2017/08/14

バンガイ諸島の食卓③

市場の鮮魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

島の食卓、その3。今日は焼き/揚げ魚です。
とてもベーシックな料理ですし、味付けも本当にシンプル。
その分、この「鮮度ではどこにも負けないよ」という島の魚たちだからこその美味しさを堪能しました。

焼き魚下味 Banggai_Central Sulawesi, 2017

町のお母さんの焼き魚。まずは下味をつけています。

焼き魚用ブンブ Banggai_Central Sulawesi, 2017

ブンブは、唐辛子、バワン・メラ、トマト、塩、粉末ターメリック、そしてレモン・チュイ。
これを潰して混ぜたものを、きれいに洗って身に包丁を入れた魚にすり込んでいきます。

焼き魚下味 Banggai_Central Sulawesi, 2017

あとは、焼くだけ。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

一方、冒頭の写真の魚は揚げてもらいました。

焼き魚のことは、イカン・バカール/Ikan Bakarと言いますが、
揚げ魚は、イカン・ゴレン/Ikan Goreng。
この日、お母さんが作ってくれたのは、イカン・ゴレン・リチャ。

リチャ/Ricaは唐辛子を使ったソースのことです。

唐辛子 Banggai_Central Sulawesi, 2017

正しくは、リチャ・リチャ/Rica ricaと2度繰り返すこのソースは、北スラウェシのものが有名ですが、
中部スラウェシであるバンガイ諸島でも、当たり前のように使われていました。

本場北スラウェシのものは、フレッシュの小粒唐辛子をふんだんに使い、とにかく辛いのです。
(バンガイのリチャ・リチャはだいぶ辛さ控えめです)
そして、このイカン・ゴレン・リチャ(リチャ)のように料理名に使われた場合、
サンバルのように料理の横に添えられて出て来るのではなく、
ソースとして、料理にしっかりかかって出て来る場合が多いのも特徴です。

ちなみに、バンガイでの旅で「サンバル」という言葉は全く聞きませんでした。
料理にかけるソースとして出て来る唐辛子ベースのものは、基本全て、リチャと呼ばれています。
サンバルのような別添えのものは、ダブダブ/Dabu dabu。
また、唐辛子そのもののことも、チャベ/Cabeと言っていたのはわたしだけで、
お母さんたちはリチャ、もしくはロンボッ/Lombokと呼んでいました。所変われば、ですね。

リチャ・リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

ということで、この日のリチャ・リチャ。
唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩を油で炒めてから潰したもの。
とてもシンプル。
あわせて、魚もごくごくシンプルに、素揚げ。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これはインドネシア各地共通かもしれないのですが、
チキンであれ魚であれ、揚げるとなったらかなりしっかり水分を飛ばすまで揚げるのが好まれます。
なので、この魚を揚げているときも、
わたしがひっくり返したくてうずうずしているのを、お母さんが「まだ!」と牽制していたりしました。

あ、あと、魚一匹猫にとられたんじゃないかしら!とも騒いでいました(笑。

容疑者↓

島猫 Banggai_Central Sulawesi, 2017

飼ってるわけではないとお母さんは言うのですが、でも普通に台所に出入りしていて、ほぼ飼い猫に見えます。

さて、同じ揚げ魚でも、漁村のお母さんの場合。

仕掛けを引き上げにいく子どもたち Banggai_Central Sulawesi, 2017

まずは、魚の確保から。
夕暮れ時。浅瀬にかけておいた仕掛けを、村のこどもたちが引き上げにいきます。

鮮魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

で、これがかかっていた魚たち。まだぴちぴちと跳ねるのです。

この中から、何匹かいるまだら模様の魚(島ではマレアと呼ばれていた魚)を選びます。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

それを、塩とレモン・チュイで下味をつけて、油で揚げます。

揚げ魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

もちろん、しっかり、かりっと。
見た目は愛想なく見えるかもしれませんが、これがまた美味しかったのです。
「なんでこんなに美味しいんだろう!?」と言うと、お母さん、にやっと笑って、
「別になにも特別なもの使ってないでしょう?鮮度よ、鮮度」と自慢します。

もうひとつ、漁村のお母さんの料理で、その美味しさに翌日もまた作ってもらったものを。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これも「リチャ」なのですが、
魚を食べ終わってお皿に残ったソースだけでも、ごはんにかけてしまいたくなる美味しさ。

リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩、まではいつも通りなのですが、

リチャ Banggai_Central Sulawesi, 2017

そこにキャンドルナッツを加えるのです。

インドネシアでキャンドルナッツはクミリ/Kemiriと言われ、スープなどを作る際によく使われます。
クセはなく、そのしっかりした脂質から、いいコクがでるのです。

材料をなめらかに潰したら、油を熱し、まずは基本のブンブを香りよく炒めます。
火が通った頃合いに、キャンドルナッツも加え、
少々の水で全体を合わせ、味を整えたら焼き上がった魚にかけて出来上がり。

焼き魚 Banggai_Central Sulawesi, 2017

これは(同じ鮮度はむりでも)美味しそうな魚が手に入ったら、自分でも作ってみたいです。
ごはんが進んでしまって、とても危ないんですが。


2017/08/13

バンガイ諸島の食卓②

市場の鮮魚 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ということで、島の食卓。お母さんたちのお料理を紹介していきますね。
まずは、当然、魚料理から。
定番中の定番、酸っぱい魚のスープを作っていきます。

酸っぱい魚のスープは、インドネシア沿岸部各地でよく見かけます。
海魚特有の風味を「生臭さ」と感じやすいのか、海魚のスープはたいがい酸味を効かせたもの。
魚の旨味とさっぱりした酸味の組み合わせは絶妙で、ごはんが進みます。

そのスープの酸味は何からとっているのでしょうか。バンガイ諸島では3種類の酸味料を試しました。

まずは、町のお母さんから、2種類。

このお母さん、朝はターメリックライスのお弁当を、
そして夕方には魚のツミレスープを作っては自宅で売っている、お料理上手のお母さんです。

トーチジンジャー Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まず1つ目は、トーチジンジャーを使って酸味をつけたスープ。

この真ん中の、房状のものがトーチジンジャーの実です。
初めて見たときは、いったい何なのか、わかりませんでした。

インドネシア語ではクチョンブラン/Kecombrangと呼ばれますが、各地それぞれに呼び名があり、
バンガイ周辺ではティカラ/Tikalaと呼ばれていました。

トーチジンジャー Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

調べてみると、トーチジンジャーはマレーシア辺りのラクサでも使われる香辛料なんですね。
つぼみの状態も食用とされますが、今回使うのは花が終わった果実の部分です。

バラバラにばらけた房の部分を一つかみ、買って帰りました。

市場の鮮魚 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

そしてもちろん、魚も買います。

お母さんが選んだ魚のウロコをとって、お腹をきれいにし、適当な大きさにぶつ切りにしてもらいました。
この日は、白身のお魚を(名前は分かりません…汗)。

では、お母さんの台所に帰って、お料理開始。

唐辛子 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

まずは、基本のブンブの準備から。

唐辛子、バワン・メラ、ニンニク、トマト、塩をチョベッを使って潰していきます。
バンガイの唐辛子は、指先ほどの、小さくてとても辛い唐辛子です。

唐辛子 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

なめらかに潰したら、熱した油で香りよく炒め、粉末のターメリック、レモングラスを加えて、水を注ぎます。
唐辛子のカプサイシンが飛び散るせいで、炒めながらお母さんくしゃみがとまらなくなってました(笑)。

スープ用の魚 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

買って来た魚をきれいな水で洗い、鍋の中に。

そして、トーチジンジャーの準備開始です。

トーチジンジャー Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

再び、チョベッで潰していきます。

トーチジンジャー Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

外側の果肉の部分は、なんとなくガランガルに似た独特の風味があります。
そして、酸味のもとはこの種(の回りの白い部分)。

トーチジンジャー Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ざくざくと潰していくお母さん。

トーチジンジャー Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

水適量に、潰した果肉と種を加えてよくもみほぐします。
風味が出たら、カスが入らないように漉しながら、鍋に注いでいきます。

酸っぱい魚のスープ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

お母さんの家は、石油コンロです。

あとはふつふつと煮立て、味を整えたらできあがり。
ちなみに、インドネシアの家庭で「アクをとる」という作業を目にしたことが、わたしはありません。
アク、気にしないんでしょうかね。

酸っぱい魚のスープ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ターメリックの色がキレイなスープになります。
(アクはいつのまにか消えて、すっきりきれいになっています)

そして翌日。

酸っぱい魚のスープ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

この日は、タマリンドを使ったスープ。
味がはっきりでるタマリンドに合わせて、魚の方も旨味の強いカツオを使いました。

基本のブンブは同じで、レモングラスは使わず、ターメリックのみ。
ターメリックも、酸味同様に魚の生臭みを消す目的で使われるようですね。

酸っぱい魚のスープ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

タマリンドが入った分、色の濃いめのスープになりました。

一方、漁村のお母さんが作るスープの酸味は、というとレモン・チュイ

レモン・チュイ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

魚料理に好相性のレモン・チュイは、バンガイ諸島の食卓で大活躍。
お母さんの家では、レモン・チュイの木が大きく育って、たくさん実をつけていました。

庭先のレモン・チュイの木 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

手前に立っているのはお父さん。
「台所の外にいっぱい生えて来るんだよ」と言います。
(種から発芽しちゃうんでしょうね…笑)

