カトン・ラクサ Singapore, 2018 |
ラクサ、と言うと、どういう料理をイメージしますか?
わたしはずっと、上の写真のような、シンガポールで食べるココナッツミルク+エビ風味のイメージでした。
でも、実は、ラクサってすごく幅の広い食べ物なんですね。
ラクサの発祥は、マラッカ海峡地域であると言われています。
いわゆる、プラナカン料理。ニョニャ料理と呼ばれることもありますね。
英領マレーの時代に中国(主に福建省と周辺)からこの地域に移住してきた人々は、圧倒的に男性が多数。
それゆえ、中国人男性とマレー女性との婚姻が進み、
その家庭において、マレーと中国が融合した生活文化が生み出されていきました。
食に関しては、ココナッツミルクや椰子油の利用し、酸味料としてタマリンドや柑橘類を活用、
そして、エビの発酵調味料や、南洋独自のハーブやスパイス使いなどが見られます。
そういったプラナカンの料理の中にラクサは位置づけられます。
流れとしては明らかに中国からの流れにありつつ、その土地に合わせて変化したプラナカン料理としてのラクサ。
その変化は、一地点にとどまるものではなく、各地の土壌に合わせてバリエーションが出てきます。
スープのベース、出汁、麺、そして具材など。
そのバリエーションを、これまでわたしが食べてきたものを中心に、ささっと。
やはり王道なのは、冒頭のココナッツミルクを使ったものでしょうか。
カトン・ラクサ Singapore, 2018 |
東南アジア特有のスパイスとして、ガランガルやターメリックその他に干しエビを加えてペーストとし、
エビの頭や皮を使ってとった出汁で溶いたところにココナッツミルクを加えて、スープの完成。
タピオカ麺が基本ですが、麺自体はぶつぶつと切れて短く、なので箸ではなくレンゲで食するものとされています。
カトン・ラクサ Singapore, 2018 |
具に関しては店舗による差はあるでしょうが、エビや練り物(フィッシュボール)の他、剥き貝が入っていたり。
ココナッツミルクのコクと、魚介の旨味がポイントになります。
そして、風味として仕上げに使われているハーブがラウ・ラム/Rau Ram。
ベトナミーズ・コリアンダーと呼ばれることもあるハーブで、蓼の仲間になります。
ベトナムで食事をする時にどさっと出されるハーブの山の中にありますね。
コリアンダーと言うより、ドクダミに近い風味ですが、これがいいアクセントになっています。
カトン・ラクサ Singapore, 2018 |
このスープ麺に、チリペーストがつくのもお約束。
そのペーストにも干しえびを使っていて、ラクサペースト、スープ、具、そしてチリペースト、と、
エビの旨味を何層にも重ねて行くような、贅沢な料理ですね。
で、このシンガポールから海を渡ってすぐの、インドネシア領バタム島。
バタム島 |
街の中でも「ラクサ」の看板はよく出ています。
ラクサの表示 Batam_Riau Islands, 2019 |
バタムのラクサは黄色いたまご麺かビーフンかの選択制。
ラクサ Batam_Riau Islands, 2019 |
エビ出汁+ココナッツミルクなのは、カトン・ラクサと同じようですが、
ハーブはなく、具はフィッシュボールと揚げ豆腐、ゆで玉子、そしてジャコがトッピングされています。
(繰り返しますが、具は、まあ店舗差が大きいとは思います)
ラクサ Batam_Riau Islands, 2019 |
この時は、ビーフンをセレクト。
バタム島は、インドネシアではリアウ諸島州に区分されます。
そして、そのリアウ諸島には、ラクセ/Lakseと呼ばれるラクサがあるのだそうです。
語尾がセになっているのは、この辺りに暮らすマレー系の人々の発音のクセで、
”a”を”e”に近い音で発音することから、ラクサがラクセと表記されるようになったのだとか。
(この地図じゃ見えないですが、小さい島が丸の中に散らばっているのです)
このラクセは、サゴ椰子の澱粉を使った麺に、
ココナッツミルクと魚もしくはエビ、そして唐辛子やスパイス類を主な材料としたスープをかけていただくもの。
あいにく、リアウ諸島でこのラクセに出会うことは出来なかったのですが、
そのすぐ南のバンカ島で、恐らく類似しているのでは、と思われるものに出会いました。
ラクサ→ラクセと来て、今度はラクソ/Laksoです。
ラクソは、サゴ椰子の澱粉と米粉の麺。
タネをお湯の中に直接押し出してそのまま湯がき、冷水にとって〆たらバナナの葉に乗せておきます。
注文する時に、バナナの葉っぱいくつ分かでお願いするシステム。
これは、葉っぱふたつ分。
そこに、温かいココナッツミルクのスープをかけます。
一気にシンプルになりました。
スープは魚ベース。サワラの身を潰したところに、ココナッツミルクやターメリックなどを加えたもの。
