2017/01/20

タペ/Tapai(Tape) ①

タペ・シンコン Bandung_West Java, 2017

インドネシアのあまーい発酵食品、タペ。

TapaiもしくはTapeと言われるでんぷん質を発酵させたもの。
シンコン/Singkong(キャッサバ)を使ったものと、餅米/Ketanを使ったものの2種類があります。
わたしが住んでいるバンドンをはじめとした西ジャワ州は、タペ・シンコンの名産地。
土地の言葉で、プユン/Peuyeunとも呼ばれます。
バンドンもしくは西ジャワに行ったらプユンをお土産に、というのは昔からの定番らしく、
観光客がよく来るエリアなどでは、上の写真のようにタペ・シンコンを売っている行商さんをみかけます。

シンコンはでんぷん質を多く含む芋の一種(そのデンプンから出来るのがタピオカですね)。
ラギと呼ばれる菌を加えて発酵させたシンコンをそのまま口に含むと、
確かな発酵臭と酸味、そしてしっかりとした甘みがあります。
バンドンのタペ・シンコンは長く、表面が白っぽく粉を吹いているのが特徴。

タペ・シンコン Bandung_West Java, 2017

店先に吊り下げるようにして売られていることもあるくらい、固めの仕上がりです。
行商のおじさんたちは、発酵の度合いによって売り分けていて、
「今日すぐ食べるならこっち、明日くらいに食べごろになるのはこっち」と教えてくれます。

バンドンの道ばたもしくは市場などで売られているタペ・シンコンはローカルなものですが、
スーパーマーケットに行くと、なぜかキレイに包装された東ジャワのクディリ産のものがあったりします。

タペ・シンコン Bandung_West Java, 2017

中〜東ジャワでは、タペ・シンコンは短めに作られている場合が多いのだそう。
そして、バンドンのもののような白い粉を吹いたものではなく、全体にもっとしっとりとして、
つまむとしゅわっと指が沈むほどに、ふんわり柔らかく発酵しています。吊るすなんてムリなくらいに。

クディリ産タペ・シンコン Bandung_West Java, 2017

口に含むと、舌触りも滑らかで、まるで洋酒を混ぜたカスタードのような甘さと香り。

好みの出るところですし、どちらも甲乙つけがたいのですが、
強いて選ぶなら、わたしはバンドンのしっかり目のタペ・シンコンを選びます。
よく蒸されたお芋のような食感が好きです。

で、そのタペ・シンコン。どのように食べるのか。
「そのままでも美味しいよー」と、行商のおじさんはいいます。確かに。
バンドンや、もう少し山側のレンバンでよく見かけるのは炭火で炙ったもの。

タペ・バカール Lembang_West Java, 2015

タペ・バカール/Tape Bakarと言います。
芯の部分にあたる固い繊維質の部分を除いて軽く押しつぶしてから、表面に焼き色がつくまで炙るのです。

タペ・バカール Bandung_West Java, 2016

で、そこにココナッツ+椰子糖のタレとピーナッツをかけて食べます。素朴なおやつ。

続いて、これはバンドンに限らずで、よくあるのは、エスの具として使われる場合。

エスの中のタペ・シンコン Jakarta, 2015

エス/Esは「氷」を意味するインドネシア語ですが、具沢山かき氷のこともエスと呼びます。
甘いシロップやココナッツミルクの中にうかぶ、つるんとした食感の具たちのなかで、
この微かな発酵味と芋っぽいテクスチャーがあることで、食べ応えがでます。

もうひとつは、焼き菓子にしてしまうパターン。

タペ・シンコンのケーキ Bandung_West Java, 2017

滑らかなピュレ状にしたタペ・シンコンを、バターたっぷりの生地で焼いたもの。

タペ・シンコンのケーキ Bandung_West Java, 2017

スイートポテトにも近いような、しっとりとした焼き菓子です。

仲のいい料理好きの友人は、バターでかりっと焼き上げたタペ・シンコンにミルクカラメルをかけ、
そこに更にバニラアイスクリームを添えて、ディナーのデザートとして出してくれたことがありました。
お腹いっぱいなのにこの高カロリーデザートって!と思ったのに、結局、完食してしまったんですよね。
なんて危険!ということで、今でも覚えているくらいに美味しかったけど、自分では作っていません(笑。

タペ・シンコン Bandung_West Java, 2017

一般的に、タペ・シンコンは西ジャワを中心としたジャワ島が主な生産/消費地だと言われますが、
調べてみると、スマトラでは作られているようです。
南スマトラのランプン、そして西スマトラのブキッティンギなどが出てきました。
ブキッティンギでは(今は知りませんが以前は)タペそのものよりも発酵の際に採れた液の方を好んだのだとか。

タペ自体の発祥地はどうやらインドネシアのようですが、
シンコンのタペは、マレーシアやフィリピン辺りにも見られるんですって。
叶うのであれば、いつか食べ比べしてみたいです。

ということで、タペ・シンコン。
長くなってしまうので、餅米のタペについてはまた次に。

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