2017/03/22

麺/Mie

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

先日、中部ジャワに旅行に行き、その道中で美味しい麺を食べたので、今回は麺のお話を。

といっても、大風呂敷感が拭えない大きなテーマですね「麺」。
なので、とりあえず今回は、小麦粉を使った「麺」について、ざっくりさらっと。

インドネシアで麺はミー/Mie (もしくはMi)と言います。語源は中国のMien。
インドネシア料理でダントツの知名度を誇るナシ・ゴレンとミー・ゴレンの「ミー」はこの麺を意味する「ミー」。
麺の歴史は今更ここでわたしが述べるまでもないことなので割愛しますが、
中国発祥のこの食べ物、時に形を変えて世界中で愛されているわけですが、インドネシアも例外ではありません。
伝わってきた時期に関してははっきり分からないのですが、
1870年前後に中国南部から大量の移民がジャワに入ってきており、
そのくらいの頃の移民たちが持ち込んだ各種料理の中にあったのではないかなと思ったりもします。

ミー・アヤム Bandung_West Java, 2017

麺の種類も、この小麦粉麺の他、米麺やビーフン、春雨などもありますし、
どのタイプの麺のどの調理法が最初に伝わり、そして伝搬していったのかはわかりませんが、
ここではまず、小麦粉麺のバクミー/Bakmiから初めてみます。

バクミーのバク/Bakは福建語で「肉」。本来は豚肉を意味します。
バクミーとは、油と調味料を絡ませた麺にトッピングとして肉を乗せ、別途スープを添えたもの。
で、本来の豚肉使用のバクミーの場合は、豚脂が使われるわけです。

そこで思い出されるのが、北スマトラのメダンに行くと必ず食べるこの麺。

バクミー・ケッ Medan_North Sumatra, 2015

バクミー・ケッ/Bakmi Khek、つまり客家麺。
脂を絡めた麺に刻んだ茹で豚と、カリカリの脂カス(豚脂をとった後に残る部分)が乗った麺です。
豚出汁に揚げニンニクを効かせた、澄んだスープが別途つくこの麺、
もうちょっとこうやって書いてる時点で辛いくらい、美味しいです。

バクミー・ケッ(店内) Medan_North Sumatra, 2015

簡潔な中華料理店が並ぶ路地で、これまた簡潔に数種類の麺だけを売っているお店なのですが、
往々にしてコシがない麺が基本のインドネシアにあって、比較的しっかりした麺なのも嬉しい。

ちなみに、この手の汁別麺の汁をどうするのか問題。
以前は、わたし、ざばっと麺に汁をかけて食べていたのですが、今は断然「別々に食べる」派です。
麺がくっついてしまっている場合のみ、スプーンに1〜2杯のスープを足しますが、それだけ。
全部かけてしまうと、なんか伸びてしまう気がするのです。コシがない麺の場合はなおさら。

で、このタイプのバクミーが、インドネシアに伝わってきた原型ではあるのでしょうが、
インドネシア、特にジャワは既にイスラム教が浸透していたわけですから、当然、豚はタブー。
そこでその豚を一般に食べられている鶏肉に置き換えたのが、バクミー・アヤム/Bakmi Ayamになります。

バクミー・アヤム Jakarta_2016

汁別油麺、鶏バージョン。
ちょっと甘めの味付けの鶏肉と青菜。使っている油はニンニクやシャロットなどで香り付けしてあります。
汁は別添え。バソ/Bakso(Baso)が入っているものも多いです。

で、このタイプにはバリエーションがあり、

バクミー・アヤム(ジャムール) Jakarta_2016

こちらは、バクミー・アヤム・ジャムール/Bakmi Ayam Jamur。
ジャムールはキノコです。フクロダケが多いんです、なぜか。

バクミー・アヤム(パンシット、バソ) Jakarta_2016

こちらは、バクミー・アヤム・パンシット・バソ/Bakmi Ayam Pangsit Baso。
パンシットはワンタン(ここでは揚げ)にバソ(肉団子)を加えた、盛りだくさんバージョン。
これは、麺にもしっかり味がついているタイプですね。

バクミー・ベベッ Bandung_West Java, 2016

一方こちらは、鶏肉がアヒル(ベベッ/Bebek)になったもの。

汁別麺はバクミーですが、単なるミー・アヤムというのもあるのです。鶏麺ですね。
そうすると、汁別は必須ではなくなります。
なので、恐らく、バクミー・アヤム=汁別、ミー・アヤム=汁有りということになるのかと思うのですが、
当然のことながらその辺の境界線は曖昧で、
ミー・アヤムを注文しても、↑のような汁別で出て来る場合も多々あります。

汁有りミー・アヤム。

ミー・アヤム Bandung_West Java, 2017

ミー・アヤムのスープは、バクミーの澄んだスープと違ってこっくりした茶色の場合が多いですね。
(もちろん、お店ごとに違いはあるのですが)
この茶色はケチャップ・マニスの色です。つまり、若干甘めのスープになります。

また、バクミー・アヤムの亜種(?)でヤミン/Yaminというのがあります。
これは、バンドンをはじめとした西ジャワ地方で割とよく食べられている様子。

ヤミン・アシン Bandung_West Java, 2016

汁別鶏油麺。この写真のはヤミン・アシン/Yamin Asinと言われる塩(アシン=塩、塩っぱい)味のもの。
これとは、別でヤミン・マニス/Yamin Manisというものもあり、
そちらは麺にケチャップ・マニスをベースにした味がついています。
マニスに対してアシンと言っている感じもあり、なのでアシンは塩というより旨味系と言えるかもしれません。
わたしは、アシン派です。くどくないので、うっかりおかわりしてしまいそうな美味しさ。

