2017/08/16

バンガイ諸島の食卓④

貝のケチャップ炒め Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

前回まで魚料理について書いてきましたが、今回はそれ以外の海の幸について。
漁村のお母さんの台所から生み出される「うまー!」な料理たちのご紹介です。
このお母さん、ホームステイしてた女の子を1ヶ月半で6kg太らせた実力の持ち主。すごく危険(笑)。

この地域では市場は週に一日だけ。
ブンブなどは市場で買いますが、それ以外の食材は毎日自前調達。
狩猟採集の食卓です。

ということで、暗くなる前に、お父さんが小舟で食材探しに。

食材探し Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

家は海の上に張り出すように建てられていて、その目の前の海はずっと遠浅の穏やかな海。
あの小舟のあたりにお父さんが貝やらを集めておく場所があるらしく、
小舟の左側辺りで水中に潜って、保管しておいた貝などを回収しているところです。

ウニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まず、ウニ。
「ウニが食べたい!」とわたしが言ったからなのです。

インドネシアでウニを食べる地域は決して多くなく、沿岸部のひとたちでも食べたがらない場合があります。
ただ、以前、南東スラウェシのバジャウ人の集落で蒸したウニを味見したことがあり、
それ以降どこかであのウニがまた食べられないものかと、行く先々で訊ねて回っていたのです。

その時に食べたウニは黒いトゲのもっと長い、ウニらしいウニだったのですが、
この日たまたまお父さんが収穫して来てくれたのはトゲの短いシマシマのタイプのもの。

ウニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ガサガサ言っているウニたちに真水(お湯でもいい)を注いでしばらく待ち、
その後ナイフで殻をあけていきます。
海藻を大量に食べているので、殻の中にたまった海藻カスは水ですすぎ落とし、
殻にへばりついている肉部分をスプーンでこそげて食べます。

ウニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

うわー海の味だ!となりました。
黒いウニは甘みがある、とお父さんは言います(確かに甘かった)が、これは濃厚に磯の味と香り。
生臭さが苦手な人も多いので、これは確かに好き嫌いでそうだなあと思います。
黒いウニも食べたかったけど、これはこれで食べられてよかったです。

さて、この日はウニだけではなかったのです。

シャコガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お父さん、シャコガイも保管していたのでした。
インドネシアでは、キマ/Kimaと呼ばれるシャコガイ。
商業目的での捕獲は禁止されていたはずで、なのでお家で食べる用に、とのこと。

シャコガイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お父さんが手に持っているのが貝柱。ささっと切って「ほら、食べてみろ」と差し出します。
歯ごたえも素晴らしく、ああ生の貝なんて久しぶりだーと感無量。

ヒモの部分やキモも合わせて全てを小さく刻むところまで、小舟の上でやって帰って来てくれました。

シャコガイの身 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

で、この新鮮なシャコガイは生食します。

ゴフ/Gohuと言われる生の魚や貝を使った調理方法は、この地域から北マルクあたりのものだそうで、
この日は、キマのゴフです。

キマのゴフ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

潰した唐辛子、レモン・チュイの果汁、少々の塩、好みで刻んだバワン・メラ。
以前クパンで食べたイワシのラワールにも似ていますね。

さて、キマのゴフ。
美味しくないわけないじゃないですか、これは。
貝柱の歯ごたえといい、ヒモの旨味といい、ああ幸せ。

さて、別の日。別の貝。

貝の収集 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

再びお父さん登場。

よくわからない写真だと思うのですが、これ、お父さんが大量の貝を集めたところなのです。
ポケットにいっぱい、Tシャツのお腹の部分を袋にしてそこにもいっぱい詰め込んでいます。
「獲れた、獲れた」

クモ貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

クモ貝たくさん(宝貝も少々)。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まず味見を兼ねて、たき火の燠火で焼いてみます。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

貝を叩き割って、ぎゅっと焼き締まった身を取り出します。
噛むとぎゅっとくる濃厚な旨味。
(学生時代に貝料理屋でバイトしていたので、貝が大好きなのです、実は)

さて、味見も済んだところで、貝たちをお母さんの台所に持ち込みます。

クモ貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

じーっと見られていたりして「ひっ」となったりもしましたが、気にせず食べますよ。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まずは、やはりしっかりと焼きます。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

焼き上がったのは、触れるくらいまで冷ましてから、殻を割って身を取り出しぶつ切りにします。

焼き貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ぎゅっと焼けた貝に、レモン・チュイを絞った塩水を注ぎ、唐辛子を少々。
旨味がしみ出し、そのまま焼いたのとはまた異なる味わい。シンプルなのに絶妙です。

この焼いてから塩水、というのは焼き魚でやっても美味しいのだそうです。
ぎゅっと焼いた魚をさっと海水に浸して食べたりするよ、とお父さん。ほほーう。
いつかやってみたいですね、キレイな海に行った時にでも。

さて、この貝たちを翌日、お母さんがまとめて茹でました。

茹でクモ貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

茹で上がったのをせっせと殻から取り出し、爪を取り除き、ぬめりもとります。

クモ貝の殻 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これは、剥いた後の殻(一部)

身の方は、指先大に刻んでいきます(島のお母さんたちはまな板は使わないので、一つずつナイフで)。

茹で貝 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

そして、基本のブンブ(唐辛子、塩、ニンニク、バワン・メラ、トマト)を潰します。

ブンブの準備 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お母さんの台所の食材、調味料たちは全部このカゴの中に入っています。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

じゃないとネズミに齧られるの。
うちの猫はね、よくネズミを捕るのだけど、いまお腹大きくて動きが悪いのよー。だそうです。

漁村のお母さんの台所、わたし大好きです。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

奥の部分では薪で火を熾せるようになっていて、手前に石油コンロが3つ。
薪で調理するって、憧れるんですよねえ。
火力の調整とか、そもそも火を上手く起こすところとか、ベテランのお母さんの手際のよさがカッコいい。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

薪や石油なのでお鍋の底は真っ黒になりがちですが、それでもよく使い込んで整理されています。

で、お母さん、調理開始。

お母さんの台所 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

さっきのブンブを油で炒めて香りを出し、粉末のターメリックを振りいれます。
刻んだ貝にパッとレモン・チュイの果汁を振りかけてから鍋に加え、水分を適量足しながら炒め煮に。

貝の炒め煮 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ケチャップ・マニス、胡椒、塩などで味を整え、できあがり。

ぎゅっと締まった焼き貝とは違って、歯ごたえよくも柔らかい出来上がりのケチャップ炒めです。

貝のケチャップ炒め Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これも美味しかったー。

お母さんの料理は、決して複雑でもないし、凝ったものでもないのに、本当に美味しいのです。
普段の食事でごはんのおかわりをすることなんてまずないのですが、
お母さんのところにいる間は「もうちょっと」と足さずにはいられない食事でした。

ああ、思い出しただけで、白ごはん食べられそう(笑)。



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