2018/01/06

インドネシア料理の中の中国

ナシ・ゴレン Bandung_West Java, 2018

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年も健やかで美味しい一年がすごせますように。

のんびり更新ながら、インドネシアごはんについて書き続けているこのブログですが、
今年のごはん活動は「インドネシア料理の中の中国」をテーマにしていきたいなと思っています。
(その他のインドネシアごはんも、もちろんおろそかにしませんよ)

一般的に「インドネシア料理と言えば?」と問われたら、
まず真っ先に名前が挙がるのは「ナシ・ゴレン」だと思います(ですよね?)。
これは、ナシ/Nasi=ごはん、ゴレン/Goreng=揚げ(油調理)で、つまりインドネシア版炒飯なのです。
当然、そのルーツは中国。
10世紀頃にはインドネシアの一部に伝わっていたと言われています。

ミー・ゴレン(ミー/Mie=麺)も同様。焼きそばですね。

屋台のミーゴレン Jakarta_2016

これまで記事にしてきた豆腐は言うまでもなく、色んなスープ(ソト/Soto)たちや、
調味料のケチャップタウチョも、ルーツはいずれも中国にありました。

インドネシアでの中国料理には、まず「中華料理」らしいもの(変な言い方ですが)があります。

中華料理店のサイン Bandung_West Java, 2016

その他のひとも食べるけど、やっぱり華人のお客さんが多いよね、という感じのものですね。

そういう「中華料理」の例として、まずはクオ・ティエ/Kuo Tie。餃子です。

クオティエ Bandung_West Java, 2016

たっぷりの油で揚げ焼きにしたのだったり、茹でだったり。
美味しいですよねえ(大好物)。

クオティエ Bandung_West Java, 2016

わが家がよく買いに行くクオティエ屋さんは、ニラがたっぷり。
「華人の店主がこれがオリジナルだっていうからね。やっぱこの香りだよね」
とは、せっせと包んでいたおじさんの談。

ちなみに、クオティエ屋さんは「山東」の名を冠した店名が多い気がします。
餃子で有名なのでしょうか、山東省。

それから、ナシ・チャンプル/Nasi Campurと呼ばれる、豚肉乗せごはん。

ナシ・チャンプル Jakarta_2017

チャーシューだったりカリカリ三枚肉だったりが乗ったご飯です。
(バリのナシ・チャンプルとはまた違うものです)

同様に豚肉を使ったごはんで、バッチャン/Bakcangというのもあります。

バッチャン Bandung_West Java, 2017

見ての通り、ちまきです。

バッチャンという呼称は、福建語の「肉粽」に由来するそうです。
豚肉を表すBakは、シンガポールやマレーシアで有名なバクテー/肉骨茶などでもみられる音ですね。

バッチャン Bandung_West Java, 2017

これは餅米を使ったバッチャン。普通のお米のもあります。
中に、しっかり味付けのされた豚肉が入っていて、とてもジューシー。

これらの「中華料理」の一方、中国由来とはいいつつも広く一般に親しまれているものもあります。

まずは、バンドン名物と言われている、シオマイ/Siomay。

シオマイ Bandung_West Java, 2017

音から推察できるとおり、シュウマイです。

わたしたちがイメージするシュウマイは豚肉ですが、イスラム教徒の多い土地に適応し、
魚肉や鶏肉を使ったものが主で、そこにタピオカ等のデンプンを合わせて練ったものが餡になります。
皮も、いわゆるシュウマイの皮らしい小麦粉からの皮にかぎらず、豆腐に挟んでいたり色々。
これらを蒸して、ゆで玉子や、ジャガイモ、ゴーヤなどの野菜の蒸したものと一緒に、
ピーナッツソースをかけていただきます。
小腹がすいたときのちょっとしたおやつとして人気です。

それから、ナシ・ティム/Nasi Tim。これも、インドネシアン・チャイニーズの料理に挙げられます。

ナシ・ティム Bandung_West Java, 2017

ティムはスチームを意味し、お米と味付きの鶏肉を型に入れて蒸したもの。
写真のものは鶏肉が中に入っているタイプですが、天面に敷き詰めてあるものも多いです。
(ちょっとプリンみたいなビジュアルになります)

ナシ・ティム Bandung_West Java, 2017

鶏出汁のしみた、滋味深い味。
シンガポールの海南鶏飯などと同じルーツじゃないかと思います。

それから、バッパオ。

バッパオ Bandung_West Java, 2018

バッチャンと同じ、Bakの音。肉包、つまり豚まん。

華人の多く住むエリアで売られているバッパオは、その名の通り、中の具は豚が基本になります。
甘いものは、タウサ(豆沙)と呼ばれる緑豆などの豆餡に鉄を加えて黒くしたもの。

