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2021/05/17

ケチャップ/Kecap - 2

ケチャップ Jakarta_2019

ということで、インドネシアのソイソース、ケチャップについて、再び。
このブログを始めて間もない頃に、一度ケチャップについて書いているので、まずはそちら(→)をどうぞ。
 
ケチャップって、ご当地ものがすごく多いんです。
もちろん、大手がどかんと市場を大半を持っていってはいるのですが、
それでも、各地に世代を超えて続く家内制手工業的なケチャップメーカーがあり、地元の人に愛されている。
ケチャップ・ファナティックなひともいたりする。
となると、やはり、ケチャップってそんなに違うものなの?という疑問が生じます。

ので、味比べ。そう、今回はテイスティングです。

ケチャップ Bandung_West Java, 2021

続くコロナ禍でどこにも行けず、おうちにお邪魔してキッチンを覗かせてもらうなんてあり得ない状況で、
自宅にいながらにしてできること、ということで各地のケチャップを取り寄せたのでした。
ケチャップ・マニスをメインにして、10種類。せっかくなのでケチャップ・アシンも6種類。
選抜基準は:
・評判がいいもの
・歴史が古いもの
・手頃なサイズのボトルで販売しているもの
3つ目は、現実的な理由で。
試してみたかったメーカーは他にもあったのですが、大瓶でしか販売していないとか、多いんです。
もちろんできるのなら、大瓶で揃えたかったのですが、
(ケチャップ・コレクター(っているんですよ)も大瓶で揃えるのが基本、ラベルがかわいいから)
その後、消費しなくちゃいけないことを考えるとやっぱり無理…という苦渋の決断です。

では、選手紹介。

まずは、ケチャップ・マニスの定番、バンゴ/Bango。

ケチャップ・バンゴ Bandung_West Java, 2021


ケチャップ・マニスという調味料を知ったその時から「美味しいのはバンゴ」と刷り込まれているので、
わたしの中で、ケチャップ・マニスの味の基準はバンゴ。家でも常備していたのはずっとバンゴでした。

西ジャワ州のスバン/Subangで生産されていますが、発祥はジャカルタのタナ・アバン/Tanah Abang。
ラベルには1928年とありますが、実際にはそれ以前から製造販売はしていたようです。
中国の福建省からの移民であったご主人と、中国系3世の奥さんが、ガレージで甕から販売していたケチャップ。
当初は中国で使われている、日本の醤油と同系統の塩味のソイソース、ケチャップ・アシンのみだったのを、
奥さんが、ジャワの人の舌に合わせたケチャップ・マニスの製造を勧めたのが始まりだとか。
ロゴのバンゴはコウノトリのこと。世界に羽ばたくケチャップになることを夢見て名付けたのだそうです。

着実に評価を得て伸びてきたバンゴ、1992年にユニリーバの傘下に入ったのがきっかけでその販路を一気に拡大。
現在、インドネシアのケチャップ・マニスの市場は、
このバンゴと、もう一社、大手食品メーカーABCブランドで65%が占められていると言われます。
ロゴに込められた願いが現実となって、世界に羽ばたいているバンゴ。
それなのに、あれこれアイテムを増やすことなく、ケチャップ一本でやっているところも好感が持てます。

ちなみに、ABC。
わたしはバンゴ派なのでABCにはあまり興味がないのですが(言っちゃった)(ご贔屓ってそうそうもの)、
ここは、ハインツ傘下にあり、チリソースやケチャップなども製造しているメーカーです。

ケチャップABC Bandung_West Java, 2021


今回のテイスティングの選手には入れていませんが、冷蔵庫にいつかのデリバリーについてきたのがあったので。
ABCのケチャップは、黒大豆ではなく黄大豆、パームシュガーではなくカラメル化した普通の白砂糖を使用、
そして、多くのメーカーが味の鍵として各社独自のブレンドを行うスパイスを一切使わないのが特徴。
でも、わたしバンゴ派なので。扱いに差をつけてごめんなさいね、ABC派のみなさん。

続いて、次の選手は、西ジャワ州タンゲラン/Tangerangで「伝説のケチャップ」と呼ばれている、SH。

ケチャップ・SH Bandung_West Java, 2021

ケチャップ・べンテン/Kecap Bentengの名でも親しまれているオレンジのラベル。
1920年創業と言われています。
SHとはSiong Hienの頭文字。
創業者のLo Tjit Siongの名に、中国語で「ブランド」を意味するHienをつけ(「標」かな?)、
つまりは「シオン・ブランド」という、まっすぐなネーミング。
そのレシピは書き記されたことはなく、このブランドを守るひとたちの手を通じて次世代に伝わってきた、
まさに秘伝のレシピなのだそうです。
どんな料理にも合うと言われるSHですが、焦げにくいという特徴が特に焼き物にちょうどいいと聞きます。

続いて、今回のラインナップの中ではいちばん古い、インドネシアの記録では2番目に古いと言われている、
オラン・ジュアル・サテ/Orang Jual Sateブランドのケチャップ。