バクミーとヤミンの違いは、鶏肉。
バクミーの鶏肉は細切りでジューシーなお肉なのに対し、ヤミンはそぼろ状の乾いたものなのです。

西ジャワのヤミンの話しになった流れで、ご当地麺をいくつかご紹介します。

まず、同じ西ジャワのバンドン名物、ミー・コチョック/Mie Kocok。

ミー・コチョック Bandung_West Java, 2016

バクミーやミー・アヤムより若干幅広の麺を使ったこちらは、牛スジベースのスープが特徴。
コクがあるスープに、パッと散らしたセロリの香りがちょうどいいバランス。
柔らかいスジが美味しいこのミー、食べる時にケチャップ・マニスをたっぷりかける人が多いんです。
(かくも愛されるケチャップ・マニス)
コチョックとはインドネシア語で「混ぜる」という意味。
麺を茹でる際に、器具の中で混ぜるその様を指してのネーミングなのだそうです。

そして、やはりバンドンに有名店が多いのがロー・ミー/Lo Mie。

ローミー Bandung_West Java, 2016

こちらもやはり、若干幅広な麺で、あんかけスープになります。
出汁に海鮮を使っているところが多いようで、旨味濃厚。味付けは、甘み寄りになります。
ぷりぷりのバソとモヤシなどの野菜、揚げシャロットのトッピングに、たっぷり胡椒を振っていただきます。

更にもう一つ西ジャワから。ボゴール名物の、ソト・ミー/Soto Mie。

ソト・ミー Jakarta_2017

これはちょっと微妙な立ち位置で、名前の通りソト(スープ)枠なのです。
だから、ごはんがついて来る。
でも、スープの具として堂々と麺が入っているのです。炭水化物×炭水化物。

そして、ご当地麺と言えば、外せないのがこちら。ミー・アチェ/Mie Aceh。

ミー・アチェ Medan_North Sumatra, 2015

スマトラ島北端のアチェの名物麺。
アチェに行ってホテルの人に「ミー・アチェが食べたいのです!」と言った時、
「ミー・アチェかどうかは知らないけど、ミーの屋台ならそこに出てるよ」と言われて、
とても美味しいミー・アチェにありついたのもいい思い出。
(アチェにいたら、わざわざミー・アチェと呼ぶ必要はないんですよね…笑)。

写真はメダンにある有名店で食べた時のもの。
色かぶりしてて美味しそうに見えないのが残念ですが、この店もメダンに行ったら必ず寄るお気に入りです。

ミー・アチェはゴレン/Goreng(炒め)とクア/Kuah(汁)がありますが、わたしはいつもクアの方。
汁と言っても、多少汁気があるな、という程度でいわゆる汁麺とは異なる感じです。
(↑の写真もクアなのです)

ミー・アチェの特徴は、まず、カレー風の濃厚でスパイシーな味付け。これはジャワにない味です。
そして、トッピングは牛やヤギ肉、もしくはシーフード。
わたしは断然シーフード派です。豪快に乗ってるカニにかぶりつくのがミー・アチェの醍醐味。
そして、バランサーとしてのアチャール/Acar(キュウリなどのピクルス)がいい仕事をしてくれます。

カレー風であったり、アチャールが添えてあったりする辺り、インドからの影響が見られますね。
麺は中国から、牛やヤギを使う辺りは、イスラムの流れ、シーフードは海辺近い立地ゆえ、と考えると、
このミー・アチェというのはとても、
インドネシア最西端で、かつてインドとの交易港でもあったイスラム王国の土地アチェらしい食べ物ですね。

続いて、ミー・ジャワ/Mie Jawa。
バクミー・ジャワと言われることもあるこのご当地麺は、中部ジャワのジョグジャカルタが中心。

ミー・ジャワ(クア) Jogjakarta_Central Java, 2017

ミー・ジャワは基本的に汁麺(クア)なのだそうです。
一般的に汁麺はミー・クア/Mie Kuahと呼ばれ、インドネシア各地(時に近隣諸国でも)みかけますが、
そのミー・クアとミー・ジャワは同じものなのだそうです。
なにがどうジャワなのか?と思っていたのですが、ジャワの素材を使うから、なのだとか。
ジャワの素材とは?シャロット、ニンニク、クミリ(キャンドルナッツ)そして胡椒、らしいです。
写真のミー・ジャワはビーフンと中華麺半々になったもの。
キャベツなどの野菜が入って、ちょっとチャンポンみたいな感じでもあります。

ミー・ジャワの特徴は、アヒルの卵と裂いた地鶏の肉を使い、竃の炭火で一杯ずつ調理すること、なのだとか。

ミー・ジャワ店 Jogjakarta_Central Java, 2017

何杯かまとめてオーダーされても、一杯ずつ作るのだそうです。

どうりで。
先日の旅行で行ったジョグジャカルタのお店は、屋台のような調理台がいくつも並んでいたんです。

ミー・ジャワ店 Jogjakarta_Central Java, 2017

各調理台に、麺と卵と野菜、そして地鶏が吊るされていました。

ミー・ジャワ店 Jogjakarta_Central Java, 2017

ミー・ジャワは基本的に汁麺ではありますが、もちろんゴレンもあります。
インドネシア料理のミー・ゴレン。いわゆる一般的に知られている、あのミー・ゴレン。
は、このミー・ジャワのミー・ゴレンだとだと思います。
(一般的に知られているミー・ゴレンがどんなだったか思い出しながら……)
ケチャップ・マニスやオイスターソースで味付けがされています。

ミー・ゴレン Jakarta, 2015

これは、ジャカルタのどこかのホテルの朝食で出てきたミーゴレン。

ちなみに、ミー・ゴレンは「おかず」枠だったりもします。
インドネシア各地で、ごはんにいくつかのおかずを選んで乗せてもらうタイプの食堂に行くと、
そのおかずラインナップに、必ずと言っていいほどミー・ゴレンが入っています。

おかず扱いのミー・ゴレン Wakatobi_South East Sulawesi, 2015

炭水化物×炭水化物。

そして、もうひとつ。先日の旅行で食べた、中部ジャワのご当地麺。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

