2016/12/20

ハーブ/Herba

ハーブたち

香りのいい葉っぱたち。

インドネシアのごはんと言うとスパイスたっぷり、なイメージがありますが、
ハーブの印象はそれほど強くないかもしれないですね。
例えばベトナム料理のように香草をふんだん使う料理は確かにあまりなく、
人気のパクチーも、インドネシアではほとんど登場しません(種はスパイスとして使われます)。
インドネシアで使われているハーブ類は、タイやフィリピンのような他の東南アジア地域でも使われていますが、
違いと言えば、インドネシアでは主にスープなどを煮込む際に肉や魚の臭い消しとして使われ、
途中で捨てられてしまう場合が多いこと。ハーブをそのまま口にすることはそれほど多くない気がします。
とはいえ、表だってではなくとも料理の裏方として活用され、あるとないとじゃ大違いなのが、さすがの香草。
使われるものは地域ごとに差がありますが、今回は比較的全国で一般的に使われている種類をご紹介します。

まず、パンダン/Pandanの葉。

パンダンの葉

インドネシアに来た人は、
この葉っぱそのものを意識するより先に、その香りに触れることの方が多いかもしれないですね。

ニオイタコノキ、もしくはパンダナスと呼ばれるこの葉っぱ。
東南アジアでは各地で料理、特にお菓子作りに使われています。
そのままではただのしゅっとした葉っぱなのですがが、加熱するとふんわり独特な甘い香りがたちます。

パンダン

甘いお汁粉や、焼き菓子。あらゆるところで、このパンダンの香りに出会います。
緑色をしたお菓子を見かけたら、まずこのパンダンの色と香りだと思って間違いないかもしれません。

インドネシアではお米を炊くときに使う場合もあります。パンダンの香りの白ご飯。

わたしの中では、インドネシアのイメージととても強く結びついた香りです。
まあ、パンダン自体は道ばたに無造作に植えられているのが常なんですけどね。

パンダン

続いて、セロリ/Seledri。

セロリ

日本でスープセロリ/キンサイとして売られている品種と同じだと思います。
茎が細く緑で、葉の香りがとても強いタイプです。
単独で食べられることはほとんどないのですが、
スープなどで香り消しに使ったり、薬味として浮かせたりされます。
ちなみに、わたしは使い切れなかった分をきんぴらにします。ごま油や醤油にも負けない香りなのです。

つづいてクマンギ/Kemangi。

クマンギ

レモンバジルと呼ばれているもので、その名の通り、レモンに似た爽やかな芳香。
東インドネシアなどの海辺の地域では、魚を使ったスープに入れて生臭さを消します。
西ジャワ地方では、料理の付け合わせのようにして生のままサンバルと一緒に出て来ることでお馴染み。
口の中をすっきりさせてくれます。

このクマンギ、なんとなく1種類ではないのではという気が常にしているのですが、未だによく分かりません。
この上の写真のように、葉に厚みがあって大きくたっぷりしたものもあれば、
うちの庭に生えているクマンギは、もっと葉が小振りで細いのです。

クマンギ

もしかしたら、単に土の栄養状態の問題なのかもしれませんが。

次は、コブミカンの葉/Daun Jeruk Purut。

コブミカンの葉

2枚がつながったような形のが特徴の葉っぱ。柑橘系のとてもいい香りです。
スープのでの臭い消しはもちろん、細く細く刻んで揚げ物の衣に混ぜて風味を出したり、
バリのサンバル・マタ/Sambal Matahにも入っている時があります。

レモングラス

そしてレモングラス。インドネシア語ではセレイ/Sereiと言います。
根元に近い方を叩いて香りが出やすいようにして使います。
これもやはり、肉などを煮込む際の臭い消しが主な用途ではありますが、
西ジャワ地方のバンドレック/Bandrekという、生姜と椰子砂糖を使った温かくて甘い飲み物にも使われてます。

レモングラスは強いので、この根元の部分をぐさっと土にさしておくと根付きます。
パンダン同様、道ばたにわさわさと生えている場合が多いハーブですね。

そして最後に、サラムの葉/Daun Salam。

サラムの葉

英語でサラム・リーフもしくは、インドネシアン・ベイリーフと呼ばれるこの葉っぱ、
用途はやはり主に臭い消し。
他のハーブに比べて、それほど強いわけでも特徴的なわけでもない香りだと思うのですが、
(わたしは、ドクダミの香りに似ていると思うんですけどね)
使うと風味に深みが出る気がします。
煎じたら通風の薬になるとも言われています(民間療法)。

