2017/04/18

サテ/Sate

サテ屋 Bandung_West Java, 2017

さて、サテのお話を。

…すみません。

サテ/Sateは、日本のエスニックレストランとかでもありそうですね。
インドネシアごはんの中でも、とてもポピュラーな料理です。
インドネシア国内でも、だいたいどこに行ってもサテの屋台を目にしますし、みんな大好き。
夕暮れ時の住宅街で、サテを焼く煙がもくもくとしているのを見るのも雰囲気があっていいものです。

通りのサテ屋 Jakarta, 2016

サテとはつまり、串焼きの肉のことです。

ヤギのサテ Jogjakarta_Central Java, 2017

そのルーツは、アラブにあると言われます。そう、シシケバブのあの流れです。

肉を串に刺して焼くその調理法が、アラブからインド南部を経由しインドネシアに入って来た。
というのが、一般的に言われている説です。
サテに使われる肉が、ヤギや牛などムスリムの食材と合致していることからもうかがえます。

サテ屋のヤギ肉 Bandung_West Java, 2017

ただ、インドネシア、特にジャワの人たちはそれほど頻繁に牛やヤギの肉を消費していた訳ではなく、
市井の人々が最も日常的に口にしていた肉と言えば、鶏。
インドネシアにサテが広まっていく中で、サテ・アヤム、つまり鶏サテが生まれ、定着していきました。
今では、ジャワでサテと言えば「鶏かヤギか牛」というくらいベーシックなものになっています。

サテの名は、タミル語で「新鮮さ」を意味するSathaiに由来します。

と、本では読んだのですが。
オンラインのタミル-英語辞書ではSathaiという単語、出て来ませんけど。
ホントは何語なんでしょう??

牛のサテ Wonosobo_Central Java, 2017

一方で、タミル語ではなく中国語だと言う説もあります。
「三片の肉」を意味するSa tae bakが語源であると。

また一方で、バリの伝統儀式においてサテが重要な一皿であることは古文書に記載されているそうで、
じゃあ、やっぱりサテはインド経由アラブから伝来する前にもうインドネシアにあったのではないか、
という話しもまた、あるにはあるようなのですが、それに対しては、
バリのサテはひき肉を使うので、肉の串焼きとはまた違う由来なのではないか、という意見もある様子。

つまり、サテの由来は、イマイチよく分からない。ということですね。

ただ、少なくとも現代では、串に刺して炭火調理されたものはいずれもサテと呼ばれ、
鶏肉、牛肉、ヤギ肉、豚肉、魚肉、玉子、貝、その他、いろんな種類のサテがあります。

ということで、ざっと、美味しいサテの色々を。

まずは東ジャワ、マドゥラ島のサテ・マドゥラ/Sate Madura。

サテ・アヤム・マドゥラ Samarinda_East Kalimantan, 2016

一番ベーシックな、サテらしいサテと言えば、このサテ・マドゥラな気がします。
鶏もしくはヤギ肉を焼いて、ピーナッツソースとケチャップ・マニスをかけて食べるのが特徴。
ジャワでサテと言えば、基本的にはこのピーナッツソースをつかったものです。
丸みのあるコクが、淡白な鶏肉、しっかり肉の味がするヤギ肉、そのどちらにもよく合うのです。

上の写真は、カリマンタンで食べた時のものですが、
サテ・マドゥラの屋台は、インドネシアどこに行っても、たいがい目にするような気がします。

ピーナッツソース Bandung_West Java, 2017

そんなジャワのサテの特徴のピーナッツソースですが、別添えで来る場合もあります。

そして、シャロットとフレッシュチリの刻んだものを混ぜたケチャップ・マニスも定番。

ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017

ここで使うフレッシュチリは一番辛い小粒の唐辛子。香りがぱっと立つ青いものが美味しいです。
肉の味+ピーナッツのコク+ケチャップの甘み+クリアな辛味、というこの組み合わせはクセになります。

ここのお店では、ピーナッツソースを焼く前にざっとつけていました。

牛のサテ Bandung_West Java, 2017

こうして焼かれ、上掛けのピーナッツソースは別添えで出されるので、味わい方は自分好みに調整できるのです。

牛のサテ Bandung_West Java, 2017

ジャワのサテの基本形がこのピーナッツソースのサテだとしたら、
西スマトラのサテの基本形は、サテ・パダン/Sate Padangと呼ばれる、カレーソースがかかった牛のサテ。