ウォノソボという土地の、ミー・オンクロック。あんかけ麺です。

タピオカ粉を使ってとろみを出したあんかけは椰子砂糖や干しエビ、ピーナッツが入っています。
このあんかけの下に、麺と野菜。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

ウォノソボは標高が高くて野菜の産地なのですが、特に美味しいキャベツとニラが採れる土地。
そんなウォノソボの麺には当然、キャベツとニラ。なのです。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

麺と野菜を竹製のザルに入れて、スープが煮立っている鍋でさっと湯がき、あんかけをかける。
この、竹製のザルが「オンクロック」なのだそうです。

ミー・オンクロック Wonosobo_Central Java, 2017

立てかけられているのが、オンクロック。
ミー・コチョックといい、ネーミングは至って安易なものなのです。

中部ジャワの料理というのはとかく甘めで、このミー・オンクロックも椰子砂糖を使っていたりするのですが、
干しエビの旨味の加わって、全く嫌みのない感じ。
そこに、潰したチャベ・ラウィットを加えると、締まりが出てさらに美味しい。

唐辛子 Wonosobo_Central Java, 2017

器の中で直接潰してしまうの、豪快ですよね。

このミー・オンクロック、ウォノソボまで食べに行った甲斐ありました。
他ではあまり出会わないタイプの味わいで、熱々のあんかけが涼しい気候にぴったり。
ミー・オンクロックのインスタント麺まで売られていて、思わず買ってしまいました。

インスタント麺と言えば、もうそれだけで別途一本記事が書けそうなくらい、
インドネシアの人々の暮らしとは切っても切れないほど浸透しているものなのですが、
…そうですね、詳しくは別途また書くことにして、ここでは一つだけ。

最近知った、ミー・インターネット。

ミー・インターネット Jakarta, 2017

インスタントの汁麺なのですが、なにがインターネットなのだろう?と。

INdomie+TElur+koRNETでインターネット。
インドミーはインスタント麺の代名詞となっている袋麺の名称。テルールは玉子、コルネットはコンビーフ。
この3つを組み合わせのことを言っていたのです。
写真のは、更にチーズトッピング。非常にジャンキーな味ながら、ちょっとクセになります。

ミー・アヤム Bandung_West Java, 2017

ということで、駆け足の麺(第一弾ということにしておきます)。

この他にも、例えば中華料理店に行けば、ワンタン麺や揚げ焼きそばなどもありますし、
ご当地麺もきっともっと色々ありそうなので、この先も見つけたら食べていきたいなと思います。
そして、米麺やビーフンなどのその他の麺についても、これまた追々。
なんせ、大風呂敷案件ですからね、麺は。広くて、深いのが麺の世界なのでしょう。
麺食いを自任するわたしですので、この先も頑張って食べてまいります(笑)。


2017/03/14

ケチャップ/Kecap


ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017

インドネシアのケチャップは、黒いのです。

インドネシアでケチャップ/Kecapと言ったら、それは主にソイソースのことです。
トマトケチャップのことではありません。
ちなみに、トマトケチャップのことは、サオス・トマト/Saos Tomat、つまりトマトソースと言います。
じゃあ、トマトソースは?まあだいたい、パスタソースのトマト味、みたいな感じで(笑)。

で、ケチャップ。

ケチャップ各種 Bandung_West Java, 2017

インドネシアの主なケチャップは、
ケチャップ・マニス/Kecap Manis:甘いソイソース
ケチャップ・マニス(もしくはアシン)・スダン/Kecap Manis (Asin) Sedang:甘さマイルドなソイソース
ケチャップ・アシン/Kecap Asin:塩味のソイソース
ケチャップ・プダス/Kecap Pedas:ケチャップ・マニスに唐辛子が入った甘い×辛いのソイソース
ケチャップ・イカン/Kecap Ikan:魚醤
という感じになります。

そもそも、ケチャップの発祥は中国なんですね。ルーツをたどれば日本の醤油と同じなのです。
どちらもソイソース、にも関わらず、元になったのはいわゆる魚醤のようなものだったのだと言われています。
その魚醤をKechiap、Kechop、Koechiapなどと呼んでいたのが、現在のケチャップの語源になったのだとか。
とは言え、各地に伝播しているのは大豆原料のソースなので、
中国でまず、呼称はそのままで素材の変化が起きて、そこから各地に伝わったのでしょう。
東南アジアに伝わったものが、マレー地域でKecapもしくはKicapと呼ばれるようになったのだそうです。

その後、この東南アジアのケチャップがヨーロッパに伝わり、
魚介類やキノコを使ったソースを「ケチャップ」と呼ぶようになり、
そしてさらにその後、北米にて「トマトケチャップ」が生まれたのだそうです。
そのトマトケチャップが中国でも消費されるようになった時、ケチャップの世界一周は完了したのですね(笑)。

ちなみに、Kecapはインドネシアですが、Kicapはというとマレーでの言い方。
Kicapも大豆原料で、キチャップ・ルマッ/Kicap Lemakとキチャップ・チャイル/Kicap Cairがあり、
ルマッは恐らくインドネシアのセダンに、チャイルはインドネシアのアシンにあたるのだと思われます。
(実際に味わったことがないのですが)

話しを戻して、インドネシアのケチャップ。

ケチャップ・マニス Bandung_West Java, 2017

まずケチャップ・マニス。使用頻度が一番高い、そして一番愛されているのがこのタイプだと思います。

原料は、黒大豆、パームシュガー、塩。
(後日追記:黒大豆とは限らないようです。主流は黒大豆で、いくつかのメーカーは黄大豆を使用しています)
茹でた大豆を数日発酵させ、塩と水を加えてさらに発酵させ、加熱。その際にパームシュガーを加える。
ここで、レモングラスだったりコブミカンの葉だったりで風味付けをする場合が多いそう。
トロッと粘度の高い、まず甘さが先にきてその後に塩気が来るようなケチャップ・マニス。
旨味とコクが素晴らしく、多種多様の料理で使われます。
煮込み料理であったり、ピーナッツソースに垂らしたり、輪切り唐辛子と合わせて焼き魚のタレにしたり。
面白いのは、インドネシアを旅行している西洋人でこのケチャップ・マニスが好きな人が結構多いこと。
離島の宿などでみんなで食卓を囲むと、彼らが順番にケチャップ・マニスのボトルを回していって、
銘々のごはんに「たらーり」とかけたりするのです。