ケチャップ・オラン・ジュアル・サテ Bandung_West Java, 2021

東ジャワ州のプロボリンゴ/Probolinggoのケチャップで、創業は1889年。
そもそもケチャップ・マニス自体がいつから製造され始めたのか、文書上の正確な記録というのは発見されておらず、
なので、根拠となりうるのが各社のラベルに書いてある創業年。
最も古いのはケチャップ・ベンテン/Kecap Benteng社の1882年だと言われています。

オラン・ジュアル・サテ=サテ売り、の名の通り、串焼きのサテに合う緩めの液状。
(創業当時はビンタン・ビダダリ/Bintang Bidadariという名前だったらしいです)
このチャップは友人に「美味しかった」と聞いて、先に買ってみてたんですよね。
サテだけでなく、どんな料理にも合わせやすい、確かに美味しいケチャップでした。

次は、中部ジャワ北岸の街、パティ/Patiの伝説のケチャップ、レレ/Lele・

ケチャップ・レレ Bandung_West Java, 2021

こちらは1954年創業。
周辺地域の多くのケチャップメーカーがこのブランドの元で学んだとも言われる、パイオニア的存在。
拠点となっているパティはケチャップのブランドが多く、
地元のひともローカルのブランドを好む傾向がとりわけ強いのだそうです。
なので、大手もなかなか入り込めない強固な土地柄なのだとか。
そんなパティで、口コミで評判が伝わり県外からも取り寄せられたり、お土産の定番となったりしているのが、
このレレブランドのケチャップなのだと言われます。
レレはナマズなんですが、ナマズは別に原料に含まれていません。
インドネシアの食品メーカー、特にケチャップ系って、こういう紛らわしいのが多い(笑)。

元々は、結構緩めな液状だったのだそうですが、
顧客であるソト屋たちからの要望で、より濃いものに改良していったのだそうです。
緩いとケチャップをたくさん使うことになるので、採算が合わなくなるということだとか。
このパティという街のすぐ近くにはスープで有名なクドゥス/Kudusという街があります。
以前記事にしたソトの旅でも立ち寄った街。
ソトを食べる時に、各自がテーブルにあるケチャップで好みの味に整える。
ケチャップとソトは、切っても切れない関係にあるのです。

選手紹介だけでだいぶ長くなりそうなので、あとはちょっと駆け足で。

まず、ジャワ島外からの参加者として、
北スマトラのメダン/Medanからハティ・アンサ/Hati Angsa、バンカ/Bangka島からシオン/Siong。

ケチャップ・ハティ・アンサ Bandung_West Java, 2021

ケチャップ・シオン Bandung_West Java, 2021

ケチャップ、特にケチャップ・マニスはジャワ島が圧倒的な中心地で、
ジャワ島外となるとそのブランドの数がぐんと減ってしまいます。
でも、せっかくだから、他の島の味も知りたいじゃないですか。
メダンもバンカ島もどちらも華人の多い地域なので、そいういう意味でケチャップが疎遠なはずはないのです。
ただ、どちらかと言えば、アシンの方が身近な存在かな、とは思います。

ハティ・アンサからはケチャップ・マニスとケチャップ・アシン両方を。
クンタル/Kental (濃)とエンチェル/Encer(薄)という表現なのが、独特です。
シオンも、マニスとアシン両方製造しているメーカーですが、今回はマニスだけ。

この2つのブランドは、原料に小麦を含んでいます。
これは、大豆を発酵させる際に麦麹を使うということみたいですね。
この2社以外だと、先のABCも麦麹(ラベルのデザインにも麦が)使用。台湾式のやり方だと言われています。

あと、この2つのブランドは、わたし的「チーム・ラベルがかわいい」でもあります。
アンサ(白鳥)は、もっと小さいプラボトルになるとハートの白鳥しかいないデザインになるので、
あえてちょっと大きめのボトルを選びました(なのに破けちゃってるのが届いて、泣きたい)。
シオンの象さんも、めちゃかわいい。しかもバラがあしらわれている。象とバラの組み合わせって、レア。

ケチャップ・シオン Bandung_West Java, 2021

あと、この二つのブランド、ジャカルタあたりのお粥屋さんでよく見かけるのも共通点です。
トップの写真も、ジャカルタのお粥屋さんで撮ったもの。

続いて、西ジャワは、バンドン/Bandung。わたしの地元。
バンドンも、ケチャップのブランドは結構あるのですが、選んだのはこの3つ。

ケチャップ Bandung_West Java, 2021

マニスにアングル/Anggurとサピ/Sapi、アシンはパパヤ/Papayaで。
ラベルのデザインで選んだことは否定しません。

同じ西ジャワのタンゲランのケチャップ・アシン、チュ・トゥン・ヒン/Cu Tung Hinは友人のおすすめ。

ケチャップ チュ・トゥン・ヒン Bandung_West Java, 2021

ダイヤモンドと金魚のラベル。ここまでしっかり漢字を表記しているブランドも珍しいです。
マレーシアやシンガポールなどにも輸出しているのだそう。

続いて中部ジャワからもう1ブランド、ロンボク・ガンダリア/Lombok Gandariaのマニスとアシン。

ロンボク・ガンダリア Bandung_West Java, 2021

先ほどのパティが中部ジャワの北岸代表だとしたら、こちらは内陸代表ということで。
ソロ/Soloが発祥の地ですが、近年徐々に全国区に進出してきているブランドです。
パッケージに唐辛子(=ロンボク)がありますが、唐辛子は配合されていません。