サテ・パダン Jakarta, 2017

ジャワのサテより小振りの肉を炙り、ライスケーキに添え、各種スパイスを合わせて作ったソースをかける。
このソース、とろみ具合といい、日本のカレーによく似ています。

サテ・パダン Jakarta, 2016

西スマトラは、サテに限らず香辛料の使い方などインドからの影響がかなり強く見える土地。
そんな土地ならではの、とても特徴的な一皿が、このサテ・パダンです。

一方で、先に少し触れたバリのサテ。ひき肉にココナッツを混ぜたサテ・リリッ/Sate Lilit。

ナシ・チャンプル Denpasar_Bali, 2016

なんかちゃんとした写真が見つからなかったのですが、この一番手前のつくね串状のものがサテ・リリッです。
魚の身を使うことが多いのも特徴(鶏や豚などももちろんあります)で、
ハーブやスパイスなどを混ぜ込み、通常のサテの串より太い竹の串を用いて焼きます。
この串が、レモングラスの軸になることもあるのが、また素敵。

華人の食堂でたまに出会う豚肉のサテも美味しいです。

豚のサテ Bandung_West Java, 2017

ピーナッツソースでもスパイシーなタレでもなく、甘めのタレで下味をつけたもの。
その糖分のお陰でかりっとした焦げが出来て、その香ばしさと食感がいいアクセントになります。

また、先日中部ジャワで食べたヤギのサテも、素晴らしく美味しかったのでした。

サテ・クラタッ Jogjakarta_Central Java, 2017

ジョグジャカルタ名物と言われる、若いヤギ肉を塩と胡椒の下味だけで焼いたこのサテ。
サテ・クラタッ/Sate Klatakと呼ばれ、普通のサテよりずっとボリュームがあります。
その大きめな肉にきちんと熱を通すために、
通常は竹串を使うところ、金属の串(自転車のスポークだと言います)を使っているのが特徴。

サテ・クラタッ Jogjakarta_Central Java, 2017

普通、ヤギ肉と言えば臭みがあると言われ、その臭みを消すのに香辛料を使ったりするものなのですが、
ここのサテは、若いヤギ肉だからなのか、最小限の味付けにも関わらず臭みは全く感じず、
肉そのものの美味しさを味わえます。

ちなみに、クラタッとは、サテを焼いている時にたつ音から由来した名前なのだそうです。

サテ・クラタッ Jogjakarta_Central Java, 2017

(あれ、手前の串は竹串だ……汗)

もうひとつ、シンプルな味付けと言えば。
去年の終わり頃から今年にかけて、ジャカルタで急激にはやり始めたサテがあります。
その名も、サテ・タイチャン/Sate Taichan。

サテ・タイチャン Jakarta, 2017

塩胡椒のみで焼いたサテ・アヤムに、ライムとフレッシュチリのサンバル。それが基本形のようです。
店によっては、チキンスープの素をサラダ油に混ぜたものをかけたりもします。
シンプルで、スパンと辛くて、もう確実に美味しいタイプのサテです。
なんでも、このサテ、あるサテ屋で日本人が塩焼きでオーダー(つまりは日本の焼き鳥風)したのが発祥とか。
まさに日本人好みのこの味付け、そのオーダーした人の名前をとってタイチャンと名付けられ、
発端の南ジャカルタから一気にブームは広がり、最近ではここバンドンでも目にするようになりました。

この他にも、色んな種類のサテがあります。
例えば先日スープのことを書いた際に使った↓の写真。

ソトのトッピング色々 Jogjakarta_Central Java, 2017

この右側のは、鳥皮のサテと、ウズラの玉子のサテですね。

また、昨年フローレス島に行った際に、海辺の村で食べたのは、イカのサテ。

イカのサテ Flores_East Nusa Tenggara, 2016

串に刺して炙り焼きにしたら、それはもうサテなのです。
まだまだ、食べたことのないご当地サテも、きっと色々あるのだと思います。
(つゆだくサテ、みたいなものをどこかで目にしたこともありますし)

サテ・パダン Jakarta, 2016

インドネシアのひとたちの、その日常の中にすっかり馴染んでいるサテ。
住宅地に、オフィス街に、駅やターミナルなどの人が集まるところに、
食堂であったり、小さな屋台であったりのサテ屋は必ずと言っていいほどあります。
ぱたぱたと炭を扇いで火を熾し、じゅうじゅうと肉を炙り、もくもくと煙をあげているのです。

