2017/10/22

バリの食卓④


サンバル作り Bali, 2017

さて、バリの食卓、続いてはサンバルについて。

サンバルは、唐辛子とスパイスやブンブたちを合わせたタレのようなもの。
インドネシアの食卓においてサンバルは欠かせないものではありますが、
それでいて「サンバルって」と一概に括って語るのは難しいほどに、色々あります。
もちろん、いずれも美味しいのですが(笑)。
地域差があり、料理との組み合わせがあり、市販のボトル入りサンバルがあり。
サンバル、と言った時にひとびとが思い浮かべるサンバルの様は、みんな違うかもしれません。

そんな中で、バリを代表するサンバルと言えば、まずはやっぱり、サンバル・マタ/Sambal Matah。

サンバル・マタ Bali, 2017

材料を刻んで、熱した油をかけるだけのシンプルなサンバル。でも、病み付きになります。

まずは、バワン・メラを薄切りに。そして、唐辛子も小口切りに。

さて、そこで唐辛子問題。

市場の唐辛子 Bali, 2017

バリ料理というのは、わたしの主観では、インドネシアの中でもかなり辛い料理だと思うのです。
わたし自身、決して辛いものが苦手なわけではないのですが、それでもちょっとひるむくらい。
なので、お父さんに「辛いの大丈夫?」と聞かれた時には「ほどほど」と答えました。
「大丈夫!」と言ってしまって、バリ的スタンダードで出されたら食べられないかもしれないと思って。

なので、サンバルを含め、この時の料理にはチャベ・ブサールをよく使ってもらっています。
基本的にチャベ・ラウィットを使いたいところ、辛さがマイルドなのに一部置き換えてもらっているんですね。

ということで、このサンバル・マタでも、一部をチャベ・ブサールで。
(自宅で作る際には、自分の好みの辛さに調整してしまいます)

サンバル・マタ Bali, 2017

そして、レモングラスもザクザクと小口切りに。

サンバル・マタ Bali, 2017

家庭によっては、ここでコブミカンの葉や、トーチジンジャーの花を刻んだものを加える場合もあります。

サンバル・マタ Bali, 2017

刻んだ材料に、塩を適量、砂糖とトラシを一つまみ、加えます。
で、油を熱します。
使う油は、出来ればココナッツオイルを、とお父さん。
インドネシアで一般的なパームオイルでももちろん作れるのですが、風味が劣るそうです。

材料をひとかけら、油に落として「ちゅん!」という音がしたら、十分熱せられた合図。
さあ、材料にかけますよ。

サンバル・マタ Bali, 2017

じゅーーーー!

豪快。

サンバル・マタ Bali, 2017

生の材料に熱々の油を注ぐことで程よくしんなりするんですね。
歯ごたえを残しつつ、油でまとめるのが美味しさの秘訣。

サンバル・マタ Bali, 2017

これだけでもご飯が進みます。
レモングラスの爽やかさが、例えばチキンのような肉料理にもちょうどいい風味を加えてくれて好バランス。

ちなみに、お父さんちの家族仕様のサンバル・マタは、こんな感じでした。

サンバル・マタ Bali, 2017

全てチャベ・ラウィットの、かっらーーーいサンバル・マタ。でも、美味しいのです、確かに。

このサンバル・マタ試食中、後だし風に出されたサンバルがありました。
それが、サンバル・バワン/Sambal Bawang。思わずのけぞる美味しさ。

サンバル・バワン Bali, 2017

バワン/Bawangは球根野菜を指すインドネシア語。
タマネギ=バワン・ボンバイ/Bawang Bombai、シャロット=バワン・メラ/Bawang Merah、
そして、ニンニク=バワン・プティ/Bawang Putihに唐辛子です。
ここで使う唐辛子は、辛いチャベ・ラウィットじゃないと美味しくないのだとお父さん。