ざざっとインドネシアのハーブをまとめましたが、
例えばスマトラだとカレーの葉とか、ターメリックの葉なども使われるといいますし、
他の地域にもやはりそれぞれ、独特のハーブはあるのだと思います。
その辺りは、また追々、ご紹介しますね。




2016/12/17

球根野菜/Bawang

球根野菜

風味の素、美味しいの素。

インドネシアの球根野菜はバワン/Bawangと呼ばれますが、
バワンなくしてインドネシアごはんは成り立たないのではないかというくらい、必須のもの。
育った葉の方(つまり青ネギ)も、ダウン・バワン/Daun Bawang、つまり葉のバワンと呼ばれるのですが、
今回は、球根の方をまとめてご紹介します。

まず基本中の基本。バワン・メラ/Bawang Merahとバワン・プティ/Bawang Putih。

バワン・メラは小さな赤タマネギ。シャロットと呼ばれるものですね。
中央アジア原産の、世界最古の栽培植物の一つだと言われるこのバワン・メラ。
生のままだと辛味爽やか、そして炒めたら素晴らしく香りよいこの野菜は、あらゆる料理に使われています。
結婚式などの料理を自分たちでした翌日、
わが家に通ってくれているメイドさんは、バワン・メラを何キロ剥いたか、笑いながら話して聞かせてくれます。
そのくらい沢山の料理を作ったんだよ、ということなのでしょう。

元々インドネシアではバワン・メラだけが使われていて、
後から華人によってバワン・プティ、つまりニンニクが持ち込まれたのだと言われています。
旨味と芳醇な香りのバワン・プティですが、インドネシア一般で香りが強すぎるのは好まれないらしく、
基本の配合としては、バワン・メラが3に対して、バワン・プティが1くらい。

球根野菜

タマネギはバワン・ボンバイ/Bawang Bombayと呼ばれ、使われもしますが、
バワン・メラの方が香りも味わいも強いため、
置き換える場合には、バワン・メラ1に対して、タマネギは2くらいが目安だそうです。

さて、バワン・プティですが、
一般的なのは、日本でもみかけるような房になったもので、多くは中国などからの輸入なのですが、
地元で採れるものに、房になっていないバワン・プティ・トゥンガル/Bawang Putih Tunggalがあります。
あります、と言っても、あまり見かけることもないのですが。

バワン・プティ・トゥンガル

インドネシアでも限られた地域でしか栽培されていないらしいバワン・プティ・トゥンガル。
英語ではソロ・ガーリックと言われ、中国やインドの一部地域で食されているようです。
香り風味ともに、通常のニンニクより強く豊かなのですが、
インドネシアでは調理に使うというよりは、健康効果を期待して薬的に摂っているようです。
高血圧に効くとか、他にも色々効果があるのだそうですよ。

それから、最後に、薬効のあるバワンつながりでもうひとつ。
バワン・メラ・フタン/Bawang Merah Hutan、もしくはバワン・メラ・ダヤック/Bawang Merah Dayak。
森のバワン・メラ、ダヤックのバワン・メラと呼ばれる濃い赤色をした球根野菜。
見た目はバワン・メラに似てはいますが、味は全く異なり、バワンの風味もありません。

バワン・メラ・フタン

和名はもとより英名も分からず、学術的にはEleutherine palmifoliaと言う、ということしか分からないのですが、
これまた幾多の薬効が言われていて、抗がん作用があるとか、糖尿に効くとか、その真偽は分かりませんが、
いずれにしても、これも調理されるのではなく、煎じたり粉末にしたりして薬のように摂るようです。
齧ってみたら、ちょっと苦い味がしました。

ということで、ざざっと、インドネシアの球根野菜のご紹介でした。


2016/12/13

バナナ/Pisang ②


市場のバナナ Sangir_North Sulawesi, 2015

先日、インドネシアのバナナについてご紹介しましたが(種類はまだまだあるのでいずれまた追加します)、
今回は、そのバナナの加工品について。

これもまた、バナナの種類に負けず劣らず色々あるのですが、とりあえず、身近なものから。

インドネシアでバナナを使ったおやつと言えば、まずはピサン・ゴレン/Pisang Gorengです。

ピサン・ゴレン Bandung_West Java, 2016

ゴレンとは「揚げる」こと。つまり、バナナに何かしらの衣をつけて揚げたものです。

一番初めの記事で、インドネシアのごはんはひとくくりに出来ない、ということを書きましたが、
それでも、インドネシア料理の共通点を探すとしたら、
調理法として「揚げる」ことが多用される、という部分かもしれません。
特におやつとしてのゴレンガン/Gorengan(「揚げ物」の意味)は、少なくとも私が行った限りでは、
インドネシア各地どこにいっても目にするものです。
そして、インドネシア各地津々浦々に生えているバナナ。
つまりピサン・ゴレンは、インドネシア全国どこででも出会いやすいおやつなのではないかと思います。