そんなケチャップ・マニス、様々なブランドがあるのですが、
その中でも(わたしの周辺では)一番人気があるのがこの「Bango」。鳥が目を引くボトルです。
家のガレージで作っていたという家内制手工業から始まったこのメーカー(現在はユニリーバ傘下)、
国立大学と協力し、特選品種の黒大豆を使っていることから独特の風味を持つのだといいます。
有名になっても、今でもケチャップ・マニス一本で勝負している会社です。

ケチャップ・マニス&アシン・スダン Bandung_West Java, 2017

続いて、スダン。
どちらも、チレボン(西ジャワ州)の同じメーカーから出ているのですが、
赤い方が、ケチャップ・マニス・スダン。緑の方が、ケチャップ・アシン・スダン。
スダン/Sedangというのが「中程」や「中くらいの」という意味を持つのですが、
これはつまり中くらいのマニス(甘い)と、中くらいのアシン(塩辛い)ということ?
そこまで細かな区分けが必要なのか、というのも含めて面白くて買ってみました。

ところで、このアシン・スダンのケチャップ、実はすごいぶくぶくしてたのです。
2枚目の写真(俯瞰の)を見るとお分かりいただけるかもしれないのですが、
密封されていたボトルの口を切って閉じておいたら、中でどんどん泡が湧いてきて。
このあと、口を開けたら吹き出しました、ぶしゅーって。びっくり。
ボトルの中で発酵がすすんでいたのでしょうか?マニス・スダンの方はそんなことなかったのに。

そして、次に、ケチャップ・アシン。

ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2017

地場のバンドンブランドのものを買ってみました。
ケチャップ・アシンはマニスと違い、使用しているのは黄大豆です。
基本的に日本の醤油とほとんど同じだと思っていいんじゃないかと思います。

インドネシアに塩っぱいケチャップを伝えたのは客家のひとたちだという話しを聞いたことがあります。
客家のケチャップ・アシンは黒大豆を使い、塩分濃度がかなり濃いものなのだとか。

バンドンの↑のケチャップ・アシンは黄大豆ですが、
このラベルからも分かる通り、広く一般的に好まれているケチャップ・マニスに対し、
ケチャップ・アシンは基本的に華人の食卓で使われるもの、というイメージです。

というか、いったいどこのタイミングで甘いソイソースというのが誕生したのでしょうね?
同じ東南アジアで、例えばベトナムの醤油は、加糖されていない塩気と旨味の調味料ですよね。
それが、マレーに来たら加糖され、インドネシアに来たら更に砂糖が増やされた、ということでしょうか。
なんでそこで砂糖を加えるに至ったのか、どこかで調べられたら調べてみます。

さてさて、ではでは、味見をしてみましょう。

ケチャップ Bandung_West Java, 2017

きれいに真ん中に均一に出せないのが残念な感じですが(笑)。

左上:ケチャップ・アシン
   醤油に近い味ながら、塩気がかなり鋭く尖っていて、日本の醤油のような丸みはない。
左下:ケチャップ・マニス
   後味にカラメルを感じるような、コクのある甘さと旨味。
右上:ケチャップ・マニス・スダン
   確かにケチャップ・マニスよりは塩気が勝る。なんとなく焦げのようなスモーキーな後味。
右下:ケチャップ・アシン・スダン
   確かにケチャップ・マニス・スダンよりもケチャップ・アシンに近い甘みと塩気のバランス。
   ぶくぶくした名残がある。

見事にグラデーションでした。スダン2つの立ち位置が面白いですね。
コクではマニスが勝りますが、旨味ではスダンの方が感じやすいような印象です。
植物性のものですので、当然かなりマイルドにはなりますが、オイスターソースにもつながるような味わい。
甘みが減った分、発酵由来の風味が感じやすくなったのかも、という気がします。
甘さの点でも、加えられているのは精製糖ではなく、未精製のパームシュガーなので、
そこに含まれる色んな雑味もまたケチャップの複雑な味わいに含まれているのかもしれません。

さて、そして、ケチャップ・プダス/Kecap Pedas。

ケチャップ・プダス Bandung_West Java, 2017

「プダス」は「辛い」という意味。つまり、辛いケチャップです。
その名の通り、ケチャップ(マニス)に唐辛子が入っているのです。

ケチャップ・プダス Bandung_West Java, 2017

先にも書きましたが、インドネシアで焼き魚のタレによく登場するのが、
ケチャップ・マニスに唐辛子(チャベ・ラウィット)を刻んで混ぜ合わせたもの。
その甘いと辛いのバランスが食欲をそそるわけなのですが、
このケチャップ・プダスはそれを製品化したものですね。

こうしてケチャップ各種を広げていたところに、うちのメイドさんと彼女のお姉さんが表れました。
主婦たちの意見を聞いてみようと、
まず「ケチャップ・プダスは何に使う?」と質問。
しばらく悩んでから、揚げ豆腐につけて食べるかな、という返答を得ました。
つまり、あまり日常的には使ってないということかな。
続いて「ケチャップ・アシンはどう?」と聞いてみると、
まず使わない。と言い切ってから、またしばらく考えて「ミー・コチョック?」とのこと。

ミー・コチョック/Mie Kocokはバンドン名物の牛スジを使った麺。

ミー・コチョック Bandung_West Java, 2017

インドネシアの汁物は、テーブルの上の調味料で自分好みに味を整えてから頂く場合がよくあります。
たぶん、そいういう意味での「使う」だったのでしょうね。
ちなみに、同じ用途にケチャップ・マニスを使う人も、たくさんいます。

