら更に砂糖が増やされた、ということでしょうか。
なんでそこで砂糖を加えるに至ったのか、どこかで調べられたら調べてみます。
さてさて、ではでは、味見をしてみましょう。
ケチャップ Bandung_West Java, 2017 |
きれいに真ん中に均一に出せないのが残念な感じですが(笑)。
左上:ケチャップ・アシン
醤油に近い味ながら、塩気がかなり鋭く尖っていて、日本の醤油のような丸みはない。
左下:ケチャップ・マニス
後味にカラメルを感じるような、コクのある甘さと旨味。
右上:ケチャップ・マニス・スダン
確かにケチャップ・マニスよりは塩気が勝る。なんとなく焦げのようなスモーキーな後味。
右下:ケチャップ・アシン・スダン
確かにケチャップ・マニス・スダンよりもケチャップ・アシンに近い甘みと塩気のバランス。
ぶくぶくした名残がある。
見事にグラデーションでした。スダン2つの立ち位置が面白いですね。
コクではマニスが勝りますが、旨味ではスダンの方が感じやすいような印象です。
植物性のものですので、当然かなりマイルドにはなりますが、オイスターソースにもつながるような味わい。
甘みが減った分、発酵由来の風味が感じやすくなったのかも、という気がします。
甘さの点でも、加えられているのは精製糖ではなく、未精製のパームシュガーなので、
そこに含まれる色んな雑味もまたケチャップの複雑な味わいに含まれているのかもしれません。
さて、そして、ケチャップ・プダス/Kecap Pedas。
ケチャップ・プダス Bandung_West Java, 2017 |
「プダス」は「辛い」という意味。つまり、辛いケチャップです。
その名の通り、ケチャップ(マニス)に唐辛子が入っているのです。
ケチャップ・プダス Bandung_West Java, 2017 |
先にも書きましたが、インドネシアで焼き魚のタレによく登場するのが、
ケチャップ・マニスに唐辛子(チャベ・ラウィット)を刻んで混ぜ合わせたもの。
その甘いと辛いのバランスが食欲をそそるわけなのですが、
このケチャップ・プダスはそれを製品化したものですね。
こうしてケチャップ各種を広げていたところに、うちのメイドさんと彼女のお姉さんが表れました。
主婦たちの意見を聞いてみようと、
まず「ケチャップ・プダスは何に使う?」と質問。
しばらく悩んでから、揚げ豆腐につけて食べるかな、という返答を得ました。
つまり、あまり日常的には使ってないということかな。
続いて「ケチャップ・アシンはどう?」と聞いてみると、
まず使わない。と言い切ってから、またしばらく考えて「ミー・コチョック?」とのこと。
ミー・コチョック/Mie Kocokはバンドン名物の牛スジを使った麺。
ミー・コチョック Bandung_West Java, 2017 |
インドネシアの汁物は、テーブルの上の調味料で自分好みに味を整えてから頂く場合がよくあります。
たぶん、そいういう意味での「使う」だったのでしょうね。
ちなみに、同じ用途にケチャップ・マニスを使う人も、たくさんいます。
で、最後に「じゃあ、ケチャップ・マニスはどう使う?」とたずねたところ、
「なんにでも使えるわよ!!」と声を揃えて即答でした。
炒め物にも、煮物にも、タレにも、なんにでも使えるし、合うんだから!と。
愛されていますね、ケチャップ・マニス。
余談ですが、わたしは日本のカレーを作る時の隠し味にケチャップ・マニスを使います。
味に深みがでるんです。
さてそれで、最後ケチャップ・イカン/Kecap Ikanですが。
ケチャップ・イカン Bandung_West Java, 2017 |
これも魚醤だしナンプラー代わりに使おう、と思いわが家では常にストックされているのですが、
表示をみると、スーパーマーケットなどで売られているのはだいたいどこも「タイ製」なんですよね。
つまり、ナンプラー代わりどころか、ナンプラーだった。という。
あと、魚醤であるのに、ボトルデザインが烏賊だったり牡蠣だったりするのも特徴です。紛らわしい。
ということでざっと駆け足のケチャップのご紹介でした。
このケチャップは、バンゴのような有名どころもありますが、ご当地ブランドが数多くあるのも特徴です。
インドネシア各地、特にジャワからスマトラにかけては、ご当地ケチャップ各種あると思います。
そして、各地各ブランドごとに味が違っているのもまた楽しいところ。
地道に買い集めて味比べとか、できたらいいなあ。
最後に、今回のお気に入り。
ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2017 |
このラベル。水牛に乗っている人。かわいいです!
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