東ジャワからも、もう1社。これも内陸の街で、先のソロに結構近いマゲタン/Magetan発祥のサウィ/Sawi。

ケチャップ・サウィ Bandung_West Java, 2021

創業1935年のケチャップメーカー。
トマトケチャップなども販売していますが、スタートはこのケチャップから。
マニスとアシン両方揃えてみました。
サウィとは菜っ葉のような葉野菜のことですが、菜っ葉は配合されていません(もういい)。

で、最後。やっぱり入れておいてあげよう。キッコーマン。

キッコーマン Bandung_West Java, 2021

日本の醤油とはまた別物の、ケチャップ・アシン・オリエンタル。
これは、キッコーマンがアク/Akuというインドネシアのメーカーと組んで製造販売しているもの。
アクは決して古いメーカーではないのですが、
ケチャップやトマトケチャップなどのブランドとして、最近ファストフード店などでよく見かけます。

はあ。長かったですね。でも、あとは、味見するだけです。

まずは、マニスのチーム。

スマトラから順番にならべました(最後のサウィとサテは地理的には逆だけど、まあいい)。

ケチャップ ・マニス Bandung_West Java, 2021

①ハティ・アンサ:
色が濃厚で、塩の味が結構鋭く強い。後からカラメル味。
②シオン:
これも色が濃厚で、塩みが鋭い。カラメル味は①より若干弱めだけど、やや焦げの風味がある。
③SH:
色が薄くて明るい。濃度はしっかりとしたとろみ。
八角、シナモン、コリアンダーなど、配合されたスパイスの風味が特徴的で、ふんわりとした後香が続く。
④バンゴ:
くっきりとしたカラメルの風味とまろやかな甘味。スイーツに使ってもいいんじゃない、というくらいの風味。
⑤アングル:
粘度の高い、かなりとろりとした液状。五香粉のような風味が微かに残る。塩味も結構くっきり。
⑥サピ:
同郷の⑤に似るが、スパイスの香りも塩味もやや強め。
⑦レレ:
やや浅い色味。味はどことも全く違う。
スパイスとハーブの風味なのか、ウスターソースを思わせるような複雑な味わい。
⑧ロンボク・ガンダリア:
どちらかというと、ハーブ系の風味で、後味がフルーティー。
⑨オラン・ジュアル・サテ:
液状は一番緩い。カラメルの風味に心もち強めの塩気。
⑩サウィ:
濃いめの色味。八角が香り、やや苦味のある味。

ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2021

正直、10種類も揃えちゃって、味の違いわかんないんじゃないの?とか思いもしたのですが、
予想以上に、違います、みんな。ちょっと、びっくり。

メダン(スマトラ)とバンカのケチャップの塩味が強いというのは、
逆に言うと、ジャワの甘味に対する指向性の強さが現れているともとれます。
そもそも、元々は塩味ソイソースとして伝来したケチャップになぜ甘さが加わったのかというのは、
え、ここでその話し入れる?みたいな感もありますが、要はジャワ人の甘さを好む舌ゆえなんですよね。
以前、ジャワ料理について書いた中でも少し触れましたが、
オランダの植民地時代に中〜東ジャワで行われたサトウキビの強制作付けが、地域の食糧不足を招き、
ジャワ人たちが米に変わるエネルギー源としてサトウキビや椰子からの糖分を摂取するようになり、
結果的にジャワ人の味覚を、甘さを好むように変化させたという背景があり、
その甘味好みに合わせてケチャップが変化したというものが、腑に落ち感のある説ではないかと思っています。
なので、ケチャップ・マニスは主にジャワ島で多く生産消費され、
スラウェシのマカッサルなどではケチャップ・ジャワと呼ばれたりするに至るわけで、
ジャワ島外では、ここまで甘さに振り切ることがなかったのかもしれないな、と思います。

で、10種類味見をした、結論。
ベーシックに使い、料理にコクと深みを出すならオールマイティーなバンゴ、アングルあたり、
でも、ちょっと他にはない風味を求めるなら、SHかレレ。この二つは他に替えの効かない美味しさがあります。

では、お水を飲んで、舌をもどしてから、ケチャップ・アシンへ。6種類。

ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2021

①ハティ・アンサ:
だいぶ薄い色。原料に砂糖を含まず、かなりシャープな塩味。
②チュ・トゥン・ヒン:
色の濃さのわりに、味は比較的マイルド。塩気は控えめで、椰子糖由来のカラメル風味の甘さがある。
③パパヤ:
色はだいぶ薄い。原料に砂糖を含まず、かなりはっきりとした発酵味がある。魚醤を思わせるくらいの旨味。
④ロンボク・ガンダリア:
マイルドな発酵味に、塩気とカラメルの風味。甘味もある。
⑤サウィ:
椰子糖由来の甘味、配合されたニンニクやスパイスのいずれも突出することなく、バランスよくまとまっている。
⑥キッコーマン:
濃いめの色。とろりとした甘味はコーンシロップ由来。

ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2021

これまた、それぞれ結構個性が出ました。
ハティ・アンサは、マニスにしろアシンにしろ、お粥屋によくあるっていうのはなんか分かる気がしますね。
インドネシアのお粥は基本鶏粥(Bubur Ayam)で、出汁や味も結構しっかり目についているものなのです。
そこに加えるなら、出汁の風味や、胡椒やネギ葉セロリのようなハーブの風味を殺す旨味マシマシ系ではなく、
底上げ系の塩味だったりコクだったりなのだろうなという。

アシン6種類の中では、
料理で焦がし醤油的に使うと美味しそうなのは、チュ・トゥン・ヒン、
わたし好みでは、発酵旨味ぎゅうぎゅうなパパヤでナシゴレンとか作りたい感じです。

味比べ、面白かったです。
ケチャップ・ファナティックなひとたちがいるのも納得しました。これだけ違うんだもの。

ケチャップのパッケージって、No1って記載されがちなんですよね。

ケチャップ Bandung_West Java, 2021

レレにも大きくNo1ってありましたよね。
これは、もちろん「うちのが一番」っていう意味もあるのでしょうが、
それぞれが「唯一無二」であるという意味合いもあるんではないかなという気がしてきました。

本当はもっといろんなご当地ケチャップ(特にマニス)を取り寄せて比べてしたかったんです。
各地の「伝説のケチャップ」を競わせてみたい、みたいな。
でも、やる前から分かってたんですが、この大量の茶色い液体たちを、まずは頑張って消費してしまわなくては。

ケチャップ Bandung_West Java, 2021

うちの食卓、この先当分は、茶色い料理が並びそうです。

2019/12/19

豆腐/Tahu ②

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

ジャワ北岸のスープの話しのついでに、ジャワ北岸の豆腐料理をちょっと。
インドネシアの豆腐の詳細については、豆腐/Tahuの①を先に読んでいただければ。
今回は、ただひたすら「美味しかったよー」っていうことです。先に要約してしまえば。

に書いたように、インドネシアの中でもジャワ島はとりわけ豆腐の消費が多い地域です。
ある調査データでは、一人当たりの週の豆腐消費量(g)が多いのは、上から順に、
東ジャワ(270)、中ジャワ(180)、ジョグジャカルタ/西ジャワ(170)、バリ(160)、ジャカルタ(130)。
ちなみに、少ない地域は、
中部スラウェシ/西スラウェシ(60)、アチェ/東ヌサトゥンガラ(50)、北マルク(40)。
インドネシアの中でも早い時期に中国からの移民がみられたこと、
オランダ東インド会社による強制栽培制度時の貴重なタンパク源となったことなどが背景となり、
今でもジャワの人々は、食事に軽食におやつにと、豆腐を食べます。

まずは、ジャカルタ。
ジャカルタの人々の朝食もしくは昼食に好まれるのがクトプラッ/Ketoprak。

クトプラッ Jakarta, 2019

名前の由来が、Ketupat(ライスケーキ)+Toge(もやし)+Geprak(叩く)だと言われている通り、
ライスケーキに茹でたもやし、揚げ豆腐、刻みキュウリ、ビーフンを乗せてピーナッツソースをかけたもの。
(叩く、はピーナッツソースを作る際に石臼で叩き付けるようにする動作からでしょう)。

クトプラッ Jakarta, 2019

豆腐がメインな訳ではありませんが、とはいえ、豆腐のないクトプラッなんて、というくらいに大事な存在。

ピーナッツソースつながりで、中部ジャワのスマラン/Semarangで食べたタフ・ギンバル/Tahu Gimbal。

タフ・ギンバル Semarang_Central Java, 2019

インドネシア語でギンバルはドレッドヘアのことなんです。
なので「どのへんがドレット?」とタフ・ギンバル屋のおかあさんに聞いてみたところ、ドレッドは関係なく、
スマランのひとたちは、エビのかき揚げのことをギンバルと呼ぶのだそうです。

タフ・ギンバル Semarang_Central Java, 2019

殻付きでガリッと揚げられたエビと、揚げ豆腐、茹でキャベツにライスケーキとピーナッツソース。

タフ・ギンバル Semarang_Central Java, 2019

エビと豆腐という大陸らしい食材に、程よくチリを効かせたピーナッツソースというジャワらしい味の組み合わせ。
旨味と歯ごたえのエビに対し、ニュートラルな豆腐とキャベツの甘みがいい塩梅です。
豆腐の名を冠している割に豆腐が脇役な感もありますが、それでもこれはまた食べたいひと皿。


タフ・チャンプル Jakarta, 2019

豆腐の名を冠していながら豆腐が脇役つながりで、タフ・チャンプル/Tahu Campur。
これは、東ジャワのスラバヤ/Surabayaあたりが名物なようですね。食べたのはジャカルタだったのですが。