で、最後に「じゃあ、ケチャップ・マニスはどう使う?」とたずねたところ、
「なんにでも使えるわよ!!」と声を揃えて即答でした。
炒め物にも、煮物にも、タレにも、なんにでも使えるし、合うんだから!と。
愛されていますね、ケチャップ・マニス。
余談ですが、わたしは日本のカレーを作る時の隠し味にケチャップ・マニスを使います。
味に深みがでるんです。

さてそれで、最後ケチャップ・イカン/Kecap Ikanですが。

ケチャップ・イカン Bandung_West Java, 2017

これも魚醤だしナンプラー代わりに使おう、と思いわが家では常にストックされているのですが、
表示をみると、スーパーマーケットなどで売られているのはだいたいどこも「タイ製」なんですよね。
つまり、ナンプラー代わりどころか、ナンプラーだった。という。
あと、魚醤であるのに、ボトルデザインが烏賊だったり牡蠣だったりするのも特徴です。紛らわしい。

ということでざっと駆け足のケチャップのご紹介でした。

このケチャップは、バンゴのような有名どころもありますが、ご当地ブランドが数多くあるのも特徴です。
インドネシア各地、特にジャワからスマトラにかけては、ご当地ケチャップ各種あると思います。
そして、各地各ブランドごとに味が違っているのもまた楽しいところ。
地道に買い集めて味比べとか、できたらいいなあ。

最後に、今回のお気に入り。

ケチャップ・アシン Bandung_West Java, 2017

このラベル。水牛に乗っている人。かわいいです!



2017/03/12

柑橘類/Jeruk

柑橘類色々 Bandung_West Java, 2016

すだち、かぼす、ゆず。

そんな日本の柑橘類と同じように、
インドネシアにも、その一滴でぐっと料理の味を引き締める柑橘類があります。
インドネシア語で柑橘類の総称は「ジュルック/Jeruk」。
主な用途は「生臭さを消す」こと。なので、肉料理や魚料理の仕上げによく登場します。

まずは、大きなデコボコが目を引くジュルック・プルッ/Jeruk Purut。
味はレモンに似て、けれども果汁がそれほど多くないため香りはレモンよりも弱めの感じ。
日本語でコブミカン、英語だとKaffir Limeと言われるこのジュルック。
ハーブ の記事にも書きましたが、葉っぱを香り出しとして使うことが多い品種です。

コブミカンの葉 Bandung_West Java, 2017

そして、ジュルック・ニピス/Jeruk Nipis。
淡めの緑でなめらかな外皮、中くらいの大きさのこのジュルックは、キーライムのことです。
香りは、いわゆるライムの香り。とても爽やかなグリーンの香りです。
果汁を搾って砂糖を加えたエス・ジュルック・ニピスは暑い気候にぴったりの清涼感。
炭火焼きの海魚にきゅっと絞って食べるのも、もうたまらない美味しさ。
そして、この焼き茄子のサンバル や、ジャグン・ボセ に添えたサンバルなどもそうですが、
ニピスの軽やかで爽やかな香りは、東ヌサトゥンガラあたりのシンプルな料理にもよく合います。

シンプルサンバル Bandung_West Java, 2017

続いて、ジュルック・リモ/Jeruk Limo。
若いうちは濃い緑、熟れると黄色みを帯びてくる、
小振りで、ざらっとした外皮が特徴のこのジュルックは、呼び名が色々あります。
私が住むバンドンを含む西ジャワ地方やその他のジャワ地域ではリモですが、
ジャカルタにあたるブタウィではジュルック・サンバル/Jeruk Sambal、
北スマトラ辺りのムラユ圏ではジュルック・リマウ/Jeruk Limauと呼ばれているそうです。
もっとカジュアルにはジュルック・サテ/Jeruk Sateと言われる場合も。
サンバルだったりサテだったり、その呼称からも分かる通り、多種の料理において活躍するジュルックで、
酸味はそれほど強くないのですが、濃いグリーンの香りが特徴です。
トラシ(魚の発酵調味料)を使ったサンバルに使っても、その匂いに負けないはっきりとした香りなのです。
なので臭み消しとして、肉を使ったスープやサテを食べる直前に絞ってたり、
練り物を使う「シオマイ」というピーナッツソースをかけた蒸し料理に添えられたりします。

ニピスとリモ Bandung_West Java, 2017

そして最後に、レモン・チュイ/Lemon Cui。
これがまた、呼称が色々ありすぎて混乱するのですが、どうやら同一のジュルックを、
ムラユ圏ではジュルック・カストゥリ/Jeruk Kasturi、
カリマンタンではジュルック・ソンキッ/Jeruk Songkit、
北スラウェシではリマウ・カチャウ/Limau Kacau、
フィリピンでカラマンシー/Kalamansi(Calamansi)と呼んでいるようですね。
その中でも、みかんのようなオレンジ色に熟れるのは華人たちが縁起物として重用する品種、
一般的に料理に使われるのは、緑からオレンジのグラデーションのある品種になります。
酸味の強いみかんのような味のレモン・チュイ。
果汁がたっぷりあるので、絞ってジュースのようにすることも多いです。
このジュルックは、北スラウェシのマナドで使った印象が強く残っていて、
ヘタの辺りだけを切り落としたジュルックを渡されて、焼き魚にたっぷり果汁を搾った記憶があります。
また、マナドといえば、のサンバル「ダブダブ」(サルサソースに似ています)にもよく使われているとか。

柑橘類色々 Bandung_West Java, 2016

ということで、左から、
リモ(若いもの)、レモン・チュイ、リモ(熟れたもの)、ニピス、プルッ。

西ジャワあたりでみかけるのは、緑のリモとニピスがほとんどです(別途レモンはありますが)。
ああ、柑橘類のことを書いていたら、なんだか爽やかな気分になってきましたよ(笑)。


