2017/03/23

クエ・プトゥ/Kue Putu

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

中部ジャワを旅行中に、懐かしいおやつを見つけました。

クエ・プトゥ/Kue Putu。米粉と椰子砂糖を使った素朴なお菓子。

クエ・プトゥ売り Solo_Central Java, 2017

こんなクエ・プトゥ売りも、最近じゃあまり見かけなくなりました。

クエ・プトゥは指先でつまめるほどの大きさのお菓子。
米粉に、パンダンの葉で香りをつけた水を少しずつ加えて細かなそぼろ状にし、
それを椰子砂糖と一緒に竹の筒に詰めて、蒸気で蒸しあげ、ココナッツをまぶして食べます。
インドネシアをはじめ、マレーシアやフィリピンでもみられるこのお菓子のルーツはインド。
タミル語でプットゥ/Puttuと呼ばれる、
インド南部やスリンカ辺りで朝食によく食べられているものがオリジナルなのだそうです。

米粉をそぼろ状にして筒で蒸すという手法は同じで、
ただ、本家ではサイズがより大きく、ココナッツはまぶすのではなくレイヤー状にして一緒に蒸すのだそう。
またそのココナッツがカレーなどに代わったり、プットゥにもスパイスで風味付けがされていたりするのだとか。
一度、食べてみたいです。

クエ・プトゥもそうですし、それ以外の料理でも同様なのですが、
インドネシアごはんに見られるインドからの影響というのは、往々にしてインド南部からのものです。
これは恐らく、海洋交易をはじめ、海経由での往来が基本だったからなのだと思うのですが、
インドネシア西部にみられるココナッツミルク使いなども、南インドの影響なのだそうでうです。

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

で、本家では大きなサイズなクエ・プトゥ。
インドネシアでは小さな竹筒でちょこっとずつ作られます。

水を加えた細かいモロモロの米粉(パンダンの葉で緑の色がついている場合もあります)を竹筒に詰めます。

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

間に刻んだ椰子砂糖も入っています。
蒸されて膨らむので、あまりぎゅぎゅっと詰めすぎないように。

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

で、蒸す。
この下の台には一定間隔で穴があいていて、そこから蒸気が出ています。
その上に、先ほどの竹筒を置いて、しばしスチーム。

使っていない穴に指す駒みたいなのがかわいいですね。

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

で、蒸し上がったら、筒の底からすぽんと押し出す。
素早すぎて、ちゃんと写りません(笑)。

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

すぽぽん。
「写らない…」と言ったら、おっちゃん、「こうか?」とちょっと素振りしてくれました。
でも、やっぱり写らない(もういいです…笑)。

で、ここに刻んだココナッツをまぶします。
このおっちゃんは、他に、粉末ミルクをぱらっとかけていました。

ほかほかのクエ・プトゥ。つるんと柔らかくて、椰子砂糖の滋味深い甘みが沁みます。

クエ・プトゥ Solo_Central Java, 2017

夜のお散歩中に出来立てのクエ・プトゥに出くわして、買わずにいられるはずがないじゃないですか。
というお話でした(違)。



2017/03/22

麺/Mie

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

先日、中部ジャワに旅行に行き、その道中で美味しい麺を食べたので、今回は麺のお話を。

といっても、大風呂敷感が拭えない大きなテーマですね「麺」。
なので、とりあえず今回は、小麦粉を使った「麺」について、ざっくりさらっと。

インドネシアで麺はミー/Mie (もしくはMi)と言います。語源は中国のMien。
インドネシア料理でダントツの知名度を誇るナシ・ゴレンとミー・ゴレンの「ミー」はこの麺を意味する「ミー」。
麺の歴史は今更ここでわたしが述べるまでもないことなので割愛しますが、
中国発祥のこの食べ物、時に形を変えて世界中で愛されているわけですが、インドネシアも例外ではありません。
伝わってきた時期に関してははっきり分からないのですが、
1870年前後に中国南部から大量の移民がジャワに入ってきており、
そのくらいの頃の移民たちが持ち込んだ各種料理の中にあったのではないかなと思ったりもします。

