2019/12/19

豆腐/Tahu ②

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

ジャワ北岸のスープの話しのついでに、ジャワ北岸の豆腐料理をちょっと。
インドネシアの豆腐の詳細については、豆腐/Tahuの①を先に読んでいただければ。
今回は、ただひたすら「美味しかったよー」っていうことです。先に要約してしまえば。

に書いたように、インドネシアの中でもジャワ島はとりわけ豆腐の消費が多い地域です。
ある調査データでは、一人当たりの週の豆腐消費量(g)が多いのは、上から順に、
東ジャワ(270)、中ジャワ(180)、ジョグジャカルタ/西ジャワ(170)、バリ(160)、ジャカルタ(130)。
ちなみに、少ない地域は、
中部スラウェシ/西スラウェシ(60)、アチェ/東ヌサトゥンガラ(50)、北マルク(40)。
インドネシアの中でも早い時期に中国からの移民がみられたこと、
オランダ東インド会社による強制栽培制度時の貴重なタンパク源となったことなどが背景となり、
今でもジャワの人々は、食事に軽食におやつにと、豆腐を食べます。

まずは、ジャカルタ。
ジャカルタの人々の朝食もしくは昼食に好まれるのがクトプラッ/Ketoprak。

クトプラッ Jakarta, 2019

名前の由来が、Ketupat(ライスケーキ)+Toge(もやし)+Geprak(叩く)だと言われている通り、
ライスケーキに茹でたもやし、揚げ豆腐、刻みキュウリ、ビーフンを乗せてピーナッツソースをかけたもの。
(叩く、はピーナッツソースを作る際に石臼で叩き付けるようにする動作からでしょう)。

クトプラッ Jakarta, 2019

豆腐がメインな訳ではありませんが、とはいえ、豆腐のないクトプラッなんて、というくらいに大事な存在。

ピーナッツソースつながりで、中部ジャワのスマラン/Semarangで食べたタフ・ギンバル/Tahu Gimbal。

タフ・ギンバル Semarang_Central Java, 2019

インドネシア語でギンバルはドレッドヘアのことなんです。
なので「どのへんがドレット?」とタフ・ギンバル屋のおかあさんに聞いてみたところ、ドレッドは関係なく、
スマランのひとたちは、エビのかき揚げのことをギンバルと呼ぶのだそうです。

タフ・ギンバル Semarang_Central Java, 2019

殻付きでガリッと揚げられたエビと、揚げ豆腐、茹でキャベツにライスケーキとピーナッツソース。

タフ・ギンバル Semarang_Central Java, 2019

エビと豆腐という大陸らしい食材に、程よくチリを効かせたピーナッツソースというジャワらしい味の組み合わせ。
旨味と歯ごたえのエビに対し、ニュートラルな豆腐とキャベツの甘みがいい塩梅です。
豆腐の名を冠している割に豆腐が脇役な感もありますが、それでもこれはまた食べたいひと皿。


タフ・チャンプル Jakarta, 2019

豆腐の名を冠していながら豆腐が脇役つながりで、タフ・チャンプル/Tahu Campur。
これは、東ジャワのスラバヤ/Surabayaあたりが名物なようですね。食べたのはジャカルタだったのですが。

タフ・チャンプル Jakarta, 2019

揚げ豆腐は中がつるんとした、舌触りの優しいもの。
牛スジやたまご麺、茹でもやし、レタス、そして黄色く見えるのはキャッサバ芋のコロッケ。
このコロッケが甘くて美味しいんです。

タフ・チャンプル Jakarta, 2019

かかっているのは牛出汁ベースのスープで、そういうところも東ジャワっぽい気がします。
具だくさんで温まる軽めの晩ご飯、という感じのひと皿。

一方、おやつ枠の豆腐料理として、中部ジャワのテガル/Tegal名物のタフ・アチ/Tahu Aci。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

タフ・テガル/Tahu Tegal、タフ・クピン/Tahu Kuping (=耳、確かに耳っぽい)とも呼ばれるタフ・アチ。
アチはタピオカの澱粉のこと。澱粉を練ったものを豆腐の断面にはり付けて揚げています。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

こうやってはり付けるわけなんですが、なんで揚げた時にはずれちゃわないんだろう、と思ったりします。
粘着をよくするための細工があるでもないし。

でも、細工はなくてもコツはあるようで、
ここのお店、最初におかあさんがはり付けていったのを後からおばあちゃんがチェックして、
「これはダメ」と全部剥がしてはり直していました(笑)。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

おばあちゃんには敵わない。

タピオカ生地にはニンニクとニラなどが練り込まれています。
店の前では、刻んだニラがザルに広げられ、干されていました。ちょっと乾燥、くらいがいい様子。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

あとは、油で一気にジューーーッと揚げます。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

揚げたてが欲しくて、店先にあるのは無視していたわたし。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

だって、これ、絶対揚げたてが美味しいやつだもの。
澱粉生地のもちっとカリッとした歯ごたえと、厚揚げ部分のジューシーさのバランス。
ついつい手が伸びる、心憎いおやつ豆腐です。

そして最後が、西ジャワのチレボン/Cirebonのタフ・グジロッ/Tahu Gejrot。

タフ・グジロッ Cirebon_West Java, 2019

これもおやつ枠の豆腐料理。

青唐辛子やシャロットが見えますが、このタレ自体は「甘い」んです。
やや旨味を効かせたシロップとも言えそうな、甘いタレがボトルから注がれるその音が、
まるで「Jrot...Jrot...」と聞こえるから、タフ・グジロッと呼ばれているのだとか。
タレの甘さ、シャロットの香味、青唐辛子の爽やかでシャープな辛味と香りの不思議な組み合わせ。
それを、厚揚げというより厚めの油揚げという感じの豆腐がスポンジのように吸収しています。
これもなんかクセになる味なんですよね。

タフ・グジロッ Cirebon_West Java, 2019

ピーナッツソースをかけても、エビのかき揚げと合わせても負けないのは揚げ豆腐だからでしょうね。
インドネシアの豆腐自体がそもそもしっかりした風味がある上に、油を通すことでコクも出ます。
揚げ豆腐が主流なのは、当然保存のという要素が大きいとは思いますが、
食べ方もまた、その揚げた特性を生かしたものになっているのだなあと思います。
(素揚げ豆腐も大好き)


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