2018/01/17

西カリマンタンの食卓

チャイ・クエ Pontianak_West Kalimantan, 2018

ということで、前回の記事での予告(?)通り、西カリマンタンのごはんについて。

いやーーー、美味しかった。美味しかったんですよ。美味しかった!で今回は終了していいくらい。
でもそれじゃあ、あれなので、まあまたつらつらと。

その前に、まず西カリマンタンのどの辺りに行ったかと言いますと。



赤丸の南の方がポンティアナク/Pontianakで、北の方がシンカワン/Singkawangです。
インドネシアの端っこ。
シンカワンから北に向かえばすぐにマレーシアとの国境ですし、
海を横切るようにまっすぐ西に線を引けば、首都ジャカルタより近い距離にシンガポールがあります。

西カリマンタンの人口構成のうち華人が占める割合は15%だと言われます。
インドネシアの人口における華人の割合が2〜3%と言われていますので、かなり突出して多い地域です。
そして、ポンティアナクには潮州系が、シンカワンには客家系の華人が多いのが特徴。
いずれも、福建系が多数派を占めるインドネシアにおいては、ちょっと珍しい感じですね。

そんな土地から、潮州系料理の特徴であるとも言われる米粉を用いた料理をまずはご紹介しましょう。

インドネシア語ではクエ、もしくはクウェという音に置き換えられる「粿」の字、
これがライスケーキを意味するのだそうで、福建語だとKoe、潮州語だとGueと読まれるらしいのですが、
この字に由来する名称が次々と出て来ます。
(ちなみに、インドネシア語で、このクエ/Kueとだけ言った場合「お菓子」の意味です)

まずは、クウェ・キア・テン/Kwe Kia Thengという、幅広米麺料理。

クウェ・キア・テン Pontianak_West Kalimantan, 2018

豚肉とモツを使い、ケチャップ・アシンの塩気と旨味がぎゅっとなったスープが絶品。
見た目の印象ほど味が濃いわけではなく、揚げニンニクも香ばしいスープはしっかり飲み切りました。

クウェ・キア・テン Pontianak_West Kalimantan, 2018

半透明のつるんとした米粉麺、その中でも幅の広めなものを使っています。

クウェ・キア・テン Pontianak_West Kalimantan, 2018

ぴらぴらと。

こういう麺はあまりジャワでは見かけない気がしますね。

クウェ・キア・テン Pontianak_West Kalimantan, 2018

ポンティアナク名物と言われているのこの麺料理ですが、
特にスープと具の構成がよく似たものがバンコクにもあると教えてもらいました。
クイジャップ/クイチャップと呼ばれるそうで、
もう少し幅の狭い米麺であるクウェティアウを巻いたものを使う場合が多いのだとか。
ポンティアナクと同じく潮州系の華人が多いバンコクなので、料理が似てくるのでしょうね。

その、クイジャップ/クイチャップに、名前がよく似ていたのが、こちら。

クウェ・チャップ Pontianak_West Kalimantan, 2018

クウェ・チャップ/Kwe Capといいます。
太い米麺(巻いているのではなくて、大きなマカロニのように太くて中央に穴があいている)が特徴ですね。

クウェ・チャップ Pontianak_West Kalimantan, 2018

その太マカロニ状の米麺に、白いとろりとしたスープがかかっています。
これは、米粉を豚スープで溶いたものじゃないかと思うのですが。そして、揚げニンニク。

ここに別添えの具沢山スープを混ぜるなり、交互に食べるなり、します。

クウェ・チャップ Pontianak_West Kalimantan, 2018

なんて具沢山、なんて素晴らしい。
豚肉、レバー、皮、湯葉、ピーマン、ゴーヤ、茹で大豆、厚揚げ、など。
具はたっぷりですが、スープそのものはあっさりめ。臭みもなく、クリアに。

クウェ・チャップ Pontianak_West Kalimantan, 2018

これは、朝ご飯メニューらしく、昼くらいにはお店はが閉まってしまうのです。
これも、ジャワではみかけたことのない麺料理です。

一方で、インドネシア全土で親しまれている米麺と言えば、クウェティアウ/Kwetiau。

クウェティアウ・ゴレン Singkawang_West Kalimantan, 2018

クウェ・キア・テンほどではないのですが、幅の広めな米麺です。
クウェティアウ自体はどこででも食べられますが、
さすが米麺文化圏(?)での炒めクウェティアウ、海鮮や練り物をふんだんに使い、しみじみと美味。

