2017/03/29

スープ①/Soto, Sop, Coto

ソト Solo_Central Java, 2017

ということで、ジャワ旅行で食べた美味しいスープたちを。

インドネシアのスープ(汁物)は、これまた色々あり、それだけでまた長い話しになりそうなのですが、
インドネシアのスープあれこれは次回ということで、まずは今回は美味しかった自慢を先にしてしまいます。

最初に、ソロで食べたソト・アヤム・ガディン/Soto Ayam Gading。

ソト・アヤム・ガディン Solo_Central Java, 2017

店の前で大鍋でグラグラしているスープ。香草などがたっぷり煮込まれています。

出てきたのは、すっきりと澄んだチキンスープ(アヤム=鶏)。

ソト・アヤム・ガディン Solo_Central Java, 2017

鶏の裂身に春雨のスープがごはんにかかっています。
あっさりのスープに、サンバルやケチャップ・マニスなどを足して自分好みの味に整えていきます。

揚げ物トッピングも色々。

ソト・アヤム・ガディン(トッピング) Solo_Central Java, 2017

真ん中はバクワン/Bakwanと呼ばれる、かき揚げ的なもの。
左がテンペで、右はソーセージ・ソロと呼ばれる玉子クレープにお肉を巻いたもの。

ガディンというのは象牙を意味するのですが、
このクリアなスープの様子を「象牙」に例えてそう呼ばれているのかと思ったら、
このお店があるあたりの地名でした、ガディン。ネーミングはいつもシンプル。

続いて、ティムロ/Timlo。

ティムロ Solo_Central Java, 2017

ソロ名物の一つ、ティムロ。
アヒル(鶏の場合も)の身と中身、ケチャップ・マニスで味付けした玉子に、
ソト・ガディンのトッピングにもあったソーセージ・ソロを入れたもの(湯葉のところもある)。
アヒル肉だから、ということもあるのかもしれませんが、スープはぐっと旨味が強く、甘さは控えめ。
別添えのごはんにかけたり、ごはんをスープに入れてしまったり。
朝食で行ったのですが、すっかり飲み干しましたよ。

ティムロ Solo_Central Java, 2017

同日のお昼ご飯には、牛肉のスープ。

ソト屋 Solo_Central Java, 2017

1939年からの老舗。らしい。
ベチャのおじさんたちが案内してくれた場所でした。

ソト・ダギン Solo_Central Java, 2017

牛肉のスープはソト・ダギン/Soto Daging(ダギン=肉)と言われます。
こちらのソトもほろほろになった牛肉が入っています。ウズラの玉子トッピング。
ぐっと獣っぽい味わいになります。
ライムを絞って、サンバルの辛味をきかせて、ちょうどわたし好み、という感じ。

このお店は、クラシックな店内がかわいかったのでした。

ソト屋 Solo_Central Java, 2017

各テーブルの中央にガラス戸の入ったスペースがあって、そこに各種トッピングが入っているんです。

続いてジョグジャカルタに場を移し、市内の有名店、ソト・カディピロ/Soto Kadipiro。

ソト・カディピロ Jogjakarta_Central Java, 2017

こちらも、美味しいチキンスープ。ジョグジャカルタだけど、そんなに甘くない(笑)。
中部ジャワは、食堂ででもごはんにスープをかけちゃっているところが結構多いですね。
西ジャワだと、屋台ではかかってる場合が多いのですが、食堂は別々で出て来る方が多い感じ。
どっちにしてもかけちゃうんで、同じなんですけどね。