ということで、このお家ではレモン・チュイは買うまでもなく、必要なだけ庭先で採ってきて使います。
果汁たっぷりのこのレモンを絞って、酸味のスープ。

酸っぱい魚のスープ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

漁村のお母さんも、ブンブ+ターメリックは同じです。

使う分量にもよるのでしょうが、印象としては、
トーチジンジャーを使ったスープは風味のある酸味、
タマリンドは厚みのある酸味、
レモン・チュイのスープはすっきりシャープな酸味、という感じでしょうか。
この他、ブリンビン・ウルー/Belimbing Wuluh(ナガバノゴレンシ)も酸味料として使われるそう。
通年あるわけではないのですが、はっきりしたシャープな酸味が魅力の果物です。

ということで、魚のスープを3種類みたところで、次回は焼き魚をご紹介します。
お腹をすかせて、お待ちください♪


2017/08/12

バンガイ諸島の食卓①

鮮魚 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

ご無沙汰いたしました。
昨日まで、しばらく振りの旅にでていました。
その旅の道々での美味しいものなど、ご紹介していきますね。

今回訪れたのは、中部スラウェシの東端にあるバンガイ諸島。

赤丸:バンガイ諸島 青点:ジャカルタ

大小いくつもの島が集まった地域です。
事前に全く情報が拾えず、行き当たりばったりもいいところの旅ではあったのですが、
常に潮風をあびながら、携帯の電波すらままならない島々を巡る、のんびりしたいい日々でした。

島景 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

石灰質の島が多く、決して肥沃とは言えない土壌の島々。
田んぼは、一番大きな島の中心部に少しみかけた程度で、米は地域外から輸入しています。

地域産業としては、椰子の実を干したコプラと、丁字(クローブ)が主なのだそう。

椰子林 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

写真の右、椰子林の手前側の開けたあたりにまばらに植わっているのが丁字の木。
収穫した丁字を道に広げて干していたりするので、村を通り過ぎる度にいい香りがしました。

漁師たち Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

そして、この地域最大の産業と言えば、当然、漁業。

鮮魚 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

島々の沿岸部には漁村が散見され、
それらの村から新鮮な魚がこの地域の中心地へ送られ、そこから国内の大きな街へと出荷されていきます。

沿岸の漁村 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

電気供給は夕方18時から夜22時ごろまで、村の発電機で賄っているというところも多いのですが、
そういう村であっても、氷はしっかり確保し、水揚げした魚たちの鮮度維持に努めます。

そして、定期船に乗せて出荷。

出荷待ちの荷物 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

出荷されるのは鮮魚に限らず、種類によっては干し魚として村で加工する場合もあります。

干物 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

なんか、ちょっと日本気分になりそうな開きの干物。
炙って大根おろしのせて食べたいかんじですね。

干物 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

こちらは、エイの肉を裂いて干しているところ。
パキパキになるまで数日天日干しをしたものをまとめて、南東スラウェシの街へ出荷するそう。
(買値が高いところへ売るらしく、今はその街の業者が安定していい価格みたいです)

干物 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

これは食べてみたかったんですけどね、
この村を訪れたのが夕方で、乾燥が完了したものは既に翌日の船に乗せるために梱包済みだったのでした。
まだ半乾きのものは売ってくれないし。残念。

漁村の市場には鮮魚はあまり見当たらなかったのですが(獲るひとばかりで買うひともいないのかも)、
町の市場に行くと、わたしが暮らしている辺りではみかけないようなピカピカの鮮魚が沢山ならんでいました。

鮮魚 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

カニまで!

市場のカニ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

鶏なども売られてはいるのですが、売り場面積をみればその差は歴然。
島の食卓のタンパク源は、圧倒的に魚、魚、魚!ですね。

もちろん、生鮮市場には、野菜や果物なども並んでいます。

市場風景 Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

島内で採れたもの、隣の島から届いたもの、大きな島から輸入したもの、色々。

そんな、バンガイ諸島の食材色々を使った料理を教えて欲しいと、
町のお母さんと、漁村のお母さんの台所にお邪魔してきました。

魚のスープ Banggai Islands_Central Sulawesi, 2017

バンガイ産まれのバンガイ育ちというお母さんたち。
それぞれの美味しい食卓について、次回からご紹介していきます。