ミー・アヤム Bandung_West Java, 2017

麺の種類も、この小麦粉麺の他、米麺やビーフン、春雨などもありますし、
どのタイプの麺のどの調理法が最初に伝わり、そして伝搬していったのかはわかりませんが、
ここではまず、小麦粉麺のバクミー/Bakmiから初めてみます。

バクミーのバク/Bakは福建語で「肉」。本来は豚肉を意味します。
バクミーとは、油と調味料を絡ませた麺にトッピングとして肉を乗せ、別途スープを添えたもの。
で、本来の豚肉使用のバクミーの場合は、豚脂が使われるわけです。

そこで思い出されるのが、北スマトラのメダンに行くと必ず食べるこの麺。

バクミー・ケッ Medan_North Sumatra, 2015

バクミー・ケッ/Bakmi Khek、つまり客家麺。
脂を絡めた麺に刻んだ茹で豚と、カリカリの脂カス(豚脂をとった後に残る部分)が乗った麺です。
豚出汁に揚げニンニクを効かせた、澄んだスープが別途つくこの麺、
もうちょっとこうやって書いてる時点で辛いくらい、美味しいです。

バクミー・ケッ(店内) Medan_North Sumatra, 2015

簡潔な中華料理店が並ぶ路地で、これまた簡潔に数種類の麺だけを売っているお店なのですが、
往々にしてコシがない麺が基本のインドネシアにあって、比較的しっかりした麺なのも嬉しい。

ちなみに、この手の汁別麺の汁をどうするのか問題。
以前は、わたし、ざばっと麺に汁をかけて食べていたのですが、今は断然「別々に食べる」派です。
麺がくっついてしまっている場合のみ、スプーンに1〜2杯のスープを足しますが、それだけ。
全部かけてしまうと、なんか伸びてしまう気がするのです。コシがない麺の場合はなおさら。

で、このタイプのバクミーが、インドネシアに伝わってきた原型ではあるのでしょうが、
インドネシア、特にジャワは既にイスラム教が浸透していたわけですから、当然、豚はタブー。
そこでその豚を一般に食べられている鶏肉に置き換えたのが、バクミー・アヤム/Bakmi Ayamになります。

バクミー・アヤム Jakarta_2016

汁別油麺、鶏バージョン。
ちょっと甘めの味付けの鶏肉と青菜。使っている油はニンニクやシャロットなどで香り付けしてあります。
汁は別添え。バソ/Bakso(Baso)が入っているものも多いです。

で、このタイプにはバリエーションがあり、

バクミー・アヤム(ジャムール) Jakarta_2016

こちらは、バクミー・アヤム・ジャムール/Bakmi Ayam Jamur。
ジャムールはキノコです。フクロダケが多いんです、なぜか。

バクミー・アヤム(パンシット、バソ) Jakarta_2016

こちらは、バクミー・アヤム・パンシット・バソ/Bakmi Ayam Pangsit Baso。
パンシットはワンタン(ここでは揚げ)にバソ(肉団子)を加えた、盛りだくさんバージョン。
これは、麺にもしっかり味がついているタイプですね。

バクミー・ベベッ Bandung_West Java, 2016

一方こちらは、鶏肉がアヒル(ベベッ/Bebek)になったもの。

汁別麺はバクミーですが、単なるミー・アヤムというのもあるのです。鶏麺ですね。
そうすると、汁別は必須ではなくなります。
なので、恐らく、バクミー・アヤム=汁別、ミー・アヤム=汁有りということになるのかと思うのですが、
当然のことながらその辺の境界線は曖昧で、
ミー・アヤムを注文しても、↑のような汁別で出て来る場合も多々あります。

汁有りミー・アヤム。

ミー・アヤム Bandung_West Java, 2017

ミー・アヤムのスープは、バクミーの澄んだスープと違ってこっくりした茶色の場合が多いですね。
(もちろん、お店ごとに違いはあるのですが)
この茶色はケチャップ・マニスの色です。つまり、若干甘めのスープになります。