ここのお店は、トッピングの鶏の顔がえらいことになっていました。

ソト・カディピロ Jogjakarta_Central Java, 2017

カディピロ、も地名です。ネーミングはムダに捻らない。

そして、ぐっと濃厚に、ブロンコス/Brongkos。

ブロンコス Jogjakarta_Central Java, 2017

初めて食べました、これ。ジョグジャの郷土料理で、あまり外では見かけないものらしいです。

牛肉(内蔵も)と、豆腐、ゆで玉子が具となり、クルアッを使っているスープです。
クルアッを使うスープとしては、東ジャワのラヲン/Rawonが有名なのですが、
ブロンコスは更にココナッツミルクをくわえて煮込んでいるので、とても濃厚な味。
ジョグジャらしく甘めなのですが、色々なブンブやココナッツミルクの風味が重なり、複雑な味わいの甘さです。

ブロンコス Jogjakarta_Central Java, 2017

あと、カチャン・トロ/Kacang Toloと呼ばれるササゲ豆を使っているのも特徴なのだとか。
乾物の豆をスープの具に使うのは、ジャワではちょっと珍しい?気がします。

最後に、甘さの中心地、マゲランで食べたソト・クドゥス/Soto Kudus。

ソト・クドゥス Magelang_Central Java, 2017

その名の通り、中部ジャワのクドゥスが発祥のチキンスープ。

ソト・クドゥス Magelang_Central Java, 2017

プルケデル/Perkedel(コロッケ)トッピング。

ソト・クドゥスは、ジャカルタでもいくつか店舗がある、中部ジャワを代表するスープの一つですが、
特徴は、お碗がとても小さく、そこにご飯も具も全部入った状態でレンゲを添えて出されること。

ソト・クドゥス Magelang_Central Java, 2017

お店の奥では、この状態でスタンバイしているのです。

具はシンプルに裂いた鶏肉とモヤシに葉セロリ。
マゲランで食べたソト・クドゥスは、ジャカルタのお店で食べるのよりも甘めでした。
それが、ジャワ的甘みの中心地だからなのか、ソト・クドゥスそもそもの味なのか、
それは今度、実際にクドゥスに行って食べてみないといけないですね。
とはいえ、甘めソト・クドゥスも、ライムとサンバルで好みの味に調整するので問題なし。

ソト・クドゥスの鶏 Magelang_Central Java, 2017

数日の間に何度もスープを食べていた中部ジャワの旅だったのですが、
インドネシアのスープ(汁物)は、本当に美味しいと思うんですよね。
ご飯がするする食べられてしまうあたりは、ダイエット的に危険と思わなくもないですが。

ということで、次回はスープについて、もうちょっと広く。


2017/03/28

ジャワ料理/Masakan Jawa

グデッグ Solo_Central Java, 2017

ジャワのお話のまず最初に、はっきりさせておかなくてはいけないことがあります。
ジャワに、あの「ジャワカレー」は、はありません(「ジャワティー」はあります)。

では、ジャワの料理について。

まず、今更ですが、ジャワ島。



赤い部分です。
長さが1,040kmということなので、本州の約3分の1ですね。
インドネシアの首都、ジャカルタがあるのがこのジャワ島。
アルフレッド・R・ウォレスをして『マレー諸島』内で、
「おそらくまさに世界で最も美しく、もっとも興味深い熱帯の島である」と言わしめたジャワ島。
ウォレスの著にもある通り、いくつもの火山が連なる肥沃な大地は緑に覆われ豊かな植生を見せます。
ちなみに、世界で一番人口の多い島、でもあるようです。まあ、納得。

で、そのジャワ島、行政的には西・中部・東ジャワ及びジャカルタ、と区分けされます。
そして、インドネシアで「ジャワ」と言う場合、おおむね中部〜東ジャワを指します。
(西ジャワは「スンダ」と呼ばれます)

ごはん的には。
やはり、西・中部・東ジャワ、という区分けで、違いが見られる気がします。

ざっとまとめてしまうと、
西ジャワ:塩系、甘すぎず辛すぎず、生野菜をよく食べる。
中部ジャワ:甘め、ココナッツミルクをよく使う。
東ジャワ:塩系、少し辛め、トラシ等旨味系調味料をよく使う。
という感じでしょうか。
もちろん、例えば西ジャワでもココナッツミルクやトラシを使わないわけではないですし、
古くから香料等を運ぶ各国の貿易船が寄港していた島の北岸の港町では、諸外国の影響が多いなど、
それぞれの地域内でもまた違いがあったりで、単純化はできないものではあるのですが。

