2017/03/28

ジャワ料理/Masakan Jawa

グデッグ Solo_Central Java, 2017

ジャワのお話のまず最初に、はっきりさせておかなくてはいけないことがあります。
ジャワに、あの「ジャワカレー」は、はありません(「ジャワティー」はあります)。

では、ジャワの料理について。

まず、今更ですが、ジャワ島。



赤い部分です。
長さが1,040kmということなので、本州の約3分の1ですね。
インドネシアの首都、ジャカルタがあるのがこのジャワ島。
アルフレッド・R・ウォレスをして『マレー諸島』内で、
「おそらくまさに世界で最も美しく、もっとも興味深い熱帯の島である」と言わしめたジャワ島。
ウォレスの著にもある通り、いくつもの火山が連なる肥沃な大地は緑に覆われ豊かな植生を見せます。
ちなみに、世界で一番人口の多い島、でもあるようです。まあ、納得。

で、そのジャワ島、行政的には西・中部・東ジャワ及びジャカルタ、と区分けされます。
そして、インドネシアで「ジャワ」と言う場合、おおむね中部〜東ジャワを指します。
(西ジャワは「スンダ」と呼ばれます)

ごはん的には。
やはり、西・中部・東ジャワ、という区分けで、違いが見られる気がします。

ざっとまとめてしまうと、
西ジャワ:塩系、甘すぎず辛すぎず、生野菜をよく食べる。
中部ジャワ:甘め、ココナッツミルクをよく使う。
東ジャワ:塩系、少し辛め、トラシ等旨味系調味料をよく使う。
という感じでしょうか。
もちろん、例えば西ジャワでもココナッツミルクやトラシを使わないわけではないですし、
古くから香料等を運ぶ各国の貿易船が寄港していた島の北岸の港町では、諸外国の影響が多いなど、
それぞれの地域内でもまた違いがあったりで、単純化はできないものではあるのですが。

で、先日中部ジャワを旅行したので、中部ジャワの料理について。

中部ジャワは甘い、と書きましたが、その甘さはグラ・メラと呼ばれる椰子砂糖。

グラ・メラ Bandung_West Java, 2017

中部ジャワ料理の一つにバチェム/Bacemというものがあります。
豆腐、またはテンペをジャワ式に甘く煮込んだ料理。

テンペと豆腐のバチェム Solo_Central Java, 2017

初めて食べた時には、お菓子のようなその甘さにびっくりしました。
もちろん、バワンメラ(シャロット)や、ナンキョウなども使っている、れっきとしたおかずなのですが、
それでも、味の第一印象が強烈な甘さなので「うわあ」となったのでした。

なぜ、中部ジャワ料理がこんなに甘いのか。

一説には、オランダ植民地時代の強制栽培制度によるのではないか、と言われています。
中部〜東ジャワはサトウキビを強制的に作付けさせられていたのですが、
その際に、元は稲を植えていた土地にまでサトウキビを植え付けることになり、
結果、農民たちの食生活で熱量不足が起きたために、それを補う目的で糖度が増したのだそうです。
であれば、甘いジャワ料理というのは、1800年代半ば以降に生じたものなのかもしれませんね。
ただ、同じようにサトウキビの植え付けを行っていた東ジャワは、それほど甘くないのはなぜなのか、
ちょっと疑問が残りはするのですが。

そして、わたしの中で「中部ジャワ=甘い」を決定的にしたのが、ジョグジャカルタ名物のこの料理。

グデッグ Jogjakarta_Central Java, 2015

グデッグ/Gudegと呼ばれる、若いジャックフルーツをココナッツミルクで煮込んだ料理。

鶏肉、玉子などを添えて、ココナッツミルクのソースをかけ、
サンバル・クレチェッ/Sambal Krecekと言われる、牛の皮を使ったサンバルが添えられています。

インドネシアごはんは、そのルーツが中国やインドなど他国にある料理も多々あるのですが、
グデッグは、ある意味インドネシアの正統派トラディショナルフードです。
グデッグの由来を調べると、マタラム王国がジョグジャの地に都を整備せんと森を切り開いた際に、
沢山のジャックフルーツの木と椰子の木があったから、という説が出てきたりします。
16世紀も終わり頃の話しですかね。
材料や調理方法などを見ても、とても土着感のある料理です。

ジャックフルーツ Bandung_West Java, 2017

ジャックフルーツは、日本語だと波羅蜜と呼ばれることもある、南アジア原産の果物。
大きな木の幹から、脈絡ない風に大きな実がなるのが特徴です。
森を切り開き、沢山の若いジャックフルーツの実がゴロゴロ採れて、
じゃあもったいないし、料理してしまおうか、となったのがグデッグなのかもなと思うと、なんだか微笑ましい。

で、このグデッグがまた、甘い。
(先の強制栽培制度と甘さの関係の話しが本当であれば、グデッグが甘くなったのも19世紀後半なのでしょうが)
甘さ控えめと言われたお店でも、やっぱり甘い。
西ジャワの味になれた舌には、とても不思議な感じなのです、その甘さ。
「甘い甘いと思っていたけど、やっぱり甘いね中部ジャワ」と甘さの印象を強めたのがこのグデッグでした。

なので。

今回、ジョグジャカルタから汽車で1時間ちょっとのソロ(スラカルタ)という街でグデッグを食べてびっくり。

甘くないんです(それほど)。

グデッグ Solo_Central Java, 2017

構成はジョグジャカルタのグデッグと同じなのですけどね。
この牛肉っぽく見えているのが、調理された若いジャックフルーツです。
その横によけているのが、鶏。向こうが玉子。

そして、その向こうにサンバル・クレチェッ。

グデッグ Solo_Central Java, 2017

サンバル・クレチェッは、干した牛皮を戻してから調理しているのですが、
独特の「うにうに」した食感がちょっとクセになる感じです。

ちなみに、ソロのグデッグは鶏の足がついてくる、のが有名?なようなので頼んでみました。
食べるとこもたいしてないのに、なんでみんな頼むのかなあ、とか思いつつ、
ついつい手が伸びて、なんとなく前歯でほりほり食べてしまう。

鶏の足 Solo_Central Java, 2017

美味しかった(笑)。

で、サンバルは唐辛子を使っているので辛いですが(でも、レシピを見ると椰子砂糖も使ってます…笑)、
それ以外も、ジョグジャカルタのグデッグに比べると、甘さ控えめなのです。

在中部ジャワの友人曰く、
「甘いのはジョグジャカルタからマゲラン地域が中心、ソロはそれほどでもない」のだそうです。
中部ジャワでひとくくりにしてはいけませんね。
北側と南側で味の違いがある、それだけでなくもっと細分化された地域差。
面白いなあ。

ということで、甘いばかりじゃない!と分かった中部ジャワの、美味しかったスープたちのお話を次回。

最後に。
あの「ジャワカレー」のジャワはあくまで「イメージ」です。
と、ハウス食品さんがおっしゃっています。

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