ココナッツミルクも、シンガポールやバタムのものに比べると、あっさりめになります。
ゆるりとした麺に、旨味のつまった温かいスープは、優しい味わいで朝食にぴったり。
そこに、カラマンシーをぎゅっと絞ると更に美味しさが増します。
海魚ベースに柑橘類というのは、裏切らない組み合わせですね。
そして、このバンカからほど近い、パレンバン。
ペンペの記事でも少しふれましたが、パレンバンにはラクサン/Laksanがあります。
ラクサ→ラクセ→ラクソ→ラクサン、です。
濃厚なココナッツミルクと魚出汁のスープに、魚のすり身とタピオカ粉を合わせたペンペ(フィッシュケーキ)。
ペンペ自体はパレンバン独自のものですので、
ラクサというプラナカン料理に、更にパレンバンのテイストが加わった料理と言えると思います。
唐辛子の辛味を感じるコクのあるスープ、もっちりとした歯ごたえのフィッシュケーキ、揚げシャロットの香り。
これもまた、クセになりそうな味わいです。
ココナッツベースのラクサは、ジャカルタにも、そしてジャカルタのすぐ隣の街ボゴールにもあります。
ラクサ・ブタウィ/Laksa Betawi(ジャカルタ)と、ラクサ・ボゴール/Laksa Bogor。
土地が近いだけに、このふたつはかなり似ています。
パンレンバンやバタム、またはシンガポールのような唐辛子由来の赤味はなく、
どちからというとラクソのスープと同類の、優しいココナッツミルクのスープなのですが、
ラクサ・ブタウィの出汁は、エビ+チキン。鶏が出てきました。
麺はビーフン、茹でもやし、裂いた鶏肉、ゆで玉子、揚げシャロットなどが具になり、
たっぷりとホーリーバジルが乗せられています。
一方、ラクサ・ボゴールは。
スープの風味などはほぼ同じ印象。
茹でもやしや裂いた鶏、ゆで玉子などの具は同じなのですが、
ビーフンの他に、ロントン/Lontongというライスケーキも入っています。
お米なので、しっかりお腹にたまります。
そして、もうひとつの違い。
オンチョム/Oncomと呼ばれる、西ジャワ地域で好んで使われる大豆発酵食品が入っています。
独特の風味のあるオンチョムによって、味にアクセントをつける感じですね。
というのが、ココナッツミルクベースのラクサ。
本当はまだまだあるんですけど、まだ食べていないので、とりあえずここまで(笑)。
そして最後に、ココナッツミルクを使わないラクサを。
北スマトラの都市、メダンの、ラクサ・メダン/Laksa Medan。
麺は米粉の押し出し麺。スープの出汁はグルクマ(サバの仲間)で、ぎゅっと酸味が効いています。
メダンのほぼ対岸にあるマレーシアのペナンを中心に食べられているアッサム・ラクサ/Assam Laksaに近く、
ただ、ペナンの酸味がタマリンドなのに対し、メダンの酸味はゲルグル/Gelugurなのが違いなのだとか。
(パイナップルを酸味料として使う場合もあるそうです)
酸味の他、トーチジンジャーの花やレモングラスを使い、仕上げにミントをのせることで、
海魚の独特の臭みとバランスをとっています。
マレー半島東側のラクサとはギャップがあるこのラクサ・メダンですが、
青魚の風味が生きていて、さすがの美味しさ。
以前、わたしは「ラクサのどこが美味しいのかよくわからない」と言い放っていました。
単に美味しいラクサを食べていなかっただけでした(反省)。
インドネシア国内、これらの他にもまだラクサのバリエーションはありますし、
マレーシアからタイ南部にかけても、また別のラクサが存在するのだそうです。
どこかで出会ったら、その時にまた、ご当地ラクサを味わいたいですね。
バタム島は、インドネシアではリアウ諸島州に区分されます。
そして、そのリアウ諸島には、ラクセ/Lakseと呼ばれるラクサがあるのだそうです。
語尾がセになっているのは、この辺りに暮らすマレー系の人々の発音のクセで、
”a”を”e”に近い音で発音することから、ラクサがラクセと表記されるようになったのだとか。
リアウ諸島 |
(この地図じゃ見えないですが、小さい島が丸の中に散らばっているのです)
このラクセは、サゴ椰子の澱粉を使った麺に、
ココナッツミルクと魚もしくはエビ、そして唐辛子やスパイス類を主な材料としたスープをかけていただくもの。
あいにく、リアウ諸島でこのラクセに出会うことは出来なかったのですが、
そのすぐ南のバンカ島で、恐らく類似しているのでは、と思われるものに出会いました。
バンカ島 |
ラクサ→ラクセと来て、今度はラクソ/Laksoです。
ラクソ Bangka_Bangka Belitung, 2019 |
ラクソは、サゴ椰子の澱粉と米粉の麺。
タネをお湯の中に直接押し出してそのまま湯がき、冷水にとって〆たらバナナの葉に乗せておきます。
注文する時に、バナナの葉っぱいくつ分かでお願いするシステム。
ラクソ Bangka_Bangka Belitung, 2019 |