で、先日中部ジャワを旅行したので、中部ジャワの料理について。

中部ジャワは甘い、と書きましたが、その甘さはグラ・メラと呼ばれる椰子砂糖。

グラ・メラ Bandung_West Java, 2017

中部ジャワ料理の一つにバチェム/Bacemというものがあります。
豆腐、またはテンペをジャワ式に甘く煮込んだ料理。

テンペと豆腐のバチェム Solo_Central Java, 2017

初めて食べた時には、お菓子のようなその甘さにびっくりしました。
もちろん、バワンメラ(シャロット)や、ナンキョウなども使っている、れっきとしたおかずなのですが、
それでも、味の第一印象が強烈な甘さなので「うわあ」となったのでした。

なぜ、中部ジャワ料理がこんなに甘いのか。

一説には、オランダ植民地時代の強制栽培制度によるのではないか、と言われています。
中部〜東ジャワはサトウキビを強制的に作付けさせられていたのですが、
その際に、元は稲を植えていた土地にまでサトウキビを植え付けることになり、
結果、農民たちの食生活で熱量不足が起きたために、それを補う目的で糖度が増したのだそうです。
であれば、甘いジャワ料理というのは、1800年代半ば以降に生じたものなのかもしれませんね。
ただ、同じようにサトウキビの植え付けを行っていた東ジャワは、それほど甘くないのはなぜなのか、
ちょっと疑問が残りはするのですが。

そして、わたしの中で「中部ジャワ=甘い」を決定的にしたのが、ジョグジャカルタ名物のこの料理。

グデッグ Jogjakarta_Central Java, 2015

グデッグ/Gudegと呼ばれる、若いジャックフルーツをココナッツミルクで煮込んだ料理。

鶏肉、玉子などを添えて、ココナッツミルクのソースをかけ、
サンバル・クレチェッ/Sambal Krecekと言われる、牛の皮を使ったサンバルが添えられています。

インドネシアごはんは、そのルーツが中国やインドなど他国にある料理も多々あるのですが、
グデッグは、ある意味インドネシアの正統派トラディショナルフードです。
グデッグの由来を調べると、マタラム王国がジョグジャの地に都を整備せんと森を切り開いた際に、
沢山のジャックフルーツの木と椰子の木があったから、という説が出てきたりします。
16世紀も終わり頃の話しですかね。
材料や調理方法などを見ても、とても土着感のある料理です。

ジャックフルーツ Bandung_West Java, 2017

ジャックフルーツは、日本語だと波羅蜜と呼ばれることもある、南アジア原産の果物。
大きな木の幹から、脈絡ない風に大きな実がなるのが特徴です。
森を切り開き、沢山の若いジャックフルーツの実がゴロゴロ採れて、
じゃあもったいないし、料理してしまおうか、となったのがグデッグなのかもなと思うと、なんだか微笑ましい。

で、このグデッグがまた、甘い。
(先の強制栽培制度と甘さの関係の話しが本当であれば、グデッグが甘くなったのも19世紀後半なのでしょうが)
甘さ控えめと言われたお店でも、やっぱり甘い。
西ジャワの味になれた舌には、とても不思議な感じなのです、その甘さ。
「甘い甘いと思っていたけど、やっぱり甘いね中部ジャワ」と甘さの印象を強めたのがこのグデッグでした。

なので。

今回、ジョグジャカルタから汽車で1時間ちょっとのソロ(スラカルタ)という街でグデッグを食べてびっくり。

甘くないんです(それほど)。

グデッグ Solo_Central Java, 2017

構成はジョグジャカルタのグデッグと同じなのですけどね。
この牛肉っぽく見えているのが、調理された若いジャックフルーツです。
その横によけているのが、鶏。向こうが玉子。