このバッパオは屋台引きの商品の一つとして、特に夕暮れ時から夜にかけて、一般の街中でもよくみかけます。

バッパオ売り Bandung_West Java, 2018

ジャカルタなどで、ちょうど会社帰りの頃合い、渋滞する道路の脇にバッパオ売りをよく見かけます。
彼らの売っているバッパオの具は鶏。Bakは名だけになり、ムスリムにも安心な食べ物になっています。
甘い方は、黒くない普通の緑豆餡、チョコなど。

名だけになっているBakと言えば、バッピア/Bakpiaもあります。
中部ジャワのジョクジャカルタを始め、旅行のお土産ものとしては人気上位にくるスイーツ。

バッピア Jogjakarta_Central Java, 2016

パイ生地のような層になった皮で、甘い餡を包み焼いたお菓子。
バッピアのピアは、小麦粉の皮でくるんだ食べ物を表す福建語のPia=餅から来ているそうです。
つまり、肉餅なわけですが、インドネシアのバッピアの中身は緑豆餡(チョコやチーズ味も)。
ローカライズされて、広く親しまれるようになった中国の食べ物のひとつですね。

ピアつながりで、もうひとつ、
東ヌサトゥンガラ諸島の山間の町ルテンの名物にコンピアン/Kompiangというものがあります。

コンピアン Ruteng_East Nusa Tenggara, 2016

スペルは、Kompyangもしくは、Kompiahとも。ピアです、ピア。
写真のものは豚肉入りですが、具のないプレーンなものもあり、まぶした胡麻が美味しい素朴なパンです。
マレーシアのサラワクにあるシブというところでもコンピアンが名物と聞いたことがありますが、
これはそもそも、福建の福州市に起源がある食べ物なのだそうです。
オリジナルのものは、もっと薄く平たい丸形のようで、やはり豚餡などが入っているのだとか。

このコンピアン、ルテンの町に行ったらマストな食べ物で、
ルテン出身のひとは、里帰りした際に大量に買い込み各々の場所に持って帰ると聞きます。
素晴らしい浸透っぷり。

もうひとつ、わたしの大好物のスイーツを。ロンデ/Rondeです。

ロンデ・ジャへ Bandung_West Java, 2017

餅米で作った団子(ロンデ)が、生姜の利いた椰子砂糖のシロップに浮かぶ甘い温かいおやつ。
ロンデ・ジャへ/Ronde Jaheもしくは、ウェダン・ロンデ/Wedang Rondeと呼ばれます。
これも、ここバンドンで好まれる食べ物です。
もちもちっとした小粒のロンデと、中にピーナッツ粉が入った大粒のロンデで小腹を満たし、
食べ終わる頃には生姜で身体もぽかぽかになります。
このロンデはを華人たちはお祝い事のあった時に、そして冬至の日に食べるのだといいます。
(わたしはいつでも食べたいです)

と、ぱっと思いつく限りの、身近な中国由来の食べ物を挙げてみましたが、
まだまだ他にも、色々あるのだと思います。

ここしばらく、主に東南アジアの華人に関する本を続けて読んでいたのですが、
その中に、
「居住地志向が低いマレー華人、現地との同化が進んでいるタイ華人、現地と混合しているインドネシア華人」
というのがありました。
マレーシアの現状をわたしは知らないのでなんとも言えませんが、
タイの華人の同化はよく耳にしますし、現地に住んでいる友人もそう言います。
そして、インドネシアの華人の、同化とはいかないまでも混ざり合っている感じは、その通りという印象。

豚のせ中華粥 Jakarta_2017

そしてそれは、インドネシアにおける中国料理も同様なのではないかな、と。

友人の華人たちと話していて「中国本土の中華料理は美味しくない」という話題が出たことがありました。
「インドネシアの中華料理の方がずっと旨いぞ」と。
それは、本土の料理が美味しくないのではなく、
ここに暮らす華人である彼らの味覚が違うのではないかとわたしは思うのです。

インドネシアに移り住んで何世代か、その間に味覚は現地化してきたのでしょうし、
食材も、この土地では手に入らないもの、そしてこの土地ならではのものがあり、
それらを組み合わせ、この土地の「中華料理」はインドネシアンチャイニーズの味になっているのです。
インドネシアにあるそれらの料理たちを、オリジナルと照らし合わせる術はないですが、
(それをやるには、中国はバラエティに富みすぎています…笑)
彼らがこうも自信を持って「旨い!」と言い切るインドネシアンチャイニーズを、
今後、深く知って、というか味わって、いきたいなと思っています。

最後に、いくつか地名を出したので、地図をつけておきますね。


1:ジャカルタ
2:バンドン
3:ジョグジャカルタ
4:ルテン


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