そんなサテのお話の最後に、大阪の国立民俗学博物館に収蔵されているサテの屋台を。

サテの屋台 大阪 国立民俗学博物館蔵
サテの屋台 大阪 国立民俗学博物館蔵

サテの屋台 大阪 国立民俗学博物館蔵

船の形してるんですよ。
実際に街で目にしたことはないのですが、かわいいですよね。


2017/04/05

ナシ・リウェット/Nasi Liwet

ナシ・リウェット・バンドン Bandung_West Java, 2017

同じ名前の料理なのに、別物。そんな、ナシ・リウェット/Nasi Liwetのお話。

西ジャワ地方、特にバンドンでナシ・リウェットというと、香辛料や塩漬けの小魚などを炊き込んだごはん。
火から下ろした土鍋や、アルミのお鍋そのままで供されるのが一般的です。
お鍋のお焦げも香ばしく、一緒にいただくおかずは主に、揚げた鶏や豆腐やテンペ。そして、サンバル。
美味しいです。大好物。

ところが、同じナシ・リウェットでも、ソロのものはまた別物。
以前そんな話しを耳にしたので、先日のソロ滞在で、ソロ版ナシ・リウェットを試してみました。

ナシ・リウェット・ソロ Solo_Central Java, 2017

確かに、別物…!

ココナッツ風味のごはんに、裂いた鶏、レバー、玉子、ハヤトウリの煮物、そしてふんわりココナッツミルク。
バナナの葉に乗せられて、1ポーションは小さめ。
ココナッツミルクを使っている割りにくどさはなく、ぺろっといってしまいます。

正確な記述ではないのですが、口承で伝わってる話しでは、
ナシ・リウェットは、かつてソロの貴族がアラブ(もしくはインド)の「ピラフ」を気に入って、
食べたい、食べたい、作りたい、となったのが起源ではないか、とのこと。
どんなに食べたい、と言ったところで、材料のギー(動物性油脂)は当時そう簡単に手に入るものではなく、
代替材料を探し、旨味のあるごはんを…となった結果が、
ココナッツミルクで炊き込んだこのナシ・リウェットとなったのだ、という話しです。
リウェットはごはんを炊く、という意味があるので、
ナシ・リウェット、まるで日本語の「炊き込みご飯」みたいな感じですね。

ナシ・リウェット・ソロ Solo_Central Java, 2017

で、ココナッツミルクでごはんに旨味を出すだけにとどまらず、
おかずとしての鶏の調理であったり、仕上げにとろりとかけるソースであったりまでココナッツミルクを使い、
徐々に、今あるソロのナシ・リウェットになっていったようです。

なるほど。

ではなぜバンドンのナシ・リウェットはココナッツミルクを使わないのか。
そこもまた明確な文書などがあるわけではないのですが、
例えばパームシュガーの原料をみても、
中部ジャワはココナッツなのに対し、西ジャワはアレンという森のパームだったりすることから、
また、西ジャワの他の料理をみてもココナッツミルクはそれほど多用されていないことからも、
おそらくは植生によるものではないかなと思います。
山がちな西ジャワ地方、特にバンドンでは、
そもそもはそんなに沢山のココナッツが育ってなかったのではないかという気がするんですよね。

ナシ・リウェット・ソロ Solo_Central Java, 2017

美味しかったな、ソロのナシ・リウェット。
バンドンのも、ソロのも、いずれもそれぞれに美味しい炊き込みごはんです。



2017/04/01

スープ②/Soto, Sop, Coto

ソト・クドゥス Magelang_Central Java, 2017

中部ジャワのスープ自慢をした一つ前の記事ですが、インドネシアのスープについてもうちょっと詳しく。

まあ、これまで食べた「美味しい」自慢と言えばそれまでですが。

でも、その前に。まず、インドネシアのスープの名称について。
ソト/Soto、ソップ/Sop(時にスップ/Sup)、チョト/Coto、クア/Kuah、その他。
汁物を表す言い方は幾とおりかあるんですね。
一番よく使われるのはソトかもしれません。ソト・アヤムなどはインドネシアごはんとしてはメジャー級。

そもそものソトの由来は、中国だと言われています。
オランダ植民地時代の17世紀頃に、
中部ジャワのスマラン辺りの中国からの移民たちの間で食べられていた料理に「Caudo」というものがあり、
そこから派生して、広く一般にソト、中部ジャワ北岸の一部地域ではタウト又はサウト、
そして南スラウェシのマカッサルでチョト、と呼ばれるようになったという説があります。
残念ながら、そのCaudoがどのような料理なのかが分からないのですが、
ソトによくビーフンや春雨などが使われることを思うと、華人由来というのは腑に落ちます。