2017/03/06

チョベッ/Cobek


チョベッとウレカン Bandung_West Java, 2017

石と石があたる音が集落の台所から聞こえて来ると、ああ食事の用意をしているんだなあと思います。

チョベッ/Cobek。
石(もしくはセメント)で作られた、スパイスをすりつぶしたりする平たい鉢のことを、こう呼びます。
日本でも、石皿と磨石という木の実等の粉砕のために使われた道具がありましたね。縄文期でしたっけ。
原始的でシンプルな形のこの道具、インドネシア各家庭に必ずあると言っていいほど、必須のものなのです。
調味料をすり潰すのに、サンバルを作るのに、チョベッがないと始まりません。

チョベッとウレカン Bandung_West Java, 2017

街の高級スーパーから伝統的な市場、集落の中のちょっとしたキオス、どこででも売られています。
そのくらい、どこの家庭にとっても必需品、ということなのでしょうね。

鉢のチョベッに対し、押しつぶす側の道具をウレカン/Ulekanと呼び、この2つで1セット。
ウレカンはハンドル型のものもあれば、握りしめるようにして使う丸石型のもあります。
スパイスや唐辛子などをチョベッに置いたら、ウレカンですり潰すようにして滑らかにしていきます。

チョベッとウレカン Bandung_West Java, 2017

今では、ブレンダーやフードプロセッサーで代用という場合もあります。
ただ、厳密には、細かく粉砕するのとすり潰すのでは、微妙に違うんですよね。
ブレンダーで細かくして最後にチョベッとウレカンで滑らかに仕上げる、というのをよく聞きます。
わたしもだいたいその手法です。

チョベッとウレカンでピーナッツソースを作る  Bandung_West Java, 2017

ウレカンは写真のような木製のものもあります。
好みだと思いますが、わたしは重量感がある石の方が使いやすい気がします。

ルンパン Bandung_West Java, 2017

同じ用途の道具で、ルンパン/Lumpangというのがあります。
チョベッより鉢がずっと深くなり、ウレカンはまっすぐな形に。
石皿というより、小型の臼のようなルンパン。
慣れないと手首使いが難しいチョベッに対して、潰すという作業はルンパンの方が簡単です。
ただ、チョベッに比べると見かけることが少ない気がします。
わたしはこのルンパンが好きなので、わが家では大小そろえて使っています。

さて、せっかくなので、
潰すという話しのついでに、インドネシア各地で見かけた「潰す」道具をご紹介。

まずは、東ヌサトゥンガラ州フローレスのシッカ地方で見た木製の「潰す」道具です。

つき臼作業  Flores_East Nusa Tenggara, 2016
いわゆる「つき臼」ですね。
木製の臼に長い木の棒状の杵をトントンと落として使います。
長く太い杵を用いるため、自重で中のものを潰すことができるのです。

場合に寄っては、2-3人で一つの臼に杵を落とすこともあり、当然その方が早く仕上がります。
リズムが狂うとぶつかっちゃうんですけどね。

つき臼作業 Flores_East Nusa Tenggara, 2016

この時は、染料となる植物を潰していました。

この木製のつき臼と長い棒状の杵という組み合わせは、何も東ヌサトゥンガラに限ったものではなく、
インドネシア各地、そして世界各国で今でも使われている道具です。
↓の写真は、スラウェシのバジャウ人という海洋民族の集落で見かけたものです。

つき臼作業 Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 

また、つき臼の利用としてアジア地域で最も一般的ではないかと思われるのは、米の脱穀作業。
インドネシアでも脱穀作業は機械化が進んではいますが、場所に寄っては現役で使われているのを目にします。
こちらは、インドネシア有数の米どころでもある西ジャワ州にある、
カンプンナガという伝統的生活を維持している村で使われていたもの。

籾すり Kampung Naga_West Java, 2016

舟形の臼と長い棒状の杵のこの用具はレスン/Lesungと呼ばれています。
長方形の箱形の部分で脱穀(籾と藁に分ける作業)をし、
奥の丸いくぼみ側で籾すり(米と籾殻に分ける作業)作業を行います。
大きなもののため、各家庭にある道具ではなく、集落で共有するのが一般的なようでした。

籾すり Kampung Naga_West Java, 2016

丸いくぼみが並んだ形のものもありました。

重さ4-6キロといわれるこの杵、まっすぐ落とすにもコツがいるため、
わたしなど、ほんの十数回持ち上げて落としてをしただけで腕が痛くなりました。
力作業に思えるのですが、これは女性の仕事。
トントンと搗いた米をこの後ザルにあけて煽り、米から離れた籾殻を飛ばしていきます。

籾すり Kampung Naga_West Java, 2016

このレスンによる脱穀は、インドネシアの稲作地域、特にジャワ島では広く使われていたようです。
トントンと搗く単調な作業。こういう作業には歌がつきがち。
中部ジャワでゴジレック/Gojlek、西ジャワ州バンテンでベンドロン/Bendorongと呼ばれるのは、
このレスンを搗きながら歌を歌う習慣です。
農耕地域では、収穫作業を儀式化して土地の恵みに感謝を表す場合が多々見られますが、これも同類ですね。

籾すり Kampung Naga_West Java, 2016

各集落ごとに持っているレスン、大きさや木の状態などそれぞれに異なるため、
杵で搗く作業で発する音に違いが出てきます。
その搗く音だけで、どこの地区で米を脱穀しているのか分かるようになるほどだったとか。
歌を歌いながら米を搗く行為がやがて、収穫の豊かさ、土地の肥沃さを示すものとなり、
地域で行われる儀礼の際に(実際の脱穀作業としてではなく)このレスンを搗く場合があったのだそう。

わたしが実際目にしたのは、ジャワではなく、
スラウェシで、同じく稲作が盛んなタナトラジャの葬儀の際でした。

葬儀におけるレスン Tana Toraja_Sulawesi, 2011

この時は、これが何なのか分からずに写真を撮っていたので、
肝心のレスンが写っているのが一枚もないのが、非常に残念で悔やまれるのですが、
複数人の女性たちがリズムを合わせてレスンを打ち、歌を歌います。
同じ稲作地域とはいえ、それぞれで独自発生した文化とは思えないので、
おそらくはジャワのものがトラジャに伝播したのではないかと思うのですが、どうなんでしょうね。