ピサン・ゴレン Wakatobi_Southeast Sulawesi, 2015

このピサン・ゴレンは、
南東スラウェシ、ワカトビの小さな離島でお世話になったお家で出していただいたもの。
薄めの、米粉のような衣ですね。

面白いのは、北スラウェシの、もうほぼフィリピンという位置にあるサンギル島で出されたピサン・ゴレン。
サンバル/Sambalがついてきたんです。

ピサン・ゴレンとサンバル Sangir_North Sulawesi, 2015

サンバルは、インドネシア各地色んなバリエーションがあるチリソース。
サンギル島は、料理の面ではインドネシアの中でもとりわけ辛い味付けで知られるマナドに類似します。
なので、このサンバルも、フレッシュチリがたっぷり入った、かなりの辛さ。
甘いピサン・ゴレンに辛いサンバル。この組み合わせ、結構、クセになります。

ピサン・ゴレンに使われるバナナの種類は色々。
クポックが一般的ですが、ムリ/Muliと言われるマスに似た小さなバナナもよく使われます。

同じ揚げるのでも、こちらは春巻き風。

ピサン・アロマ Bandung_West Java, 2016

ピサン・アロマ/Pisang Aromaと言われ、西ジャワ州バンドンでよく見かけるおやつです。
春巻きの皮に、バナナ(クポック、ムリ、ナンカ、など)を巻いて、パリパリに揚げたもの。
トッピングとしてチョコレートやチーズが入っている場合もあります。
余談ですが、この、バナナ+チョコ+チーズ、という組み合わせは割とよく見かけます。
オランダの影響なのでしょうかね。

そして、更に、揚げると言えば。そう、バナナチップスです。

クリピック・サレ・ピサン

この茶色くてカールしているバナナチップスはクリピック・サレ・ピサン/Keripik Sale Pisang。
クリピックというのは、いわゆるチップスです。
バリンとした歯ごたえもよく、噛むとバナナの甘さと酸味がじんわりくるこのバナナチップス。
熟したバナナを使い、基本的には砂糖等は使っていません(お店によりますが)。

サレというのは、後ほどご紹介しますが、干しバナナのことなのです。
ただ、このクリピック・サレ・ピサン、調べても干してるという話しは聞かないんですよね。
揚げるという作業によって、水分が飛ぶ、その状態をサレと呼んでいるのかもしれません。
ちなみに、同じ熟したバナナを使ったものでも、
輪切りにした場合、単にクリピック・ピサン/Keripik Pisangと呼ばれることが多いように思います。
繊維に沿って切っているクリピック・サレ・ピサンより、輪切りの方が歯ごたえは軽くなります。

更に、甘いクリピック・ピサンで私が大好きなのが、南スマトラのランプン名物のこちら。

Yen Yenのクリピック・ピサン(チョコ)

Yen Yenというメーカーのもので、味はいくつかバリエーションあるのですが、おすすめはこのチョコ味です。
笑ってしまうくらいみっしりと、チョコパウダーがついているんですね。
ナチュラルな甘さなクリピック・サレ・ピサンとは対極ですが、これはこれで美味しいのです。

さて、次は、若いバナナを使ったクリピック・ピサン。

クリピック・ピサン Bandung_West Java, 2016

甘くなくて、むしろ塩味。これがまた止まらなくなる美味しさ。
パリパリとした軽さも魅力で、大好物です。

クリピック・ピサン Bandung_West Java, 2016

おじさんが、売っている市場のその場で揚げています。

クリピック・ピサン Bandung_West Java, 2016

たっぷりの油の中に、スライサーで薄くした青いバナナが投げ込まれ、

クリピック・ピサン Bandung_West Java, 2016

じっくりと、頃合いになるまで揚げられます。じゅわーっという音がまたそそるんです。

クリピック・ピサンとピサン・サレ

という、若いバナナと熟れたバナナそれぞれのクリピック・ピサン(上のお皿)。

そして、下のお皿。これがサレ・ピサン/Sale Pisangです。

まず、長い方。サレ・ピサン・バサ/Sale Pisang Basah(湿ったサレ・ピサン)です。
厚みがあって、弾力のある歯ごたえの干しバナナです。
完熟したバナナ(アンボンなど)を適当な厚さにスライスして数日干したもの。
干しながら時々、麺棒などで押して延ばすようにするのだそうです。
伝統的には、煙でいぶして薫製にする方法がとられていたようなのですが、
代替として、亜硫酸水素ナトリウム液につけた後、数日天日干しにする方法も普及している様子。
元々は、中部ジャワのチラチャップ辺りの名物だったようですが、今は他の地域でも見かけます。

