2017/10/26

アボン・イカン/Abon Ikan

アボン・イカン Bandung_West Java, 2017

毎月レシピの連載をさせていただいている「+62」。
今月の掲載レシピは、
バンガイ諸島で、お魚のスープの作り方を教えてくれた町のお母さんが、口頭で教えてくれたものを、
自宅で簡単に作れるようにとアレンジした、復習レシピです。

リンクはこちら → 西宮奈央さんのMASAK KIRA-KIRA

アボン・イカン/Abon Ikanという、香辛料を使った魚の田麩のようなもの。
あったか白ご飯に乗せてわしわし食べる魚フレークは、炒め物やスープの旨味出汁としても応用できます。
スラウェシの街の大学で勉強するために下宿をしている息子さんに、
魚が安く沢山手に入ったらたくさん作って送ってあげるのだと、お母さんは話していました。
「都会の魚は味が違うって言うのよ。これだったらね、日持ちするでしょう?息子、喜ぶのよ」
と、大変だと言いつつ、全く苦にしてないお母さん。
ちなみに、都会の魚といえども、スラウェシの魚は街であっても美味しいんですけどね。
バンガイのお魚はそれを上回る素晴らしさで、そしてそれが、お母さんの自慢でもありました。

お母さんの説明は口頭で、
というかそもそも、家庭料理に分量とかの詳細を求めることも難しいのですが、
それを帰って来てから、指示通りの材料で美味しいバランスはどのくらいかを探りました。

アボン・イカン Bandung_West Java, 2017

使う魚は、作りやすく、サバ缶で。
というのが、一度鮮魚で試した際、その小骨を取り除くのが面倒で面倒で。缶詰なら安心です。
香辛料に加えてのレモングラスとライムは、頬の内側がきゅっとなるような風味を足してくれます。

ということで、エキゾチックな風味のアボン・イカン、お試しください。

2017/10/22

バリの食卓④


サンバル作り Bali, 2017

さて、バリの食卓、続いてはサンバルについて。

サンバルは、唐辛子とスパイスやブンブたちを合わせたタレのようなもの。
インドネシアの食卓においてサンバルは欠かせないものではありますが、
それでいて「サンバルって」と一概に括って語るのは難しいほどに、色々あります。
もちろん、いずれも美味しいのですが(笑)。
地域差があり、料理との組み合わせがあり、市販のボトル入りサンバルがあり。
サンバル、と言った時にひとびとが思い浮かべるサンバルの様は、みんな違うかもしれません。

そんな中で、バリを代表するサンバルと言えば、まずはやっぱり、サンバル・マタ/Sambal Matah。

サンバル・マタ Bali, 2017

材料を刻んで、熱した油をかけるだけのシンプルなサンバル。でも、病み付きになります。

まずは、バワン・メラを薄切りに。そして、唐辛子も小口切りに。

さて、そこで唐辛子問題。

市場の唐辛子 Bali, 2017

バリ料理というのは、わたしの主観では、インドネシアの中でもかなり辛い料理だと思うのです。
わたし自身、決して辛いものが苦手なわけではないのですが、それでもちょっとひるむくらい。
なので、お父さんに「辛いの大丈夫?」と聞かれた時には「ほどほど」と答えました。
「大丈夫!」と言ってしまって、バリ的スタンダードで出されたら食べられないかもしれないと思って。

なので、サンバルを含め、この時の料理にはチャベ・ブサールをよく使ってもらっています。
基本的にチャベ・ラウィットを使いたいところ、辛さがマイルドなのに一部置き換えてもらっているんですね。

ということで、このサンバル・マタでも、一部をチャベ・ブサールで。
(自宅で作る際には、自分の好みの辛さに調整してしまいます)

サンバル・マタ Bali, 2017

そして、レモングラスもザクザクと小口切りに。

サンバル・マタ Bali, 2017

家庭によっては、ここでコブミカンの葉や、トーチジンジャーの花を刻んだものを加える場合もあります。

サンバル・マタ Bali, 2017

刻んだ材料に、塩を適量、砂糖とトラシを一つまみ、加えます。
で、油を熱します。
使う油は、出来ればココナッツオイルを、とお父さん。
インドネシアで一般的なパームオイルでももちろん作れるのですが、風味が劣るそうです。

材料をひとかけら、油に落として「ちゅん!」という音がしたら、十分熱せられた合図。
さあ、材料にかけますよ。

サンバル・マタ Bali, 2017

じゅーーーー!