また、バクミー・アヤムの亜種(?)でヤミン/Yaminというのがあります。
これは、バンドンをはじめとした西ジャワ地方で割とよく食べられている様子。

ヤミン・アシン Bandung_West Java, 2016

汁別鶏油麺。この写真のはヤミン・アシン/Yamin Asinと言われる塩(アシン=塩、塩っぱい)味のもの。
これとは、別でヤミン・マニス/Yamin Manisというものもあり、
そちらは麺にケチャップ・マニスをベースにした味がついています。
マニスに対してアシンと言っている感じもあり、なのでアシンは塩というより旨味系と言えるかもしれません。
わたしは、アシン派です。くどくないので、うっかりおかわりしてしまいそうな美味しさ。

バクミーとヤミンの違いは、鶏肉。
バクミーの鶏肉は細切りでジューシーなお肉なのに対し、ヤミンはそぼろ状の乾いたものなのです。

西ジャワのヤミンの話しになった流れで、ご当地麺をいくつかご紹介します。

まず、同じ西ジャワのバンドン名物、ミー・コチョック/Mie Kocok。

ミー・コチョック Bandung_West Java, 2016

バクミーやミー・アヤムより若干幅広の麺を使ったこちらは、牛スジベースのスープが特徴。
コクがあるスープに、パッと散らしたセロリの香りがちょうどいいバランス。
柔らかいスジが美味しいこのミー、食べる時にケチャップ・マニスをたっぷりかける人が多いんです。
(かくも愛されるケチャップ・マニス)
コチョックとはインドネシア語で「混ぜる」という意味。
麺を茹でる際に、器具の中で混ぜるその様を指してのネーミングなのだそうです。

そして、やはりバンドンに有名店が多いのがロー・ミー/Lo Mie。

ローミー Bandung_West Java, 2016

こちらもやはり、若干幅広な麺で、あんかけスープになります。
出汁に海鮮を使っているところが多いようで、旨味濃厚。味付けは、甘み寄りになります。
ぷりぷりのバソとモヤシなどの野菜、揚げシャロットのトッピングに、たっぷり胡椒を振っていただきます。

更にもう一つ西ジャワから。ボゴール名物の、ソト・ミー/Soto Mie。

ソト・ミー Jakarta_2017

これはちょっと微妙な立ち位置で、名前の通りソト(スープ)枠なのです。
だから、ごはんがついて来る。
でも、スープの具として堂々と麺が入っているのです。炭水化物×炭水化物。

そして、ご当地麺と言えば、外せないのがこちら。ミー・アチェ/Mie Aceh。

ミー・アチェ Medan_North Sumatra, 2015

スマトラ島北端のアチェの名物麺。
アチェに行ってホテルの人に「ミー・アチェが食べたいのです!」と言った時、
「ミー・アチェかどうかは知らないけど、ミーの屋台ならそこに出てるよ」と言われて、
とても美味しいミー・アチェにありついたのもいい思い出。
(アチェにいたら、わざわざミー・アチェと呼ぶ必要はないんですよね…笑)。

写真はメダンにある有名店で食べた時のもの。
色かぶりしてて美味しそうに見えないのが残念ですが、この店もメダンに行ったら必ず寄るお気に入りです。

ミー・アチェはゴレン/Goreng(炒め)とクア/Kuah(汁)がありますが、わたしはいつもクアの方。
汁と言っても、多少汁気があるな、という程度でいわゆる汁麺とは異なる感じです。
(↑の写真もクアなのです)

ミー・アチェの特徴は、まず、カレー風の濃厚でスパイシーな味付け。これはジャワにない味です。
そして、トッピングは牛やヤギ肉、もしくはシーフード。
わたしは断然シーフード派です。豪快に乗ってるカニにかぶりつくのがミー・アチェの醍醐味。
そして、バランサーとしてのアチャール/Acar(キュウリなどのピクルス)がいい仕事をしてくれます。

カレー風であったり、アチャールが添えてあったりする辺り、インドからの影響が見られますね。
麺は中国から、牛やヤギを使う辺りは、イスラムの流れ、シーフードは海辺近い立地ゆえ、と考えると、
このミー・アチェというのはとても、
インドネシア最西端で、かつてインドとの交易港でもあったイスラム王国の土地アチェらしい食べ物ですね。

