2017/08/17

バンガイ諸島の食卓⑤

パパイヤの花とサユール・パク炒め Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

バンガイ諸島のお母さんたちのごはん、今日はささっと野菜料理について。
町のお母さんの台所にもどります。

日頃ジャワ島の中でも、恐らくインドネシア全国でみても、有数の野菜産地のひとつに近い街に住んでいるため、
地元の市場を見慣れると、離島の市場はどうしても野菜のバリエーションが少ない印象を受けます。

バンガイ島の市場 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

土質の影響は当然大きく、
火山性の豊かな土壌に森の腐葉土、標高も程よく高いため湿潤かつ暑すぎない気候のこの辺りと、
石灰質の土壌の上に堆積した腐葉土のみの気温が上がりやすい島では、条件が全く異なるんですよね。
それでもバンガイ諸島でも大きめの島には畑などもあり、芋類などの作付けも行われていますし、
訪れたのが雨季であったこともあって、葉野菜などを見かけることは出来ました。

そして、中にはジャワの辺りでは見かけないような野菜もあったり。

そんな野菜のひとつ、サユール・リリン/Sayur Lilin。
マルク地方などインドネシア東部で食べられている花野菜だそうで、わたしは初めて目にしました。

サユール・リリン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これを2束買って、お母さんの家に。

サユール・リリン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

葉の中に包まれいる、この若い穂の部分を食べるのです。

サユール・リリン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

咲いたらどんな風になるのかなあ、と思いつつむきむき。

これを一口大に切ったら水につけておきます。
「茄子とかと一緒」とお母さんは言うので、アクで黒ずんでしまうのを防ぐためなのかな。

サユール・リリン Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

使うブンブはいつも通り、唐辛子、バワンメラ、ニンニク、塩で、レモングラスも追加。
水適量を加えて蓋をし、蒸し煮のようにします。

程よく火が通ったあたりでココナッツミルクを。

サユール・リリンのココナッツ煮込み Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

このお母さんは、産まれも育ちもバンガイのブギス(南スラウェシの民族)人。
曰く、この辺りでは9割くらいの料理はココナッツミルクを使うのよ、だそうです。
バンガイが、なのか、ブギス人が、なのかはちょっと定かではないのですが。
とは言え、こってりした感じはあまりなく、さらっと仕上がってる印象です。

ということで、サユール・リリンのココナッツ煮込みの出来上がり。

サユール・リリンのココナッツ煮込み Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ほろほろと崩れる食感で、そのものはクセのない味。
その分、レモングラスを効かせて爽やかに仕上げたスープがよく染み込んで美味しかったです。

サユール・リリンはこういう煮込みが多いようですが、フライにして食べても美味しいとも聞きました。

もう一品の野菜は、サユール・パク/Sayur Pakuと言われる、シダ野菜。

サユール・パク Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ゼンマイが成長した、みたいな感じですね。
パクは「釘」という意味なので、まあ訳すなら「釘菜」みたいな感じなのかもしれませんが、
正式な名前はわかりませんでした。

この葉の筋が硬くなっている部分を除いて刻み、パパイヤの花と炒めたのが1枚目の写真です。

これ意外の野菜と言うと、空芯菜、芋の葉、長豆(ジュウロクササゲ)などが緑の野菜で、
後は、ブンブで使うトマトや、大きく育ったキュウリなどを目にしました。

次回は、野菜とはまた少し違う扱いになる芋類についてご紹介しますね。




2017/08/16

バンガイ諸島の食卓④

貝のケチャップ炒め Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

前回まで魚料理について書いてきましたが、今回はそれ以外の海の幸について。
漁村のお母さんの台所から生み出される「うまー!」な料理たちのご紹介です。
このお母さん、ホームステイしてた女の子を1ヶ月半で6kg太らせた実力の持ち主。すごく危険(笑)。

この地域では市場は週に一日だけ。
ブンブなどは市場で買いますが、それ以外の食材は毎日自前調達。
狩猟採集の食卓です。

ということで、暗くなる前に、お父さんが小舟で食材探しに。

食材探し Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

家は海の上に張り出すように建てられていて、その目の前の海はずっと遠浅の穏やかな海。
あの小舟のあたりにお父さんが貝やらを集めておく場所があるらしく、
小舟の左側辺りで水中に潜って、保管しておいた貝などを回収しているところです。

ウニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まず、ウニ。
「ウニが食べたい!」とわたしが言ったからなのです。

インドネシアでウニを食べる地域は決して多くなく、沿岸部のひとたちでも食べたがらない場合があります。
ただ、以前、南東スラウェシのバジャウ人の集落で蒸したウニを味見したことがあり、
それ以降どこかであのウニがまた食べられないものかと、行く先々で訊ねて回っていたのです。

その時に食べたウニは黒いトゲのもっと長い、ウニらしいウニだったのですが、
この日たまたまお父さんが収穫して来てくれたのはトゲの短いシマシマのタイプのもの。

ウニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ガサガサ言っているウニたちに真水(お湯でもいい)を注いでしばらく待ち、
その後ナイフで殻をあけていきます。
海藻を大量に食べているので、殻の中にたまった海藻カスは水ですすぎ落とし、
殻にへばりついている肉部分をスプーンでこそげて食べます。

ウニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

うわー海の味だ!となりました。
黒いウニは甘みがある、とお父さんは言います(確かに甘かった)が、これは濃厚に磯の味と香り。
生臭さが苦手な人も多いので、これは確かに好き嫌いでそうだなあと思います。
黒いウニも食べたかったけど、これはこれで食べられてよかったです。

さて、この日はウニだけではなかったのです。

シャコガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お父さん、シャコガイも保管していたのでした。
インドネシアでは、キマ/Kimaと呼ばれるシャコガイ。
商業目的での捕獲は禁止されていたはずで、なのでお家で食べる用に、とのこと。

シャコガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お父さんが手に持っているのが貝柱。ささっと切って「ほら、食べてみろ」と差し出します。
歯ごたえも素晴らしく、ああ生の貝なんて久しぶりだーと感無量。

ヒモの部分やキモも合わせて全てを小さく刻むところまで、小舟の上でやって帰って来てくれました。

シャコガイの身 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

で、この新鮮なシャコガイは生食します。

ゴフ/Gohuと言われる生の魚や貝を使った調理方法は、この地域から北マルクあたりのものだそうで、
この日は、キマのゴフです。

キマのゴフ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

潰した唐辛子、レモン・チュイの果汁、少々の塩、好みで刻んだバワン・メラ。
以前クパンで食べたイワシのラワールにも似ていますね。

さて、キマのゴフ。
美味しくないわけないじゃないですか、これは。
貝柱の歯ごたえといい、ヒモの旨味といい、ああ幸せ。

さて、別の日。別の貝。

貝の収集 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

再びお父さん登場。

よくわからない写真だと思うのですが、これ、お父さんが大量の貝を集めたところなのです。
ポケットにいっぱい、Tシャツのお腹の部分を袋にしてそこにもいっぱい詰め込んでいます。
「獲れた、獲れた」

クモ貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

クモ貝たくさん(宝貝も少々)。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まず味見を兼ねて、たき火の燠火で焼いてみます。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

貝を叩き割って、ぎゅっと焼き締まった身を取り出します。
噛むとぎゅっとくる濃厚な旨味。
(学生時代に貝料理屋でバイトしていたので、貝が大好きなのです、実は)

さて、味見も済んだところで、貝たちをお母さんの台所に持ち込みます。

クモ貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

じーっと見られていたりして「ひっ」となったりもしましたが、気にせず食べますよ。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まずは、やはりしっかりと焼きます。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

焼き上がったのは、触れるくらいまで冷ましてから、殻を割って身を取り出しぶつ切りにします。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ぎゅっと焼けた貝に、レモン・チュイを絞った塩水を注ぎ、唐辛子を少々。
旨味がしみ出し、そのまま焼いたのとはまた異なる味わい。シンプルなのに絶妙です。

この焼いてから塩水、というのは焼き魚でやっても美味しいのだそうです。
ぎゅっと焼いた魚をさっと海水に浸して食べたりするよ、とお父さん。ほほーう。
いつかやってみたいですね、キレイな海に行った時にでも。

さて、この貝たちを翌日、お母さんがまとめて茹でました。

茹でクモ貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

茹で上がったのをせっせと殻から取り出し、爪を取り除き、ぬめりもとります。

クモ貝の殻 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これは、剥いた後の殻(一部)

身の方は、指先大に刻んでいきます(島のお母さんたちはまな板は使わないので、一つずつナイフで)。

茹で貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

そして、基本のブンブ(唐辛子、塩、ニンニク、バワン・メラ、トマト)を潰します。

ブンブの準備 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お母さんの台所の食材、調味料たちは全部このカゴの中に入っています。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

じゃないとネズミに齧られるの。
うちの猫はね、よくネズミを捕るのだけど、いまお腹大きくて動きが悪いのよー。だそうです。

漁村のお母さんの台所、わたし大好きです。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

奥の部分では薪で火を熾せるようになっていて、手前に石油コンロが3つ。
薪で調理するって、憧れるんですよねえ。
火力の調整とか、そもそも火を上手く起こすところとか、ベテランのお母さんの手際のよさがカッコいい。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

薪や石油なのでお鍋の底は真っ黒になりがちですが、それでもよく使い込んで整理されています。

で、お母さん、調理開始。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

さっきのブンブを油で炒めて香りを出し、粉末のターメリックを振りいれます。
刻んだ貝にパッとレモン・チュイの果汁を振りかけてから鍋に加え、水分を適量足しながら炒め煮に。

貝の炒め煮 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ケチャップ・マニス、胡椒、塩などで味を整え、できあがり。

ぎゅっと締まった焼き貝とは違って、歯ごたえよくも柔らかい出来上がりのケチャップ炒めです。

貝のケチャップ炒め Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これも美味しかったー。

お母さんの料理は、決して複雑でもないし、凝ったものでもないのに、本当に美味しいのです。
普段の食事でごはんのおかわりをすることなんてまずないのですが、
お母さんのところにいる間は「もうちょっと」と足さずにはいられない食事でした。

