パプアに行ったらブア・メラ/Buah Merahを探すんだよ、パプアにしかない、薬になる植物だよ。
というのは、以前から耳にしていました。
ブア/Buah=果実、メラ/Merah=赤、つまり赤い果実。また直球な名前だねえ、と思っていました。
そのブア・メラ、山のパプアの市場で初めて目にしました。
ブア・メラ売り Baliem_Papua, 2024 |
想像していたよりずいぶん大きい。
で、気がつけば、立ち寄った住居の庭などにもブア・メラの木。
ジャワの家の庭にマンゴーの木が植えられている率と同じくらい、たくさん植えられていました。
(わかりにくい例え)(結構多い、庭の果樹と言えばのトップ3に入る、くらいの感じです)
ブア・メラの木 Baliem_Papua, 2024 |
ブア・メラの実 Baliem_Papua, 2024 |
ブア・メラはパンダヌス、タコの木の仲間です。
トゲトゲの葉っぱが特徴。かなり痛いのですが、その葉っぱに包まれるようにしてブア・メラの実があります。
やっぱり大きい。
このブア・メラ、パプアを中心としたマルク地方や一部太平洋地域の、標高高めな地域に生えています。
このバリエム渓谷でも、ブア・メラは昔から食されてきた食材です。
成分分析をするとビタミンEの一種であるαトコフェロールが豊富であったり、
カロテン、βカロテンなどもたっぷり含まれているという結果が出ているそうで、
抗酸化作用、抗炎症作用、抗ウィルス、抗菌、などなどの効果が期待できると言われています。
いわゆる「スーパーフード」枠ですね。
このブア・メラをどう食べるのか、おうちにお邪魔して見せてもらいました。
ブア・メラの木 Baliem_Papua, 2024 |
家の周りを囲むように植えられたブア・メラの木。
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
どどんと一本。やっぱり大きい。
そして、外皮はとても硬いんです。
まずはその外皮に刃を立てて、縦半分に開きます。
ブア・メラを割る Baliem_Papua, 2024 |
豚の骨のナイフ Baliem_Papua, 2024 |
この時に使っていたのは、豚の骨を使って作ったナイフ。硬い外皮も鋭く破いていきます。
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
半分に割れたら、中のワタの部分をこそげ落としていきます。
ワタって言いましたが、めちゃくちゃ硬いです。
お姉さんがしゅっしゅっとリズムよく削っていくのでちょっとやらせてもらいましたが、
ぐぐぐぐぐ…となってしまう硬さです。
このこそげたワタは豚にあげるのだそう。喜んで食べるのよ、って。
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
外皮の部分をひと粒、指先で潰してみたら、油分が滲んできました。
ブア・メラを茹でる Baliem_Papua, 2024 |
ワタを全部掻き出したら、水を適量入れて火にかけた鍋の中に、割って入れていきます。
煙もくもくなので、真っ白ですし、なんなら全員涙を流しています。
台所の建物 Baliem_Papua, 2024 |
住居棟と台所は分けられています。細長い建物が台所。煙が外まで漏れてきています。
一旦外に出て、目をいっぱいパチパチして、涙が止まったらまた中に戻ります。
ブア・メラ茹で上がり Baliem_Papua, 2024 |
一緒に入れるのは、サツマイモと芋の葉。味付けはなしです。
芋は、茹でるのの他、火のそばの灰に埋めて焼き芋にしたものも用意してもらいました。
水は、家からちょっと歩いたところの湧水まで汲みにいきます。
水汲み Baliem_Papua, 2024 |
山のパプアの人々、水分をあまりとっている印象がないんですよね。
飲んでないわけはないのですが、例えば料理を待ちながらコーヒーを飲むとか、お茶を飲むとか、
なんかそういう機会が、なかったような。
絶えずピナン(檳榔樹)を噛んでは真っ赤な唾液を吐き出してはいるのですが、お水飲んでる?と思ってしまった。
野菜 Baliem_Papua, 2024 |
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
茹で上がった野菜を出したら、ブア・メラも別の容器に出し、赤い粒つぶを皮からこそげていきます。
熱々ですが、ふうふうしながらやります。
そして、そこに少量の水を足し、ぎゅうぎゅうに揉みます。
赤い粒たちの果肉を、それぞれの芯から剥離させるために。
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
その上で、一かたまりを手に取って、ぎゅううううっっと絞ります。これもすごい力がいる作業。