豪快。

サンバル・マタ Bali, 2017

生の材料に熱々の油を注ぐことで程よくしんなりするんですね。
歯ごたえを残しつつ、油でまとめるのが美味しさの秘訣。

サンバル・マタ Bali, 2017

これだけでもご飯が進みます。
レモングラスの爽やかさが、例えばチキンのような肉料理にもちょうどいい風味を加えてくれて好バランス。

ちなみに、お父さんちの家族仕様のサンバル・マタは、こんな感じでした。

サンバル・マタ Bali, 2017

全てチャベ・ラウィットの、かっらーーーいサンバル・マタ。でも、美味しいのです、確かに。

このサンバル・マタ試食中、後だし風に出されたサンバルがありました。
それが、サンバル・バワン/Sambal Bawang。思わずのけぞる美味しさ。

サンバル・バワン Bali, 2017

バワン/Bawangは球根野菜を指すインドネシア語。
タマネギ=バワン・ボンバイ/Bawang Bombai、シャロット=バワン・メラ/Bawang Merah、
そして、ニンニク=バワン・プティ/Bawang Putihに唐辛子です。
ここで使う唐辛子は、辛いチャベ・ラウィットじゃないと美味しくないのだとお父さん。

作り方は簡単、全てを刻んで炒めるだけです。

まずはタマネギ。

サンバル・バワン Bali, 2017

ここで、油の量にひるんではいけません。

どうしても、油控えめにしてしまいたくなるのが、日本人の心理ではあるのですが、
油も「味」なんですよね。割り切ってたっぷり使った方が、仕上がりは美味しくなります。
なので、タマネギを炒め始める時には、ちょっと泳ぐくらいの量の油を使ってしまうのです。

しんなりして来たところに、バワン・メラとニンニクを加えます。

サンバル・バワン Bali, 2017

飴色に近づいたところで、刻んだ唐辛子、塩、そして砂糖とトラシを一つまみずつ。
全体がしんなりしたら出来上がりです。

サンバル・バワン Bali, 2017

唐辛子の辛さに負けない、タマネギとシャロットの甘さと風味。隠し味のトラシが旨味を加えています。

そのままごはんのお供にするのはもちろん、和え物などにも使えます。
あと、家で試したのですが、スープなどに一さじ加えても美味しいんです。
飴色タマネギとニンニクとシャロットですからね、あれこれ応用できる、使いでのあるサンバルです。

お父さんのところでは、このサンバル・バワンを使って簡単ウラップ/Urapを作ってもらいました。

ウラップ(バリではウラッブ/Urabと呼ぶことが多いようです)は、ジャワでもよく食べられる温野菜料理。
茹でた野菜にココナッツと調味料を混ぜたものになります。

ウラップ Bali, 2017

この日は、茹でたキャッサバの葉とモヤシ。
ココナッツは、火で炙ってからすり下ろすのが美味しさの秘密だそう。
香りがよくなるんですって。

そこに、さっきのサンバル・バワンを適量加えて全体をよく混ぜます。

ウラップ Bali, 2017

このボウルいっぱい食べられる気がするほどの美味しさ。

バリの食卓の最後に、わたしがどうしても食べてみたかった野菜料理をもう一つ。

ジュクット・アレス Bali, 2017

ジュクット・アレス/Jukut Aresというこのスープ。バナナの茎なんです。

バナナの実はもちろん、花は食べることがありますし、葉っぱは料理を包むなどでよく使いますが、茎は珍しい。
ジャワなどでは、家畜の餌として用いる程度で食卓にあがることはあまりないように思います。
お父さんに「どうしても食べたい!」とお願いしたところ「ああ、ぼくの好物だ」と返って来ました。

