2023/04/07

ロンボクの食卓③

 
アヤム・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

ということで、ロンボクのごはん、最終です。
ロンボクのごはんはアヤム・タリワン/Ayam Taliwangのみにあらず、と言いつつ、
やっぱり、アヤム・タリワン食べないと、ロンボクに来た感はないですよね。というくらいの名物料理です。

アヤム・タリワンの屋台 Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

厳密には、タリワンというのはロンボクの東隣、スンバワ島の地域の名前なのです。
そのタリワンの人たちが移住してきたロンボクのマタラム市内の一地域、
そこで「タリワンのチキン」として売られ始めて定着したもののようです。

友人の夫さん曰く、ロンボクに限らず、インドネシアで「アヤム・タリワン」を名乗れるのはタリワン出身者のみ。
彼らは、味付けのどこかの段階でそっと裏に回り人目に触れないよう調合してくる秘伝のレシピがあるらしく、
それあってこそのアヤム・タリワンなのだそうです。
その秘伝がどういう調合なのかは、部外者なので知る由もなく。ただ、基本的な調味はそれほど複雑ではない印象。
ただ、それなのに、すごーーーく、美味しいんですよねえ。うふ。

アヤム・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

まず、下味をつけたチキンを下揚げします。

アヤム・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

そして、金槌で叩く。ちょっとびっくり。
肉を柔らかく味がしみやすくするために叩くのだそうです。

そして、焼き網に挟み、炭火で炙り焼きにします。

アヤム・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

頃合いに一度引き上げ、再び金槌でたたきます。
ちょっとやりたい。

そして、タレをかけて再び炭火の上に。

アヤム・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

じっくり焼きながら、さらにタレ。
ここでつけるタレは(赤く見えますが)基本的に辛味はほとんどないのです。
このままなら、アヤム・バカール・マドゥ/Ayam Bakar Madu(マドゥ=ハチミツ)と呼ばれます。

アヤム・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

甘みがあるタレをじっくり炙り、いい感じの焦げが出てきて焼き上がり。

タリワン、今までは鶏肉のものしかイメージがなかったのですが、お魚もあると知ってうきうき。
魚と鶏の両方を買ってもらって、友人宅での晩ごはんにいただきました。

イカン・バカール・タリワン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

こちらが魚のほう。上に乗ってる緑の粒は、絞った柑橘の種。
魚も鶏のように叩くの?と聞いたら「そんなことしたら身が崩れる、笑」と返ってきました。
そうよな。

タリワンのサンバル Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

焼いたままの辛味のないタリワンに添えられるのが、すっごく辛いサンバルと、ほどほど辛いサンバル。
緑のは、前回の記事に書いた緑小茄子のベベルックです。これもしっかり辛い。
柑橘の風味+動物性蛋白質の旨味+香ばしく焦げた甘めのタレ+旨辛のサンバル+フレッシュ辛味のベベルック。
最高ですよ、そりゃあ。

そんな日の晩ごはんの献立。

ロンボクごはん Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

青い容器に入ってる緑色のは、これまた前回のレラスック。
その隣の上にあるのがオラオラ/Orah Orahと呼ばれる青野菜のココナッツ煮。
ゼンマイ、四角豆、もやしなどと、唐辛子、トラシ、ニンニクで風味付け、ココナッツミルクで煮ます。
さっと調理されて、でも優しく美味しい。

オラオラ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

お料理教室をしてくれた義姉さんが調理したものを分けてもらったのでした。
ちょっと唐辛子の赤みが見えますが、辛味はほとんどなく、使っているココナッツミルクもさらっとした感じ。

そして、オラオラの下のスープはクラック・レブイ/Kelaq Lebui。

クラック・レブイ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

レブイと呼ばれる黒豆、コマック/Komaqと呼ばれる小さな豆(①の中でプレチンにしてます)
そこに空芯菜を足して、トマトで酸味、青ネギと唐辛子と、トラシと、レンクアス、ニンニクで風味を。
こういうシンプルな野菜料理、しみじみ美味しいです。
これも、義姉さん宅で作ってくれたのを持ち帰ったのでした。

