2016/12/02

バナナ/Pisang

商店のバナナ Bandung_West Java, 2015

バナナの種類が多すぎる。

インドネシアに来た当初から今にいたるまで、ずっと変わらない印象です。

市場で、スーパーマーケットで、道ばたの商店で、リアカーの行商さんまで、ただの果物とは思えないほどに、
とにかくいつでもどこでもみんな揃って、バナナ、バナナ、バナナ。バナナなのです。

そしてそのバナナ、生食用と調理用で、またそれぞれたくさんの種類があります。
みんなそれを、選び分け、使い分けているんですよね。関心します。
(ちなみに「インドネシア人、バナナに細かすぎる」も以前から今まで変わらない印象だったりします、笑)

市場のバナナ売り Magelang_Central Java, 2016

バナナは東南アジア原産だと言われています。
ここから、東はニューギニアを経由し太平洋の島々各地へ。
逆に西へは、インドを経由して東アフリカ、そして西アフリカへ伝わりそこからアメリカ大陸へ。
この広く伝播していった様子からみても、気候さえ合えば育てやすい作物だったのでしょう。
栄養価も高く、食べやすい、そして美味しい。素晴らしい作物、バナナ。

でも、バナナはバナナじゃない。どれも全部美味しいよ(美味しい以上の細かな識別ができない)。

が、正直な感想でもありました。いや、今もかな(笑)。

市場のバナナ Balikpapan_East Kalimantan, 2016

なので、例えばこれだけのバナナを前に、吟味して選んで買っていく人たちをみると、
どうしてそれを選んだの?どう違うの?どう食べるの?と訊きたくなります。

まあ、そういう質問は、バナナを売ってる市場のおじさんとかからも教えてもらえるんですけどね。

バナナ売り Bandung_West Java, 2016

「それは生で食べるんだよ」
「明日くらいからが食べごろだね」
「そっちは茹でるか揚げるかした方が美味しい」
「茹でるのは30分くらいかな。揚げるなら油入れるの忘れずにね」
(最後のはインドネシアンジョークです…)

そんなおじさんの頭上にも、沢山のバナナ。

バナナ Bandung_West Java, 2016

日本で売られているバナナは産地で青いうちに収穫され、室で追熟されてから売られると言いますが、
それは実は産地でも同じことで、木で熟れたバナナというのは味も香りも劣るのだそうです。
なので、室ならぬ店の天井で、こうやって食べ時を待っています。

バナナ Bandung_West Java, 2016

ということで、インドネシアで見かけるバナナあれこれ。
全部は無理なので、我が家のある西ジャワあたりでよく見かける主だったものを。

まずは、調理用バナナから。

ピサン・タンドゥック Bandung_West Java, 2016

ピサン・タンドゥック/Pisang Tanduk。一枚目の写真中央で黄色くなっている大きなバナナですね。
タンドゥックとは「角」。確かに、角のような形状のバナナです。
これはプランテン/Plantainと呼ばれ、世界各地で調理用に使われているのと同一品種。
各地それぞれの調理法は、決して甘いとは限らず、野菜のように料理に使われることもあるようですが、
ジャワではコラックという甘いココナッツミルク煮に使われることが多いです。
毎年ムスリムの人たちが断食を行う季節には、日没近くなると断食明けに向けてコラック売りが現れます。
わたしはムスリムでもないし断食もしないのですが、コラックは食べます(笑)。

ピサン・ナンカ Bandung_West Java, 2016

ピサン・ナンカ/Pisang Nangka。
ナンカはジャックフルーツのことです。他の果物の名前がついたバナナ。
カーブが緩やかで、ちょっとなで肩にみえる形が特徴的ですね。
ピサンゴレン(バナナのフリッター)や、バナナチップスにされることが多いそうです。

ピサン・クポック Bandung_West Java, 2016

ピサン・クポック/Pisang Kepok。短めで角張った、皮の厚いバナナです。
この写真は、我が家の庭に生えていたのを収穫した時のもの。

バナナの木 Bandung_West Java, 2016

サバ/Sabaと呼ばれている品種と同じものになります。
青い状態でも調理されますし、黄色く熟してからも、やはり加熱した方が美味しいバナナです。
(生で食べると、若干青臭さが気になります)