ジュクット・アレス Bali, 2017

アレスというのがバナナの茎を意味するそうです。
バナナも、どんなバナナでも使えるわけではなく、ピサン・バトゥ/Pisang Batuの茎がいいのだとか。

ピサン・バトゥはジャワでもありますが、種のある、野生種に近い品種です。
薬効があるとかで、重宝がられているところもありますが、市場などでの取り扱いも少なく、
珍しい品種と言えるピサン・バトゥ。その茎が、この料理に向いているのだそう。
他の品種だと、調理しているうちに黒くなってくる(アクでしょうね)のだとお父さんはいいます。

ジュクット・アレス Bali, 2017

食物繊維が豊富で、黒髪効果もあるというこのアレス。
内側の柔らかい部分を、薄くスライスし、崩しながら塩をして、しんなりするまで置いておきます。

ジュクット・アレス Bali, 2017

しなっとしたら、水ですすいで、後はスープにするだけ。使うのは、地鶏でとっておいたスープ。

味付けは当然、ブンブ・バリで、手順は魚のスープと同じです。
アレスが柔らかくなるまでじっくり煮込んで、塩で味を整えたら出来上がり。

ジュクット・アレス Bali, 2017

おかわりしたい美味しさ。

これは、自宅で作ってみようにも、難しいですね。アレスが手に入らない。

ブンブ・バリ Bali, 2017

ということで、バリの食卓でした。
基本のブンブ・バリさえ作ってしまえば、あれもこれも色々作れるとわかったのが収穫。
追って、家で復習してみますね。

お料理上手のお父さんと、お母さんに出会えたのも幸いのバリの旅でした。
気軽に行ける土地だけに、また遊びに行って新しい料理を教わって来ます。





2017/10/17

バリの食卓③

豚サテ Bali, 2017

ということで、前回は魚を作った料理のご紹介でしたが、今回は肉を使った料理たちを。

まずは、ブンブ・バリを使った鶏料理から。
アヤム・ゴレン・ブンブ・バリ/Ayam Goreng Bumbu Bali。そのまんまのネーミングですが。
アヤム=鶏、ゴレン=揚げ、つまりブンブ・バリを使った鶏の唐揚げみたいな感じです。

一口大に切った鶏にざっと塩で下味をつけたら、まずは揚げてしまいます。

アヤム・ゴレン・ブンブ・バリ Bali, 2017

そして、揚げ上がったらいったん油を切っておいて、ブンブ・バリの準備です。

アヤム・ゴレン・ブンブ・バリ Bali, 2017

残った揚げ油適量にブンブを入れて炒め、香りが立って来たら水を加えて塩で味を整えます。

アヤム・ゴレン・ブンブ・バリ Bali, 2017

そこに、鶏を戻してふつふつと煮込みます。

だったら、揚げなくてもいいんじゃない?とわたしは思うのですが、
お父さんは、先に揚げることで鶏の味が逃げないんだと言います。
インドネシアでは、肉にしろ魚にしろ、しっかり加熱することが好まれるので、
そういう好みが反映されているのかもしれません。

アヤム・ゴレン・ブンブ・バリ Bali, 2017

強めの火力で一気に水分を飛ばしたら、できあがり。

アヤム・ゴレン・ブンブ・バリ Bali, 2017

熱々のうちが美味しい、旨味から揚げ。

同じようにブンブ・バリを使った鶏料理というと、バリ名物のアヤム・ベトゥトゥ/Ayam Betutuがあります。
バリ北部の町、ギリマヌクの名物料理らしく、
ギリマヌクを通った際に、ある通りでは右も左もアヤム・ベトゥトゥ屋ばかりで驚きました。

