お料理教室 Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
ロンボク/Lombok島に行き、友人夫婦のお姉さん宅でお料理教室をしてもらってきました。
思うほど辛くなく、思う以上に野菜がたっぷりなロンボクのキッチンです。
まず、ロンボク島の位置ですね。
バリ島の東隣。東西に広がるインドネシアのちょうど真ん中あたりの島です。
ロンボク/Lombokとは、ジャワなどの言葉で「唐辛子」を意味します。
なので、ああどうりでロンボクのごはんは唐辛子たっぷりで辛いはずだ、などと思ってしまいがちですが、
実はそのLombokではなく。
ロンボク島に暮らすササック/Sasakの人たちの言葉で「真っ直ぐ」を意味するLomboqに由来するそうです。
とは言え。
ロンボクの料理にたくさん唐辛子が使われがちなのは間違いがありません。
今回は、いつも以上に「赤み」増しなキッチン。
唐辛子については、以前の記事→☆ をご参考に。
材料 Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
ジャカルタなどでロンボク料理といえば、アヤム・タリワン/Ayam Taliwangとプレチン・カンクン/Plecing Kankung。
アヤム・タリワンとプレチン・カンクン Jakarta, 2023 |
確かに有名な料理ですが、じゃあそれ以外は?というと、なかなか出てこないのも事実。
けれどロンボク料理はその二つのみにあらず。
野菜をふんだんに使ったロンボクの家庭料理を色々教わってきました。
「のみにあらず」とか言いましたが、でもまあ、プレチンから始めましょうか。
プレチンのセット Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
唐辛子大/Cabai Besar、唐辛子小/Cabai Rawit、トマト、ニンニク、トラシ/Terasi、砂糖、塩がプレチンセット。
唐辛子をしっかり使いつつ、火を吹くような辛さにしないコツの1つは、唐辛子の大と小の塩梅です。
写真は「辛さマイルド」を目指した比率。
大きい唐辛子の方が辛味は穏やかなので多めに、辛みがシャープな小さい唐辛子は控えめです。
そして、全体の味を立たせるために塩は当然必要ですが、砂糖もしっかり。忘れずに。
これが辛さを調整するコツの2つ目です。
辛味に対して砂糖なんて安直な。と思うかもしれませんが、甘味の奥行きはやはり最強のバランスです。
で、これをフレッシュなままチョベッ/Cobekやブレンダーで潰したらプレチンの基本は完成です。
シンプルです。
このソースと和えたあれやこれやを総して、プレチンと呼びます。
代表的なプレチンは、プレチン・カンクン/Kankung。カンクンは空芯菜のこと。
こちらは、ジャカルタのレストランのプレチン・カンクン。茹でた空芯菜ともやしです。
プレチン・カンクン Jakarta, 2023 |
そしてこちらは、ロンボクの友人宅で出してもらったプレチン・カンクン。
プレチン・カンクン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
揚げた豆腐や茹で卵も合わせ、ピーナッツソースでガドガド的にもどうぞ、というアレンジ。
ジャカルタだと、プレチンの上にはピーナッツが必ず乗っていますが、友人夫婦曰く「必須ではない」そう。
ちょっと脱線しますけど(でもどうしても書いておきたい)、
ロンボクの、というか島の中心地であるマタラム/Mataramの豆腐の美味しさはなかなかの驚きでした。
出来立ての、まだほんのり温かいのを用意してくれていたのですが、それをそのままを食べられるのです。
以前お豆腐の記事(→☆)でも書きましたが、
インドネシアの豆腐は酸味があるものが多く、買ってきたものを家庭で調味加熱して食べます。
生食が可能かどうかというより、酸味が優ってしまうので、塩味や油などでバランスをとりたくなるのです。
が、マタラムの豆腐は酸味がなく、何もつけず、ただそのままで豆の味が甘く感じられるのです。
あのお豆腐の秘密は一体なんなのか。いつか解明しに行きたいです。本当に美味しかった。
その美味しい豆腐をカリッと揚げてくれたこのプレチンお豆腐も、当然素晴らしく美味しかったのです。
閑話休題。
ロンボクは空芯菜が美味しいので有名です。
空芯菜 Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
見て、この立派な空芯菜。
茎の太さが違います。そして、これが固くなくて、パキパキと美味しいのです。
なんでこんなに立派なの?と聞いたところ「んー、川に生えてるから?」との返答。
ロンボクの人にしてみたら、空芯菜っていうのはこういうもの、なんでしょうね。うらやましい。
この空芯菜を茹でて、そしてこの太い茎を縦に裂き、茹でたもやしと一緒に盛ってプレチンのソースをかける。
プレチン・カンクンの出来上がりです。
さっぱり瑞々しく、シャキッとした歯ごたえとすっきりした辛味、そしてじんわりくるトラシの旨味。
(ロンボクはトラシの産地としても有名です)
毎日食べてもいいかもしれない、と思うくらいに飽きのこないひと皿です。
ところが、プレチンはカンクンばかりではなかったのです。これが、今回の「目から鱗」のひとつ。
これまではプレチン・カンクンというひと続きの名前として認識していたのでした、わたし。
他の食材でも「プレチン」ができるという発想がありませんでした。プレチンって自由!