続いて、ミー・ジャワ/Mie Jawa。
バクミー・ジャワと言われることもあるこのご当地麺は、中部ジャワのジョグジャカルタが中心。

ミー・ジャワ(クア) Jogjakarta_Central Java, 2017

ミー・ジャワは基本的に汁麺(クア)なのだそうです。
一般的に汁麺はミー・クア/Mie Kuahと呼ばれ、インドネシア各地(時に近隣諸国でも)みかけますが、
そのミー・クアとミー・ジャワは同じものなのだそうです。
なにがどうジャワなのか?と思っていたのですが、ジャワの素材を使うから、なのだとか。
ジャワの素材とは?シャロット、ニンニク、クミリ(キャンドルナッツ)そして胡椒、らしいです。
写真のミー・ジャワはビーフンと中華麺半々になったもの。
キャベツなどの野菜が入って、ちょっとチャンポンみたいな感じでもあります。

ミー・ジャワの特徴は、アヒルの卵と裂いた地鶏の肉を使い、竃の炭火で一杯ずつ調理すること、なのだとか。

ミー・ジャワ店 Jogjakarta_Central Java, 2017

何杯かまとめてオーダーされても、一杯ずつ作るのだそうです。

どうりで。
先日の旅行で行ったジョグジャカルタのお店は、屋台のような調理台がいくつも並んでいたんです。

ミー・ジャワ店 Jogjakarta_Central Java, 2017

各調理台に、麺と卵と野菜、そして地鶏が吊るされていました。

ミー・ジャワ店 Jogjakarta_Central Java, 2017

ミー・ジャワは基本的に汁麺ではありますが、もちろんゴレンもあります。
インドネシア料理のミー・ゴレン。いわゆる一般的に知られている、あのミー・ゴレン。
は、このミー・ジャワのミー・ゴレンだとだと思います。
(一般的に知られているミー・ゴレンがどんなだったか思い出しながら……)
ケチャップ・マニスやオイスターソースで味付けがされています。

ミー・ゴレン Jakarta, 2015

これは、ジャカルタのどこかのホテルの朝食で出てきたミーゴレン。

ちなみに、ミー・ゴレンは「おかず」枠だったりもします。
インドネシア各地で、ごはんにいくつかのおかずを選んで乗せてもらうタイプの食堂に行くと、
そのおかずラインナップに、必ずと言っていいほどミー・ゴレンが入っています。

おかず扱いのミー・ゴレン Wakatobi_South East Sulawesi, 2015

炭水化物×炭水化物。

そして、もうひとつ。先日の旅行で食べた、中部ジャワのご当地麺。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

ウォノソボという土地の、ミー・オンクロック。あんかけ麺です。

タピオカ粉を使ってとろみを出したあんかけは椰子砂糖や干しエビ、ピーナッツが入っています。
このあんかけの下に、麺と野菜。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

ウォノソボは標高が高くて野菜の産地なのですが、特に美味しいキャベツとニラが採れる土地。
そんなウォノソボの麺には当然、キャベツとニラ。なのです。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

麺と野菜を竹製のザルに入れて、スープが煮立っている鍋でさっと湯がき、あんかけをかける。
この、竹製のザルが「オンクロック」なのだそうです。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

立てかけられているのが、オンクロック。
ミー・コチョックといい、ネーミングは至って安易なものなのです。

中部ジャワの料理というのはとかく甘めで、このミー・オンクロックも椰子砂糖を使っていたりするのですが、
干しエビの旨味の加わって、全く嫌みのない感じ。
そこに、潰したチャベ・ラウィットを加えると、締まりが出てさらに美味しい。

唐辛子 Wonosobo_Central Java, 2017

器の中で直接潰してしまうの、豪快ですよね。

このミー・オンクロック、ウォノソボまで食べに行った甲斐ありました。
他ではあまり出会わないタイプの味わいで、熱々のあんかけが涼しい気候にぴったり。
ミー・オンクロックのインスタント麺まで売られていて、思わず買ってしまいました。