そして、薄くて平たい方は、サレ・ピサン・クリン/Sale Pisang Kering(乾いたサレ・ピサン)。
バサと同様、完熟のバナナを使い、バサよりも更に薄くスライスして数日天日干しにした後、
小麦粉の衣をつけて揚げたものになります。
干しバナナなので、普通のピサン・ゴレンよりも締まった歯ごたえなのが特徴ですね。

続いては、ピサン・ヒジャウ/Pisang Hijau。青(緑)いバナナという意味です。

ピサン・ヒジャウ Bandung_West Java, 2016

ラジャ、カポック、タンドゥックなどの加熱用バナナを、まずは蒸して、
そして緑色に着色した米粉でくるんで再び蒸したもの。
氷とともに甘いシロップに入れて出されることが多い、冷たいおやつです。

追記:
読んだ方が教えて下さったのですが、
ピサン・ヒジャウはバリだとピサン・ライと呼ばれるんだそうです。面白い。
ピサン・ヒジャウだと緑のバナナそのものを指すそうで。
同じものでも地域で呼び方が変わるのも、インドネシアだとたまにある話しです。

そして、バンドン名物のピサン・ボレン/Pisang Bolen。

ピサン・ボレン

パイ生地にバナナを包んだもの。
バナナだけのものの他に、チョコレートやチーズが入ったものもあります。
同じパイ包みのバナナでは、
ゴレンガン屋台でもよく売られているピサン・モレン/Pisang Molenというのもあり、
何が違うの?と聞くと、大きさ、という答えでした。ボレンの方が大きいんですね。

またまた余談ですが、うちで以前飼っていた犬は、
仔犬の頃、丸まって寝ているその形も色もまるでこのお菓子みたいだったお陰で、
そのまま「ボレン」と名付けられました。
このお菓子を食べると、ボレン(犬)のことも自動的に思い出し懐かしくなります。

話しをバナナにもどし、最後に、ピサン・ルブス/Pisang Rebus。茹でバナナをご紹介。

ピサン・ルブス

これは、庭で取れたクポックを茹でたもの。
熟れたものと、まだ未熟のもの、両方それぞれ茹でてみました。

クポックは、前回食べ比べた時にも書きましたが、熟れてもそのままだと若干青臭さを感じます。
それが、加熱されることにより甘さと酸味が強くなり、美味しくなるのです。
茹で時間は30分と、結構長め。茹でてる間にアクも出るので、お鍋を洗うのが大変でした。

一方の未熟バナナの方。これは、ちょっと、思ってた味になりませんでした。
中途半端に甘みが出てしまって、どっち付かずの味。何が悪かったのかなあ。

未熟のクポックを食べたのは、東ヌサトゥンガラ地方のフローレス島。

ピサン・ルブス(未熟クポック) Flores_East Nusa Tenggara, 2016

泊まったコテージで(暇だったらしく)、スタッフたちが近くの島にピクニックに行くと言って誘われ、
お供させてもらった時にお弁当として持ってきていたのが、茹でた未熟クポックだったのです。
食感も味も、バナナというより芋。
粘りこそないですが、里芋に近い締まった食感と淡白な味でした。
お弁当のおかずだったお魚と一緒にサンバルをつけて食べるのにちょうどいい感じ。
果物という感じはもうなくて、その野菜のような味にちょっと感動したのでした。

ピサン・ルブス(未熟クポック) Flores_East Nusa Tenggara, 2016

お腹にもたまる、茹でクポック。こんどまた挑戦してみます。

そんな具合で、バナナ加工品。
この先もどこかに行って新しいものを見つけるのでしょうが、その時はまた、改めて。

今回ご紹介したそれぞれの味に出会った場所は、↓のような感じです。



ピンク:ランプン、赤:バンドン、水色:チラチャップ、紫:フローレス、黄色:ワカトビ、緑:サンギル


2016/12/05

テンペ/Tempe

テンペ

テンペ、食べたことはありますか?