タフ・チャンプル Jakarta, 2019

揚げ豆腐は中がつるんとした、舌触りの優しいもの。
牛スジやたまご麺、茹でもやし、レタス、そして黄色く見えるのはキャッサバ芋のコロッケ。
このコロッケが甘くて美味しいんです。

タフ・チャンプル Jakarta, 2019

かかっているのは牛出汁ベースのスープで、そういうところも東ジャワっぽい気がします。
具だくさんで温まる軽めの晩ご飯、という感じのひと皿。

一方、おやつ枠の豆腐料理として、中部ジャワのテガル/Tegal名物のタフ・アチ/Tahu Aci。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

タフ・テガル/Tahu Tegal、タフ・クピン/Tahu Kuping (=耳、確かに耳っぽい)とも呼ばれるタフ・アチ。
アチはタピオカの澱粉のこと。澱粉を練ったものを豆腐の断面にはり付けて揚げています。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

こうやってはり付けるわけなんですが、なんで揚げた時にはずれちゃわないんだろう、と思ったりします。
粘着をよくするための細工があるでもないし。

でも、細工はなくてもコツはあるようで、
ここのお店、最初におかあさんがはり付けていったのを後からおばあちゃんがチェックして、
「これはダメ」と全部剥がしてはり直していました(笑)。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

おばあちゃんには敵わない。

タピオカ生地にはニンニクとニラなどが練り込まれています。
店の前では、刻んだニラがザルに広げられ、干されていました。ちょっと乾燥、くらいがいい様子。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

あとは、油で一気にジューーーッと揚げます。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

揚げたてが欲しくて、店先にあるのは無視していたわたし。

タフ・アチ Tegal_Central Java, 2019

だって、これ、絶対揚げたてが美味しいやつだもの。
澱粉生地のもちっとカリッとした歯ごたえと、厚揚げ部分のジューシーさのバランス。
ついつい手が伸びる、心憎いおやつ豆腐です。

そして最後が、西ジャワのチレボン/Cirebonのタフ・グジロッ/Tahu Gejrot。

タフ・グジロッ Cirebon_West Java, 2019

これもおやつ枠の豆腐料理。

青唐辛子やシャロットが見えますが、このタレ自体は「甘い」んです。
やや旨味を効かせたシロップとも言えそうな、甘いタレがボトルから注がれるその音が、
まるで「Jrot...Jrot...」と聞こえるから、タフ・グジロッと呼ばれているのだとか。
タレの甘さ、シャロットの香味、青唐辛子の爽やかでシャープな辛味と香りの不思議な組み合わせ。
それを、厚揚げというより厚めの油揚げという感じの豆腐がスポンジのように吸収しています。
これもなんかクセになる味なんですよね。

タフ・グジロッ Cirebon_West Java, 2019

ピーナッツソースをかけても、エビのかき揚げと合わせても負けないのは揚げ豆腐だからでしょうね。
インドネシアの豆腐自体がそもそもしっかりした風味がある上に、油を通すことでコクも出ます。
揚げ豆腐が主流なのは、当然保存のという要素が大きいとは思いますが、
食べ方もまた、その揚げた特性を生かしたものになっているのだなあと思います。
(素揚げ豆腐も大好き)


2019/10/28

スープ③/Soto dan lain-lain

サウト Tegal_Central Java, 2019

インドネシアのスープについては、以前にも書いているのですが、→ 
先日、ジャワ島北岸を旅しながらスープを食べ歩いたので、また少し(ではないかも)。


インドネシアの中の、ジャワ島。
スープ②の記事でも触れましたが、インドネシアでソト/Sotoと呼ばれているスープの源流は中国にあると言われ、
インドネシアでは、ジャワ島の北岸にあるスマラン/Semarangという街から広まったという説があります。
起源については諸説あり、断言はできないものではあるのですが、
このジャワの北岸というのは、インドネシアの中でも早い時期に中国からの移民が入った土地であり、
現在も華人が多く暮らし、かつ、スープのバリエーションがとりわけ多い地域ではあります。

まず、その中国の流れを強く感じるスープ、サウト/Sautoから。
サウトは、テガル/Tegalという街の名物。


ソト・タウチョ/Soto Taucoの略がサウトだと言われています。
タウチョ/Taucoはこちらでまとめたことがありますが、インドネシア版豆豉、もしくは豆味噌。
中部ジャワ北岸の街は産地ということもあり、スープにもタウチョが使われます。