インスタント麺と言えば、もうそれだけで別途一本記事が書けそうなくらい、
インドネシアの人々の暮らしとは切っても切れないほど浸透しているものなのですが、
…そうですね、詳しくは別途また書くことにして、ここでは一つだけ。

最近知った、ミー・インターネット。

ミー・インターネット Jakarta, 2017

インスタントの汁麺なのですが、なにがインターネットなのだろう?と。

INdomie+TElur+koRNETでインターネット。
インドミーはインスタント麺の代名詞となっている袋麺の名称。テルールは玉子、コルネットはコンビーフ。
この3つを組み合わせのことを言っていたのです。
写真のは、更にチーズトッピング。非常にジャンキーな味ながら、ちょっとクセになります。

ミー・アヤム Bandung_West Java, 2017

ということで、駆け足の麺(第一弾ということにしておきます)。

この他にも、例えば中華料理店に行けば、ワンタン麺や揚げ焼きそばなどもありますし、
ご当地麺もきっともっと色々ありそうなので、この先も見つけたら食べていきたいなと思います。
そして、米麺やビーフンなどのその他の麺についても、これまた追々。
なんせ、大風呂敷案件ですからね、麺は。広くて、深いのが麺の世界なのでしょう。
麺食いを自任するわたしですので、この先も頑張って食べてまいります(笑)。


2017/03/14

ケチャップ/Kecap


ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017

インドネシアのケチャップは、黒いのです。

インドネシアでケチャップ/Kecapと言ったら、それは主にソイソースのことです。
トマトケチャップのことではありません。
ちなみに、トマトケチャップのことは、サオス・トマト/Saos Tomat、つまりトマトソースと言います。
じゃあ、トマトソースは?まあだいたい、パスタソースのトマト味、みたいな感じで(笑)。

で、ケチャップ。

ケチャップ各種 Bandung_West Java, 2017

インドネシアの主なケチャップは、
ケチャップ・マニス/Kecap Manis:甘いソイソース
ケチャップ・マニス(もしくはアシン)・スダン/Kecap Manis (Asin) Sedang:甘さマイルドなソイソース
ケチャップ・アシン/Kecap Asin:塩味のソイソース
ケチャップ・プダス/Kecap Pedas:ケチャップ・マニスに唐辛子が入った甘い×辛いのソイソース
ケチャップ・イカン/Kecap Ikan:魚醤
という感じになります。

そもそも、ケチャップの発祥は中国なんですね。ルーツをたどれば日本の醤油と同じなのです。
どちらもソイソース、にも関わらず、元になったのはいわゆる魚醤のようなものだったのだと言われています。
その魚醤をKechiap、Kechop、Koechiapなどと呼んでいたのが、現在のケチャップの語源になったのだとか。
とは言え、各地に伝播しているのは大豆原料のソースなので、
中国でまず、呼称はそのままで素材の変化が起きて、そこから各地に伝わったのでしょう。
東南アジアに伝わったものが、マレー地域でKecapもしくはKicapと呼ばれるようになったのだそうです。

その後、この東南アジアのケチャップがヨーロッパに伝わり、
魚介類やキノコを使ったソースを「ケチャップ」と呼ぶようになり、
そしてさらにその後、北米にて「トマトケチャップ」が生まれたのだそうです。
そのトマトケチャップが中国でも消費されるようになった時、ケチャップの世界一周は完了したのですね(笑)。

ちなみに、Kecapはインドネシアですが、Kicapはというとマレーでの言い方。
Kicapも大豆原料で、キチャップ・ルマッ/Kicap Lemakとキチャップ・チャイル/Kicap Cairがあり、
ルマッは恐らくインドネシアのセダンに、チャイルはインドネシアのアシンにあたるのだと思われます。
(実際に味わったことがないのですが)