また、ターメリックを使うソトがあることからインドの影響もある、という説もありますが、
これに関しては、直接インドの影響というよりは、インド由来のターメリックの使用がインドネシアに定着して、
それがソトの調理の中でも使われるようになった、という程度ではないかなと思います。
このターメリックに限らず、ソトは定着する過程で現地の材料を取り込んでいき、
キャンドルナッツ、レモングラス、コブミカンやサラムの葉などを多用します。

ソト・アヤム Bandung_West Java, 2016

では、ソトとソップはどう違うのか。
よく目にする疑問であり、わたしもしょっちゅう人に訊いていますが、なかなか答えが出ません(笑)。

中国に由来するソトに対し、ソップは西洋由来(スープ)のものを指す、という説。
スープが濃厚でスパイスを多用するのがソト、あっさり澄んだスープがソップ、という説。
またはその逆。
具を先に入れておいて汁を後から注ぐのがソト、一緒に煮込んでいるのがソップ、という説。
いずれも「そうかも」と思える一方で、どうにも「例外」が出てきてしまう。
なので、最近は「そう呼ばれているからソト/ソップなんだ」というところに落ち着き(諦め)ました。

ちなみに、クアに関してはどうなのか。
これはソトやソップと違い、メインは具なのだと思います。汁が多めではあるのですが。
例えば、ミー・クア/Mie Kuahは、メインはミー(麺)の汁麺のことです。
とはいえ、スープ的に出されるクアもあるので、今回は一応含むことにします。

ということで、まずは、定番中の定番、ソト・アヤム/Soto Ayamから。
アヤム=鶏、なので、要はチキンスープ。

ソト・アヤム Jakarta, 2016

鶏出汁のスープに、ゆで玉子、野菜(キャベツ、トマト、モヤシなど)に、春雨をいれたものがベーシック。
ターメリックを使った黄色っぽいスープのものが多いですが、必須ではありません。
写真のは、コヤ/Koyaと呼ばれる、エビのクルプック(揚げ煎)を粉にしたものがのっています。
このコヤをトッピングに使うのは、東ジャワのラモンガン風ソト・アヤムの特徴なのだそう。
旨味増し増しになります、このコヤ。

ソト・アヤム Jakarta, 2016

これは、ご飯に最初からかけてあるタイプ。
汁かけご飯が「お行儀悪い」とされないの、とても嬉しいです(笑)。

中部ジャワのソトの中でも、ソト・ガディン、ソト・カディピロ、そしてソト・クドゥスはソト・アヤムです。
(クドゥスに関しては、水牛の場合もありますが)
ソト・アヤムはインドネシア各地で、時にその名を変えつつも、広く親しまれているスープ。
去年訪れた、フローレス島の山の中、3時間ほどのトレッキングでたどり着く電気も通ってない村の晩ご飯も、
ソト・アヤムでした(さっきまでそこらへんを歩いてた鶏で作ってくれました)。

南カリマンタンのバンジャルマシンの名物、ソト・バンジャル/Soto Banjarも、ソト・アヤムの流れ。

ソップ・バンジャル Banjarmasin_South Kalimantan, 2016

裂いた鶏、春雨、ゆで玉子に野菜、そしてターメリックは使わない澄んだスープ。
ソト・バンジャルはスパイス使いが特徴で、ナツメグや丁字、時に八角やシナモンなども使って風味を出します。

ちなみに、ソト・バンジャルはライスケーキと一緒に食べるのが決まり。
それがご飯になったら、それはソト・バンジャルではなくてソップ・バンジャルなのだそうです。
(なので、上の写真はソップ・バンジャルなのです)

鶏肉は宗教的タブーにも触れず(例外はありますが)、安価で、そして手に入りやすいということから、
インドネシア各地の肉料理における鶏度は必然、高くなるわけですが、
次いでよく使われるのは、やはり牛肉。