サウト Tegal_Central Java, 2019

鶏と牛で選べたので、牛(スジ入り)をオーダー。
辛味の効いた旨味赤出し、のような感じ。牛ベースなのでコクがしっかり。

サウト Tegal_Central Java, 2019

ご飯は底に入っていて、既に汁かけ飯状態。
さっと湯がいたもやし、青ネギ、揚げシャロットがトッピングされています。

このテガルから東に行ったペカロンガン/Pekalonganという街でも、タウチョを使ったスープがあり、
そちらは、Tautoと呼ばれています。

つづいて、ソト・クドゥス/Soto Kudus。
その名の通り、クドゥスという街の名物スープです。


せっかくなので、と、地図を貼っていってますが、正直違いがあまり分からないかもしれません。
ちょっとずつ位置が違うんですよ…。

で、ソト・クドゥス。

ソト・クドゥス Kudus_Central Java, 2019

チキンベースをオーダー。
これも、お碗の底にご飯が沈んでいて、もやしが入っています。
香りはネギではなく、葉セロリ。
また、これは店によるのですが、トッピングが揚げシャロットではなく揚げニンニクの場合があり、
通常、香りが強すぎるためあまりニンニクを前面に出さないジャワにあって、
ルーツである中国系の嗜好を残していると言えるのではないかという話しも耳にします。
実際、華人の影響が強くみられる西カリマンタンの料理には、揚げニンニクがよくトッピングされていますしね。
あ、あと、ソト・クドゥスはレンゲで食べるのが普通で、
通常はスプーンを使うインドネシアの中で、やっぱりちょっと中国っぽい、と思わせる部分であったりします。

このソト・クドゥスは、一般的なジャワのソトの基本形のようなスープだとわたしは思っていて、
使う材料も、ガランガル、シャロット、ニンニク、生姜などの基本のブンブに、
スパイスは胡椒、コリアンダーシード、ターメリック、キャンドルナッツ、レモングラスなど、比較的シンプル。
この中では、ターメリックが北岸のソトの特徴かもしれません。だいたい、黄色みを帯びています。
ただ、東ジャワのソトに比べるとやや甘みがあるのがソト・クドゥス。
そのやや甘い旨味スープに、ライムをぎゅっと絞って食べるのが至福。

サテ Kudus_Central Java, 2019

また、ソト・クドゥスはポーションが小さめなのも特徴。
テーブルに並べられているサテなどをとって、ボリュームを調整します。

もうひとつ、ソト・クドゥスにまつわる話しとして、
元々は水牛を使ったスープだったというのも興味深い話し。

ソト・クドゥス Kudus_Central Java, 2019

この時食べた店でも、鶏でなければ水牛のソトになります。

クドゥスから、西はペカロンガンのあたりまでの地域では、
牛を屠殺することは長くタブーとされてきたという背景があり、その影響なのだとか。
これらの地域は、16世紀以降イスラム化が進むより前は、ヒンドゥー教が栄えていた土地。
イスラムが主流となった後も、ヒンドゥーで聖なる動物とされる牛を殺めることは禁忌としてきたその名残が、
現在でも、伝統料理に牛ではなく水牛が使われる傾向に見て取ることができます。

続いて、ソト・ラモンガン/Soto Lamongan。

ソト・ラモンガン Lamongan_East Java, 2019

クドゥスから更に進み、中部ジャワから東ジャワへ入ります。


ソト・ラモンガンはソト・アヤム/Soto Ayam、つまりチキンスープ。
わたしの中では、ソト・アヤムの王様という位置づけです。
せっかく王様の地元に来たので、ソト・ラモンガン・スペシャルを注文。
何が違うのかと思ったら、臓物ミックスでした。玉ひもとか。

ソト・ラモンガン Lamongan_East Java, 2019

ソト・アヤムの定番、春雨が入っていますね。

地鶏をじっくり煮込んだ濃厚なスープ、ターメリックの黄色がまた食欲をそそります。
そして、ソト・ラモンガンの特徴は、トッピングするこの粉末。

コヤ Lamongan_East Java, 2019

コヤ/Koyaと呼ばれるこの粉末は、揚げたエビ煎を砕いたもの。
タピオカ粉を使って作られるエビ煎なので、スープに落とすとややとろっとした食感になり、
それが丸い旨味となって、スープの味わいに厚みを加えるのです。

もうひとつ、同じ潮流にあるソトが、ソト・マドゥラ/Soto Madura。

ソト・マドゥラ Surabaya_East Java, 2019

実際に食べたのは、スラバヤ/Surabayaだったのですが、マドゥラ/Maduraはその北東にある島です。


ターメリックを使った黄色いスープですが、牛肉になります。
東ジャワに入ると、タブーもなくなり、かなりバンバン食べられています、牛。
ごろっとした牛肉にゆで玉子がソト・マドゥラの基本です。

これら、ジャワ北岸ソトの基本の流れにあるスープ(他にもまだあるのでしょうが)に対し、
ぐんとスパイスなどのフレーバーが豊かになるのが、ソト・ブタウィ/Soto Betawi。

ソト・ブタウィ Jakarta, 2019

ブタウィとは、ジャカルタ/Jakartaのこと。ソト・ブタウィはジャカルタを代表するソトです。


基本は牛肉と臓物、白いのはココナッツミルクや牛乳(時に両方)を使っているから。

ソト・ブタウィ Jakarta, 2019

ソト・ブタウィという名称で親しまれ始めたは1970年代後半だそう。
華人の営む食堂で売り出されたのが発祥だとか。

牛スープに、ニンニク、シャロット、生姜、ガランガル、というところまでは先のソトと同じですが、
ソト・ブタウィはそこに、
丁字、シナモン、クミン、胡椒、コリアンダーシード、チリ、レモングラス、コブミカンの葉などが加わります。
スパイス使いが賑やかになりますね(もちろん、店ごとに違いはあります)。
そして、盛りつけ時にフレッシュトマトと刻みネギを加え、濃厚なスープに軽さを出してバランスをとります。
加えて、ウンピン/Empingと呼ばれる揚げ煎餅も必須です。