話しを戻して、インドネシアのケチャップ。

ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017

まずケチャップ・マニス。使用頻度が一番高い、そして一番愛されているのがこのタイプだと思います。

原料は、黒大豆、パームシュガー、塩。
(後日追記:黒大豆とは限らないようです。主流は黒大豆で、いくつかのメーカーは黄大豆を使用しています)
茹でた大豆を数日発酵させ、塩と水を加えてさらに発酵させ、加熱。その際にパームシュガーを加える。
ここで、レモングラスだったりコブミカンの葉だったりで風味付けをする場合が多いそう。
トロッと粘度の高い、まず甘さが先にきてその後に塩気が来るようなケチャップ・マニス。
旨味とコクが素晴らしく、多種多様の料理で使われます。
煮込み料理であったり、ピーナッツソースに垂らしたり、輪切り唐辛子と合わせて焼き魚のタレにしたり。
面白いのは、インドネシアを旅行している西洋人でこのケチャップ・マニスが好きな人が結構多いこと。
離島の宿などでみんなで食卓を囲むと、彼らが順番にケチャップ・マニスのボトルを回していって、
銘々のごはんに「たらーり」とかけたりするのです。

そんなケチャップ・マニス、様々なブランドがあるのですが、
その中でも(わたしの周辺では)一番人気があるのがこの「Bango」。鳥が目を引くボトルです。
家のガレージで作っていたという家内制手工業から始まったこのメーカー(現在はユニリーバ傘下)、
国立大学と協力し、特選品種の黒大豆を使っていることから独特の風味を持つのだといいます。
有名になっても、今でもケチャップ・マニス一本で勝負している会社です。

ケチャップ・マニス&アシン・スダン Bandung_West Java, 2017

続いて、スダン。
どちらも、チレボン(西ジャワ州)の同じメーカーから出ているのですが、
赤い方が、ケチャップ・マニス・スダン。緑の方が、ケチャップ・アシン・スダン。
スダン/Sedangというのが「中程」や「中くらいの」という意味を持つのですが、
これはつまり中くらいのマニス(甘い)と、中くらいのアシン(塩辛い)ということ?
そこまで細かな区分けが必要なのか、というのも含めて面白くて買ってみました。

ところで、このアシン・スダンのケチャップ、実はすごいぶくぶくしてたのです。
2枚目の写真(俯瞰の)を見るとお分かりいただけるかもしれないのですが、
密封されていたボトルの口を切って閉じておいたら、中でどんどん泡が湧いてきて。
このあと、口を開けたら吹き出しました、ぶしゅーって。びっくり。
ボトルの中で発酵がすすんでいたのでしょうか?マニス・スダンの方はそんなことなかったのに。

そして、次に、ケチャップ・アシン。

ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2017

地場のバンドンブランドのものを買ってみました。
ケチャップ・アシンはマニスと違い、使用しているのは黄大豆です。
基本的に日本の醤油とほとんど同じだと思っていいんじゃないかと思います。

インドネシアに塩っぱいケチャップを伝えたのは客家のひとたちだという話しを聞いたことがあります。
客家のケチャップ・アシンは黒大豆を使い、塩分濃度がかなり濃いものなのだとか。

バンドンの↑のケチャップ・アシンは黄大豆ですが、
このラベルからも分かる通り、広く一般的に好まれているケチャップ・マニスに対し、
ケチャップ・アシンは基本的に華人の食卓で使われるもの、というイメージです。

というか、いったいどこのタイミングで甘いソイソースというのが誕生したのでしょうね?
同じ東南アジアで、例えばベトナムの醤油は、加糖されていない塩気と旨味の調味料ですよね。
それが、マレーに来たら加糖され、インドネシアに来たら更に砂糖が増やされた、ということでしょうか。
なんでそこで砂糖を加えるに至ったのか、どこかで調べられたら調べてみます。

さてさて、ではでは、味見をしてみましょう。

ケチャップ Bandung_West Java, 2017

きれいに真ん中に均一に出せないのが残念な感じですが(笑)。

左上:ケチャップ・アシン
   醤油に近い味ながら、塩気がかなり鋭く尖っていて、日本の醤油のような丸みはない。
左下:ケチャップ・マニス
   後味にカラメルを感じるような、コクのある甘さと旨味。
右上:ケチャップ・マニス・スダン
   確かにケチャップ・マニスよりは塩気が勝る。なんとなく焦げのようなスモーキーな後味。
右下:ケチャップ・アシン・スダン
   確かにケチャップ・マニス・スダンよりもケチャップ・アシンに近い甘みと塩気のバランス。
   ぶくぶくした名残がある。