クラック・レブイ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

ざっと材料を聞いていると、結構シンプルなんですよね、調味料は。
スパイスも控えめで、シャロットもジャワやバリでは必須ですが、ロンボク料理では使わないものも多い印象。

ただし、サテは別。
サテ・ルンビガ/Sate Rembigaと呼ばれるロンボクのサテはスパイス等でしっかり下味つけた刺激的な美味しさ。

サテ・ルンビガ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

基本的に肉は牛肉使用。
胡椒を効かせ、唐辛子、タマリンド、椰子糖、コリアンダーシード、ニンニクなど、で浸けダレを。
店によっては、このタレにパイナップルを使うところもあるようです。
肉の繊維を柔らかくしてくれるんでしょうね。

このたっぷりな赤いタレを纏ったお肉を、炭火でじゅうじゅう。

サテ・ルンビガ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

サテ・ルンビガ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

胡椒の刺激というのがたまりませんね。

レバー、つみれはさらにパンチのある辛味。
つみれの方は、サテ・プスット/Sate Pustと呼ばれます。

サテ・ルンビガ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

サテ・プスット Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

で、このサテ屋さんで注文してもらった、スープがベバルン/Bebalung。

ベバルン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

深みがあるのにスッキリした、牛の肋かな?のスープ。
牛のスープ自体はインドネシア各地で決して珍しいものではないのですが、この滋味深い味わいは、なかなか。

材料は、ニンニクやシャロットに生姜やターメリックなども加え、
スパイスとしてはコリアンダーシードとホワイトペッパー。
それをじっくり煮込んでは、浮いてきた油を地道に取り除いていくのだそうです。
確かに、肉の旨味はしっかりしているものの脂っ気はほとんどありません。ああ、また食べたい。

ベバルン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

それから、友人宅で出してもらった他のおかずを、あとちょっと。

これ、本当に美味しくて感動だった。
ぺぺス・タイン・ラレ/Pepes Tain Lale。
ぺぺスはバナナの葉で包んだ蒸物の相性、タイン・ラレ=タイ・ミニャック=ココナッツオイルの搾りかす。
そう、ココナッツオイルを絞った後のココナッツの果肉部分を再利用しているのです。

ぺぺス・タイン・ラレ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

ココナッツオイルの搾りかすって、香ばしくてうっすら甘くて、美味しいんです。
それを料理に使っている。
じわーんとした甘みと、油分による味の奥行き。

ぺぺス・タイン・ラレ Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

基本の調合は、ココナッツオイルの搾りかすに、緑の唐辛子とクマンギ/Kemangi(レモンバジル)。
それに、水茹でした魚をほぐして混ぜたもの(上)、と干しエビを混ぜたもの(下)。
ちゃちゃっと白ごはんと合わせて口に放り込むと、旨味や甘味で「ほー」となります。

リックリック・ケロール Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

それからもう一つ。
モリンガ(=ケロール/Kelor)の葉と緑の小茄子をココナッツと煮込んだリックリック・ケロール/Lik Lik Kelor。
これはもうほんと、優しい味。毎日食べられる系。

モリンガは、わが家のような標高が高めな地域だと育ちにくいのでなかなか手に入りません。
でも、ロンボクをはじめ、標高の低い島々では、生垣のようにカジュアルに庭に植えられていて、
日々のご飯に役立つんですよね。羨ましいです。
モリンガも、ゼンマイも、空芯菜も、筍までも、その辺で採れるよ、と友人の夫さん。

ということで、ロンボクの食卓、3回で終了です。
今回は、とにかくお家でのごはんを満喫させてもらいました。
旅で訪れた先で、郷土料理はレストランで食べられますが、
その土地の家庭料理というのは、届きそうでなかなか届かない、あこがれのようなもの。
それをじっくり堪能させてくれた友人夫婦に、心からの感謝を。

ロンボクごはん Lombok_West Nusa Tenggara, 2023

お腹も心も、満ち足りました。