さて、つき臼のバリエーションとして最後にもうひとつ。

フローレスのマンガライ地方の山中にある伝統集落を訪れた際に見かけたこのつき臼、
コーヒーを挽くのに使われていたものです。

コーヒー挽き Flores_East Nusa Tenggara, 2016

臼の方はセメントでしょうか。
この小さな穴に杵を落として煎ったコーヒー豆を粉にしていきます。

コーヒー挽き Flores_East Nusa Tenggara, 2016

やってみたら、コントロール難しいんです。穴のふちにあたっちゃったりして。

挽きあがりは、細かな粉末。

集落の周辺で栽培したコーヒー豆を、家の前で乾燥させ、家屋内の囲炉裏で煎って、つき臼でグラインドする。
完全自家製のコーヒーでした。

コーヒー挽き Flores_East Nusa Tenggara, 2016

ということで、最初のチョベッからだいぶそれてしまいましたが、インドネシアの「潰す」道具のお話でした。

最後に、記事内で言及した地域を地図にのせておきますね。

黄:カンプンナガ、紫:フローレス島(マンガライ地方)、
オレンジ:フローレス島(シッカ地方)、青:タナトラジャ、緑:ワカトビ



2017/03/04

タウチョ・メダン/Tauco Medan

タウチョ・メダン Bandung_West Java, 2017

突然ですが「かおるさんのレシピ」コーナー、始まります。あ、えっと、勝手に始めます。

かおるさんは、いつも美味しそうなインドネシアごはんを作っている、在インドネシアの友人です。
北スマトラのメダン出身のお義母さま直伝料理であったり、
お邪魔してつまみ食いしたくなるようなおやつだったり、わたしは作ったことないものばかり。
お料理教室とかやって欲しいなあ、とお願いしてみたら、レシピを教えてくれました。
ので、そのレシピを元にわたしが作ってみて、ここでご紹介することにします。
いわば、わたしが遠隔操作されてるわけです。
「コーナー」とか勝手に言っているのは、これからも教えて欲しいなあという希望に基づいた先手(笑)。

ということで、第一回(勝手に)は、タウチョ・メダン。
昨日アップしたタウチョを使った料理です。
というか。
そもそも、このレシピを教えてもらったことから始まって、タウチョのことを調べたのでした。
今回はテンペを使いましたが、テンペを(もしくは一部を)豆腐(木綿)やエビなどに置き換えても可。
エビだとおもてなしにも向きます、とのことです。

テンペ・タウチョ(材料) Bandung_West Java, 2017

【テンペ・タウチョ】
テンペ 170gほど
チャベ・メラ・ブサール 2本
チャベ・ヒジャウ・ブサール 2本
バワンメラ(シャロット) 4粒
ニンニク 1片
ショウガ 1cm
ナンキョウ(ガランガル)/Lengkuas 1cm
サンバル 適量
サラムリーフ 1枚
トマト(完熟ではない、少し青っぽいもの) 1個
タウチョ・チャイル 大さじ2
水 100ml
砂糖 小さじ1
塩 小さじ1弱
油 適量

タウチョは、せっかくのメダン料理なので、メダンのタウチョを使います。
テンペはうちにあったのが200gだったので、実際には200g使っちゃっています。
サンバルは、甘くないものをとのこと。

1.切る
テンペ(または豆腐)をサイコロに、
エビの場合は背わたを取って、小さいのはそのままで、大きいものは半分に切ります。
チャベそれぞれは、中の種を抜いて細切りに、トマトは櫛切りにしておきます。

2.揚げる
テンペ(または豆腐)を油適量でかりっときつね色に揚げ、油切りしておきます。
(エビは揚げない)

テンペ Bandung_West Java, 2017

3.ブンブ/Bumbuの準備
ブンブとは、インドネシア料理を作る際の「基本調味料」みたいなものです。
通常、球根野菜や香味野菜などをペースト状にしたものを指します。

ここでは、バワンメラ、ニンニク、ナンキョウ、ショウガを潰し(フードプロセッサー等を使ってもよい)、
好みの量のサンバルと混ぜておきます。

4.いざ。
油適量(大さじ2ほど。テンペを揚げた油で大丈夫)に、サラムリーフと3のブンブを加え弱火で炒める。
→香りがたってきたら細切りにしておいたチャベも入れ、やや中火にして炒め続ける。
→チャベに油が渡ったら、テンペ(豆腐、又はエビ)とトマトを入れ、
→(エビの場合は火が通るのを待ってから、テンペや豆腐ならすぐに)タウチョと水を加え、
→沸騰したら、砂糖と塩を入れて味を整えてできあがり。
(砂糖と塩は、使うタウチョの味にあわせて加減して下さい)

タウチョ・メダン Bandung_West Java, 2017

これ、白ごはんに合いすぎて危険です。
発酵調味料のタウチョに加えて、かりっと揚げたテンペも発酵食品な訳で、旨味x2なんですものね。
チャベ・ブサールは種を除いているので、唐辛子からの辛さはありません。
辛味はサンバルで調整するので、マイルドに作ることも可能です。
トマトの酸味もほどよく、味噌に慣れ親しんだ日本人にはとても食べやすい料理だと思いますよ。


2017/03/03

タウチョ/Tauco

タウチョ(ボトル) Bandung_West Java, 2017

「インドネシアで食される大豆製品は4つの"T"で覚えてください」

以前、仕事でお話をうかがいに言った大学教授の言葉です。
4つの"T"とは
Tahu=豆腐
Tempe=テンペ
Tauge=モヤシ
Tauco=タウチョ
のこと。
(実際はここに、もうひとつ、調味料のケチャップ/Kecapが入るはずですけどね、笑)
この4つ目の「タウチョ」について、今回は。