見事にグラデーションでした。スダン2つの立ち位置が面白いですね。
コクではマニスが勝りますが、旨味ではスダンの方が感じやすいような印象です。
植物性のものですので、当然かなりマイルドにはなりますが、オイスターソースにもつながるような味わい。
甘みが減った分、発酵由来の風味が感じやすくなったのかも、という気がします。
甘さの点でも、加えられているのは精製糖ではなく、未精製のパームシュガーなので、
そこに含まれる色んな雑味もまたケチャップの複雑な味わいに含まれているのかもしれません。

さて、そして、ケチャップ・プダス/Kecap Pedas。

ケチャップ・プダス Bandung_West Java, 2017

「プダス」は「辛い」という意味。つまり、辛いケチャップです。
その名の通り、ケチャップ(マニス)に唐辛子が入っているのです。

ケチャップ・プダス Bandung_West Java, 2017

先にも書きましたが、インドネシアで焼き魚のタレによく登場するのが、
ケチャップ・マニスに唐辛子(チャベ・ラウィット)を刻んで混ぜ合わせたもの。
その甘いと辛いのバランスが食欲をそそるわけなのですが、
このケチャップ・プダスはそれを製品化したものですね。

こうしてケチャップ各種を広げていたところに、うちのメイドさんと彼女のお姉さんが表れました。
主婦たちの意見を聞いてみようと、
まず「ケチャップ・プダスは何に使う?」と質問。
しばらく悩んでから、揚げ豆腐につけて食べるかな、という返答を得ました。
つまり、あまり日常的には使ってないということかな。
続いて「ケチャップ・アシンはどう?」と聞いてみると、
まず使わない。と言い切ってから、またしばらく考えて「ミー・コチョック?」とのこと。

ミー・コチョック/Mie Kocokはバンドン名物の牛スジを使った麺。

ミー・コチョック Bandung_West Java, 2017

インドネシアの汁物は、テーブルの上の調味料で自分好みに味を整えてから頂く場合がよくあります。
たぶん、そいういう意味での「使う」だったのでしょうね。
ちなみに、同じ用途にケチャップ・マニスを使う人も、たくさんいます。

で、最後に「じゃあ、ケチャップ・マニスはどう使う?」とたずねたところ、
「なんにでも使えるわよ!!」と声を揃えて即答でした。
炒め物にも、煮物にも、タレにも、なんにでも使えるし、合うんだから!と。
愛されていますね、ケチャップ・マニス。
余談ですが、わたしは日本のカレーを作る時の隠し味にケチャップ・マニスを使います。
味に深みがでるんです。

さてそれで、最後ケチャップ・イカン/Kecap Ikanですが。

ケチャップ・イカン Bandung_West Java, 2017

これも魚醤だしナンプラー代わりに使おう、と思いわが家では常にストックされているのですが、
表示をみると、スーパーマーケットなどで売られているのはだいたいどこも「タイ製」なんですよね。
つまり、ナンプラー代わりどころか、ナンプラーだった。という。
あと、魚醤であるのに、ボトルデザインが烏賊だったり牡蠣だったりするのも特徴です。紛らわしい。

ということでざっと駆け足のケチャップのご紹介でした。

このケチャップは、バンゴのような有名どころもありますが、ご当地ブランドが数多くあるのも特徴です。
インドネシア各地、特にジャワからスマトラにかけては、ご当地ケチャップ各種あると思います。
そして、各地各ブランドごとに味が違っているのもまた楽しいところ。
地道に買い集めて味比べとか、できたらいいなあ。

最後に、今回のお気に入り。

ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2017

このラベル。水牛に乗っている人。かわいいです!