ウンピン Jakarta, 2019

やや苦みのあるウンピンが、スープを吸って、カリカリとやわやわの間くらいの食感になっているのが美味しい。

ソト・ブタウィ Jakarta, 2019

かなりこっくりとしたソト・ブタウィですが、食べる時にぎゅっと絞るライムが爽やかさをプラスしてくれます。

ソトはどこでも基本的にライムを絞って食べるのですが、
こういうココナッツミルクの濃厚スープであれ、チキンベースのソト・アヤムであれ、
その酸味の加減というのが、なんとも心憎いほどいい塩梅。
インドネシアごはんにおける柑橘使いというのは、いつも感心してしまいます。

ライム Jakarta, 2019

スープの話しに戻って。

スパイス多用のスープとしてはもうひとつ、チレボン/Cirebonのウンパル・ゲントン/Empal Gentong。


ウンパル・ゲントン Cirebon_West Java, 2019

こちらもココナッツミルクを使った、牛ベースのスープではありますが、
でも、ソト・ブタウィよりは軽く、比較的さらりと食べられる味付け。
スパイス使いもソト・ブタウィに似ていますが、更にカルダモンやターメリックも加わります。

ウンパル・ゲントン Cirebon_West Java, 2019

散らしてあるのは、ニラです。
そしてスープのサンバルとしては、いや、スープじゃなくても、ちょっと珍しい粉末の乾燥チリをトッピングに。

チリ Cirebon_West Java, 2019

結構しっかり辛いです。

ウンパル/Empalとは、インドネシア語でいうところのグライ/Gulai(カレーのようなもの)で、
ゲントン/Gentongというのが、素焼きの鍋を指すのだそうです。
伝統的には、素焼きの鍋で最低でも5時間以上、
タマリンドの木(マンゴーの木という説も)を燃料に、じっくりじっくり煮込むのだそう。

実際、お店の前には煮立つスープが。

ウンパル・ゲントン Cirebon_West Java, 2019

そして、そのお鍋の向こうでは、牛肉を切り分けていました。

ウンパル・ゲントン Cirebon_West Java, 2019

この店に、そして牛に限った話しではないのですが、
スープをとるのに煮込んだお肉を、サーブする時に切る(つまり煮込んでいるときは大きいまま)というのは、
インドネシアではよく見られますね。
ソト・アヤムの具の鶏肉も、供する時に細かく割いてお碗にいれます。

このウンパル・ゲントンにはココナッツミルクを使わない、酸味バージョンもあります。
ウンパル・アセム/Empal Asemと呼ばれるもの。

ウンパル・アセム Cirebon_West Java, 2019

澄んだスープ。
この時は、ご飯ではなくロントン/Lontongと呼ばれるライスケーキに合わせ、そして臓物もプラス。
臭みもなく、食べやすく煮込まれていました。

ウンパル・アセム Cirebon_West Java, 2019

ウンパル・アセム Cirebon_West Java, 2019

酸味の元は、このトマトとナガバノゴレンシ(ブリンビン・ウルー/Belimbing Wuluh)。
タマリンドの酸味に比べるとマイルドですっきりした風味。

インドネシアの、特にジャワのひとたちは「酸味」が苦手というのはよく言われることではあるのですが、
酸味使いのスープというのも、実は結構あります。
このウンパル・アセムもそうですし、ジャカルタや西ジャワ地方発祥のサユール・アセム/Sayur Asemも。

サユール・アセム Jakarta, 2019

サユール/Sayurとは野菜のこと。
その名の通り、動物性のものは使わない、野菜のスープです。
立ち位置としては、サイド。
他のソトがメインメニューなのに対し、鶏料理などを頼んだ時に一緒についてくるような感じです。

サユール・アセムが生まれたのは、オランダの植民地であった時代だと言われています。
使える食材が限られる中、自生していたタマリンドを味付けに使い、少しのチリと椰子糖を加え、
手に入る野菜を具として料理したものなのだとか。
なので、使われる野菜に決まりはなく、今ではその土地ごとの味にアレンジされて各地で親しまれています。

ジャカルタのサユール・アセムでよく使われているのは、
若いジャックフルーツ、トウモロコシ、ハヤトウリ、長豆(ジュウロクササゲ)など。
そして、ピーナッツとムリンジョ/Melinjo(グネモン)と呼ばれる木の実。

サユール・アセム Jakarta, 2019

ムリンジョは東南アジアを中心に栽培、食用される植物。葉も野菜として使われます。
この実の外皮をむくと、中からドングリのような種がでてきて、
このドングリ(?)の殻を割った中にある胚の部分を食べるのですが、わたしは結構それが好きです。