わたしの住むバンドンの名物、ソト・バンドン/Soto Bandungは牛ベースのスープです。

ソト・バンドン Bandung_West Java, 2016

使う牛肉はスジの混ざったソト用とされる肉で、赤身とスジ部分それぞれの旨味がスープに出て美味しいのです。
レモングラス、サラムの葉、コブミカンの葉などを使い、臭みを抑えつつ、
(ソト・バンドンに限らず、ジャワのソトはこのハーブ使いが基本になります)
仕上げに更にネギや葉セロリを足すことで、肉っぽさとのバランスをとります。
トッピングの大豆と、具の大根がソト・バンドンの特徴。
大根を使った料理というのは、インドネシアでもだいぶ珍しく、
周囲を火山に囲まれた高地で、野菜豊富なバンドンという立地を反映しているのでしょうね。

そんなバンドンでソト・アヤムを頼むと、

ソト・アヤム Bandung_West Java, 2017

時々、かなりソト・バンドンに引っ張られたものが出てきてびっくりします(笑)。

同じ西ジャワ地域からもう一つ、牛ベースのスープ。

ソト・ミー Jakarta, 2017

コクの牛スジのスープに麺が入ったスープ、ソト・ミー/Soto Mie。
麺はあくまで「具」扱いなので、汁麺のミー・クアとはまた別物になります。

ソト・ミー Jakarta, 2017

ジャカルタ及びボゴール辺りで有名なソト・ミーですが、シンガポールやマレーシアにもあるんですね。
知りませんでした。

また、牛テール使用のソップ・ブントゥット/Sop Buntutも、牛の旨味たっぷりのボリュームあるスープ。

ソップ・ブントゥット Bandung_West Java, 2016

ホロホロのお肉、トマトやニンジンなど野菜も入って食べ応えがあります。

そしてそして、牛スープと言ったら外せないのが、東ジャワ名物のこのラヲン/Rawon。

ラヲン Jakarta, 2015

クルアッを使った黒いスープで、その色にぎょっとする人もいますが、
見た目に反し、至って食べやすい、と言うか非常に美味しい、私的汁物ランキングのトップ3に入る料理です。
生のモヤシや、塩玉子をトッピングにして食べるのがお約束。

ラヲン屋台 Surabaya_East Java, 2016

本場スラバヤの人気店ではこの豪快さで、沢山のお客さんで賑わう店内をラヲン一品で回しています。

同じく東ジャワ、マドゥラ島のソト・スルン/Soto Sulungも、牛肉(と内蔵)を使ったスープ。

ソト・スルン Bandung_West Java, 2016

と言っても、写真はバンドンのお店で食べたものなのですが。
ターメリックを使っているので、黄色っぽいスープになります。

牛の内蔵を使ったスープとなると、これまた私的汁物ランキングトップ3に入るのが、こちら。

チョト・マカッサル Balikpapan_East Kalimantan, 2016

南スラウェシのマカッサル名物、チョト・マカッサル/Coto Makassar。
牛の臓物を臭みがなくなるまで丁寧に茹で、ピーナッツを使ったスープに仕上げたもの。
ソト・クドゥス同様、小さなお碗で出て来ます。
そこに、ライスケーキを入れたり、別々に食べたり。
以前、マカッサルに同行した日本人のお客さんでこのチョト・マカッサルを一度に3杯食べた方がいました。
気持は分かる、というくらいに美味しいのです。

マカッサルからの移民が多い、東カリマンタンのバリクパパンにも美味しいチョト屋がいくつもあります。
写真は、そのうちの一つで食べた時のもの。

南スラウェシは牛肉を上手く使う土地らしく、この他にも、牛リブを使ったスープなどもあります。

もう一つ、今度はスマトラ島から、牛ベースのスープを。

ソト・パダン Bukittinggi_West Sumatra, 2016

これだと、ピンクのクルプックばかりに目がいきますが、
西スマトラのソト・パダン/Soto Padangです(ピンクのクルプックもソト・パダンの主要構成員です)。
ジャーキー状の牛肉と、プルケデル/Perkedel(コロッケ)が入っているのが特徴。

パダンは、インドネシア有数のごはんどころ。パダン料理屋は世界中にあると言われるほどです。
土着の素材、インドの影響を受けたと言われる多彩なスパイス使い、じっくりかける手間と時間。
美味しいごはんが生まれるパダンとその周辺地域は、覚悟して行かないと確実に体重が増える危険地帯です。

さて、インドネシアでのメジャー度からいったら、鶏、牛と来たら次はヤギなのでしょうが、
なぜかわたし、ヤギの汁物を食べた記録がほとんどありません。
なので、ヤギはいつか「ヤギ」としてご紹介します。

で、豚。

たまに「インドネシアはイスラム国家」と書かれているのを目にすることもありますが、間違いです。
インドネシアはイスラムを国教としている訳ではなく、
カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー、仏教、儒教が信仰として認められています。
つまり、豚だって、食べます。
バリといえば、バビグリン(豚の丸焼き)ですし!