何度も何度も絞り、途中でまた少し水を足しては同じ作業を3度ほど繰り返します。
ブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
絞り終わったブア・メラ。これを、さっきの野菜につけて食べるのです。
とても脂質が高く、けれど味にも匂いにもクセがない、不思議な食べ物でした。
芋と芋の葉 Baliem_Papua, 2024 |
焼き芋とブア・メラ Baliem_Papua, 2024 |
途中で、案内してくれた人が「塩ちょうだい」と言い、それで塩をもらいました。
塩を足したブア・メラは、クセのない丸みのあるオイルと塩の組み合わせも美味しく、ぐっと食べやすく。
そのままが食べにくい訳では決してないのですが、
はっきりとした味わいのない、でも色は強烈なドロッとしたもの、というのが、視覚と味覚で繋がりにくかった。
元々の山のパプアは、油脂というと豚の油くらいという環境だったため、
このブア・メラの油分というのは貴重なものだったのだろうなと思います。
ところで台所。
ここのおうちの台所と、石焼の調理をやってくれたおうちの台所は同じような感じで、
やや長めの建物の中に藁を敷いて、仕切った炉をあつらえてあります。
台所棟の炉 Baliem_Papua, 2024 |
台所棟の炉 Baliem_Papua, 2024 |
こんな近くに藁があって、引火しないの?と思わなくもないですが、
こうして藁を敷いてあることで、火のそばに座っていることが負担でなくなり、
なんなら、ゴロンと横になってみたりもできるのです。
室内は煙に燻されてピカピカに黒光しています。
かつては豚の油を建物の強化として塗っていた、という話をきいたりもしましたが、
少なくとも今のこれは、煙のせいじゃないかなと思います。
台所棟の内部 Baliem_Papua, 2024 |
台所棟の黒光りする天井 Baliem_Papua, 2024 |
これは、台所棟に限らず、住居棟も同じです。
山の朝晩は冷え込みも激しいため、住居棟にも炉を持って火を炊き、夜はその炉の上のロフト状の2階で寝ます。
すっかり燻された室内。
でもこれって、人間の呼吸器によい訳はないとは思うんですけどね。
台所棟内部 Baliem_Papua, 2024 |
とは言え、火があって暖かいところには、人も犬も集まりがちです。
もうひとつ、ブア・メラからのつながりで、ケラパ・フタン/Kelapa Hutanについて。
ケラパ/Kelapa=椰子、フタン/Hutan=森、森の椰子と呼ばれるこれも、山の市場で見つけた植物です。
ケラパ・フタン Baliem_Papua, 2024 |
ケラパ・フタン Baliem_Papua, 2024 |
ケラパ・フタン Baliem_Papua, 2024 |
この、たわしみたいな、亀の甲羅みたいな、硬いものの中に一粒ずつ細長い実が入っています。
大きなひまわりの種みたいな感じ。
食べると、最初は乾いた植物の香りしかしませんが、噛み締めているとだんだんと油脂を感じるようになります。
調べてみると、一般的なナッツ類同様、とても質のよい油脂のようです。
パプアではワロモ/Waromoと呼ばれるというこの植物、山地に多く自生しています。
椰子の名をつけられてはいますが、ブア・メラと同じくタコの木の仲間。
木の姿だけをみていると、どっちがブア・メラでどっちがケラパ・フタンか、わたしにはわかりませんでした。
家の近くに生えているから、森の中に生えているから、というところから推測するばかりで。
ケラパ・フタン Baliem_Papua, 2024 |
ケラパ・フタン Baliem_Papua, 2024 |
森の中で見つけたケラパ・フタン。
てか、見つけられたの、えらくないです?
このバリエム渓谷には、椰子の木が生えていません。
ココヤシは、標高が高すぎるから生えていないのも理解できますが、ジャワの山などに生えるアレン椰子も見当たらない。
山のパプアは、タコの木の天下なのです。
なので、低地へ行ったことがない山の民は「ケラパ(椰子)」と言われたら、タコの木をイメージしちゃうのだとか。
面白いですよね。
ということで、山のスーパーフード、ブア・メラについてでした。
普段は市場で、既に絞ったものがペットボトルなどに入れられて売られているのだそうです。
ちょっと欲しかったのですが、戻る日が日曜日で、日曜日は市場がお休みなので買えずじまいでした。
でも、空港で、捨て置かれたブア・メラのボトルをいくつか見かけたので、もしかしたら機内持ち込み禁止なのかな。
気圧で溢れたりなんかしたら、そりゃもう大ごとですものね。
子犬 Baliem_Papua, 2024 |
ということで、次回は、低地のパプア。サゴ椰子についてです。
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