ああ、思い出しただけで、白ごはん食べられそう(笑)。



2017/08/14

バンガイ諸島の食卓③

市場の鮮魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

島の食卓、その3。今日は焼き/揚げ魚です。
とてもベーシックな料理ですし、味付けも本当にシンプル。
その分、この「鮮度ではどこにも負けないよ」という島の魚たちだからこその美味しさを堪能しました。

焼き魚下味 Banggai_Central Sulawesi, 2017

町のお母さんの焼き魚。まずは下味をつけています。

焼き魚用ブンブ Banggai_Central Sulawesi, 2017

ブンブは、唐辛子、バワン・メラ、トマト、塩、粉末ターメリック、そしてレモン・チュイ。
これを潰して混ぜたものを、きれいに洗って身に包丁を入れた魚にすり込んでいきます。

焼き魚下味 Banggai_Central Sulawesi, 2017

あとは、焼くだけ。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

一方、冒頭の写真の魚は揚げてもらいました。

焼き魚のことは、イカン・バカール/Ikan Bakarと言いますが、
揚げ魚は、イカン・ゴレン/Ikan Goreng。
この日、お母さんが作ってくれたのは、イカン・ゴレン・リチャ。

リチャ/Ricaは唐辛子を使ったソースのことです。

唐辛子 Banggai_Central Sulawesi, 2017

正しくは、リチャ・リチャ/Rica ricaと2度繰り返すこのソースは、北スラウェシのものが有名ですが、
中部スラウェシであるバンガイ諸島でも、当たり前のように使われていました。

本場北スラウェシのものは、フレッシュの小粒唐辛子をふんだんに使い、とにかく辛いのです。
(バンガイのリチャ・リチャはだいぶ辛さ控えめです)
そして、このイカン・ゴレン・リチャ(リチャ)のように料理名に使われた場合、
サンバルのように料理の横に添えられて出て来るのではなく、
ソースとして、料理にしっかりかかって出て来る場合が多いのも特徴です。

ちなみに、バンガイでの旅で「サンバル」という言葉は全く聞きませんでした。
料理にかけるソースとして出て来る唐辛子ベースのものは、基本全て、リチャと呼ばれています。
サンバルのような別添えのものは、ダブダブ/Dabu dabu。
また、唐辛子そのもののことも、チャベ/Cabeと言っていたのはわたしだけで、
お母さんたちはリチャ、もしくはロンボッ/Lombokと呼んでいました。所変われば、ですね。

リチャ・リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

ということで、この日のリチャ・リチャ。
唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩を油で炒めてから潰したもの。
とてもシンプル。
あわせて、魚もごくごくシンプルに、素揚げ。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これはインドネシア各地共通かもしれないのですが、
チキンであれ魚であれ、揚げるとなったらかなりしっかり水分を飛ばすまで揚げるのが好まれます。
なので、この魚を揚げているときも、
わたしがひっくり返したくてうずうずしているのを、お母さんが「まだ!」と牽制していたりしました。

あ、あと、魚一匹猫にとられたんじゃないかしら!とも騒いでいました(笑。

容疑者↓

島猫 Banggai_Central Sulawesi, 2017

飼ってるわけではないとお母さんは言うのですが、でも普通に台所に出入りしていて、ほぼ飼い猫に見えます。

さて、同じ揚げ魚でも、漁村のお母さんの場合。

仕掛けを引き上げにいく子どもたち Banggai_Central Sulawesi, 2017

まずは、魚の確保から。
夕暮れ時。浅瀬にかけておいた仕掛けを、村のこどもたちが引き上げにいきます。

鮮魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

で、これがかかっていた魚たち。まだぴちぴちと跳ねるのです。

この中から、何匹かいるまだら模様の魚(島ではマレアと呼ばれていた魚)を選びます。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

それを、塩とレモン・チュイで下味をつけて、油で揚げます。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

もちろん、しっかり、かりっと。
見た目は愛想なく見えるかもしれませんが、これがまた美味しかったのです。
「なんでこんなに美味しいんだろう!?」と言うと、お母さん、にやっと笑って、
「別になにも特別なもの使ってないでしょう?鮮度よ、鮮度」と自慢します。

もうひとつ、漁村のお母さんの料理で、その美味しさに翌日もまた作ってもらったものを。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これも「リチャ」なのですが、
魚を食べ終わってお皿に残ったソースだけでも、ごはんにかけてしまいたくなる美味しさ。

リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩、まではいつも通りなのですが、

リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

そこにキャンドルナッツを加えるのです。

インドネシアでキャンドルナッツはクミリ/Kemiriと言われ、スープなどを作る際によく使われます。
クセはなく、そのしっかりした脂質から、いいコクがでるのです。

材料をなめらかに潰したら、油を熱し、まずは基本のブンブを香りよく炒めます。
火が通った頃合いに、キャンドルナッツも加え、
少々の水で全体を合わせ、味を整えたら焼き上がった魚にかけて出来上がり。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これは(同じ鮮度はむりでも)美味しそうな魚が手に入ったら、自分でも作ってみたいです。
ごはんが進んでしまって、とても危ないんですが。