タウチョは塩分を含む大豆の発酵食品。味噌と同類ですね。
(実際、日本の味噌を説明する際にタウチョに言及する場合が多々あります)
いつ頃からインドネシアで作られ始めたのか、明確なところは分からないようなのですが、
少なくとも300年ほど前までは遡れるのではないかと言われています。
ルーツは中国。黒大豆と黄大豆の違いはありますが、製法等は豆豉に類似します。
現在もタウチョを好んで使用するのは、インドネシアの中でも華人もしくは華人の多い地域の人々。
かつてインドネシアを含む南方諸国との交易の窓口の一つであったと言われる廈門では、
「豆」をTauもしくはToと読むと言われ、タウチョというその名称自体からも由来が伺えます。

作り方は至ってシンプル。
浸水して皮を除いた黄大豆を茹で、水を切って数日ザルに広げ自然に着菌させ、塩水を加えてさらに熟成。
そこに椰子砂糖を加えて加熱したものが液感のあるタウチョ・チャイル(Tauco Cair)、
加糖後に水分を除いて更に天日干ししたものがタウチョ・クリン(Tauco Kering)となります。
この製法が一番ベーシックなものですが、現在は着菌を促す目的で、
大豆を茹でた後に小麦粉やタピオカ粉などを加えたり、テンペ菌を足す場合などもあるようです。

で、冒頭の教授曰く、
タウチョを食する地域というのはかなり限定的で、主に西ジャワ地方で食される、のだそうです。
確かに、西ジャワ州のチアンジュールはタウチョの産地として有名です。
ただ、例えば中部ジャワ北岸のプカロンガンではタウチョを使ったスープが有名ですし、
北スマトラのメダンでも、味付けにタウチョを使った料理が見られます。
なので、確かに豆腐やテンペほど一般的ではないにしても、
インドネシア各地、少なくとも華人の多い地域ではタウチョは食されているのではないでしょうか。
各地のタウチョはそれぞれ風味が異なると言われ、そういうところも、日本の味噌に似ているよな思います。
(元来、環境由来の自然着菌が基本だったので、土地ごとの菌の違いが味の違いにつながったと言われます)

タウチョ(ボトル) Bandung_West Java, 2017

で、タウチョというと真っ先に思いつくのは、この2匹の象印のメダン産のタウチョ。
パケ買いしそうな瓶入りのタウチョ・チャイルです。
原料に、小麦と砂糖が含まれています。

一方で、カゴ状の容器に入っているのは、中部ジャワプカロンガン産のタウチョ。

タウチョ Bandung_West Java, 2017

ずっしり重量感があるカゴですが、中にはビニール袋で2重に包まれたタウチョが。

タウチョ Bandung_West Java, 2017

こちらは、水分のほとんどない、タウチョ・クリン。まあ、ウェットですけど。
このビニールを明けた途端に、なんとも食欲をそそる発酵臭が立ち上り、思わず白ご飯が欲しくなります。

タウチョ・クリン Bandung_West Java, 2017

ほぼ、味噌ですね、このビジュアル。
パッケージの表示を見ると、原料は大豆と塩のみ。砂糖の使用はないようです。
となると、これはもう豆味噌なんではないでしょうか。

ではこのふたつを、食べ比べてみましょう。

と、思ったのですが。
せっかくですから、中国の豆豉も一緒に並べてみようと思いつき、買いにいきました。

豆豉 Bandung_West Java, 2017

豆豉って乾燥させてませんでしたっけ?浜納豆的な?

原料を見ると、黒大豆、塩、砂糖、サラダ油、とあります。「古式製法」とも。
タウチョと同じ製法で作られていると考えましょう。サラダ油は、なんだろう、酸化防止として、ですかね。

ということで、食べ比べ。ついでに買ってきたKOKITAのタウチョも。

豆豉とタウチョ Bandung_West Java, 2017

KOKITAはインドネシアの調味料を幅広くだしている食品メーカーです。
こちらも、小麦粉と砂糖を含みます。

タウチョと豆豉 Bandung_West Java, 2017

右上:豆豉
右下:タウチョ・クリン
左上:象さんのタウチョ・チャイル
左下:KOKITAのタウチョ・チャイル

まずタウチョ・クリンですが、これはやっぱり味噌です。若い味噌(笑)。
納豆に近い発酵臭もいくらかありますが、まろやかなコクなど、「知ってる、この味」となります。
それに対し、象さんのタウチョ・チャイルはシャープな塩気が特徴。
しっかり発酵したことを思わせる旨味があり、塩味が後に残る感じです。
対して、同じタウチョ・チャイルでも、KOKITAのは納豆系の発酵臭が強くなります。
大豆の豆感もしっかり残っているあたりからも、若いんじゃないかなという気が。
そして、豆豉。油がある分、塩分がだいぶマイルドになっている感じですが、
発酵臭は弱くなるものの黒大豆独特の風味があって、タウチョ・クリンよりはクセがあります。
軽めの発酵(納豆臭)→→→しっかり発酵(コク)という流れだとしたら、
KOKITA→象さん→タウチョ・クリン→豆豉、という順番。真ん中ふたつくらいが好きです。

ところで。

タウチョ・クリンがあまりにも味噌っぽいので、試しに味噌ラーメン的なものを作ってみました。

タウチョ・クリンのラーメン Bandung_West Java, 2017

普通に美味しかったです。

「みそ汁」と言ってしまうと若干の違和感が残るかもしれませんが、
Miso Soupと曖昧な表現にしてしまえば、全く問題なく、かつ日本人好みの味になりますね、これ。

タウチョ・クリン Bandung_West Java, 2017

タウチョって、もちろん知っていましたし、タウチョを使った料理を外で食べることもあったのですが、
イマイチ使いこなせる気がしなくて、手を出さずにいました。もったいなかったですね。
これからは色々活用していってみようと思います。

ということで、タウチョを使った美味しいレシピを次回、ご紹介しますね。