そして、その向こうにサンバル・クレチェッ。

グデッグ Solo_Central Java, 2017

サンバル・クレチェッは、干した牛皮を戻してから調理しているのですが、
独特の「うにうに」した食感がちょっとクセになる感じです。

ちなみに、ソロのグデッグは鶏の足がついてくる、のが有名?なようなので頼んでみました。
食べるとこもたいしてないのに、なんでみんな頼むのかなあ、とか思いつつ、
ついつい手が伸びて、なんとなく前歯でほりほり食べてしまう。

鶏の足 Solo_Central Java, 2017

美味しかった(笑)。

で、サンバルは唐辛子を使っているので辛いですが(でも、レシピを見ると椰子砂糖も使ってます…笑)、
それ以外も、ジョグジャカルタのグデッグに比べると、甘さ控えめなのです。

在中部ジャワの友人曰く、
「甘いのはジョグジャカルタからマゲラン地域が中心、ソロはそれほどでもない」のだそうです。
中部ジャワでひとくくりにしてはいけませんね。
北側と南側で味の違いがある、それだけでなくもっと細分化された地域差。
面白いなあ。

ということで、甘いばかりじゃない!と分かった中部ジャワの、美味しかったスープたちのお話を次回。

最後に。
あの「ジャワカレー」のジャワはあくまで「イメージ」です。
と、ハウス食品さんがおっしゃっています。

2017/03/24

ブンブ/Bumbu

ブンブ色々 Bandung_West Java, 2017

日本語化しずらい単語って、あるんですよね。今回のブンブ/Bumbuもそんな感じです。

調味料、なんです。ブンブは。
ただ、日本語の調味料というと味噌醤油砂糖塩…など、その字の如く、後から加え味を整えるものなのですが、
ブンブは、味の土台となる素材から風味出しのスパイス等々まで含み、
なので「調味料」と言ってイメージされる範囲より、もうちょっと広い意味を持っています。
なので、ブンブはブンブということで、そのままいきましょう。

まず、ブンブ・ダサール/Bumbu Dasarと呼ばれる、まさに「基礎」のブンブ。
(ダサールはインドネシア語で「基礎、土台」という意味です)

ブンブ・ダサール Bandung_West Java, 2017

バワン・プティ(ニンニク)とバワン・メラ(シャロット)。
以前この記事に書いた通り、インドネシアではバワン・メラがメインとなり、バワン・プティはアクセント。
この組み合わせを基本とし、様々なスパイスや調味料を重ねて、チョベッですり潰し、味を作ります。
昆布に鰹節を合わせたり、煮干しを使ったり、干し椎茸を使ったり、という出汁の組み合わせと同じ感じです。

例えば、
ブンブ・ダサール・メラ。メラ/Merahは「赤」を意味します。
バワン・メラとバワン・プティに、唐辛子、トマトなどを加えた、赤いブンブ・ダサール。
ブンブ・ダサール・プティ。プティ/Putihは「白」。
バワン・メラとバワン・プティに、クミリ(キャンドルナッツ、後述)やガランガル(後述)を加えたもの。
ブンブ・ダサール・クニン。クニン/Kuningは「黄」。
プティの素材に、ターメリックを加えたもの。
のような感じに。
組み合わせは、地域、料理、そして家庭ごとに違いますが、いずれも掛け合わせで味を作っていきます。

では、ブンブ・ダサールに掛け合わせていく、ショウガその他の根類たち。

根類 Bandung_West Java, 2017 

左上から、時計回りに。
ショウガ/Jahe、ガランガル/Lengkuas、ターメリック/Kunyit(粉末+根)、
フィンガールート/Temu Kunci、バンウコン/Kuncur。

ショウガは、説明するまでもないですね。
インドネシアでもスープの煮込みに使ったり、温かいドリンクにしたり、何かと出番が多いのがショウガです。

そして、ガランガル。ナンキョウとも言います。
ショウガに似て、でもショウガよりも赤味がかってつるりとした肌感。
ガランガルを頻繁に使用するのは、ジャワとスマトラの料理。タイなどでもよく使われています。

