2017/02/06

ガドガド/Gado Gado


ガドガド Jakarta, 2016

ガドガド、と、その仲間たち。

どこがどう違うのか、軽い気持で調べ始めたら、ピーナッツソースの沼にハマってしまった感があります。

ガドガド/Gado gadoは、ご存知の方も多いかもしれませんね。
茹でた野菜にピーナッツソースをかけたもので、インドネシアごはんの中では、比較的メジャーな一皿。
ですが、この茹で(時に生)野菜+ピーナッツソースという組み合わせは、実は他にも色々あるのです。
おまけに、ピーナッツソースを使ってないけど「ガドガド」というパターンも。

こちら→ をごらん下さい。
在住者間の話しなのでちょっとマニアックだったりしますが、
とにかく、ガドガドとその仲間たち、は、思った以上に色々あったのでした。

ということで、とりあえず今回は、ピーナッツソースのかかっている方について。

インドネシア国内のピーナッツ生産量というのは、中・東ジャワがダントツで多く、
追って南スラウェシ、そして、西・東ヌサトゥンガラ諸島という感じで、
少なくはない量を生産しているものの、スマトラは減少傾向にある様子です。
で、その生産量を反映してか、ピーナッツソースを多用するのも、やはりジャワ島という印象です。

ピーナッツソース Bandung_West Java, 2016

ピーナッツを潰したところに、椰子砂糖、塩、唐辛子、トラシ(魚醤の一種)、水、ライムを加えるのが基本。
ライムがタマリンドになったり、ニンニクやシャロット、ガランガルなどが加わったりもしますが、
いずれも、ピーナッツの香ばしいコクに、甘さと唐辛子の辛味が加わり、なんとも食欲をそそる味わいです。

ガドガド Banjarmasin_South Kalimantan, 2016

ガドガドという料理自体はジャカルタ周辺もしくは西ジャワ地方が発祥のようです。
茹でたモヤシ、キャベツ、長豆あたりが定番で、他の葉野菜や豆腐、テンペなどが加わる場合もあります。
インドネシア国内、ジャワ島から別の島への移民というのは比較的多く見られ、
ゆえにジャワの食べ物がインドネシア全土に広く見られるようになる、というのもよくあるパターンで、
このガドガドもその例にもれず、カリマンタンなどの食堂のメニューにも載っていたりします。
(だいたい、ジャワからの人がやっている食堂なんですけどね)

一方、ジャワ島内を見てみると、
まず同じ西ジャワ圏にはもうひとつ、温野菜+ピーナッツソースの料理「ロテック/Lotek」があります。

ロテック屋台 Bandung_West Java, 2016

ロテックは、バンドンを中心とした西ジャワ地方ではよく目にするものの、ジャカルタではあまり見かけません。
逆も然りで、バンドン界隈でガドガドという名前を目にすることも少ないのですが。
とは言え、このかなり近い距離にあるよく似たふたつの料理(ジャカルタは西ジャワ地方の一部分なのです)、
当然と言えば当然ですが、境界線が曖昧、違いがほとんど分かりません。

人に聞いてみても、答えは色々。
茹でたジャガイモとゆで玉子が入っていたら「ガドガド」という理解が多いようです。
また、インドネシア料理の本などを見ると、
ロテックのタレはガドガドよりも「濃い」もので、潰したジャガイモが使われているのが特徴なのだとあります。
そして、ロテックのタレにはガランガル/Kencurを使用し、ガドガドには使わない。

ロテック Bandung_West Java, 2016

とはいえ。
ジャガイモの入ってないガドガドもありますし、シャバシャバなタレのロテックもあります。
ガドガドのタレからガランガルの味がする場合もあります。
正直、作った人がどっちだと言っているか、だけの問題なのではないかという気もしてきました。

売っている当人ならば、そのあたりの違いをちゃんと押さえているのかもしれないな、と思い、
具にはジャガイモとゆで玉子が入っていて、ピーナッツソースの粘度の低い、
ガドガドらしいガドガドを出していたお店のおじさんに聞いてみました。