テンペ/Tempeはインドネシア発祥の大豆の発酵食品で、最近では日本でも売られていたりしますよね。
英語だとTempehになります。最後の「h」はどこからきたのか、ちょっと謎です。

全体を真っ白に覆っているのはカビ(クモノスカビ)の菌糸。
アジア各地に大豆発酵食品は色々ありますが、
その中で塩を含まないものは、納豆とテンペくらいしかないのだそうです。
若干の風味はあるものの、例えば納豆のような個性的な香りがあるわけではなく、
いたって食べやすいのではないかと思います。
発酵を経ているため消化吸収がよく、インドネシア、特にジャワ島の食卓には欠かせません。

市場で売られているテンペ。手に取ると、ぽかぽかです。
発酵プロセスが続いているので、熱を持っているんですね。

市場のテンペ Bandung_West Java, 2016

テンペの起源は不明な点が多く、いつ頃から作られ始めたのか正確なところは分かっていません。
16世紀にはテンペの原型はあったのではないかという説もありますし、
18世紀頃から食べられ始めたのではないかという説もあります。
当初、テンペは黒大豆で作られていたのではないかという説もあり、
そうだとすると、なんだかパンダみたいな白黒のビジュアルだったということになりますね。

いずれにしても、発祥はジャワ島中部のジョクジャカルタからソロ辺り(↓赤丸)ではないかと言われています。



その後、ジャワ人がインドネシア各地に移住する過程で、テンペもその先々へ持ち込まれました。
今でも伝統料理の中でテンペを用いるのは、ほとんどがジャワ島(及び出身)の人々ではないでしょうか。

「テンペ」という名前は、
サグ椰子の粉で作られた白い食べ物の名称であった古いジャワ語「トゥンピ/Tumpi」から来ているという説と、
発酵食品をさす「タペ/Tape」が変化したものではないかという説があるようです。

テンペの作り方はシンプルで、
浸水した大豆の皮を除いて加熱し、あら熱をとったところに菌を植え付けて、
バナナの葉や小さく穴をあけたビニール袋に詰めたら約2日寝かせて出来上がりです。
菌は元々、ワル(ハイビスカスの一種)やチークの葉から採れるものだったそうですが、
今は粉末状の菌が市販されているのでそれを使うのが一般的です。
黒く見える部分があったら、それは胞子が出てきている状態。味は落ちます。鮮度が大事ですね。

大豆をごろっと使うのが一般的なテンペですが、他にも、
豆腐を作った後のおからを使ったテンペ・ゲンブス/Tempe Gembus、
ネムノキの実ラントロを使ったテンペ・ラントロ/Tempe Lantoro、
コロ豆を使ったテンペ・コロ/Tempe Koro、
油を搾った後のピーナッツのおからを使ったテンペ・ブンクル/Tempe Bungkulがあります。

テンペとオンチョン Bandung_West Java, 2016

ちなみに、市場のテンペ売り場ではよく一緒に売られているオレンジがかったカビのもの。
テンペ以上に見事なカビっぷりに驚きますが、
特に西ジャワ地方で好まれるオンチョン/Oncomと言う、おからにアカパンカビをつけて発酵させたものです。
油で揚げたり、サンバルに使ったりされます。

テンペに話しを戻して、その食べ方ですが、生食はせず、加熱調理されるのが基本です。

売られているテンペの形状は、バナナの葉もしくはビニール袋に入った長方形のものが主ですが、
他にも、調理法に合わせていくつかのバリエーションがあります。

テンペ色々

真ん中のものが基本形。
左側の薄いテンペは、中部ジャワ名物のテンペ・ムンドアン/Tempe Mendoanという、
調味料を混ぜた衣をつけて揚げた、天ぷらのようなテンペ料理用のもの。
一包み一枚に見えますが、実は真ん中にバナナの葉が挟まっているのでこれで2枚入り。
とても薄くぺらんとしたテンペです。
右の三角のテンペは、中部ジャワでよく食べられるテンペ・バチャム/Tempe Bacem用のもの。
バチャムは豆腐でも作られますが、濃い茶色をして甘みの強い煮込み料理です。

おかずとしてだけでなく、スナックにもなるテンペ。
薄く薄く切ったテンペを味付けて揚げたクリピック・テンペ/Keripik Tempeは、
パリパリとした歯ごたえが美味しいチップスです。