もうひとつ、調理バナナというか、そのままだと食べ難いと言われているのがこちら。

ピサン・バトゥ Bandung_West Java, 2016

ピサン・バトゥ/Pisang Batu。もしくは、ピサン・クルトゥック/Pisang Klutukとも。
石のバナナと呼ばれているこの品種、ムサ・バルビシアーナ/Musa Balbisianaと呼ばれる、
いわゆる野生種に近いバナナと同じもので、種がたくさんあるのだそうです。
石、の由来はこの種なのでしょうね。
味は甘いらしいのですが、食べやすくする為に潰してチリ風味などを足して食べたりするそうです。
種があるのだと後から聞いて、じゃあ買ってみれば良かったと後日市場に戻ったのですが、
次の時にはもう見かけなくなっていました。
糖尿病の薬になるのだと言われています。

さて、続いては生食用の品種。

ピサン・アンボン ピサン・マス

まずは、ピサン・アンボン/Pisang Ambon。上の大きい方のバナナです。
一番メジャーなんじゃないかなと思います。
オランダ産のバナナフレーバーのリキュールの名前にもなっている品種。
若干角張っていて皮が厚いのですが、サイズ味ともに、いわゆる「普通のバナナ」です。

そして、下の小さいのがピサン・マス/Pisang Mas。金のバナナと呼ばれる品種です。
レディ・フィンガーとも呼ばれ、小さくて皮も薄くぱくっと一口で食べられるのも魅力。

と、ここでうちのメイドさんが「アンボンとマス。まあ、普通ですね、その辺は」と言いました。
ほーら、ね、やっぱりバナナの味に細かい。

じゃあ、ということで、続いては彼女のおすすめの2種。

ピサン・アンボン・ルムッ ピサン・ラジャ・セレー

下の大きい方が、ピサン・アンボン・ルムッ/Pisang Ambon Lumut。
ピサン・アンボンというのは、その中にもまた色々細かくあるようで、
熟れても緑のままの品種だったり、果肉が白いものだったりあるらしいのですが、
その中でもこれが一番美味しい!とメイドさんが言うルムッ。
外皮が樹皮状になっていますが、こういうものなのだそう。

そして、右側の小さめのは、ピサン・ラジャ・セレー/Pisang Raja Sereh。
ピサン・ラジャとは王のバナナという意味で、この品種もアンボン同様に色々分類されるのですが、
その中でこのセレーは、フィリピンでもラツンダン/Latundanと呼ばれ、よく栽培されている品種なのだそう。

では。ではでは。
食べ比べてみようではありませんか。

右から、ピサン・アンボン・ルムッ、ピサン・クポック、ピサン・ラジャ・セレー、ピサン・マス

調理用のクポックがちょっと不利ですが、横でいい具合に熟れていたので参加してもらいます。




うーーーーん。バナナの味ですね。

アンボンとクポックは皮が厚め。マスは金のバナナの名の通り黄金色の果肉。外皮は薄めです。
クポックはやはり、生食だと風味がイマイチですね。
アンボン・ルムッ、それからラジャ・セレーは甘さと酸味のバランスがいい。
でも、ですよ。
メイドさんに「普通」って言われてしまった、ピサン・マス。
これが、わたしには一番美味しく感じられたんですけど。
甘さも酸味もそして香りもしっかり強くて、まるでバナナキャンディのようなはっきり加減。
やっぱりさすが金じゃないか!と思ったりして。

まあ、そもそも味覚っていうのはそれぞれだし、
ましてや植物なので、一緒に並べて食べたところで熟れ具合とかに差はあるんですけどね。

市場の果物売り Bandung_West Java, 2016

ということで、本当はバナナ加工品についても…と思ったのですが、
ここまででもうとても長くなってしまったので、それはまた次回ということにします。


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