ガドガド Jakarta, 2017

「ガドガドは野菜を茹でてるんだよ。ロテックは生だろ」

そうか、自分の売っている物以外はあんまりたいして興味ないのか、という感じの答えでした(笑)。
ロテックの野菜も茹でているんですよ、おじさん。生野菜なのは、カレドック/Karedok。

カレドック Bandung_West Java, 2016

生のキャベツ、モヤシ、キュウリなどをピーナッツソースで和えたものがカレドック。
西ジャワ限定で目にする料理かもしれません。
しっかり歯ごたえが残っているので、食べ応えがあります。

そして、中〜東ジャワになると、プチェル/Pecel。

野菜とプチェル Jakarta, 2017

プチェルの理解は、先ほどのリンク先を読んでいただくとなんとなくお分かりいただけるかと思うのですが、
ここで見ているような茹で野菜との組み合わせとしてのプチェルは、
ガランガルやコブミカンの葉などを使用、風味が西ジャワのピーナッツソースとはまた異なります。
野菜は、茹でたモヤシ、キャッサバの葉、四角豆、そしてフレッシュなキュウリとレモンバジルでした。

またガドガドやロテックが組み合わせとしてロントン/Lontong(ライスケーキ)を使うことが多いのに対し、
茹で野菜のプチェルは基本的には白ご飯との組み合わせになるのだそうです。

また、似たようなライスケーキではありますが、クトゥパット/Ketupatとの組み合わせたものとしては、
まずはジャカルタのクトプラック/Ketoprakがあります。
*ロントンとクトゥパットについても、またいずれ書きますね。

クトプラック Jakarta, 2016

野菜の種類はそれほど多くはなく、茹でたモヤシ、ビーフン、厚揚げにピーナッツソースがかかったもの。
これは、ジャカルタ以外ではあまり見かけません。

ですが、同じクトゥパットを使った物としては、東隣のバリ島にティパット・チャントゥク/Tipat Cantukが。

ティパット・チャントゥク Kuta_Bali, 2016

使用している野菜の種類はガドガドやロテックとあまり変わらない印象。重ためのタレという感じでしょうか。
このティパット・チャントゥクも、バリ島内で地域差があるらしく、いずれ制覇したい気がします。

一方、西隣のスマトラ島では、
パダン地方のブキッティンギを訪れた際に、ピチャル・シカル/Pical Sikalを食べたことがあります。

ピチャル・シカル Bukittinggi_West Sumatra, 2016

ピーナッツソースはガドガド並にシンプルで、ガランガルも使っていないとか。特徴的なのは野菜の種類。

ピチャル・シカル Bukittinggi_West Sumatra, 2016

茹でたバナナの花や、タケノコなのが使われているのです。これはちょっと珍しい。
野菜の中でキャベツだけは生でした。
そして、西スマトラらしいピンクの揚げ煎が使われているのも、ご当地感がありますね。

他、西カリマンタンのポンティアナックには、
野菜や厚揚げにピーナッツソースをかけたセラダ/Seladaという料理があるとも教えてもらいました。
ソースに小エビを使っているのが特徴なのだとか。

ピーナッツソースと言えば、バンドン名物のシオマイ/Siomai(蒸したツミレや厚揚げ、ジャガイモなど)や、

シオマイ Bandung_West Java, 2016

ジャワ島版のサテ/Sateなども、ピーナッツソース利用の食べ物に入ります(他にもまだまだ色々あるのですが)。

サテ Jakarta, 2017

また、南スラウェシでのピーナッツの使い方もまた詳しく調べたいところです。
(以前、焼き魚のタレとしてピーナッツソースが出てきたのが印象的でした)
ただ、まあ、今回は野菜と組合わせたガドガドとその仲間たち、ということで。

ガドガド Jakarta, 2016

ロテックとガドガドの謎は解けませんでしたが、
まあ、明確な線引きができるものでもないのだろうなと思います。
同じ名前で別の料理、もしくは同じ料理に別の名前、ということも多々あるくらいですし。

いずれにしても、ガドガドとその仲間たち。
インドネシアにおいて、野菜をたっぷり食べられる、とても貴重な存在です。
外食が続いて、ああ植物性のものが足らない…となったら、ガドガドをどうぞ。


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