追記
バリでもよく使うとのことです。
他の地域でも、使うことは使っているのでしょうが、メインでよく使用するのは、
スマトラ、ジャワ、バリあたり、という感じでしょうかね。

見た目は似ているし、味も確かにショウガと同類と言えば同類かもしれませんが、でもだいぶ違います。
とても独特の風味を持っていて、なかなか代用が見つからないのがガランガルです。

……味の説明って難しいですよね。
ミョウガを食べたことない人にミョウガの味の説明するような感じです。
「独特」としか言いようがないというか(笑)。

続いて、ターメリック。こちらももうお馴染みですね。
フレッシュな状態でも、粉末にした状態ででも、使われます。
ジャムー/Jamuと呼ばれるインドネシアの漢方にもよく使われるターメリックですが、
料理では、魚などの臭み消しなどでも重宝がられます。

そして、フィンガールートとバンウコン。これも、味の説明が難しい。
フィンガールートはタイでクラチャイと呼ばれているもの。
インドネシアでは、中部〜東ジャワで使われる場合が多いそうです。
そして、バンウコンはジャワ島全域からバリ島にかけてが使用頻度の高いエリアだそう。
これは、ターメリック同様、ジャムーにも使われます。'

グラ・メラ Bandung_West Java, 2017

そして、甘味。
定番はグラ・メラ/Gula Merah。椰子の樹液を煮詰めた砂糖です。
インドネシア、特に中部ジャワの料理には欠かせないのが、グラ・メラ。
ジャワの砂糖、グラ・ジャワ/Gula Jawaと呼ばれる場合もあります。

一方、西ジャワでよくみかけるのが、アレン砂糖、グラ・アレン/Gula Aren。

グラ・アレン Bandung_West Java, 2016

アレンの木の葉で包まれているのがお約束。
グラ・メラの椰子はココナッツですが、アレンは、日本語でサトウ椰子と呼ばれる椰子の木。
アレンの木は、ある程度標高が高い土地の、森の中に生えています。
砂糖を作るプロセスは、ロンタル椰子と同様。花軸から樹液を採取し煮詰めていきます。

ということで、せっかくなので味比べ。

パームシュガー Bandung_West Java, 2017

上から、グラ・アレン、グラ・メラ、グラ・レンペン(ロンタル)です。

3つ比べると、グラ・レンペンが一番、日本の黒糖の味に近い気がします。
グラ・メラは3つの中で一番明るい甘さ。爽やかで酸味と塩気に近い旨味も若干感じます。
グラ・アレンはずっと重さのある甘み。そして、製造工程を反映してか、煙の風味がとても強いです。
わが家ではアレンを使うことが多いのですが、グラ・アレン、だいたいが煙の味がするんです。
(結構、好きです)

続いて、塩。

塩 Bandung_West Java, 2017

これだけ海に囲まれていますので、インドネシアで塩と言えば海の塩ですね。
有名なのは、バリの塩。わが家ももうずっとバリ塩です。

旅先で見かけた製塩と言えば、東ヌサトゥンガラ地方のサヴ島。

製塩 Savu_East Nusa Tenggara, 2011

夕暮れ時に、おばちゃんが天秤で海水を担いでやってきます。
塩を作る容器として使われているのは、シャコ貝の殻なんです。

製塩 Savu_East Nusa Tenggara, 2011

とても地道な作業。

製塩 Savu_East Nusa Tenggara, 2011

こうして作られた塩は、じんわり、色んな味が混ざったワイルドな味わい。

砂糖にしても塩にしてもそうなのですが、
インドネシアで手に入るこれらはとても美味しくて、それはやっぱり雑味の美味しさなのだと思います。
精製糖精製塩ももちろんありますが、すっきりしてない、色んな味が混ざっているからこその旨味が好きです。