これは、葉っぱふたつ分。
そこに、温かいココナッツミルクのスープをかけます。
ラクソ Bangka_Bangka Belitung, 2019 |
一気にシンプルになりました。
スープは魚ベース。サワラの身を潰したところに、ココナッツミルクやターメリックなどを加えたもの。
ココナッツミルクも、シンガポールやバタムのものに比べると、あっさりめになります。
ラクソ Bangka_Bangka Belitung, 2019 |
ゆるりとした麺に、旨味のつまった温かいスープは、優しい味わいで朝食にぴったり。
そこに、カラマンシーをぎゅっと絞ると更に美味しさが増します。
海魚ベースに柑橘類というのは、裏切らない組み合わせですね。
そして、このバンカからほど近い、パレンバン。
パレンバン |
ペンペの記事でも少しふれましたが、パレンバンにはラクサン/Laksanがあります。
ラクサ→ラクセ→ラクソ→ラクサン、です。
ラクサン Palembang_South Sumatra, 2019 |
濃厚なココナッツミルクと魚出汁のスープに、魚のすり身とタピオカ粉を合わせたペンペ(フィッシュケーキ)。
ペンペ自体はパレンバン独自のものですので、
ラクサというプラナカン料理に、更にパレンバンのテイストが加わった料理と言えると思います。
唐辛子の辛味を感じるコクのあるスープ、もっちりとした歯ごたえのフィッシュケーキ、揚げシャロットの香り。
これもまた、クセになりそうな味わいです。
ココナッツベースのラクサは、ジャカルタにも、そしてジャカルタのすぐ隣の街ボゴールにもあります。
ジャカルタ-ボゴール |
ラクサ・ブタウィ/Laksa Betawi(ジャカルタ)と、ラクサ・ボゴール/Laksa Bogor。
土地が近いだけに、このふたつはかなり似ています。
ラクサ・ブタウィ Jakarta, 2018 |
パンレンバンやバタム、またはシンガポールのような唐辛子由来の赤味はなく、
どちからというとラクソのスープと同類の、優しいココナッツミルクのスープなのですが、
ラクサ・ブタウィの出汁は、エビ+チキン。鶏が出てきました。
ラクサ・ブタウィ Jakarta, 2018 |
麺はビーフン、茹でもやし、裂いた鶏肉、ゆで玉子、揚げシャロットなどが具になり、
たっぷりとホーリーバジルが乗せられています。
一方、ラクサ・ボゴールは。
ラクサ・ボゴール Jakarta, 2018 |
スープの風味などはほぼ同じ印象。
ラクサ・ボゴール Jakarta, 2018 |
茹でもやしや裂いた鶏、ゆで玉子などの具は同じなのですが、
ビーフンの他に、ロントン/Lontongというライスケーキも入っています。
お米なので、しっかりお腹にたまります。
ラクサ・ボゴール Jakarta, 2018 |
そして、もうひとつの違い。
オンチョム/Oncomと呼ばれる、西ジャワ地域で好んで使われる大豆発酵食品が入っています。
独特の風味のあるオンチョムによって、味にアクセントをつける感じですね。
というのが、ココナッツミルクベースのラクサ。
本当はまだまだあるんですけど、まだ食べていないので、とりあえずここまで(笑)。
そして最後に、ココナッツミルクを使わないラクサを。
メダン |
北スマトラの都市、メダンの、ラクサ・メダン/Laksa Medan。
ラクサ・メダン Medan_North Sumatra, 2018 |
麺は米粉の押し出し麺。スープの出汁はグルクマ(サバの仲間)で、ぎゅっと酸味が効いています。
メダンのほぼ対岸にあるマレーシアのペナンを中心に食べられているアッサム・ラクサ/Assam Laksaに近く、
ただ、ペナンの酸味がタマリンドなのに対し、メダンの酸味はゲルグル/Gelugurなのが違いなのだとか。
ゲルグル Bandung_West Java, 2019 |
(パイナップルを酸味料として使う場合もあるそうです)
酸味の他、トーチジンジャーの花やレモングラスを使い、仕上げにミントをのせることで、
海魚の独特の臭みとバランスをとっています。
マレー半島東側のラクサとはギャップがあるこのラクサ・メダンですが、
青魚の風味が生きていて、さすがの美味しさ。
ラクサン Palembang_South Sumatra, 2019 |
以前、わたしは「ラクサのどこが美味しいのかよくわからない」と言い放っていました。
単に美味しいラクサを食べていなかっただけでした(反省)。
インドネシア国内、これらの他にもまだラクサのバリエーションはありますし、
マレーシアからタイ南部にかけても、また別のラクサが存在するのだそうです。
どこかで出会ったら、その時にまた、ご当地ラクサを味わいたいですね。
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