練り物と言えば、インドネシア全土で親しまれている肉団子のバッソ/Baksoという料理があるのですが、
シンカワンで食べたバッソにも、クウェティアウのような、幅広米麺が入っていました。

バッソのクウェティアウ Singkawang_West Kalimantan, 2018

(バッソについては別途また)

そして、麺以外では、チャイ・クエ/Chai Kueと呼ばれる、米粉の皮で野菜を包んだ蒸し餃子のようなもの。

チャイ・クエ Pontianak_West Kalimantan, 2018

チョイパン/Choipanと呼ばれることもあるこの料理も、このポンティアナクからシンカワンの名物。

チャイ・クエ Pontianak_West Kalimantan, 2018

具は、こちらがベンクアン/Bengkuangと呼ばれる根菜を入れたもの。
日本ではヒカマと呼ばれているらしいのですが、シャキシャキとした歯ごたえが美味しいのです。
もうひとつの緑の方は、たっぷりのニラ。
このチャイ・クエという名称の「チャイ」はおそらく「菜」でしょうから「菜粿」なのかな、と思ったり。

チャイ・クエ Pontianak_West Kalimantan, 2018

チャイ・クエはバナナの葉に乗せられて蒸されるのですが、
まず葉っぱにニンニクのオイル(手前の鍋−ニンニクまみれ、笑)を引いてからチャイ・クエを並べ、
蒸し上がったところに、今度は揚げニンニクごとオイルをかけて出されます。

この揚げニンニク使いが心憎い。これも中国系の料理ならではの「旨味」ですよね。
先のクウェ・チャップや、クウェ・キア・テンにも、いい具合に揚げニンニクがトッピングされていました。
インドネシアの料理ではニンニクは割と控えめで、揚げシャロット(バワン・メラ)の方を好んで使います。

そして最後に、もう一つ「クエ」。

クエ・ハンパン/Kue Hampan。
シンカワンのおやつ屋台で大きな円盤状の型にどーんと作られ、小さく切って売られていました。

クエ・ハンパン Singkawang_West Kalimantan, 2018

土台部分が米粉とココナッツミルクを混ぜて蒸したライスケーキ。
そこに、小さな干しえび(インドネシア語でもEbi)と、刻んだ干し大根をトッピングとして乗せたものです。
大根自体がインドネシアの料理ではあまり使われない食材なのですが、
それを干して刻んでいるというのは初めて目にしました。

この蒸しライスケーキ+干しえび、という料理自体は、シンカワンの他、
ポンティアナク、そして南スマトラのバンカ島にも、類似のものがあるのだそうです。
呼び方は、キアム・コ・クエ/Kiam Ko Kue、クエ・ガンドゥス/Kue Gandus、
もしくはタラム・エビ/Talam Ebiと色々なようなのですが、
干し大根を乗せる、というのがシンカワンの特徴なのかなと、推察します。
また、バンカ島もシンカワン同様に客家系華人が多い島らしく、そういう意味で似やすいのかなとも。

というのが、ざっと、米粉料理でした。

クウェ・キア・テン Pontianak_West Kalimantan, 2018

米粉っていうのは、また不思議ですよね。
日本だと、米粉はお菓子で使うくらいでしょうか。インドネシアのジャワ島も基本は製菓で使うイメージです。
一方で、この中国文化圏、特に稲作が盛んな中国南部はこうして麺などの「食事」にも米粉を使います。
さらに、米粉使いの上手さで言ったら、ベトナムは群を抜いてますよね。
この「米粉文化圏」がまた気になるところで、
そのまま加熱して主食になるものを、どうして、わざわざ粉にして加工するんだろう、と思ったり。
そこに別途、粳米と餅、というのもあるわけなのですが。また追々、文献を探してみようと思います。

ということで、西カリマンタンの「粿」料理について、でした。
その他の料理については、また次回。



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