クリピック・テンペ

ジャワ島に暮らしている者にとっては、もうすっかり日常に馴染んでいる感のあるテンペ。
わたしも大好きです。追々、食べ方も紹介していきますね。





2016/12/03

パパイヤの花炒め/Tumis Bunga Pepaya

パパイヤの花 Bandung_West Java, 2016

庭でパパイヤの花を収穫しました。

パパイヤ/Pepayaは、バナナ同様、熱帯地域なら世界どこででも見かける果物ですが、
原産は熱帯アメリカ(メキシコから南アフリカ大陸北部)なのだそうです。
インドネシアでも、どの地方に行っても、庭先もしくは道ばたにパパイヤの木。
乾燥が強く、キャッサバとトウモロコシくらいしか育たないような石灰質の島であっても、
庭の片隅でしっかり実を付けていたりする、頼もしい果樹(時に草に分類されることもあります)です。

そんな、よく育つパパイヤ。
以前、ハワイに行った時に食べたパパイヤがとても美味しくて、その種を庭に撒き収穫したこともあります。
食べて美味しかったら種をとっておいて撒いてみる。なので、うちの庭には何本ものパパイヤの木が。

パパイヤ Bandung_West Java, 2016

ですが、全てのパパイヤの木が結実するわけではないんです。
メス花、もしくは両性花の木であれば、結実しますが、オス花の木は当然ながら花だけ。
そしてそれは、花芽が出るくらいまで育てないと分からないんですね。

ですが、オス花の木にあたったからといって、がっかりすることはありません。
インドネシアでは、パパイヤの花も食材。美味しく食べられます。

オス花のパパイヤ Bandung_West Java, 2016

パパイヤの花炒め、というとインドネシアでは北スラウェシのマナドが有名ですが、
なんのなんの、スンダ(西ジャワ)地方でも売られていますし、わが家でもしょっちゅう作っています。
(マナドは、↓の丸のところです)



パパイヤの「花」と言っていますが、食材として使われるのは「蕾」の状態。開く前が美味しいです。

カツオの薫製や、ジャコのような小魚を一緒に炒める場合が多いパパイヤの花。
苦みのある食材(そこが美味しい)なので、その苦みを中和するために魚の風味を合わせるのかもしれません。
パパイヤの葉や空芯菜、クマンギ(レモンバジル)を一緒に炒める場合もあります。

ただ、今日の我が家には魚とクマンギはなく、そして花だけで十分な量があったので空芯菜なども足さず、
ありものだけの、とってもシンプルな炒め物になりました。
ということで、ご紹介するレシピは「今日の、パパイヤの花炒め」。ゆるい感じです。
別の時にはまた別のレシピだったりしますが、それが家庭料理だということでご了承ください(笑)。
分量も、お好みに応じて調整してください。

[今日の、パパイアの花炒め]
パパイヤの花:茎を除いて350gほど
グアバ/Jambu Batuの葉:3枚
シャロット/Bawang Merah:6個
ニンニク/Bawang Putih:3個
唐辛子(チャベ・クリティン)/Cabai Keriting:2本
炒め油/Minyak Goreng:適量
魚醤/Kecap Ikan:適量
白胡椒/Merica:適量

ニンニク、唐辛子、シャロット Bandung_West Java, 2016

パパイヤの花の苦みに魚の風味がよく合うのはたしかなので、わたしはいつも味付けに魚醤を使います。
インドネシアでも、魚醤はケチャップ・イカン/Kecap Ikanと呼ばれ、使われているのですが、
スーパーマーケットなどで売られているのを見る限り、ほぼタイ製で、
なのでまあ、つまりナンプラーってことでいいと思います。

では、まず下準備からです。

1. 花を茎から外す
茎はもちろん、花房の付け根の部分も食感が悪いのでできるだけ取り除きます。
取り除いたら、流水でよく洗います。
苦さが美味しいパパイヤの花ではありますが、そのままでは美味しいにはほど遠い強烈な苦みなのです。
切り口からしみ出すアク(樹液)をまずはきれいに洗い流すことが、苦み除去の第一段階です。

パパイヤの花とグアバの葉 Bandung_West Java, 2016

2. グアバの葉と一緒に茹でる
そして、下茹でとなるのですが、これも苦み除去(というか軽減ですね)が主目的になります。
うちのメイドさんは、そして市場でパパイヤの花を売っているおばちゃんも、
「グアバの葉と一緒に3回茹でるの」と言います。
グアバの葉には、パパイヤの花の苦みを吸収する効果があるのだとか。ちょっと切れ込みを入れてみたりして。

ちなみに、タマリンドを加えて茹でるというやり方も聞きます。酸味を使って苦みを消すんでしょうね。
ただ、タマリンドの茶色が花の色を悪くしてしまうので、わたしは使っていません。