そんなアヤム・ベトゥトゥも作ってもらいました。
お父さんの家についた時には、既にこういう状態で蒸されていたのですが…。

アヤム・ベトゥトゥ Bali, 2017

地鶏のお腹の中に塩を加えたブンブ・バリとサラムの葉とコブミカンの葉を入れて閉じて蒸したもの。
外側にもブンブは塗っていますね。圧力鍋を使った方が柔らかく美味しくできるよ、とお父さん。
お尻を縛られている鶏がかわいい(?)です。

で、お店で食べるアヤム・ベトゥトゥは汁っぽいものもよくあるけどもあれは違う!とお父さん。
スープとして別途飲むのはいいけども、鶏はこの後ローストするのが美味しいんだ、と言います。

ということで。

アヤム・ベトゥトゥ Bali, 2017

魚の時と同じく、椰子殻を使って外側を炙ります。

同じブンブ、同じ素材(鶏)。
でも、アヤム・ゴレンとアヤム・ベトゥトゥはちゃんと味が違うんですよね。
油も調味料として生きるのが揚げもの。そして、蒸して焼いた場合はジューシーで且つスモーキー。
どちらもバリらしい味わいの鶏料理です。

そしてもう一つ、バリならではの、豚のサテ

これは、お父さんをして「何を作っても旨い」と言わしめるお母さん(奥さん)の担当。
西ジャワ出身のお母さん、西ジャワ地方のスンダ料理はもとより、西スマトラのパダン料理、
そして当然のことながらバリの料理各種をこなして、ケータリングなどを受けたりもしている料理上手。

豚サテ Bali, 2017

インドネシアは、その大多数がイスラム教徒であるため、豚を食べる機会というのは限られます。
特に、人口が一番多いジャワ島、それに次ぐスマトラ島(一部を除く)に多くイスラム教徒が暮らすため、
イメージとして豚料理というのはとてもマイナーな印象を与えるかもしれません。
加えて、インドネシア国内で出版されているインドネシア人による料理本では、
豚を使ったレシピというのはほとんど目にすることはなく、そのマイナー感を一層強めています。
著者自身が豚を食べられないというケースも多いでしょうし、著者自身は問題なくとも、一般に配慮した際に、
禁忌とされる食材を取り上げることを避け、言及せずにおくという場合もあるのでしょう。
とはいえ、ヒンドゥー教徒が多くいるバリを始め、他のキリスト教徒の多い地域など、
豚を料理して食す地域は、当然ながらインドネシアにも各地あり、
その土地の食文化を反映させているものであるそれらを、なかたったことにしてしまうというのは、
とてももったいないと思うのです。

ということで、せっかくなので、バリらしく、豚のサテをリクエストしたのでした。

ソースの材料をばばばばっと。

ガランガル、生姜、バワン・メラ、ニンニク、唐辛子(大、小)、塩、コリアンダーシード、クミンシード。
を潰して炒め、香りが出たところで水分を適量足す。
タマリンドを水で揉んで酸味を出したもの(又はトマト)、と最後にパームシュガーを加える。
という手順の、タマリンドを加えたところで、適当な大きさに切っておいた豚肉を加えて煮詰めていきます。

豚サテ Bali, 2017

この、スパイスの中に入っているクミンシードですが、
もしかしたらこれは、バリのオリジナルというよりも、
西スマトラの料理などをこなすお母さんのアレンジかもしれません。

今回は脂身も十分にある豚肉を使っているので、ソースの材料は上記のままですが、
もし脂分が足りない場合は、キャンドルナッツを潰したものをブンブと一緒に加えてコクを出すといいそうです。