まず、やばいこれハマる、となったのは焼き茄子のプレチン/Plecing Terung Bakar。
焼き茄子のプレチン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
ジューシーでスモーキーな焼き茄子に、すっきりとしたフレッシュな唐辛子の辛味と旨味。
そもそも焼き茄子自体がとても好きなので、これはもう。ご飯泥棒です、まったく。
使った茄子は緑の茄子。
西ジャワでは紫の茄子の方が圧倒的に主流なのですが、ロンボクは両方あるようです。
緑の方が柔らかいって言いますよね。
緑の茄子 Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
友人の旦那さんがこの緑の茄子の種を見つけてきてくれて(ほんとうに至れり尽くせり)、
自宅に戻った私は早速植えてみましたよ。育つといいなー。
そして、キノコのプレチン。
このキノコがまた。
ジャムル・ラロン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
この大きくてまんまるなキノコ、ジャムル・ラロン/Jamur Larongと呼ばれています。
ジャムルはキノコ、ラロンとは雨季の始めの夕方に一斉に地中から羽化して飛び立つ羽虫の一種。
その羽虫が羽化した地中から生えてくるのが、このキノコなのだそうです。驚き。
大きくて丸い傘に細くてすっとした軸を持つこのキノコ、いつでも採れるわけではないのだとか。
ロンボクではテンコン・ブラン/Tengkong Bulanと呼ばれていました。テンコン=キノコ、ブラン=月。
満月のキノコ、って素敵な名前ですよね。
程よい歯ごたえがありクセのない美味しさのこのジャムル・ラロンも、プレチンにしてもらいました。
プレチン・ジャムル・ラロン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
って、ブレてるの。しんじられない。泣く。
めっちゃ美味しかったんですよ。なのに。泣く。
気を取り直して、次のプレチン。バナナの花のプレチン。
プレチン・ジャントゥン・ピサン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
他の料理のために下準備をしていたバナナの花を、せっかくだからとプレチンにしたのでした。
バナナの花は、インドネシア語ではジャントゥン・ピサン/Jantung Pisang、バナナのハート(心臓)と言います。
写真上部に写っているオレンジ色、これは油のパックです。
唐辛子の辛さ調整のコツ3つ目がこれなのです。
辛味成分であるカプサイシンは、油分に溶ける性質があるんですよね。
なので、油と合わせることで、シャープな辛味は丸味を帯びたマイルドな辛味に変化するのです。
大きな唐辛子と小さな唐辛子の塩梅、勇気ある砂糖と油使い。これです。
プレチン・ジャントゥン・ピサン Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
すごく赤いけど、思うほど辛くないのですよ。
艶めくバナナの花のプレチン、シャキッと茹でた歯ごたえと仕上げに絞ったコブミカンの風味が効いて美味です。
そしてもうひとつ、同じプレチンでも油で加熱調理したプレチン、プレチン・コマック/Plecing Komaq。
コマックという小粒の豆を使います。
ロンボクの言葉ではコマック・シオン・スプッ/Komaq Siong Sepuq(シオン=揚げる、スプッ=ドライ)。
炒めプレチンのセット Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
ドライに仕上げるためか、唐辛子の辛味とのバランスは油に任せるからか、トマトはなしで。
唐辛子の大小とニンニク、トラシ。
コマックを揚げる Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
まずは、一晩浸水した(下茹でもしてたかも)コマックを、油でじっくり揚げます。
赤いソースの縁に油が見えますよね。勇気ある油使いです。油は味。控えめに、とか言わずきちんと適量使用で。
プレチン・コマック Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
水分を飛ばしつつ、砂糖、塩、化学調味料などで味付けをしていきます。
味見をしながら塩と砂糖を加えて、お姉さんに「どうかな」とやると「砂糖が足らない」と言われました。
なので、自分的には「勇気ある砂糖使い!」と思って砂糖を追加。
なのに、再度味見したお姉さんに「まだ足りない!」と言われました。
実際、お姉さんの砂糖の加減で味がばっちり決まるんです。さすが。
勇気は思い切りです。
味が決まったら揚げたコマックを合わせ、しっかりドライになるまで加熱してできあがり。
もともと豆らーなので、こういう豆系の料理には目がないのです。常備したいくらいご飯によく合う副菜。
たくさんあったコマックは3回に分けて揚げたのですが、最後の1回はわたしが仕上がりを確認しました。
味見と言いながらつまみ食いしつつ、揚げ上がりの頃合いは判断できたと思ったのですが、
最後に合わせた段階で「カリッとしてない」と指摘されました(笑)。
コマックを揚げる Lombok_West Nusa Tenggara, 2023 |
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