続いて、酸味。

タマリンドとカンディス Bandung_West Java, 2017

タマリンド(手前)、インドネシアではアサム/Asamと呼ばれます。
酸味を意味するアサムがそのまま名称として使われている、その名に恥じない酸っぱさです。
豆科の植物であるタマリンドの、サヤから外した果肉を集めた状態で売られているのが通常。
これを必要量だけ水の中でもみほぐし、酸っぱい水を作って料理に使います。

もう一つ、カンディス/Kandis(奥)。西スマトラでよく使われる酸味料です。
マンゴスチンなどと同種のフクギ属で、和名はキヤニモモと呼ばれる植物の果肉を乾燥させたものです。
わたしも果実そのものは見たことがありません。

酸味を出す材料は地域特有のものもふくめて他にも色々あるので、手に入り次第また追々。

そして、旨味出しと言えば、のトラシ/Terasi(またはTrasi)。

トラシ Bandung_West Java, 2017

料理はもちろん、サンバルにも多用される、エビの発酵調味料です。食欲をそそる香り。
発酵後、味噌程度の固さまで乾燥させあり、必要量を焼くなどして加熱し、風味を十分出してから使います。

ただ、今は便利な時代なので、既に「そのまま使える」状態の顆粒状のトラシも売られていたりします。

トラシ Bandung_West Java, 2017

トラシをよく用いるのは、やはりジャワの食卓でしょうか。
また東ジャワでは、よりペースト状に近い類似の「ペティス/Petis」という調味料もあります。
いずれも、旨味系。がっつり。

ナッツ&スパイス Bandung_West Java, 2017

そして、最後、色んなスパイスやナッツ系。

左上から時計回りに、
シナモン/Kayu Manis、クミリ/Kemiri、コリアンダー/Biji Ketumbar、カルダモン/Kapulaga、
丁字(クローブ)/Cengkeh、ナツメグ(ニクズク)/Pala、クルアッ/Keluak。


シナモンと言えば、南カリマンタンの山中で、とても立派なシナモンを干しているのを見たことがあります。

シナモン干し Loksado_South Kalimantan, 2016

小枝くらいあるこのシナモンは、恐らく工場などで粉末にされるものだと思うのですが、
こうやって採れる割りに、インドネシア料理でのシナモンの使用頻度は、実はあまり高くない気がします。
お菓子であったり、温かい飲み物などにはよく使われるのですが、
料理では、と言うと、インドからの影響が強い地域などでは使うのかもしれませんが、
少なくとジャワでは、それほど前に出てくることはありません。

そして、クミリ。キャンドルナッツです。
高い油脂が特徴のクミリ。ブンブ・ダサールと共にペースト状にして、汁物などに使ったりします。
味が強いものではないのですが、さすが油脂、あるとないとでは、味の深みというか厚みが違う気がします。

ちなみに、クミリは巨木になります。
わが家の裏に生えている巨木クミリ、雨の時など大量のつぶてのように実を屋根に落としてくれ、
お陰で、わが家は雨漏りに悩まされています(落ちてきた実はメイドさんが集めて干して売っています)。
余談でした(笑)。

次に、コリアンダー。
爽やかな香りが好まれ、炒め物、揚げ物などによく使われています。
なのに、葉(パクチー)は全くと言っていいほど、使われないんですよね。不思議です。

カルダモン。
このずんぐり丸くて白いのは、ローカルカルダモンと言われ、緑のカルダモンより若干香りは弱め。
南アジアの香りのカルダモンですが、なにげに、汁物などにぽろっと使われていたりします。