作り方は簡単、全てを刻んで炒めるだけです。

まずはタマネギ。

サンバル・バワン Bali, 2017

ここで、油の量にひるんではいけません。

どうしても、油控えめにしてしまいたくなるのが、日本人の心理ではあるのですが、
油も「味」なんですよね。割り切ってたっぷり使った方が、仕上がりは美味しくなります。
なので、タマネギを炒め始める時には、ちょっと泳ぐくらいの量の油を使ってしまうのです。

しんなりして来たところに、バワン・メラとニンニクを加えます。

サンバル・バワン Bali, 2017

飴色に近づいたところで、刻んだ唐辛子、塩、そして砂糖とトラシを一つまみずつ。
全体がしんなりしたら出来上がりです。

サンバル・バワン Bali, 2017

唐辛子の辛さに負けない、タマネギとシャロットの甘さと風味。隠し味のトラシが旨味を加えています。

そのままごはんのお供にするのはもちろん、和え物などにも使えます。
あと、家で試したのですが、スープなどに一さじ加えても美味しいんです。
飴色タマネギとニンニクとシャロットですからね、あれこれ応用できる、使いでのあるサンバルです。

お父さんのところでは、このサンバル・バワンを使って簡単ウラップ/Urapを作ってもらいました。

ウラップ(バリではウラッブ/Urabと呼ぶことが多いようです)は、ジャワでもよく食べられる温野菜料理。
茹でた野菜にココナッツと調味料を混ぜたものになります。

ウラップ Bali, 2017

この日は、茹でたキャッサバの葉とモヤシ。
ココナッツは、火で炙ってからすり下ろすのが美味しさの秘密だそう。
香りがよくなるんですって。

そこに、さっきのサンバル・バワンを適量加えて全体をよく混ぜます。

ウラップ Bali, 2017

このボウルいっぱい食べられる気がするほどの美味しさ。

バリの食卓の最後に、わたしがどうしても食べてみたかった野菜料理をもう一つ。

ジュクット・アレス Bali, 2017

ジュクット・アレス/Jukut Aresというこのスープ。バナナの茎なんです。

バナナの実はもちろん、花は食べることがありますし、葉っぱは料理を包むなどでよく使いますが、茎は珍しい。
ジャワなどでは、家畜の餌として用いる程度で食卓にあがることはあまりないように思います。
お父さんに「どうしても食べたい!」とお願いしたところ「ああ、ぼくの好物だ」と返って来ました。

ジュクット・アレス Bali, 2017

アレスというのがバナナの茎を意味するそうです。
バナナも、どんなバナナでも使えるわけではなく、ピサン・バトゥ/Pisang Batuの茎がいいのだとか。

ピサン・バトゥはジャワでもありますが、種のある、野生種に近い品種です。
薬効があるとかで、重宝がられているところもありますが、市場などでの取り扱いも少なく、
珍しい品種と言えるピサン・バトゥ。その茎が、この料理に向いているのだそう。
他の品種だと、調理しているうちに黒くなってくる(アクでしょうね)のだとお父さんはいいます。

ジュクット・アレス Bali, 2017

食物繊維が豊富で、黒髪効果もあるというこのアレス。
内側の柔らかい部分を、薄くスライスし、崩しながら塩をして、しんなりするまで置いておきます。

ジュクット・アレス Bali, 2017

しなっとしたら、水ですすいで、後はスープにするだけ。使うのは、地鶏でとっておいたスープ。

味付けは当然、ブンブ・バリで、手順は魚のスープと同じです。
アレスが柔らかくなるまでじっくり煮込んで、塩で味を整えたら出来上がり。

ジュクット・アレス Bali, 2017

おかわりしたい美味しさ。

これは、自宅で作ってみようにも、難しいですね。アレスが手に入らない。

ブンブ・バリ Bali, 2017

ということで、バリの食卓でした。
基本のブンブ・バリさえ作ってしまえば、あれもこれも色々作れるとわかったのが収穫。
追って、家で復習してみますね。

お料理上手のお父さんと、お母さんに出会えたのも幸いのバリの旅でした。
気軽に行ける土地だけに、また遊びに行って新しい料理を教わって来ます。





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