パパイヤの花(下茹で) Bandung_West Java, 2016

沸騰した湯の中にパパイヤの花を入れると、蕾の中の空気がはじけるプツプツという音がします。
この音、大好きです。

適時お湯を替え(2、3回)、味見をしてみて柔らかく、そして好みの苦みになるまで茹でます。

茹でている間に、シャロットとニンニクは薄切りに、唐辛子は斜め切りにしておきましょう。

パパイヤの花(下茹で後) Bandung_West Java, 2016

茹で上がりです。水気を切っておきます。

3. 炒める
フライパンに炒め油を熱し、シャロットとニンニクを炒めて香りを出します。
いい具合になったら唐辛子を加えてざっと混ぜ、下茹でしたパパイヤの花を加えます。
魚醤も加え(味見して美味しいと思うだけ)、水気を飛ばすよう一気に炒めます。
仕上げに、胡椒をぱらっと。

今日の、パパイヤの花炒め Bandung_West Java, 2016

苦旨い、です。

魚醤は加熱してしまうと魚臭さもそれほど気にならなくなり、旨味といい具合の塩気がでるので重宝します。
魚を加えるときは、唐辛子の後くらいですね。ツナ缶でも美味しいですよ。

パパイヤの花 Bandung_West Java, 2016

ということで、ゆるめレシピ。お試しください。

2016/12/02

バナナ/Pisang

商店のバナナ Bandung_West Java, 2015

バナナの種類が多すぎる。

インドネシアに来た当初から今にいたるまで、ずっと変わらない印象です。

市場で、スーパーマーケットで、道ばたの商店で、リアカーの行商さんまで、ただの果物とは思えないほどに、
とにかくいつでもどこでもみんな揃って、バナナ、バナナ、バナナ。バナナなのです。

そしてそのバナナ、生食用と調理用で、またそれぞれたくさんの種類があります。
みんなそれを、選び分け、使い分けているんですよね。関心します。
(ちなみに「インドネシア人、バナナに細かすぎる」も以前から今まで変わらない印象だったりします、笑)

市場のバナナ売り Magelang_Central Java, 2016

バナナは東南アジア原産だと言われています。
ここから、東はニューギニアを経由し太平洋の島々各地へ。
逆に西へは、インドを経由して東アフリカ、そして西アフリカへ伝わりそこからアメリカ大陸へ。
この広く伝播していった様子からみても、気候さえ合えば育てやすい作物だったのでしょう。
栄養価も高く、食べやすい、そして美味しい。素晴らしい作物、バナナ。

でも、バナナはバナナじゃない。どれも全部美味しいよ(美味しい以上の細かな識別ができない)。

が、正直な感想でもありました。いや、今もかな(笑)。

市場のバナナ Balikpapan_East Kalimantan, 2016

なので、例えばこれだけのバナナを前に、吟味して選んで買っていく人たちをみると、
どうしてそれを選んだの?どう違うの?どう食べるの?と訊きたくなります。

まあ、そういう質問は、バナナを売ってる市場のおじさんとかからも教えてもらえるんですけどね。

バナナ売り Bandung_West Java, 2016

「それは生で食べるんだよ」
「明日くらいからが食べごろだね」
「そっちは茹でるか揚げるかした方が美味しい」
「茹でるのは30分くらいかな。揚げるなら油入れるの忘れずにね」
(最後のはインドネシアンジョークです…)

そんなおじさんの頭上にも、沢山のバナナ。

バナナ Bandung_West Java, 2016

日本で売られているバナナは産地で青いうちに収穫され、室で追熟されてから売られると言いますが、
それは実は産地でも同じことで、木で熟れたバナナというのは味も香りも劣るのだそうです。
なので、室ならぬ店の天井で、こうやって食べ時を待っています。

バナナ Bandung_West Java, 2016

ということで、インドネシアで見かけるバナナあれこれ。
全部は無理なので、我が家のある西ジャワあたりでよく見かける主だったものを。

まずは、調理用バナナから。

ピサン・タンドゥック Bandung_West Java, 2016

ピサン・タンドゥック/Pisang Tanduk。一枚目の写真中央で黄色くなっている大きなバナナですね。
タンドゥックとは「角」。確かに、角のような形状のバナナです。
これはプランテン/Plantainと呼ばれ、世界各地で調理用に使われているのと同一品種。
各地それぞれの調理法は、決して甘いとは限らず、野菜のように料理に使われることもあるようですが、
ジャワではコラックという甘いココナッツミルク煮に使われることが多いです。
毎年ムスリムの人たちが断食を行う季節には、日没近くなると断食明けに向けてコラック売りが現れます。
わたしはムスリムでもないし断食もしないのですが、コラックは食べます(笑)。