とはいえ、豚のスープとなると、なかなかバリエーションが思いつかないのですが、
なぜか豚×金時豆、のスープはよく見かけます。

豚と金時豆のスープ Kupang_East Nusa Tenggara, 2016

写真は東ヌサトゥンガラ州クパンの、豚スモークのお店で食べたものですが、
北スラウェシのマナドでスップ・ブレネボン/Sup Brenebonと呼ばれる金時豆のスープも、豚。
豚の肋や足などの骨で出汁をとる、お祝い事には欠かせないスープなのだそうです。

もうひとつ、豚スープ。
バクッ・サユール・アシン/Bakut Sayur Asin。

バクッ・サユール・アシン Bandung_West Java, 2015

バクッはバクテー(Bak kut teh)のバクと同じく、豚の骨(リブ)を意味します。
サユール・アシンはインドネシア語で酸っぱい野菜。
Suan Cai(酸菜)と呼ばれる、高菜漬けにも似た葉野菜の漬け物のことです。
酸菜の酸味が豚の旨味と好バランスなスープです。

そして、魚のスープ。

大好きな、イカン・クア・アサム/Ikan Kuah Asamといわれる、酸っぱい海魚のスープです。

イカン・クア・アサム Rote_East Nusa Tenggara, 2016

魚の種類はそれぞれですが、比較的あちこちで食べられるのがこの酸っぱいスープではないかと思います。
写真は東ヌサトゥンガラのものですが、バリでも海魚の酸味スープの美味しいお店がありますし、
南東スラウェシのパレンデといわれるスープも、酸っぱい魚のスープです。
酸味の素は、トマト、ライム、タマリンド、そしてビリンビ/ナガバノゴレンシと呼ばれるフルーツなど。
魚を〆てからの処理の違いであったり、保冷技術の違いであったりもあるのかもしれませんが、
インドネシアの海魚の調理法は、生臭さをどう消すか、というのがひとつテーマに思えることがあります。
この酸っぱいスープも、酸味の他、クマンギやネギなどのハーブを使ったり、
調理前にターメリックをまぶして下処理をしたりします。

淡水魚からも、ひとつ。
ピンダン・パティン/Pindang Patinと呼ばれる、南スマトラの料理です。

ピンダン・パティン Palembang_South Sumatra, 2017

パティン(カイヤン)という淡水魚を、酸っぱ辛いスープで煮たもの。
酸味には、タマリンド、トマト、そしてパイナップルが使われ、唐辛子の辛さも効いた汗の吹き出るスープ。
ピンダンと呼ばれる酸っぱいスープは、ジャワを含め各地にもあり、素材は海魚であったり色々ですが、
南スマトラの内陸の街パレンバンでは、淡水魚を使うのが一般的なようです。
(あ、でも、アヒル肉のもありました)

最後に、酸っぱいつながりで、サユール・アサム/Sayur Asam。
サユールは野菜、アサムは酸味。そのまま「酸っぱい野菜」と呼ばれているスープです。

サユール・アサム Magelang_Central Java, 2015

特にジャワ島各地で食べられている、この甘酸っぱいスープ。
野菜は、長豆、ハヤトウリ、トウモロコシ、ピーナッツ、ムリンジョ/Melinjoと呼ばれるグネモンノキの実など。
酸味はタマリンドを使い、椰子砂糖少々で甘みを出します。

このサユール・アサムと関係があるのか分からないのですが、
南カリマンタンのバンジャルマシンの食堂で「野菜いる?」ときかれて「いる」と答えたところ、
刻んだ葉野菜が入った澄んだスープが出てきたりました。

ソト・アヤム Bandung_West Java, 2017

などと、徒然に書いてきましたが、
インドネシア各地のご当地スープ、まだまだ、まだまだあるのです。
挙げていったらキリがないのですが、食べに行かなくちゃリストが長々あるのも幸せです。

地方に行くとどうしても、ここのあれを食べておかなくちゃ、というのが先にたち、
例えば、スラバヤに行ってラヲンを食べないとやり残した感がある、とか、
マカッサルに来たのにチョトを食べずに帰るなんてこと絶対避けたい、とか、
そういう「あの味をもう一度」も大事なのですが、
新しい味を試す「インドネシア、スープの旅」って、ちょっとやってみたいです。