そして、丁字とナツメグ。
かつて各国の貿易船が往来し、欧州列強がこの南洋地域に乗り出してきたのも、
元はと言えば、このスパイスがあったから。

インドネシア、マルク諸島原産の丁字。
現在も同地域を始め、北スラウェシなどでも栽培されています。

丁字 Sangir_North Sulawesi, 2015

丁字の花の蕾を採取して乾かしたのが、スパイスとして目にする、あの「丁字」です。
花開いてしまうと、一気に香りが落ちるのだとか。

丁字 Ternate_North Maluku, 2012

なので、年2回の収穫の季節は大忙し。
何本もの木に登って降りて、手摘みで収穫していきます。

そして、南国の陽射しのもと一気に乾燥させるのです。

丁字 Sangir_North Sulawesi, 2015

丁字が干されているところを通りかかると、ふわんと甘い香りがします。

かつてと変わらず、今でもせっせと収穫され乾燥されている丁字ですが、その割に料理での使用頻度は高くなく、
一部肉料理や、あとはお菓子などに使われるくらいでしょうか。
インドネシアで丁字といったら、タバコなのです。
甘い香りのする、クレテックと呼ばれる丁字タバコ。
今のように禁煙化が徹底される前のバリやジャカルタの空港で、飛行機を降りた時に嗅いだあの香り、です。

一方のナツメグ。
こちらは、同じマルクの中の、バンダ諸島原産。
広い海の真ん中にぽつんとある小さな火山島と周辺の島。元々はそこにだけ生えていた植物だったんですね。

ナツメグ Banda_Central Maluku, 2012

一年を通して収穫できるアプリコットのような実。その中央に見える外皮に覆われた種。
赤い外皮がメースと呼ばれる部分。
そして、種の殻を割った核の部分がナツメグと呼ばれるスパイスになる部分です。

ナツメグ Banda_Central Maluku, 2012

ナツメグの使用頻度は、丁字とあまり変わらないかもしれません。肉料理や汁物で時々使うかな、という感じ。
この2つのスパイス、こうも地域に密着している割に現地の料理にもさほど利用されていないのが面白いです。
恐らくは、薬扱いだったのか、そして貿易品として出荷するのがメインだったのか、という気がします。
バンダの市場ではナツメグもメースも目にすることがなく、ただ果肉の部分が砂糖漬けで売られていました。
とても酸っぱいナツメグの果肉ですが、これを煮詰めたジャムは酸味の中にナツメグの風味があって逸品です。

ナツメグ Banda_Central Maluku, 2012

そして、最後。クルアッ。ブラック・ナッツとも呼ばれます。
クルアッを使うのはジャワとスラウェシ南部。
この木の実の殻の内部を使うのですが、生の状態だとシアン化合物を含む危険な食べ物なのです。
キャッサバに続いて、またもシアン化合物!)

クルアッ Tana Toraja_South Sulawesi, 2011

生の状態では白いこのクルアッ、毒抜きの作業を終えると、真っ黒に変わります。
ジャワでは茹でて土や灰に埋めておくことで毒抜きをするそう。
わたしが見たスラウェシのトラジャでは、袋で包んで寝かせておく、という方法でした。
いずれも、発酵させる、ということなのだと思います。

クルアッ Tana Toraja_South Sulawesi, 2011

トラジャのクルアッ(トラジャではパマルラサン/Pamarrasanと呼びます)は指でこすり合わせると脂が滲み、
おじさん曰く「帰郷してきたトラジャ人はみんな持って帰る。ジャワのとは味が違うんだ」のだそうです。

この当時、せっかくこうして見ていたのに、クルアッを使った郷土料理は食べ損ねたんですよね。
お祝い事や葬儀など、特別な時にしかなかなか出会えないものではあるらしいのですが、心残り。

クルアッ Tana Toraja_South Sulawesi, 2011

ということで、駆け足でざっとのつもりがかなり長くなってしまった、ブンブのお話でした。
あ、スパイスの中に入れ忘れましたが、胡椒はインドネシアでもよく使われています。

もちろん、この他にもそれぞれの土地特有のブンブなども色々あるわけですが、
とりあえず、ざっとこのくらい紹介しておくと、
この先に各地の料理の話しをするのに、分かりやすいかなあと思った次第です。