ピサン・ナンカ Bandung_West Java, 2016

ピサン・ナンカ/Pisang Nangka。
ナンカはジャックフルーツのことです。他の果物の名前がついたバナナ。
カーブが緩やかで、ちょっとなで肩にみえる形が特徴的ですね。
ピサンゴレン(バナナのフリッター)や、バナナチップスにされることが多いそうです。

ピサン・クポック Bandung_West Java, 2016

ピサン・クポック/Pisang Kepok。短めで角張った、皮の厚いバナナです。
この写真は、我が家の庭に生えていたのを収穫した時のもの。

バナナの木 Bandung_West Java, 2016

サバ/Sabaと呼ばれている品種と同じものになります。
青い状態でも調理されますし、黄色く熟してからも、やはり加熱した方が美味しいバナナです。
(生で食べると、若干青臭さが気になります)

もうひとつ、調理バナナというか、そのままだと食べ難いと言われているのがこちら。

ピサン・バトゥ Bandung_West Java, 2016

ピサン・バトゥ/Pisang Batu。もしくは、ピサン・クルトゥック/Pisang Klutukとも。
石のバナナと呼ばれているこの品種、ムサ・バルビシアーナ/Musa Balbisianaと呼ばれる、
いわゆる野生種に近いバナナと同じもので、種がたくさんあるのだそうです。
石、の由来はこの種なのでしょうね。
味は甘いらしいのですが、食べやすくする為に潰してチリ風味などを足して食べたりするそうです。
種があるのだと後から聞いて、じゃあ買ってみれば良かったと後日市場に戻ったのですが、
次の時にはもう見かけなくなっていました。
糖尿病の薬になるのだと言われています。

さて、続いては生食用の品種。

ピサン・アンボン ピサン・マス

まずは、ピサン・アンボン/Pisang Ambon。上の大きい方のバナナです。
一番メジャーなんじゃないかなと思います。
オランダ産のバナナフレーバーのリキュールの名前にもなっている品種。
若干角張っていて皮が厚いのですが、サイズ味ともに、いわゆる「普通のバナナ」です。

そして、下の小さいのがピサン・マス/Pisang Mas。金のバナナと呼ばれる品種です。
レディ・フィンガーとも呼ばれ、小さくて皮も薄くぱくっと一口で食べられるのも魅力。

と、ここでうちのメイドさんが「アンボンとマス。まあ、普通ですね、その辺は」と言いました。
ほーら、ね、やっぱりバナナの味に細かい。

じゃあ、ということで、続いては彼女のおすすめの2種。

ピサン・アンボン・ルムッ ピサン・ラジャ・セレー

下の大きい方が、ピサン・アンボン・ルムッ/Pisang Ambon Lumut。
ピサン・アンボンというのは、その中にもまた色々細かくあるようで、
熟れても緑のままの品種だったり、果肉が白いものだったりあるらしいのですが、
その中でもこれが一番美味しい!とメイドさんが言うルムッ。
外皮が樹皮状になっていますが、こういうものなのだそう。

そして、右側の小さめのは、ピサン・ラジャ・セレー/Pisang Raja Sereh。
ピサン・ラジャとは王のバナナという意味で、この品種もアンボン同様に色々分類されるのですが、
その中でこのセレーは、フィリピンでもラツンダン/Latundanと呼ばれ、よく栽培されている品種なのだそう。

では。ではでは。
食べ比べてみようではありませんか。

右から、ピサン・アンボン・ルムッ、ピサン・クポック、ピサン・ラジャ・セレー、ピサン・マス

調理用のクポックがちょっと不利ですが、横でいい具合に熟れていたので参加してもらいます。




うーーーーん。バナナの味ですね。

アンボンとクポックは皮が厚め。マスは金のバナナの名の通り黄金色の果肉。外皮は薄めです。
クポックはやはり、生食だと風味がイマイチですね。
アンボン・ルムッ、それからラジャ・セレーは甘さと酸味のバランスがいい。
でも、ですよ。
メイドさんに「普通」って言われてしまった、ピサン・マス。
これが、わたしには一番美味しく感じられたんですけど。
甘さも酸味もそして香りもしっかり強くて、まるでバナナキャンディのようなはっきり加減。
やっぱりさすが金じゃないか!と思ったりして。

まあ、そもそも味覚っていうのはそれぞれだし、
ましてや植物なので、一緒に並べて食べたところで熟れ具合とかに差はあるんですけどね。

市場の果物売り Bandung_West Java, 2016

ということで、本当はバナナ加工品についても…と思ったのですが、
ここまででもうとても長くなってしまったので、それはまた次回ということにします。