サユール・アセム Jakarta, 2019

この胚を潰して乾かし、揚げたものが、ソト・ブタウィにトッピングされていたウンピンになります。

中部ジャワに戻って、スマラン/Semarangの名物料理に、アセム・アセム/Asem Asemがあります。


アセム・アセム Semarang_Central Java, 2019

牛ベースの酸味系。

ただし、酸っぱいだけではなく、辛くもあります。

アセム・アセム Semarang_Central Java, 2019

大中小の唐辛子が丸ごとゴロゴロと。
ケチャップ・マニスも使っているため、コクのある甘みも感じられ、
酸味はタマリンド、青トマト、ナガバノゴレンシの組み合わせゆえに、角のない穏やかな酸っぱさ。
牛の濃厚ベースに甘辛酸というこの組み合わせはクセになります。

そのスマランからやや西に行った、ペカロンガン/Pekalongan。


で食べたのは、ガラン・アセム/Garang Asem。

元々は中部ジャワでも、クドゥスに近いグロボガン/Groboganという土地が発祥と言われていますが、
各地に伝播するうちに、様々なバリエーションが増えた料理です。
元はスープではなく、バナナの葉に鶏やスパイス類を包んで蒸した料理だったのですが、
ここペカロンガンでは、ほぼ汁物という感じで出されます。

ガラン・アセム Pekalongan_Central Java, 2019

牛出汁に唐辛子をきかせた酸味スープという意味では、スマランのアセム・アセムに似ますが、
こちらは、さらりとした透明感のあるスープで、そしてクルアッ/Keluak(Kluwekとも)を使っています。
クルアッは、以前ブンブの記事の最後の方で触れましたが、インドネシア、マレーシア辺りで使われるスパイス。
ペカロンガンのガラン・アセムのクルアッ使いは比較的軽めで、アクセント使いのような。
けれど特徴的なスモーキーな風味はちゃんと生きています。

クルアッは、ジャワのこの地域で好んで使われるようで、
ペカロンガンではガラン・アセムの他、ピンダン・テテル/Pindang Tetelという料理でも使われていました。

ピンダン・テテル Pekalongan_Central Java, 2019

インドネシアでピンダンと言うと、塩漬けの魚であったり、
または南スマトラのパレンバン/Palembang名物の、魚の煮込みであったりというイメージですが、
このピンダンは魚は関係なく、牛ベース。
テテルとは細切れという意味らしく、牛の皮や余り肉などを刻み、クルアッを使って味付けした料理です。

ピンダン・テテル Pekalongan_Central Java, 2019

かつては、牛を避ける慣習がここペカロンガンまで及んでいたので、
このピンダン・テテルも、以前は水牛の肉で作られていたのだそうです。

部位で歯ごたえが変わる肉と、しゃきっとしたもやし、そして砕いた揚げ煎がトッピングされます。

ピンダン・テテル Pekalongan_Central Java, 2019

汁気を吸ってシュワシュワと音をたてているこの揚げ煎が、丸みのある味わいに仕上げます。

このピンダン・テテルをより濃厚にしたのが、東ジャワはスラバヤ発祥のラヲン/Rawon。


ブラックスープと言われるくらいに、黒々としたラヲンは、ビジュアルで損をしています。

ラヲン Surabaya_East Java, 2019

大きな揚げ煎で隠れてしまっている。

肉ベースのラヲン、調味料は、実は基本のソトの材料と大きくは変わりません。
スパイスが多種使われるわけではなく、ターメリックを含むベーシックなブンブ使いに、
クルアッと、そして肉の臭い消しとしてコブミカンの葉やレモングラスを加えています。

ラヲン Surabaya_East Java, 2019

揚げ煎をどけても、見栄えはしませんが…味は最高なんです。
発芽緑豆と鹹蛋(シエンタン、アヒルの塩卵)をトッピング。
中部ジャワから東ジャワに入ると、料理の味付けは甘みが減って塩気旨味が増すのですが、
このラヲンも東ジャワらしく、甘さのないくっきりとした旨塩系の味付けで、
牛出汁の濃厚さと相まって、いやほんと、美味しいんですよ。
見た目で判断しないでいただきたい料理ナンバーワンかもしれません。

ということで、またも長々と書き連ねましたが、要はジャワのスープは美味しいよ、ということです。


ソト屋の店先 Kudus_Central Java, 2019

ソトのルーツは中国に、とは言いますが、
各地のソトは十分にジャワナイズされていて、それはもうすっかりインドネシアごはんの顔をしています。
地元ジャワのブンブ使いや、同じくこの地域に移り住んで来たアラブ系の人たちのスパイス使いを取り込み、
こんなにもバリエーション豊かな、愛される料理となったのでしょう。

鶏碗 Cirebon_West Java, 2019

ジャワ北岸は海に近いだけあって、暑い土地です。
じりじりと暑い中、汗をかきかき食べるスープは、これがまたなかなかのもの。
あの沁み込むような美味しさを、ぜひ味わってみていただきたいです。