ふつふつといい具合に煮えているところに、パームシュガー。

アレン砂糖 Bali, 2017

これは、お母さんの地元ので採れたアレン砂糖だそう。
西ジャワはパームシュガーというとアレン砂糖が多いんですよね。わたしも好きです。

この砂糖を溶けやすいように刻んで、お鍋に加えます。

豚サテ Bali, 2017

コク増し。

豚サテ Bali, 2017

このくらいまで煮詰めます。脂が分離してますよね。

豚サテ Bali, 2017

これを、3〜4切れずつ串にさしていきます。

で、後はまたしても椰子殻の出番。
表面がカリッとなるくらいまで焼きます。

豚サテ Bali, 2017

ああ、いま見てもお腹がすく。

豚サテ Bali, 2017

先ほどの残っていたタレはタレとしてかけて食べても美味しいです。

このサテ、絶品。
どのスパイスが突出することもなく、調和して風味を出しているのは、さすがお母さん。
その風味に、脂身とパームシュガーでコクと深みが加わって、でも甘すぎず、くどすぎず。
ほんとさすがです、お母さん。
で、表面が乾いて歯ごたえが出るくらいまでの程よい焼き具合は、お父さんの功績。

少し包んでもらって、翌日バンドンまで持ち帰って夫に食べさせたのですが、
これまで食べたバリの豚サテの中で最高、と彼も言っていました。

ということで、次回は、バリらしいサンバルと野菜料理について、です。

お楽しみに。


2017/10/10

バリの食卓②

魚市場 Bali, 2017

ということで、前回のブンブを使ったバリの家庭料理、まずは魚料理から。

魚料理の準備の前に、お父さんと一緒にバリ島南部のジンバランにある魚市場まで、魚を買いに行きました。

ジンバランの漁船たち Bali, 2017

魚市場前の浜には沢山の漁船と小舟が。

入荷した魚 Bali, 2017

決して早朝ではなかったのですが、それでも続々と新たな入荷があり、市場の中もとても賑わっていました。
鮮度はもちろん、規模としても素晴らしい市場でした。

魚市場 Bali, 2017

魚市場 Bali, 2017

魚市場 Bali, 2017

サバに似た青魚と白身の魚を買って、ぶーーーんとお父さんの台所に戻ります。

始めに、ペペス/Pepesの準備から。
ペペスはジャワ島でもよく食べられる、蒸し料理です。

まずは、切り身にした魚に、ブンブ、塩、砂糖、そしてサラムの葉を加えて混ぜ合わせます。
ここでは、サバに似た青魚の方を使います。

ペペス Bali, 2017

全体にブンブと味を行き渡らせたら、バナナの葉で包み、蒸します。

ペペス Bali, 2017

この前にごはんを蒸してたので、米粒がくっついてますが、まあ気にせずに。ふ。

ペペス Bali, 2017

十分にしゅうしゅうと蒸します。
火が通って蒸し上がったら、今度ざっと炙ります。

ペペス Bali, 2017

炙るのに使っているのは、乾燥させた椰子殻。

燃料の椰子殻 Bali, 2017

火が強すぎず、よく持つからいいのだとお父さんは言います。
が、煙もくもくで目にしみます。

ペペス Bali, 2017

もくもくもくもくもくもく。
目をしぱしぱさせながら待つことしばし。
蒸してる段階で火は通ってるので、ここでは水分をある程度飛ばして風味を足すのが目的。

ペペス Bali, 2017

ということで、出来上がり。

ペペス Bali, 2017

蒸すことでブンブの味が染み込んで、炙ることでふんわり〆る感じですね。
サラムの葉の香りをまとって、とても風味の良いごはんのお供です。

続いては、同じ魚を使ってスープ。

バリの伝統料理の中で、スープの存在感は実はかなり希薄です。
インドネシア各地、ご当地スープが色々あるのですが、バリにはそういうタイプの汁物はあまりありません。
バリの伝統料理は信仰と密接に関わっているということは先にも書きましたが、
捧げものとして祭事の中にある時、汁物は持ち運びし難いからでしょう、という話しを聞いたことがあります。
確かにそれも一理あるよな、という気がします。
とはいえ、町の食堂や家庭での食事では小さなお椀に入った汁物が添えられることが多く、
あまり表には出ないものの、控えめで堅実な立ち位置にあるのかなあ、と思えるのがバリの汁物です。