2017/03/12

柑橘類/Jeruk

柑橘類色々 Bandung_West Java, 2016

すだち、かぼす、ゆず。

そんな日本の柑橘類と同じように、
インドネシアにも、その一滴でぐっと料理の味を引き締める柑橘類があります。
インドネシア語で柑橘類の総称は「ジュルック/Jeruk」。
主な用途は「生臭さを消す」こと。なので、肉料理や魚料理の仕上げによく登場します。

まずは、大きなデコボコが目を引くジュルック・プルッ/Jeruk Purut。
味はレモンに似て、けれども果汁がそれほど多くないため香りはレモンよりも弱めの感じ。
日本語でコブミカン、英語だとKaffir Limeと言われるこのジュルック。
ハーブ の記事にも書きましたが、葉っぱを香り出しとして使うことが多い品種です。

コブミカンの葉 Bandung_West Java, 2017

そして、ジュルック・ニピス/Jeruk Nipis。
淡めの緑でなめらかな外皮、中くらいの大きさのこのジュルックは、キーライムのことです。
香りは、いわゆるライムの香り。とても爽やかなグリーンの香りです。
果汁を搾って砂糖を加えたエス・ジュルック・ニピスは暑い気候にぴったりの清涼感。
炭火焼きの海魚にきゅっと絞って食べるのも、もうたまらない美味しさ。
そして、この焼き茄子のサンバル や、ジャグン・ボセ に添えたサンバルなどもそうですが、
ニピスの軽やかで爽やかな香りは、東ヌサトゥンガラあたりのシンプルな料理にもよく合います。

シンプルサンバル Bandung_West Java, 2017

続いて、ジュルック・リモ/Jeruk Limo。
若いうちは濃い緑、熟れると黄色みを帯びてくる、
小振りで、ざらっとした外皮が特徴のこのジュルックは、呼び名が色々あります。
私が住むバンドンを含む西ジャワ地方やその他のジャワ地域ではリモですが、
ジャカルタにあたるブタウィではジュルック・サンバル/Jeruk Sambal、
北スマトラ辺りのムラユ圏ではジュルック・リマウ/Jeruk Limauと呼ばれているそうです。
もっとカジュアルにはジュルック・サテ/Jeruk Sateと言われる場合も。
サンバルだったりサテだったり、その呼称からも分かる通り、多種の料理において活躍するジュルックで、
酸味はそれほど強くないのですが、濃いグリーンの香りが特徴です。
トラシ(魚の発酵調味料)を使ったサンバルに使っても、その匂いに負けないはっきりとした香りなのです。
なので臭み消しとして、肉を使ったスープやサテを食べる直前に絞ってたり、
練り物を使う「シオマイ」というピーナッツソースをかけた蒸し料理に添えられたりします。

ニピスとリモ Bandung_West Java, 2017

そして最後に、レモン・チュイ/Lemon Cui。
これがまた、呼称が色々ありすぎて混乱するのですが、どうやら同一のジュルックを、
ムラユ圏ではジュルック・カストゥリ/Jeruk Kasturi、
カリマンタンではジュルック・ソンキッ/Jeruk Songkit、
北スラウェシではリマウ・カチャウ/Limau Kacau、
フィリピンでカラマンシー/Kalamansi(Calamansi)と呼んでいるようですね。
その中でも、みかんのようなオレンジ色に熟れるのは華人たちが縁起物として重用する品種、
一般的に料理に使われるのは、緑からオレンジのグラデーションのある品種になります。
酸味の強いみかんのような味のレモン・チュイ。
果汁がたっぷりあるので、絞ってジュースのようにすることも多いです。
このジュルックは、北スラウェシのマナドで使った印象が強く残っていて、
ヘタの辺りだけを切り落としたジュルックを渡されて、焼き魚にたっぷり果汁を搾った記憶があります。
また、マナドといえば、のサンバル「ダブダブ」(サルサソースに似ています)にもよく使われているとか。

柑橘類色々 Bandung_West Java, 2016

ということで、左から、
リモ(若いもの)、レモン・チュイ、リモ(熟れたもの)、ニピス、プルッ。

西ジャワあたりでみかけるのは、緑のリモとニピスがほとんどです(別途レモンはありますが)。
ああ、柑橘類のことを書いていたら、なんだか爽やかな気分になってきましたよ(笑)。