そんなバリの汁物。バリらしい味をもたらすのは、やはりここでもブンブ・バリです。

魚のスープ Bali, 2017

まずは、油でブンブを炒めます。
香りが立って来たら、水を加え、サラムの葉、塩、砂糖を加えて煮立てます。

魚のスープ Bali, 2017

そこに、一口大に切り分けた魚を加え、火が通れば出来上がり。
長時間加熱すると風味が落ちるので、火が通ったらそれ以上だらだら調理しないこと、とお父さん。

魚のスープ Bali, 2017

魚の出汁がよく出た、美味しいスープです。塩をはっきり効かせて味を立たせるのがお父さん流。

さて、もう一品。

ブンブ・バリとは違う(でも似ている、笑)味付けの焼き魚、イカン・バカール/Ikan Bakarを。
魚市場のあるジンバランは、夜になるとイカン・バカールのお店が沢山でることで有名な所。
そんなジンバランのイカン・バカールの味付けは、基本これだよ、とお父さんが言うのがこちら。

ブンブ Bali, 2017

バワン・メラ、ニンニク、ターメリック、塩、砂糖少々。これを水適量でブレンダーにかけます。

イカン・バカール Bali, 2017

そして、そのブンブに開きにした魚を漬けておきます。
ここで、きちんと味がしみるまで寝かせておくのがが肝要、とのこと。
では、その間にソースを。

イカン・バカールのソース Bali, 2017

唐辛子(本当は小粒のしっかり辛いものを使いますがここではマイルドな大きめの唐辛子)とトマトをメインに、
バワン・メラを少々、ニンニクも若干、そして隠し味程度にトラシを、これまたブレンダーで撹拌しておきます。

他のおかずを作るなどしている間に十分寝かせた魚を、また椰子殻で焼きます。

イカン・バカール Bali, 2017

まずは身側を焼き、その後に皮側を。
ざっと火が通ったあたりで、両面に薄くバターを塗ります。魚が乾いてしまわないように、ということだそう。

十分に焼き上がったら、トマトと唐辛子のソースを塗ります。

イカン・バカール Bali, 2017

素材が生のままのソースなので、更に気持ち分だけ炙って、その尖った味をおちつかせます。

イカン・バカール Bali, 2017

下味がしっかり効いて、バターのお陰でふっくらと焼き上がった魚です。

海魚を、日本のようにそのまま塩焼きにする、というのはバリに限らずあまり見かけず、
ブンブであったり、ケチャップ・マニスであったり、何かしらの下味をつけて焼くのがほとんどです。
そして、魚料理で多用されるのがターメリック。臭み消しの効果を狙っているのだそうです。
ブンブ・バリでもターメリックを使うため、バリの家庭料理は総じて黄色っぽい色になりますね。

魚料理 Bali, 2017

ということで、魚料理のずらっと並んだお昼ごはんです。

手順はいたってシンプルなのですが、基本のブンブ・バリが既に風味豊かな合わせ調味料となっているので、
ぱぱっと作ったいずれも、スパイスから生まれる滋味深さがあります。
また、同じブンブを使っているにも関わらず、調理過程が、焼き、蒸し、炒めから汁物、と異なるので、
テーブルに並んだものがみんな同じ味、ということにもならないのです。

バリは稲作の盛んな土地で、当然主食は米になるのですが、
確かに、これらのバリのおかずは白米によく合います。

モモちゃん Bali, 2017

お母さんがかわいがっている猫、モモちゃんのごはんも白米に茹でた魚を混ぜたものでした(笑)。

と、魚料理をみてみた今回。次回は鶏と豚の肉料理をご紹介します。